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変化1
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『ティナ、起きてー』
「……う~~ん……」
『お腹すいたよー。ご飯食べようよー』
「…………うぅ、ちょっと待って……」
眠っていたティナの耳に、自分を起こす子供の声が聞こえて来た。
「……その辺りに……神官……が、いるから……その人に言って……」
ティナは孤児院の子供がまた神殿に入り込んだのかと思う。
神殿の隣に併設されている孤児院の子が、時々こうして忍び込んではいたずらをしていくのだ。
『えー神官ー? そんな人いないよー。もう朝だよー起きてー』
「……え~? いない……? アレクシスも……?」
『誰それー? 僕知らないよー』
トールにコテンパンにやられていたが、アレクシスはあれでも聖騎士の中では一番の有望株だった。
孤児院の子供達の憧れで、有名人のアレクシスを知らない子供がいるなんて……と思ったティナは「あれ?」と思う。
「……………………え? あれ? 神殿……じゃないよね……?」
無理やり目を開けてみれば、そこは昨日泊まった宿の部屋だった。一瞬、神殿に戻ったのかと思ったが、どうやら寝ぼけていたようだ。
『ティナ起きたー。ご飯行こー』
「えっ?! だ、誰っ?!」
ほっとしたのも束の間、自分を起こす声はまだ聞こえて来る。
もしかして部屋に子供が入り込んだのだろうか、と思ったティナは部屋中を見渡すが、部屋の中には自分とアウルムしかいない。
『ねーねー。ご飯行こうってばー』
「………………え?」
ティナはアウルムを見て絶句した。
「し、白い!! アウルムが白いよっ!!」
気が付けば、灰色だったアウルムの毛色が真っ白になっていた。
『そうなのー。起きたら戻ってたのー』
「えっ?! しゃ、喋ってる!? え、アウルムって喋れたの?! ……え? 戻る?」
ティナはアウルムの変化に驚いた。
寝て起きてみれば、アウルムの毛色が変わっていて、しかも頭の中で会話が出来ているではないか。
『えっとねー。ティナが泣いたから戻ったのー』
「え? 戻る? 私が泣いたから?」
記憶を思い出して思わず泣いてしまったけれど、だからと言ってそれがアウルムの変化に繋がるのかがわからない。
『そうなのー。ティナ泣いたからー。ねー、お腹すいたよー』
「うん、そうなんだけど……。アウルムの毛色が変わってたら、怪しまれるかも……」
灰色の時でも目を引いていたのに、真っ白になったアウルムはかなり目立つだろう。珍しい魔獣だからと連れ去られてしまうかも、と思うと不安になる。
『えー。じゃあ、色変えるー』
「は? え?」
ティナがどう言う意味か聞く間もなく、アウルムの身体の色が変化する。
『これでいいー?』
「わぁ! うんうん、バッチリ! そんなこともできるなんて、アウルムはすごいなぁ!!」
『えへへー』
どういう原理かわからないが、アウルムの毛色は変化する前の色に戻っていた。
「これで安心だね。じゃあ、食堂に行こうか」
『わーいわーい!』
アウルムがぴょんぴょんと跳ねて喜んでいる。よほどお腹が空いていたのだろう。
窓を見れば日の光が部屋を明るく照らしていて、すっかり日が昇っていた。
いつもは早起きなのに、今日は寝坊をしたようだ。
アウルムには聞きたいことがたくさんあるが、とりあえず今は朝食を優先することにする。
ティナが食堂に降りて行くと、ティナに気付いた給仕の女性が挨拶をしてくれた。
「あら、おはよう! よく眠れたかしら?」
「おはようございます。はい、ぐっすり眠っちゃいました」
「ふふふっ、それは良かったわ。すぐ朝食を用意するから、空いてる席に座っててくれる?」
「はい」
ティナが空いてる席を探そうと食堂を見渡してみれば、夜ほどではないが結構席が埋まっていた。宿泊客の他にも朝食を食べに来ている人がいるようだ。
「……う~~ん……」
『お腹すいたよー。ご飯食べようよー』
「…………うぅ、ちょっと待って……」
眠っていたティナの耳に、自分を起こす子供の声が聞こえて来た。
「……その辺りに……神官……が、いるから……その人に言って……」
ティナは孤児院の子供がまた神殿に入り込んだのかと思う。
神殿の隣に併設されている孤児院の子が、時々こうして忍び込んではいたずらをしていくのだ。
『えー神官ー? そんな人いないよー。もう朝だよー起きてー』
「……え~? いない……? アレクシスも……?」
『誰それー? 僕知らないよー』
トールにコテンパンにやられていたが、アレクシスはあれでも聖騎士の中では一番の有望株だった。
孤児院の子供達の憧れで、有名人のアレクシスを知らない子供がいるなんて……と思ったティナは「あれ?」と思う。
「……………………え? あれ? 神殿……じゃないよね……?」
無理やり目を開けてみれば、そこは昨日泊まった宿の部屋だった。一瞬、神殿に戻ったのかと思ったが、どうやら寝ぼけていたようだ。
『ティナ起きたー。ご飯行こー』
「えっ?! だ、誰っ?!」
ほっとしたのも束の間、自分を起こす声はまだ聞こえて来る。
もしかして部屋に子供が入り込んだのだろうか、と思ったティナは部屋中を見渡すが、部屋の中には自分とアウルムしかいない。
『ねーねー。ご飯行こうってばー』
「………………え?」
ティナはアウルムを見て絶句した。
「し、白い!! アウルムが白いよっ!!」
気が付けば、灰色だったアウルムの毛色が真っ白になっていた。
『そうなのー。起きたら戻ってたのー』
「えっ?! しゃ、喋ってる!? え、アウルムって喋れたの?! ……え? 戻る?」
ティナはアウルムの変化に驚いた。
寝て起きてみれば、アウルムの毛色が変わっていて、しかも頭の中で会話が出来ているではないか。
『えっとねー。ティナが泣いたから戻ったのー』
「え? 戻る? 私が泣いたから?」
記憶を思い出して思わず泣いてしまったけれど、だからと言ってそれがアウルムの変化に繋がるのかがわからない。
『そうなのー。ティナ泣いたからー。ねー、お腹すいたよー』
「うん、そうなんだけど……。アウルムの毛色が変わってたら、怪しまれるかも……」
灰色の時でも目を引いていたのに、真っ白になったアウルムはかなり目立つだろう。珍しい魔獣だからと連れ去られてしまうかも、と思うと不安になる。
『えー。じゃあ、色変えるー』
「は? え?」
ティナがどう言う意味か聞く間もなく、アウルムの身体の色が変化する。
『これでいいー?』
「わぁ! うんうん、バッチリ! そんなこともできるなんて、アウルムはすごいなぁ!!」
『えへへー』
どういう原理かわからないが、アウルムの毛色は変化する前の色に戻っていた。
「これで安心だね。じゃあ、食堂に行こうか」
『わーいわーい!』
アウルムがぴょんぴょんと跳ねて喜んでいる。よほどお腹が空いていたのだろう。
窓を見れば日の光が部屋を明るく照らしていて、すっかり日が昇っていた。
いつもは早起きなのに、今日は寝坊をしたようだ。
アウルムには聞きたいことがたくさんあるが、とりあえず今は朝食を優先することにする。
ティナが食堂に降りて行くと、ティナに気付いた給仕の女性が挨拶をしてくれた。
「あら、おはよう! よく眠れたかしら?」
「おはようございます。はい、ぐっすり眠っちゃいました」
「ふふふっ、それは良かったわ。すぐ朝食を用意するから、空いてる席に座っててくれる?」
「はい」
ティナが空いてる席を探そうと食堂を見渡してみれば、夜ほどではないが結構席が埋まっていた。宿泊客の他にも朝食を食べに来ている人がいるようだ。
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