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遺恨1

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 クロンクヴィスト王国には公爵の位を持つ三つの家門があった。

 そのうちの一つであるアッヘンバッハ公爵家は今代の皇后を排出し、その勢力は飛ぶ鳥も落とす勢いで、王室にも匹敵する程であった。

 そして皇后である娘は王子を出産し、行く末はその王子が王太子となるだろう、と国中の誰もが思っていた──トールヴァルドが生まれるまでは。

 このクロンクヴィスト王国に於いて<金眼>を持つ者は、初代国王の正統なる後継者として尊ばれる。
 そんな王子の誕生に国は湧き、たとえ第二王子だとしても次期国王にするべき、との意見があちらこちらから聞こえてくるほどであった。

 実質的にアッヘンバッハ家がクロンクヴィスト王国を支配出来るまであと少し、というところまで来たというのに、トールヴァルド一人のために今までの苦労が全て無駄になってしまう。
 <金眼>を持つトールヴァルドの存在は、アッヘンバッハ公爵の野望を妨げる最大の障害となったのだ。

 そんな目障りなトールヴァルドをこの世から抹殺するために、嫉妬深い娘である正妃と共謀し、公爵はありとあらゆる手を用いたものの、その尽くを失敗してしまう。

 まるでトールヴァルドを守る見えない力が働いているかのようだ、と公爵は感じた。そうしてトールヴァルドは見えない何かに守られながら成長していく。

 公爵の目に、トールヴァルドがまるで化け物のように映ったのは必然で。

 そんなトールヴァルドが成長していくにつれ、公爵は焦燥感に襲われる。
 それはトールヴァルドが優秀で、彼を認める貴族の家門が日に日に増えていったから、というのもある。

 このままではトールヴァルドに王太子の座を奪われてしまう、と思われたある日、運良く公爵家の手の者が側妃を暗殺したのだ。

 側妃の訃報に国中が騒然となり、国王が悲しみに暮れている隙をついて、公爵の派閥は王国の実権を握ることに成功する。

 ──残るは邪魔者のトールヴァルドを抹殺するのみであったが、側妃の侍女に邪魔をされトールヴァルドは行方を眩ませてしまう。

 激怒した公爵は闇の世界の人間にコンタクトをとり、思いつく限りの暗殺者ギルドにトールヴァルドの暗殺を依頼する。
 その依頼料は天文学的数字に昇ったが、確実に王国を手に入れられるのなら、と思うと苦にならなかった。

 しかし、そんな人生を賭けた大勝負にも、公爵は敗北してしまう。
 抜け殻のようになったと思っていた国王を油断していたのが敗因であった。

 結局、公爵家は取り潰しとなり、正妃だった娘ともども公爵は処刑されることになる。

 ところが公爵だった元当主は影武者を使い、自分だけ処刑を免れることに成功する。
 娘は死んでしまったが、自分さえ生き残れば何度でも家門を立て直せるはずなのだ。

 そうしてクロンクヴィストから逃亡している道中で、元当主はとある人物と出会う。
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