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精霊3
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「そっかー。アウルムは精霊さんたちの仲間だったんだ」
ティナはアウルムの頭をよしよしと撫でる。精霊の仲間といっても、アウルムはちゃんと身体があるし、もふもふだ。
《フローズヴィトニルの子はアウルムって名前なのね。人間に懐くなんて珍しいわ》
《とても可愛い子ね。それに大人しいわ》
精霊たちはティナやアウルムに興味津々だ。久しぶりのお客様と言っていたし、ここに辿り着く人間もそういないだろうから、珍しいのかもしれない。
「あの、お聞きしたいんですけど、私精霊さんに祝福されるようなことはしていないのに、どうして祝福されたのでしょう?」
ティナはずっと疑問に思っていたことを質問した。
精霊が見えず、会うことも叶わなかったのに、いつの間に祝福を受けていたのか、全く心当たりがなかったからだ。
《あら、おかしいわね。あなたの近くにわたしたちの仲間がいたはずよ》
《わたしたちは気に入った人間に祝福をあげるのよ》
《でも、あなたが持つ祝福は”感謝”と”友愛”ね》
《とてもあなたに感謝しているわ》
「感謝……?」
以前ティナが泊まった「踊る子牛亭」に、精霊がいたことは知っている。しかし、いくら考えても思い当たらない。ティナは宿にいた時の記憶を一生懸命思い出してみる。
『──ティナから精霊の匂いがするよー?』
「……あ」
記憶を遡っていたティナは、ふとアウルムから告げられた言葉を思い出す。
そしてうたた寝した時に見た夢の記憶も同時に思い出したのだ。
(もしかしてあの夢で見た光が、精霊さんだった……?)
そういえばアウルムはその後、精霊が元気になったと言っていた。もしかすると、そのことが<祝福>と関係があるのかもしれない。
《思い当たることがあったみたいね》
「はい、てっきり夢だと思っていたんですけど……」
どうして夢の内容を忘れてしまっていたのかティナにもわからないが、ずっと引っかかっていた疑問が解けてスッキリする。
《きっと”居眠り精霊”だわ。夢を覚えていないのはあの子だからよ》
《最近姿を見ていないわね》
《遊びに行ったきり帰って来ていないわね》
《そのうち帰って来るでしょ》
ティナは精霊たちの会話になるほど、納得した。
宿の主人が言っていたことは間違っていなかったようだ。
(それにしても最近って……。精霊さんの時間感覚もノアさんと同じなのかな?)
確か宿の主人によれば、彼の祖母の時代に精霊がいたと言っていた。やっぱり最近じゃないよね、とティナは思う。
「あっ! あの、ここに月下草は咲いていますか?!」
ティナはここに来た目的である月下草のことを精霊たちに質問した。
本物の精霊に会えた嬉しさで頭から抜け落ちていたのだ。
《あら、あなた月下草を探しているの?》
《残念だけど、今は咲いていないわよ》
《月下草は満月の日にしか咲かないのよ》
「えっ?! そうなんですか?」
月下草が月の光を浴びないと咲かないのは知っていたが、それが満月の光に限られるとティナは知らなかった。
確かノアの小屋から出発する三日前が満月だったから、森の中を移動した日数を考えると、次の満月まで半月ほどかかるだろう。
《ルーアシェイア様の許可もいるけど、あなたなら大丈夫ね》
「ルーアシェイア様、ですか?」
《そうよ。わたしたちを統べるお方よ》
「あっ! 精霊王様のお名前がルーアシェイア様なんですね!」
《そうよ。ルーアシェイア様はラーシャルード様がお生みになられた、わたしたちの王の一人なのよ》
「──え……?」
ティナは精霊の言葉に絶句する。何故なら、ラーシャルード教は精霊信仰を否定しているからだ。
ティナはアウルムの頭をよしよしと撫でる。精霊の仲間といっても、アウルムはちゃんと身体があるし、もふもふだ。
《フローズヴィトニルの子はアウルムって名前なのね。人間に懐くなんて珍しいわ》
《とても可愛い子ね。それに大人しいわ》
精霊たちはティナやアウルムに興味津々だ。久しぶりのお客様と言っていたし、ここに辿り着く人間もそういないだろうから、珍しいのかもしれない。
「あの、お聞きしたいんですけど、私精霊さんに祝福されるようなことはしていないのに、どうして祝福されたのでしょう?」
ティナはずっと疑問に思っていたことを質問した。
精霊が見えず、会うことも叶わなかったのに、いつの間に祝福を受けていたのか、全く心当たりがなかったからだ。
《あら、おかしいわね。あなたの近くにわたしたちの仲間がいたはずよ》
《わたしたちは気に入った人間に祝福をあげるのよ》
《でも、あなたが持つ祝福は”感謝”と”友愛”ね》
《とてもあなたに感謝しているわ》
「感謝……?」
以前ティナが泊まった「踊る子牛亭」に、精霊がいたことは知っている。しかし、いくら考えても思い当たらない。ティナは宿にいた時の記憶を一生懸命思い出してみる。
『──ティナから精霊の匂いがするよー?』
「……あ」
記憶を遡っていたティナは、ふとアウルムから告げられた言葉を思い出す。
そしてうたた寝した時に見た夢の記憶も同時に思い出したのだ。
(もしかしてあの夢で見た光が、精霊さんだった……?)
そういえばアウルムはその後、精霊が元気になったと言っていた。もしかすると、そのことが<祝福>と関係があるのかもしれない。
《思い当たることがあったみたいね》
「はい、てっきり夢だと思っていたんですけど……」
どうして夢の内容を忘れてしまっていたのかティナにもわからないが、ずっと引っかかっていた疑問が解けてスッキリする。
《きっと”居眠り精霊”だわ。夢を覚えていないのはあの子だからよ》
《最近姿を見ていないわね》
《遊びに行ったきり帰って来ていないわね》
《そのうち帰って来るでしょ》
ティナは精霊たちの会話になるほど、納得した。
宿の主人が言っていたことは間違っていなかったようだ。
(それにしても最近って……。精霊さんの時間感覚もノアさんと同じなのかな?)
確か宿の主人によれば、彼の祖母の時代に精霊がいたと言っていた。やっぱり最近じゃないよね、とティナは思う。
「あっ! あの、ここに月下草は咲いていますか?!」
ティナはここに来た目的である月下草のことを精霊たちに質問した。
本物の精霊に会えた嬉しさで頭から抜け落ちていたのだ。
《あら、あなた月下草を探しているの?》
《残念だけど、今は咲いていないわよ》
《月下草は満月の日にしか咲かないのよ》
「えっ?! そうなんですか?」
月下草が月の光を浴びないと咲かないのは知っていたが、それが満月の光に限られるとティナは知らなかった。
確かノアの小屋から出発する三日前が満月だったから、森の中を移動した日数を考えると、次の満月まで半月ほどかかるだろう。
《ルーアシェイア様の許可もいるけど、あなたなら大丈夫ね》
「ルーアシェイア様、ですか?」
《そうよ。わたしたちを統べるお方よ》
「あっ! 精霊王様のお名前がルーアシェイア様なんですね!」
《そうよ。ルーアシェイア様はラーシャルード様がお生みになられた、わたしたちの王の一人なのよ》
「──え……?」
ティナは精霊の言葉に絶句する。何故なら、ラーシャルード教は精霊信仰を否定しているからだ。
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