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ルシオラ1

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 ティナを求めて<迷いの森>に足を踏み入れたトールは、ルシオラに案内されながら森の奥へと進んでいく。

 森の中は人の手がほとんど入っておらず、自然がそのまま残されている。
 それは逆にいうと、進むべき道がないために移動にかなり時間がかかるということだ。

 トールが森の中に足を踏み入れてから、すでに十日が経過していた。
 <迷いの森>は広大で、ルシオラが案内してくれなければ、今自分がどこにいるのかわからず、その名の通り迷っていただろう。

 日が昇っているうちに進めるだけ進み、日が暮れると早々に野営をする。

 今日も馬を走らせてかなりの距離を進んだトールは、巨大な樹の根元にもたれながら空を見上げた。

 木々の間から見える星空は圧巻で、まるで自分が違う世界に取り残されてような錯覚を覚える。
 月は綺麗な満月で、月の光が森の中を優しく照らしている。

 ルシオラは月の光の中でくるくると回っていて、とても機嫌が良さそうに見える。
 昔からルシオラは満月になると動きが活発になり、こうしてくるくると踊るように飛び回るのだ。

 森の中に入ってから、以前より元気になったルシオラは、蛍のような大きさからひと回り大きくなっていた。
 まるで森から生命力のような不思議な力を受けているようだ、とトールは思う。

 そして今、満月の光を浴びたルシオラはさらに光り輝いている。

 トールが幻想的な光景を眺めていると、ルシオラの光がさらに強くなっていった。

「えっ?! ルシオラ?!」

 今までにない強い光にトールが驚いていると、大きく膨れ上がっていた光が弾けた。あまりの眩しい光にトールの視界が真っ白に染まる。

 一体何が起こっているのか、トールがそっと目を開けると、そこには燐光を纏った小さい女の子がいた。

《トール! わたし力が戻ったよ!》

 ルシオラはくるぶしまである長い青色の髪の、可愛らしい少女の姿になっていた。見た目は十歳ぐらいに見える。

 しかし実際の大きさは手のひらサイズで、全体的に光でぼやけており、一目で人間じゃないことがわかる。

「ルシオラ……! それが本当の姿なのか?」

 まさか精霊が人間に似た姿になるとは思わなかった。しかもイメージではなく会話が出来ている。

《うん……! ここはルーアシェイア様の力の範囲内みたいだからね! それに今日は満月だから、この姿になれたんだよ!》

「ルーアシェイア? それは、ルシオラが感じていた巨大な力の?」

《そうだよ! ルーアシェイア様はわたしたち精霊の王様だよ!》

「え、精霊王がこの森の奥に?!」

《いると思うよ! 普通の人間じゃ会えないけど、トールはエーレンフリートの子孫だし、わたしが祝福しているからね! きっと会えるよ!》

 クロンクヴィスト王国を建国したエーレンフリートが、精霊王から祝福され<金眼>を与えられたことは、以前ルシオラから教えられていたものの、まさか精霊王がこの<迷いの森>にいるとは……トールは思いもしなかった。
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