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時空間魔法1
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ノアがトールに振る舞ってくれたティナの手料理は、とても優しい味がした。
ただそれだけで、ティナがノアをすごく気遣っていることが感じ取れる。
ティナとノアが共に過ごした一ヶ月と言う時間は、人によって短いと感じるかもしれない。だけど二人にとっては、お互いを大事な存在として位置付けるには十分な時間だったようだ。
トールはティナの大事な存在となったノアをとても羨ましく思うと同時に、心から尊敬した。彼は警戒心が強いティナの心を一ヶ月で開いたのだ。自分は再会してから半年近くもかかったというのに。
しかしティナがノアに懐いたのも納得だ。ノアは器の大きさを感じさせる何かと、独特の雰囲気を持っているのだ。
ちなみにトールもノアが持つ巨大倉庫に驚かされている。
そこは時間の干渉を受けないから、いつでも当時のままの状態で取り出せるようになっていた。
だからティナの手料理も、トールは出来立てを美味しく食べることが出来たのだ。
「時空間魔法……本当に便利ですね」
「ふぉっふぉっふぉ。そうじゃろうそうじゃろう。使えて損はないからのう。坊ちゃんも練習してみるがええ」
「いやいや、時空間魔法はそう簡単に取得できるようなものじゃないですよ」
トールとしても、時空間魔法が使えるのなら是非とも使ってみたいと思う。トールが使える転移魔法も時空間魔法の一種だが、難易度が全く違うのだ。
しかもクロンクヴィスト王国で最高の権威を誇る宮廷魔術師のフェダールでさえ、転移魔法までしか使えなかった。
それほど難解な時空間魔法は、今では先天的な才能が必要不可欠だ、という認識が世界共通になっている。
「そうか? ワシゃ研究してるうちに使えるようになったでな」
「いや、それはきっとノアさんが天才的頭脳を持っていて、しかも人間より時間があったからじゃないですか?」
時空間魔法は研究者が自身の人生を捧げる覚悟で挑む魔法だ。きっとノアが極められたのも、ハーフエルフの寿命の長さと優れた頭脳が奇跡的に合致したからだろう。
「坊ちゃんも学んでみんか? ワシの論文を見せてやるぞい」
ワインを飲んでいたノアが、超貴重な論文をトールに見せてくれると言う。ほろ酔い気分なのか、随分機嫌が良さそうだ。
ちなみにノアが倉庫から持って来たワインは、500年以上前に滅亡した王国で作られた伝説のワインだったと、トールは記憶している。おそらく一本で白金貨一枚は下らないはずだ。
「えっ! そんな貴重なものを!? …………あ、いや、でも俺には難しいかと思います」
トールは慌てて自分を抑えつけた。思わず論文を見せて欲しいと言いかけてしまったのだ。ただでさえノアの論文は内容が難解だと有名だ。きっと読むだけでも何ヶ月もかかってしまうだろう。
「ふーむ? 坊ちゃんの才能もかなりのモンじゃがなぁ。まあ、気が向いたらいつでもここへ来るがええ。ワシが坊ちゃんに教えてやるでな」
「えっ?! 本当ですかっ!? 有り難うございます! 大魔導士に師事できるなんて光栄です!」
トールは昔から時空間魔法にすごく興味があった。しかし今優先すべきは何よりもティナとの再会だ。早く彼女に逢いたくて仕方がないのだ。
だから今回は諦めようと思ったのだが、ノアからの申し出はトールにとってはとても有り難かった。
魔法オタクなところがある彼にとって「魔法学の父」と呼ばれているノアに魔法を教わる機会が得られたのは僥倖だろう。
ただそれだけで、ティナがノアをすごく気遣っていることが感じ取れる。
ティナとノアが共に過ごした一ヶ月と言う時間は、人によって短いと感じるかもしれない。だけど二人にとっては、お互いを大事な存在として位置付けるには十分な時間だったようだ。
トールはティナの大事な存在となったノアをとても羨ましく思うと同時に、心から尊敬した。彼は警戒心が強いティナの心を一ヶ月で開いたのだ。自分は再会してから半年近くもかかったというのに。
しかしティナがノアに懐いたのも納得だ。ノアは器の大きさを感じさせる何かと、独特の雰囲気を持っているのだ。
ちなみにトールもノアが持つ巨大倉庫に驚かされている。
そこは時間の干渉を受けないから、いつでも当時のままの状態で取り出せるようになっていた。
だからティナの手料理も、トールは出来立てを美味しく食べることが出来たのだ。
「時空間魔法……本当に便利ですね」
「ふぉっふぉっふぉ。そうじゃろうそうじゃろう。使えて損はないからのう。坊ちゃんも練習してみるがええ」
「いやいや、時空間魔法はそう簡単に取得できるようなものじゃないですよ」
トールとしても、時空間魔法が使えるのなら是非とも使ってみたいと思う。トールが使える転移魔法も時空間魔法の一種だが、難易度が全く違うのだ。
しかもクロンクヴィスト王国で最高の権威を誇る宮廷魔術師のフェダールでさえ、転移魔法までしか使えなかった。
それほど難解な時空間魔法は、今では先天的な才能が必要不可欠だ、という認識が世界共通になっている。
「そうか? ワシゃ研究してるうちに使えるようになったでな」
「いや、それはきっとノアさんが天才的頭脳を持っていて、しかも人間より時間があったからじゃないですか?」
時空間魔法は研究者が自身の人生を捧げる覚悟で挑む魔法だ。きっとノアが極められたのも、ハーフエルフの寿命の長さと優れた頭脳が奇跡的に合致したからだろう。
「坊ちゃんも学んでみんか? ワシの論文を見せてやるぞい」
ワインを飲んでいたノアが、超貴重な論文をトールに見せてくれると言う。ほろ酔い気分なのか、随分機嫌が良さそうだ。
ちなみにノアが倉庫から持って来たワインは、500年以上前に滅亡した王国で作られた伝説のワインだったと、トールは記憶している。おそらく一本で白金貨一枚は下らないはずだ。
「えっ! そんな貴重なものを!? …………あ、いや、でも俺には難しいかと思います」
トールは慌てて自分を抑えつけた。思わず論文を見せて欲しいと言いかけてしまったのだ。ただでさえノアの論文は内容が難解だと有名だ。きっと読むだけでも何ヶ月もかかってしまうだろう。
「ふーむ? 坊ちゃんの才能もかなりのモンじゃがなぁ。まあ、気が向いたらいつでもここへ来るがええ。ワシが坊ちゃんに教えてやるでな」
「えっ?! 本当ですかっ!? 有り難うございます! 大魔導士に師事できるなんて光栄です!」
トールは昔から時空間魔法にすごく興味があった。しかし今優先すべきは何よりもティナとの再会だ。早く彼女に逢いたくて仕方がないのだ。
だから今回は諦めようと思ったのだが、ノアからの申し出はトールにとってはとても有り難かった。
魔法オタクなところがある彼にとって「魔法学の父」と呼ばれているノアに魔法を教わる機会が得られたのは僥倖だろう。
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