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08 神隠し
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「──お前なんかさっさと壊れてしまえっ!!」
怒り狂いハサミを振り上げた真央が私に襲いかかってきた。
──あ。もう駄目だ。
振り下ろされる真央の腕を眺めながら、私は痛みを覚悟した。
ハサミに刺され、怪我をするだけで済めばいいけれど、もしかすると今度こそ死んでしまうかもしれない。
痛いのは嫌だけど、それでお母様の元へ行けるなら、それはそれでいっか、なんて。
私は死が迎えに来てくれるのを待った、それなのに──
「真央っ!! 流石にやり過ぎだっ!!」
逆上した真央を止めたのは、意外にも怜央だった。
「怜央っ!! 何で止めるのよっ!!」
真央も怜央が止めるとは思わなかったようで、ひどく狼狽えている。
「……はあ。お前たち! 琴葉を部屋に連れて行け!」
怜央が命令すると、驚きで固まっていた使用人たちは我に返り「はっ、はいっ!!」と言って、私を真央から引き離した。
「怜央っ!! どういうつもりよっ!! どうして邪魔するのっ!!」
真央が怜央に抗議している声を聞きながら、私は真央の部屋から連れ出された。
ふと窓を見れば、そこには乱れてボサボサになった頭と、切られて所々短くなった髪をした私の、惨めな姿が窓ガラスに映っていた。
「……っ!!」
私は私を支えていた使用人の手を振りほどくと、その場から走り出す。
「あっ! 琴葉様っ!」
「えっ?! どこへっ?!」
後ろから使用人たちの驚いた声が聞こえるけれど、私は構わず走り続けた。
(ひどい、ひどい……っ、どうしてこんなことが出来るの……っ!!)
私は無我夢中で走り続けた。
天花寺家の敷地はとても広いから、下手をすると迷子になりかねない。だけど、それでも一向に構わなかった。
殴られたり蹴られたり、暴言を吐かれるのにはもう慣れた。でもお母様との思い出が残るものを、壊されたり奪われるのだけは、どうしても我慢できなかったのだ。
気がつくと私は大豆と小豆と出会った場所に来ていた。きっと二匹に会いたくて無意識だったんだと思う。
辺りを探してみたけれど、残念ながら二匹の姿は見当たらなかった。もしかして自分の住処にいるのかもしれない。
私はがっかりしながら元来た道を戻ろうとしたけれど、屋敷には使用人がたくさんいることを思い出して足が竦む。
真央が無造作に掴んだところを切られたから、私の髪の毛は無惨なことになっていた。そんな姿を人に見られたくなかった私は、屋敷に戻るのをやめて大豆と小豆を探すことにする。
茂みを掻き分けて歩いていると、敷地の端に着いたらしく、大きな塀が見える。私が塀に近づくと、下の方が崩れ、穴が空いていることに気が付いた。
「あれは……」
天花寺家を守る塀に穴が空いているなんて、本来なら決してあってはならないことだ。だけどお母様が亡くなってから、管理する者がいなくなったこともあり、防護の質は以前よりかなり落ちてしまっていた。
「どうしよう……お父様に相談するべき、だよね……」
お母様を亡くしてからすっかり人が変わってしまったお父様でも、屋敷の安全対策が綻びかけていると知れば、流石に何かの対処をしてくれるはず。
そうして、私は仕方なく屋敷に戻ることにした、けれど──
一体何が起こったのか、気が付けば私は、屋敷にある自分の部屋で横になっていた
。
「っ?! 琴葉様!?」
「あっ!! 琴葉様がお目覚めになられたわっ!! ご当主様にお知らせしてっ!!」
「は、はいっ、ただいま!!」
私が目を覚ました途端、周りがざわつき、使用人たちが世話聞く動き出す気配がする。
(……一体、何があったの……? ……──え?)
訳が分からず、とりあえず身体を起こそうとした私の目に、真っ白い絹糸のような物が目に入った。
(なに、これ……っ、え……まさか、私の髪……?)
私は白い糸のようなものを摘んで引っ張ってみた。すると、確かに私の頭に引っ張られた感覚が伝わってくる。
「……嘘……! どうして……っ!!」
いつの間にか髪の毛が真っ白になっていた私は、驚き過ぎて固まってしまう。
すると、襖の向こうからドタドタと数人の足音が聞こえてきた。
「琴葉っ!! この恥さらしがっ!!」
勢いよく襖を開けて入ってきたのは家族の面々で、お父様と義母に双子まで揃っていた。
「まぁ……! 本当に髪が真っ白じゃない……なんて悍ましい……」
私を見た真央が汚いものを見るような目で吐き捨てるように言った。
「そんな姿になっては嫁がせることも出来んではないかっ!! 全く、どうして屋敷の外に出たんだ!!」
「──え?」
お父様の言葉に私の理解が追いつかない。屋敷の外って一体どういうことなんだろう?
「あらあら、覚えていないのかしら? 貴女は十日間も行方不明になっていたのよ?」
「なっ──?! 行方不明?!」
義母の口から出た言葉に私は驚愕する。
どうやら私は十日間もの間、行方不明──神隠しにあっていたらしく、屋敷から離れた夜見ノ森の入口に倒れているところを、村人に発見されたのだそうだ。
怒り狂いハサミを振り上げた真央が私に襲いかかってきた。
──あ。もう駄目だ。
振り下ろされる真央の腕を眺めながら、私は痛みを覚悟した。
ハサミに刺され、怪我をするだけで済めばいいけれど、もしかすると今度こそ死んでしまうかもしれない。
痛いのは嫌だけど、それでお母様の元へ行けるなら、それはそれでいっか、なんて。
私は死が迎えに来てくれるのを待った、それなのに──
「真央っ!! 流石にやり過ぎだっ!!」
逆上した真央を止めたのは、意外にも怜央だった。
「怜央っ!! 何で止めるのよっ!!」
真央も怜央が止めるとは思わなかったようで、ひどく狼狽えている。
「……はあ。お前たち! 琴葉を部屋に連れて行け!」
怜央が命令すると、驚きで固まっていた使用人たちは我に返り「はっ、はいっ!!」と言って、私を真央から引き離した。
「怜央っ!! どういうつもりよっ!! どうして邪魔するのっ!!」
真央が怜央に抗議している声を聞きながら、私は真央の部屋から連れ出された。
ふと窓を見れば、そこには乱れてボサボサになった頭と、切られて所々短くなった髪をした私の、惨めな姿が窓ガラスに映っていた。
「……っ!!」
私は私を支えていた使用人の手を振りほどくと、その場から走り出す。
「あっ! 琴葉様っ!」
「えっ?! どこへっ?!」
後ろから使用人たちの驚いた声が聞こえるけれど、私は構わず走り続けた。
(ひどい、ひどい……っ、どうしてこんなことが出来るの……っ!!)
私は無我夢中で走り続けた。
天花寺家の敷地はとても広いから、下手をすると迷子になりかねない。だけど、それでも一向に構わなかった。
殴られたり蹴られたり、暴言を吐かれるのにはもう慣れた。でもお母様との思い出が残るものを、壊されたり奪われるのだけは、どうしても我慢できなかったのだ。
気がつくと私は大豆と小豆と出会った場所に来ていた。きっと二匹に会いたくて無意識だったんだと思う。
辺りを探してみたけれど、残念ながら二匹の姿は見当たらなかった。もしかして自分の住処にいるのかもしれない。
私はがっかりしながら元来た道を戻ろうとしたけれど、屋敷には使用人がたくさんいることを思い出して足が竦む。
真央が無造作に掴んだところを切られたから、私の髪の毛は無惨なことになっていた。そんな姿を人に見られたくなかった私は、屋敷に戻るのをやめて大豆と小豆を探すことにする。
茂みを掻き分けて歩いていると、敷地の端に着いたらしく、大きな塀が見える。私が塀に近づくと、下の方が崩れ、穴が空いていることに気が付いた。
「あれは……」
天花寺家を守る塀に穴が空いているなんて、本来なら決してあってはならないことだ。だけどお母様が亡くなってから、管理する者がいなくなったこともあり、防護の質は以前よりかなり落ちてしまっていた。
「どうしよう……お父様に相談するべき、だよね……」
お母様を亡くしてからすっかり人が変わってしまったお父様でも、屋敷の安全対策が綻びかけていると知れば、流石に何かの対処をしてくれるはず。
そうして、私は仕方なく屋敷に戻ることにした、けれど──
一体何が起こったのか、気が付けば私は、屋敷にある自分の部屋で横になっていた
。
「っ?! 琴葉様!?」
「あっ!! 琴葉様がお目覚めになられたわっ!! ご当主様にお知らせしてっ!!」
「は、はいっ、ただいま!!」
私が目を覚ました途端、周りがざわつき、使用人たちが世話聞く動き出す気配がする。
(……一体、何があったの……? ……──え?)
訳が分からず、とりあえず身体を起こそうとした私の目に、真っ白い絹糸のような物が目に入った。
(なに、これ……っ、え……まさか、私の髪……?)
私は白い糸のようなものを摘んで引っ張ってみた。すると、確かに私の頭に引っ張られた感覚が伝わってくる。
「……嘘……! どうして……っ!!」
いつの間にか髪の毛が真っ白になっていた私は、驚き過ぎて固まってしまう。
すると、襖の向こうからドタドタと数人の足音が聞こえてきた。
「琴葉っ!! この恥さらしがっ!!」
勢いよく襖を開けて入ってきたのは家族の面々で、お父様と義母に双子まで揃っていた。
「まぁ……! 本当に髪が真っ白じゃない……なんて悍ましい……」
私を見た真央が汚いものを見るような目で吐き捨てるように言った。
「そんな姿になっては嫁がせることも出来んではないかっ!! 全く、どうして屋敷の外に出たんだ!!」
「──え?」
お父様の言葉に私の理解が追いつかない。屋敷の外って一体どういうことなんだろう?
「あらあら、覚えていないのかしら? 貴女は十日間も行方不明になっていたのよ?」
「なっ──?! 行方不明?!」
義母の口から出た言葉に私は驚愕する。
どうやら私は十日間もの間、行方不明──神隠しにあっていたらしく、屋敷から離れた夜見ノ森の入口に倒れているところを、村人に発見されたのだそうだ。
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