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プロローグ 1
1 神秘力備わりし神具
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様々な書物に囲まれている小さな部屋で仁王立ちしているあたしの前では整った顔立ちの青年が困惑の表情を浮かべ、幼い容姿の少女があたしを睨みつけている。
「悪いけどね、あたしはあんたの彼氏なんて取るつもりないんだからね。
それに、呼び出したのはあんた達なんだから」
「彼氏なんかじゃないわよ。
相方よ!
ただ、色目を使う女が気にいらないだけよ」
「あたしのどこが色目を――」
「まぁまぁまぁ、二人とも落ち着けって。
オレ達は知恵を借りに来ただけで喧嘩をしたいわけじゃないし、得るものを得たらさっさと帰るつもりだ。
そうだろ、アスナ」
とある事情から霊体になったあたしは、魔導書に括られこじんまりとした書庫が住み家となっている。
それを急に訪れては本を開き、あたしにケンカを吹っ掛けてきたのだ。
そして、そのアスナと呼ばれた少女が青年を見上げ両手を少し広げると、仕方ないと言わんばかりに軽く目を閉じ眉を上げた。
「ルキがそこまで言うなら、ね。
その通りだし。
さっ、お宝はどこにあるのかしら?」
「お宝?
お宝って何よ。
ここにはそんなモノはないわ」
「それは分かってるわよ。
その在りかを教えてって言ってんの。
私達が求めている『魔力を絶ち切る力』ってやつのね」
アスナが言う『力』と呼ばれるお宝ならこんなところに来なくても沢山あるだろうと思考を廻らせていると、ルキと呼ばれた青年が近くのソファに腰を下ろした。
「オレ達には助けたい人がいる。
その為にある国でずっと『力』を探していたのだが、手詰まりになってしまった。
そこで世界に出ることにしたんだが、どうにも強大な魔力を打ち破ることが出来そうな物がなかった。
それでだ、叡智の書庫と言われるこの場所を聞き訪れたって訳さ」
「なるほどね。
理由は分かったけど、魔力を打ち破るには神秘力の宿る物が必要。
でも、そんなのが無かったワケじゃないのよね?」
「その通りさ。
幾つか見つけることは出来た。
しかし、吸収し相殺する器では耐えきれないことが分かり、生半可なことではどうすることも出来ないんだ」
「つまり、えーっと。
魔力を根こそぎぶち破るような物じゃなければ意味がないってことなのね?
その助けたい人ってどんな状態にあるの?」
そこまで理解するとあたしの知り得る物がある程度限定されてくる。
神秘力の備わる物に破壊的な物は少なく、腕輪や首輪など保護する役目が多かったから。
「簡単に言うと魔力の結晶に包まれている状態だ」
「そう。
膨大な魔力の結晶ってワケね。
だとすると、思い当たる節はあるわ」
「それはどんな物だ!?」
あたしの応えに少しばかり食い気味かつ声を張ったルキに驚いたが、大分状況が読めてきた。
「助けたい人ってのはホントなの?
単にお宝目当てで来たとか、そういった類いな――」
「そんなんじゃないっ!
私達だけじゃどうにもならなくて、何年も何年も探して来たのよ。
それをっ!!
貴女にそれを軽視される覚えはないのよ!!」
「あなたじゃないわよ、アテナ!
あたしはアテナ。
別に軽くなんか見てないわ。
ただ、その話が本当かどうかを見極めたかっただけよ。
聞かれたからってすぐ答えを出して悪用されたんじゃ、たまったもんじゃないからね」
「落ち着け、アスナ。
アテナの言う通りだ。
それに、その答えだと彼女自身も正しい心を持っているってことだろ。
オレ達にとっても安心出来る材料さ。
……助けたい人ってのは、オレの姉さんだ。
たった一人の肉親である姉さんを魔力の渦から解放させたい。
それだけの為に今まで旅をしてきた」
アスナを落ち着かせるように、それは自身にも言い聞かせるように、ゆっくりと丁寧にルキは話す。
「そう……肉親、ね。
愛してるのね、お姉さんのこと。
……良いわっ!
教えてあげる。
全ての魔力を絶ち切る神具、煌神刃の話を」
「やはりあったんだな、そんな物が」
「で!?
それはどこにある?」
「まぁまぁ、これから順を追って話してあげるから待ってなさい」
「えっ?
話す?
場所よ、場所!」
急かすアスナにあたしはにんまりと笑みを浮かべた。
「場所は話を聞いたら分かるわよ?
聞かないなら分からないし、どうするかはあんた達次第ってとこね」
二人は輝かせた瞳を曇らせ、お互いの顔を見つめ合い眉間にしわを寄せていた。
「悪いけどね、あたしはあんたの彼氏なんて取るつもりないんだからね。
それに、呼び出したのはあんた達なんだから」
「彼氏なんかじゃないわよ。
相方よ!
ただ、色目を使う女が気にいらないだけよ」
「あたしのどこが色目を――」
「まぁまぁまぁ、二人とも落ち着けって。
オレ達は知恵を借りに来ただけで喧嘩をしたいわけじゃないし、得るものを得たらさっさと帰るつもりだ。
そうだろ、アスナ」
とある事情から霊体になったあたしは、魔導書に括られこじんまりとした書庫が住み家となっている。
それを急に訪れては本を開き、あたしにケンカを吹っ掛けてきたのだ。
そして、そのアスナと呼ばれた少女が青年を見上げ両手を少し広げると、仕方ないと言わんばかりに軽く目を閉じ眉を上げた。
「ルキがそこまで言うなら、ね。
その通りだし。
さっ、お宝はどこにあるのかしら?」
「お宝?
お宝って何よ。
ここにはそんなモノはないわ」
「それは分かってるわよ。
その在りかを教えてって言ってんの。
私達が求めている『魔力を絶ち切る力』ってやつのね」
アスナが言う『力』と呼ばれるお宝ならこんなところに来なくても沢山あるだろうと思考を廻らせていると、ルキと呼ばれた青年が近くのソファに腰を下ろした。
「オレ達には助けたい人がいる。
その為にある国でずっと『力』を探していたのだが、手詰まりになってしまった。
そこで世界に出ることにしたんだが、どうにも強大な魔力を打ち破ることが出来そうな物がなかった。
それでだ、叡智の書庫と言われるこの場所を聞き訪れたって訳さ」
「なるほどね。
理由は分かったけど、魔力を打ち破るには神秘力の宿る物が必要。
でも、そんなのが無かったワケじゃないのよね?」
「その通りさ。
幾つか見つけることは出来た。
しかし、吸収し相殺する器では耐えきれないことが分かり、生半可なことではどうすることも出来ないんだ」
「つまり、えーっと。
魔力を根こそぎぶち破るような物じゃなければ意味がないってことなのね?
その助けたい人ってどんな状態にあるの?」
そこまで理解するとあたしの知り得る物がある程度限定されてくる。
神秘力の備わる物に破壊的な物は少なく、腕輪や首輪など保護する役目が多かったから。
「簡単に言うと魔力の結晶に包まれている状態だ」
「そう。
膨大な魔力の結晶ってワケね。
だとすると、思い当たる節はあるわ」
「それはどんな物だ!?」
あたしの応えに少しばかり食い気味かつ声を張ったルキに驚いたが、大分状況が読めてきた。
「助けたい人ってのはホントなの?
単にお宝目当てで来たとか、そういった類いな――」
「そんなんじゃないっ!
私達だけじゃどうにもならなくて、何年も何年も探して来たのよ。
それをっ!!
貴女にそれを軽視される覚えはないのよ!!」
「あなたじゃないわよ、アテナ!
あたしはアテナ。
別に軽くなんか見てないわ。
ただ、その話が本当かどうかを見極めたかっただけよ。
聞かれたからってすぐ答えを出して悪用されたんじゃ、たまったもんじゃないからね」
「落ち着け、アスナ。
アテナの言う通りだ。
それに、その答えだと彼女自身も正しい心を持っているってことだろ。
オレ達にとっても安心出来る材料さ。
……助けたい人ってのは、オレの姉さんだ。
たった一人の肉親である姉さんを魔力の渦から解放させたい。
それだけの為に今まで旅をしてきた」
アスナを落ち着かせるように、それは自身にも言い聞かせるように、ゆっくりと丁寧にルキは話す。
「そう……肉親、ね。
愛してるのね、お姉さんのこと。
……良いわっ!
教えてあげる。
全ての魔力を絶ち切る神具、煌神刃の話を」
「やはりあったんだな、そんな物が」
「で!?
それはどこにある?」
「まぁまぁ、これから順を追って話してあげるから待ってなさい」
「えっ?
話す?
場所よ、場所!」
急かすアスナにあたしはにんまりと笑みを浮かべた。
「場所は話を聞いたら分かるわよ?
聞かないなら分からないし、どうするかはあんた達次第ってとこね」
二人は輝かせた瞳を曇らせ、お互いの顔を見つめ合い眉間にしわを寄せていた。
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