自称!!美少女剣士の異世界探求 2

七海玲也

文字の大きさ
5 / 70
第一章 港町グラード

episode 03 取引

しおりを挟む
カルディアについて行った先は街の真ん中であろう場所に、他とは違い整われた外観の建物があった。
 街を治める者の住まう場所と疑いのない立派な屋敷に入ると、石畳が敷き詰められた広間ホールに二階へと続く大袈裟な階段が据えられていた。

「ここで待て」

 階段の目の前でカルディアは止まると、手摺てすにある幻竜ドラゴンの尾を押し込んだ。
 すると、甲高い音の後に足元の大きな石畳が階段の下へと潜り込み、階下への新たな道をあらわにする。

「仕掛けがあったのね」

「凄いですね、お嬢様」

「さぁ、こっちだ」

 驚くあたし達を見向きもせずにカルディアは足早に降りていく。
 遅れまいと続き階段を降りると、途中で石の擦り合う音と一つ大きな音がして薄明かりの階下へと辿り着いた。

「勝手に閉まったみたいだけど大丈夫なの?」

「こちら側にも仕掛けはある。
 尾が戻ると勝手に閉まるのさ。
 さぁここだ、寛いでくれ」

 幾つかの扉と角を過ぎた部屋の中は世に言う財宝がところ狭しと並べられ、地下の部屋を忘れさせるだけ明るさがあった。

「光り物が多くて眩しいくらいね。
 この毛皮のソファなんて中々見ることなんてないわ」

「そいつは魔獣の毛皮を剥いだもんだからな、そうそうお目にはかかれないだろうね。
 さ、そいつに座って。
 何か飲もうかいーーっても酒は飲めるのかい?」

「飲めなくはないけど今は遠慮しとくわ。
 ミーニャは飲めないし」

「そうかい?
 だったらそうだね……」

 部屋の奥にある立派な机に腰掛けていたカルディアは身を翻すと、その後ろにある棚から瓶を選び出した。

「こいつくらいしかないか。
 ーーほら、いくよっ!」

 そこまで大きくもない瓶だが放って渡すとは思ってもみず、慌てて立ち上がり体で受け止めた。

「っつぅ!
 いきなり放らないでよね」

「あっはっはっはっ!
 海賊ってのはこんなもんさ。
 落としたヤツが悪い、飲めなくなるのは自分なんだからな」

「それは一理あるけどさ。
 で、これは?」

「何かの果汁さ。
 普段は酒に混ぜたりするが、そのままでも飲めるもんさね。
 ま、飲んでみな。
 毒はないからな」

 言われて口を付けないのも礼儀に反すると、あたしとミーニャは一口ずつ嗜んだ。

「中々美味しいわ。
 あたしは好きな味ね」

「そうかい、そうかい!
 そいつは良かった。
 酒以外じゃ今はそれしかないからね」

 と、自身は手に取った瓶を喉を鳴らしながら上へと向けていた。

「ふはぁ。
 で?
 話ってのはなんだい?
 そいつを聞きに来たんだろ?」

「そうよ。
 単刀直入に言うと、あたし達は人を捜しているの。
 で、その人がこの近くを通ったって話をきいたから何か知ってるんじゃないかってね」

「ほうほう。
 あまりここに来るヤツはいないから、ここ数年の話なら覚えてるよ」

「だったら赤髪の女剣士で、アリシアって名前の人は知らない?」

 容姿を話すと机の上で足と手を組み、細目で視線を落とした。

「そうね、それと四・五人と一緒にいたと思うのだけど……」

「そいつは長い髪で、えらい美人なやつかい?」

「そうよ!
 そうそう!!」

 あたしはあまりの喜びに立ち上がり、人差し指を立てながら反応していた。

「あぁ、あいつらか。
 知ってはいるな、この街に来たからな」

「それでそれで!?
 どこに行ったか分かる!?」

 カルディアはゆっくりと机を降りお尻でもたれる様に立つと、あたし達に向かい嫌な笑顔を見せた。

「そいつを知ってどうする?
 それに私らは海賊だ。
 殺しちまったかも知れないし、今も街にいるかも知れない。
 どうしたか知りたいなら取引でもしようかい?」

「取引!?」

 まさか人を尋ねただけで取引を要求されるとは思ってもいず、声まで裏返って驚いた。

「それはそうだろ?
 あんたらは欲しい情報だが、私らには教えても得がないかも知れない。
 だったらお互いに得をする道を選ぶのがいいんじゃないのかい?」

「いや、まぁ、そりゃそうだけど。
 人の行方を尋ねただけよ?
 たったそれだけのことで取引ってどうなのよ」

「言っただろ?
 海賊だって。
 私らは常に追われる身で命を狙われる身でもあるのさ。
 それを無償で人助けなんてすると思うかい?
 簡単に人を信じて裏切られてきた海賊どもが、おいそれと人を信じれると思わないことだね」

「だったら何でこんなところに招いたのさ」

「そいつは私が気に入った。
 ただそれだけのことさ、信じてるとは思わないこったね。
 何せレディと一緒にいるなら尚更ってもんよ」

 そういえば何か因縁めいたものがあったのだった。

「だったら、どうしたら教えてくれる?」

「そうさね。
 ここから海を少しばかり行ったところにお宝があるらしいんだがね。
 そいつを手に入れるにはちょいと手間でね。
 そこでアテナ、というよりレディの力を借りたいところなんだがね。
 勿論、アテナにも役には立ってもらいたいが。
 どうだい?
 海賊の手伝いってことになるがさ」

 海賊の手伝いと聞きあまり良い気がしないが、お姉様の行方を知っているかもとなれば手伝うしかないように思える。
 どうにも手放しで喜べるという日は来ないのかと、若干呆れ気味にもなってしまうが。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...