7 / 70
第一章 港町グラード
episode 05 深まる謎
しおりを挟む
各々が飲み物を口にしながらカルディアからの取引内容を耳にしている。
あたしは短い話なので纏めることもせずそのままを聞かせていた。
「って感じだったのよね」
「するってぇと、あいつはあたいの力が必要ってことなんだね」
「あたしよりもレディが必要ってことは、経験か剣技が欲しいってことだと思ったわ」
「そいつは多分両方だろうさ。
宝は欲しいが厄介ってことはそういうことだろうね」
いまいちピンとこないあたしにレディは続けて話した。
「もしかすると魔者か罠、その両方があるかも知れないってことさ。
宝を護る何かがあるんだろ」
「そういうことね。
だったらどうする?」
「あたいには断る権利は無さそうだよ。
返しきれない借りを作っちまったんだからね。
それに、アテナの力にもなるなら断る理由はないさ」
「まさか、そこまで分かった上で取引ってワケじゃないでしょ?」
「どうだかね。
彼女は頭も切れる傭兵だったんだ。
断れないと踏んでいても不思議じゃないさ」
「そう。
なら、いいのね?」
「あぁ、構わないさ」
これで決まりだ。
あたしは酒場のマスターに取引は行う旨をカルディアへ伝えてくれと頼み、ついでに料理も注文しておいた。
「さてと、これからすべきことも決まったし腹ごしらえでもしようかしらね」
「そうですね、お嬢様」
「アテナ、あたいとカルディアの話はしなくてもいいのかい?」
「へ?
別にしたければ聞くし、したくなければ気にしないわよ。
過去に何かあるのは誰だってそうでしょうに。
それを聞いたところでってことよ。
それよりも今と明日が大切なんだもの」
「はっはっはっはっ!
アテナらしいね。
そういうとこが気に入ってんだよ、あたいは」
「あら、ありがと。
話さなきゃならないときに話してくれたらそれで充分。
今は過去の話は大事じゃないからね。
さてさて、料理も来たし食べるわよっ!」
運ばれて来た料理を頬張りミーニャとレディに目を向ける。
ミーニャはいたって普通に食事に手を伸ばしていたが、レディはどこかいつもと様子が変だった。
「どうかしたの?
冷めちゃうわよ?」
「いや、ちょっと気にかかってね。
……ほら、アテナの力も必要だって言ってってたんだろ?」
「ほーよ、ほえらなにかした?」
「剣技や知識が必要だってなるなら、初めて会った相手にそれを求められないんじゃないかってね」
「どうして?」
「そりゃあさ、どれだけの技量や知識があるかなんて分からないだろう。
それなのにってことさ」
「あたしが強そうに見えたとか?」
「いくら強そうに見えたって女子だろ?
ここには屈強な男達が沢山いるんだ。
その中に小さな女の子が一人増えたところで大したことはないだろ」
「ま、確かに。
だったらお世辞なんじゃないかしら?
レディに頼みたいけど、あの場にいたあたし達を無下には出来ないって。
あたしの存在を無視出来ないのは分かってたはずよ」
「あっはっはっ!
確かにそんなことしたら喰ってかかられるのは分かってたとは思うがね。
だとしても、彼女がそれだけの理由でってことの方が考えにくいな」
「だったら簡単なことよ。
あたし達は万全の準備をして望む。
何も分からない以上はそうしてその時に対処するしかないわ。
……ってことで、さっさと食べて準備だけはしておきましょ」
それから食事を済ませると宿へと向かい、お呼びがかかるまで入念に準備を済ませることになった。
あたしは短い話なので纏めることもせずそのままを聞かせていた。
「って感じだったのよね」
「するってぇと、あいつはあたいの力が必要ってことなんだね」
「あたしよりもレディが必要ってことは、経験か剣技が欲しいってことだと思ったわ」
「そいつは多分両方だろうさ。
宝は欲しいが厄介ってことはそういうことだろうね」
いまいちピンとこないあたしにレディは続けて話した。
「もしかすると魔者か罠、その両方があるかも知れないってことさ。
宝を護る何かがあるんだろ」
「そういうことね。
だったらどうする?」
「あたいには断る権利は無さそうだよ。
返しきれない借りを作っちまったんだからね。
それに、アテナの力にもなるなら断る理由はないさ」
「まさか、そこまで分かった上で取引ってワケじゃないでしょ?」
「どうだかね。
彼女は頭も切れる傭兵だったんだ。
断れないと踏んでいても不思議じゃないさ」
「そう。
なら、いいのね?」
「あぁ、構わないさ」
これで決まりだ。
あたしは酒場のマスターに取引は行う旨をカルディアへ伝えてくれと頼み、ついでに料理も注文しておいた。
「さてと、これからすべきことも決まったし腹ごしらえでもしようかしらね」
「そうですね、お嬢様」
「アテナ、あたいとカルディアの話はしなくてもいいのかい?」
「へ?
別にしたければ聞くし、したくなければ気にしないわよ。
過去に何かあるのは誰だってそうでしょうに。
それを聞いたところでってことよ。
それよりも今と明日が大切なんだもの」
「はっはっはっはっ!
アテナらしいね。
そういうとこが気に入ってんだよ、あたいは」
「あら、ありがと。
話さなきゃならないときに話してくれたらそれで充分。
今は過去の話は大事じゃないからね。
さてさて、料理も来たし食べるわよっ!」
運ばれて来た料理を頬張りミーニャとレディに目を向ける。
ミーニャはいたって普通に食事に手を伸ばしていたが、レディはどこかいつもと様子が変だった。
「どうかしたの?
冷めちゃうわよ?」
「いや、ちょっと気にかかってね。
……ほら、アテナの力も必要だって言ってってたんだろ?」
「ほーよ、ほえらなにかした?」
「剣技や知識が必要だってなるなら、初めて会った相手にそれを求められないんじゃないかってね」
「どうして?」
「そりゃあさ、どれだけの技量や知識があるかなんて分からないだろう。
それなのにってことさ」
「あたしが強そうに見えたとか?」
「いくら強そうに見えたって女子だろ?
ここには屈強な男達が沢山いるんだ。
その中に小さな女の子が一人増えたところで大したことはないだろ」
「ま、確かに。
だったらお世辞なんじゃないかしら?
レディに頼みたいけど、あの場にいたあたし達を無下には出来ないって。
あたしの存在を無視出来ないのは分かってたはずよ」
「あっはっはっ!
確かにそんなことしたら喰ってかかられるのは分かってたとは思うがね。
だとしても、彼女がそれだけの理由でってことの方が考えにくいな」
「だったら簡単なことよ。
あたし達は万全の準備をして望む。
何も分からない以上はそうしてその時に対処するしかないわ。
……ってことで、さっさと食べて準備だけはしておきましょ」
それから食事を済ませると宿へと向かい、お呼びがかかるまで入念に準備を済ませることになった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる