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第三章 解き放ち神具

episode 33 結婚前提

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 驚愕しているあたし達を楽しんでいるかのように、笑みを絶やすことなくファルは話を続けた。

「そう、私が緑の賢者と呼ばれている者だよ。
 とは言っても自慢する気もないから、生きていることをおおやけに晒したくはないがね。
 それと不老不死とは言ったものの、肉体が若返っただけで手段を止めると普通に年は取ることになるし、肉体に多大な損傷を受けると死ぬことにはなる」

「え、えぇと、そ、そうなんだ……」

 頭が混乱しているのか話が中々入ってこないが、ゆっくり整理するとある手段を用いて肉体を若返えらせているだけだと。

「そんなことが可能だったのね。
 どうやったの?」

「それは秘密さ。
 ただし、簡単に説明すると神秘力カムナを極限まで高めた上で反発する魔力マナをぶつけ吸収するといったところかな。
 単なる研究の一環で自身を用いた人体実験をしたまでなんだが、結果としてこうなってしまったというわけさ」

「要するに簡単に出来ることじゃないし、お薦めは出来ないってことね」

「そういうこと。
 たまたま子供の肉体で収まったから良かったものの、下手をすると胎児にまで戻りやがて消滅しても不思議ではないからね。
 完全な理解が出来る者でなければやらないほうがいいだろうな」

「他の人達も同じような不老不死なわけ?」

「いや。
 これは私だけで他の者は違う。
 私の友である五人の英雄の一人は神の#咎__とが__「を受け不老不死にさせられた、真の不老不死と言える存在であるからな」

「それはもしや、最後の一人である業を背負った者では?」

「レディだったね、貴女はよく知り物事を見極める力があるようだ。
 その通りだよ。
 神に反逆し、人の行く末まで見守り続けさせられることになったのだから。
 その話はまた別の機会で知るといいさ。
 それで、私に何の用があってきたのかな?」

 その言葉で我に返ったかのように何の為に来たのかを思い出した。

「そうよ、そうよ!
 あまりの出来事に目的を忘れるところだったじゃない。
 あたし達はある武器を探しているの。
 それがね、あった場所から持ち去られていたんだけど、どこにいったのか世界を見渡せるなら何か知ってるんじゃないかって」

「ほう、なるほどね。
 もしかしたら心当たりはあるかも知れないね。
 だとしたら、それを知ってどうするんだい?」

「それを使って魔人を倒すのよ。
 その為に探しているんだもの」

「魔人を倒す武器、か。
 ただの魔人であれば魔力か神秘力が備わってさえいれば難しいことではないが……。
 もしや、復活した魔人王を滅ぼす程の武器ってことかな?」

「知っているのね!?」

 ここまで来てようやく手掛かりが見つかったと、テーブルから身を乗り出してしまった。

「そういうことか。
 それでライズを救い此処ここへ来たと。
 では、それを滅ぼしたら結婚するのかな?」

 一瞬、聞き間違えたのか耳を疑ったのだが、目の前の男の子は穏やかな表情のまま何も変わりはなかった。

「んんと、今、何て言ったのかしら?」

「魔人王を滅ぼしたら結婚するのかと聞いたのだが?」

「ん?
 結婚?
 誰が誰と?」

「え?
 アテナとライズとだが?
 違うのか?」

 どうやら聞き間違えてはなかったようだが、全く意味が分からずファルとライズを交互に何度か見ると、ライズは明後日の方を向き出した。

「あたしがライズと!!?
 一体いつからそうなったのよ!?
 はぁ!!?
 結婚???
 あたしが!?」

「しないのか?
 では、いつ?」

「いつもへったくれもないわよ!!
 結婚するなんて、はぁぁぁぁ!!?
 ちょっと待って!」

 頭の整理をつけようとミーニャとレディも見るが、一人は口を抑えて驚きを隠そうとしているし、もう一人も口を抑えてはいるが目が既に笑っている。
 と、ライズをもう一度見るとあることに気がついた。

「あーーーー!!
 もしかして、あんた!
 さっき口ごもったのってこれのことでしょ!?」

「あっ、いや、まぁ、オレの中ではそうなり--」

「そうなりたいとかなるとか聞いてるんじゃないわよ!!
 そう、そういうつもりで連れて来たのね!?
 ファル!
 言っとくけど、あたしはライズと結婚はしないからね。
 どういう紹介を受けたかはしらないけど、結婚はしないしそれで来たわけじゃないんだから」

 あたしが眠っている間におかしな説明をしたライズ。
 彼に怒っているのではないが、否定だけはしておきたく言葉が荒くなる。

「そ、そうか。
 ならば、ライズの思い違いというわけか。
 残念だな」

 悲しそうな顔を見せるファルにあたしは少し戸惑った。

「思い違いも何も……。
 彼は良い男だし、悪いとこはないと思うけど。
 違うのよ、あたしは結婚とか。
 それに出会ったのは数日前なんだから」

「では、もしかしたら時が経てばそれも有り得ると?」

「いやいやいやいや、そ、そうじゃなく。
 恋心も抱いてないのに結婚もくそもないでしょって話で」

「しかしな、時が経てば恋心が芽生えるかも知れないではないのか?」

 上手く返したつもりがそれの上を行かれている気がして、あたしの返す言葉が徐々に削がれていく。
 このままでいくと、あたしは結婚の約束をさせられてしまうと内心焦りが見え始めていた。
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