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第三章 解き放ち神具
episode 38 友、そして仲間
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「暑い……暑いわ……。
海風は気持ち良いのに……何でこんなに暑いのよ……」
砂漠の地を求めてから四日。
前日まで大したことなかったのに近くまで来たとの報告があった途端、熱気に包まれている様な暑さを感じていた。
「この暑さが砂漠の大陸の由縁さ。
草木は枯れ、大地を潤す水でさえ奪われていく。
日差しで暑いのとは違うんだよ、何故かは知らないがね」
「レディは平気なの?
涼しい顔してるけどさ。
ミーニャなんて見てごらんなさいよ、縁から顔も手も出してるわ」
「暑くないわけはないさ。
だから部屋に居ずにこうして甲板に出できたんだろ。
それに、動いている皆にも気を使わなければならないしな」
「それはそれで大変な話よね。
どうするの?
準備ってどうなってるのか知らないんだけど」
毎日慌ただしく動いていた海賊は知っていたが外観の見た目は綺麗になった程度でさほど変わっていないように見え、準備が出来たのか途中なのか全く把握しきれていなかった。
「粗方終わってはいるよ。
あとは服さえ着替えりゃあね」
「服なんてあるの?」
「そりゃあこの船はただの海賊船じゃないからね。
表向きは国に属してるってことを忘れちゃならないよ」
「あぁ!
そうだったわね。
すると港街にでもすんなり行けるのね」
「それなりのところにはってことだね。
王都なりにあまり近いと検閲が厳しかったりするから近寄らないのが無難なだけさ」
「物知りね、レディは。
だったら後、どのくらいで陸に立てるのかしら?」
「実際のところは舵を切れば直ぐにでも陸が見えるが、もう少し先の街に日が沈む頃に着くようにしてあるよ」
暗くなるとそれだけ怪しまれるが薄暗いとそれも半減になり、更に詮索もずさんになりがちなのだと付け加えると、あたしには及ばなかった考えに感嘆の声を上げるしかなかった。
「そしたらその後のことも考えてはいるんでしょ?」
「まぁね。
あたいらは理由あって乗せてもらった旅人を装い、交易偽装のことは海賊に任せてある。
それでだ。
あたいらは宿に泊まるんだが、酒場に行ってみようかと思っているよ」
「ま、そうなるわよね。
なんたって道が見えてないんだから誰かに聞くしかないのよね。
なんだっけ?
王が還る場所だっけ?」
「聖なる王がと言っていたね。
普通に考えたら王都とか私室ってことになるが……。
そもそも渇いた大地が向かう先なのかも疑問ではあるんだよ」
「そこは合ってるんじゃないの?
草木も水も枯れてるんじゃぁさ。
いくらなんでも手助けしようと思った人が全部が全部難しくするとは思えないけどね」
「そういう捉え方もあるね。
行き先は示してあとは手掛かりを元に考えろと。
確かに…ファルの物言いであればそれが正しいかも知れないな。
だとしたら還る場所とは城やその類いではないどこかってことになりそうだね」
「なるほどね。
そうなると、わざわざ危険な場所に飛び込んでいく必要はなさそうね」
「はっはっはっ。
そいつはどうだかね。
王城よりもっと危険だったりしてね」
「ふふふ。
いやよ、もう。
数日前は本当に死にかけたんだから。
魔獣とかそんなのも願い下げだわ」
くぐり抜けたからこそ笑い話にしてあるが、ぶっちゃけ大毒蛇や戦蟻なんて気持ち悪いことこの上なかったし、喰人植物なんてもっと気持ち悪かった。
それならまだ人の形をした二足歩行の魔者のほうが正面切って戦えると最近自覚し始めている。
「はっはっはっ。
まだまだアテナには剣技を教える必要があるようだね。
それじゃあ昼飯にでもして稽古をつけてやるか」
「稽古は良いんだけど、そういう意味じゃないのよね」
小さく呟いた言葉は風に攫われレディの耳には届かなかったようだ。
「おい!
お前らも適当に飯にでもしてくれ」
海賊達に叫ぶと返事と共に半数が甲板から姿を消していく。
それを頷きながら見送ったレディはミーニャの隣で同じように顔を出した。
「海ってのも悪くないね。
そう思わないかい?
ミーニャ」
「そうですか?
私は陸の方が楽しいです。
見たことのないものを見て、触ったことのないものに触れ、毎日が新鮮でした。
でも海はどこまで行っても海ですから」
「ははっ。
確かにね。
だからこそ自由だと思えてしまう時もある。
ミーニャはアテナに救われたんだろ?」
「はい。
奴隷として同じ場所にずっといました。
でも、お嬢様と一緒にいるのは恩とかじゃなく本当に楽しいからですよ」
「見てて分かるよ。
時折、羨ましく思うからね」
「カルディアさんともそういう仲だったんですか?」
「……いや、あいつとは友というより仲間意識の方が強かったのかもね。
あたいは騎士であいつは傭兵。
どこかでそんな線引きがあったから今があるんだとあんたらを見ていて思っているんだ」
「でも、そんな過去があったから私達は出会えたんだと思いますけど……。
それじゃあダメですか?」
「ふふっ。
そういうんじゃないよ。
過去も今も否定してるわけじゃないがね、ふと思っちまうのさ。
見たことのない明日をね」
距離を置き黙って聞いていたが居ても立っても居られなくなった。
「だったら!!
あたしが見せてあげるわっ!
その、見たことのない明日ってのをね」
「…………。
ふふっ、ふはははは」
「何よ、何か変なこと言った?」
「いや、ふふっ。
そうだったなってね。
あんたといて見たことのない明日をいつも見せてもらっていたことに気がついたよ」
「あら?
そうだったの?
まだこれからなんだけど、見せるのは」
「それじゃあ遠慮なく見せてもらおうかな。
あたいが想像し得なかった明日を」
「モチロンよ!
さっ、ご飯も来た事だし食べて稽古でもつけてよねっ」
湿っぽい話は苦手ではあるが、何よりもミーニャとレディには笑っていて欲しい、そう自然に思えているからこそあたしは二人を友だと呼んでいる。
仲間ではなく、友だと。
海風は気持ち良いのに……何でこんなに暑いのよ……」
砂漠の地を求めてから四日。
前日まで大したことなかったのに近くまで来たとの報告があった途端、熱気に包まれている様な暑さを感じていた。
「この暑さが砂漠の大陸の由縁さ。
草木は枯れ、大地を潤す水でさえ奪われていく。
日差しで暑いのとは違うんだよ、何故かは知らないがね」
「レディは平気なの?
涼しい顔してるけどさ。
ミーニャなんて見てごらんなさいよ、縁から顔も手も出してるわ」
「暑くないわけはないさ。
だから部屋に居ずにこうして甲板に出できたんだろ。
それに、動いている皆にも気を使わなければならないしな」
「それはそれで大変な話よね。
どうするの?
準備ってどうなってるのか知らないんだけど」
毎日慌ただしく動いていた海賊は知っていたが外観の見た目は綺麗になった程度でさほど変わっていないように見え、準備が出来たのか途中なのか全く把握しきれていなかった。
「粗方終わってはいるよ。
あとは服さえ着替えりゃあね」
「服なんてあるの?」
「そりゃあこの船はただの海賊船じゃないからね。
表向きは国に属してるってことを忘れちゃならないよ」
「あぁ!
そうだったわね。
すると港街にでもすんなり行けるのね」
「それなりのところにはってことだね。
王都なりにあまり近いと検閲が厳しかったりするから近寄らないのが無難なだけさ」
「物知りね、レディは。
だったら後、どのくらいで陸に立てるのかしら?」
「実際のところは舵を切れば直ぐにでも陸が見えるが、もう少し先の街に日が沈む頃に着くようにしてあるよ」
暗くなるとそれだけ怪しまれるが薄暗いとそれも半減になり、更に詮索もずさんになりがちなのだと付け加えると、あたしには及ばなかった考えに感嘆の声を上げるしかなかった。
「そしたらその後のことも考えてはいるんでしょ?」
「まぁね。
あたいらは理由あって乗せてもらった旅人を装い、交易偽装のことは海賊に任せてある。
それでだ。
あたいらは宿に泊まるんだが、酒場に行ってみようかと思っているよ」
「ま、そうなるわよね。
なんたって道が見えてないんだから誰かに聞くしかないのよね。
なんだっけ?
王が還る場所だっけ?」
「聖なる王がと言っていたね。
普通に考えたら王都とか私室ってことになるが……。
そもそも渇いた大地が向かう先なのかも疑問ではあるんだよ」
「そこは合ってるんじゃないの?
草木も水も枯れてるんじゃぁさ。
いくらなんでも手助けしようと思った人が全部が全部難しくするとは思えないけどね」
「そういう捉え方もあるね。
行き先は示してあとは手掛かりを元に考えろと。
確かに…ファルの物言いであればそれが正しいかも知れないな。
だとしたら還る場所とは城やその類いではないどこかってことになりそうだね」
「なるほどね。
そうなると、わざわざ危険な場所に飛び込んでいく必要はなさそうね」
「はっはっはっ。
そいつはどうだかね。
王城よりもっと危険だったりしてね」
「ふふふ。
いやよ、もう。
数日前は本当に死にかけたんだから。
魔獣とかそんなのも願い下げだわ」
くぐり抜けたからこそ笑い話にしてあるが、ぶっちゃけ大毒蛇や戦蟻なんて気持ち悪いことこの上なかったし、喰人植物なんてもっと気持ち悪かった。
それならまだ人の形をした二足歩行の魔者のほうが正面切って戦えると最近自覚し始めている。
「はっはっはっ。
まだまだアテナには剣技を教える必要があるようだね。
それじゃあ昼飯にでもして稽古をつけてやるか」
「稽古は良いんだけど、そういう意味じゃないのよね」
小さく呟いた言葉は風に攫われレディの耳には届かなかったようだ。
「おい!
お前らも適当に飯にでもしてくれ」
海賊達に叫ぶと返事と共に半数が甲板から姿を消していく。
それを頷きながら見送ったレディはミーニャの隣で同じように顔を出した。
「海ってのも悪くないね。
そう思わないかい?
ミーニャ」
「そうですか?
私は陸の方が楽しいです。
見たことのないものを見て、触ったことのないものに触れ、毎日が新鮮でした。
でも海はどこまで行っても海ですから」
「ははっ。
確かにね。
だからこそ自由だと思えてしまう時もある。
ミーニャはアテナに救われたんだろ?」
「はい。
奴隷として同じ場所にずっといました。
でも、お嬢様と一緒にいるのは恩とかじゃなく本当に楽しいからですよ」
「見てて分かるよ。
時折、羨ましく思うからね」
「カルディアさんともそういう仲だったんですか?」
「……いや、あいつとは友というより仲間意識の方が強かったのかもね。
あたいは騎士であいつは傭兵。
どこかでそんな線引きがあったから今があるんだとあんたらを見ていて思っているんだ」
「でも、そんな過去があったから私達は出会えたんだと思いますけど……。
それじゃあダメですか?」
「ふふっ。
そういうんじゃないよ。
過去も今も否定してるわけじゃないがね、ふと思っちまうのさ。
見たことのない明日をね」
距離を置き黙って聞いていたが居ても立っても居られなくなった。
「だったら!!
あたしが見せてあげるわっ!
その、見たことのない明日ってのをね」
「…………。
ふふっ、ふはははは」
「何よ、何か変なこと言った?」
「いや、ふふっ。
そうだったなってね。
あんたといて見たことのない明日をいつも見せてもらっていたことに気がついたよ」
「あら?
そうだったの?
まだこれからなんだけど、見せるのは」
「それじゃあ遠慮なく見せてもらおうかな。
あたいが想像し得なかった明日を」
「モチロンよ!
さっ、ご飯も来た事だし食べて稽古でもつけてよねっ」
湿っぽい話は苦手ではあるが、何よりもミーニャとレディには笑っていて欲しい、そう自然に思えているからこそあたしは二人を友だと呼んでいる。
仲間ではなく、友だと。
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