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第三章 解き放ち神具
episode 39 砂漠の民
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予定通りに明かりの灯った港へ着くと何事もなく検閲を通過し、宿を兼ね備えた酒場『エラハイブの花』を見つけることが出来た。
「だいぶ賑わってるみたいね」
「飲み物、食べ物が揃っているなんて中々ないみたいだからな。
港街って利点を生かしてるんだろ。
とりあえず何か口に入れとくかい?」
「そうね、せっかくだし」
外まで聞こえる喧騒の中、ゆっくりと両開きの扉を開き店主のところまで足を向けた。
「ねぇ、宿は空いてる?
それと何か食べるものが欲しいんだけど」
「おぅ?
旅の者か。
空いてるよ、何部屋使いたいんだい?」
浅黒い肌に蓄えた口髭になんとも近寄りがたい印象を受けるが、話し方は至って気さくに思えた。
「一部屋で良いわよ、一部屋で。
そんな何部屋も借りたって仕方ないわよ」
「今日は特別サービスなんだい。
一人一部屋でもお代は戴かないよ」
「どういうこと?」
意味が分からず怪訝な顔をしていると、店主は店の端を指差した。
「あそこにいる兄ちゃんがよ、賞金を得たとかで今日は全て奢りだって、こいつを寄越してきたもんだからな」
店主のすぐ後ろの棚の下に大きな袋があり、床には数枚貨幣が散らばっている。
「随分と太っ腹なのね。
だったら遠慮なく大きめの部屋を一つ借りるわ。
それと、飲み物と食べ物も一通り戴くわね」
「あいよ。
たんまりと食べてゆっくりしていきな」
店主から部屋を教えてもらい、料理をテーブルまでお願いするとレディがあたしの肩に手を乗せた。
「どう思う?」
「どうって?
賞金の話?」
「そうさ。
いくらなんでもあの量じゃ全て渡しているってもんだ。
それに店主の口振りからだと知り合いってわけでもなさそうだし、渡す理由が分からないね。
ただ、あの身なりは冒険者って感じじゃあない。
寧ろ砂漠の民そのものさ」
「ふぅん。
言われると怪しいけど、あたし達には関係ないんじゃない?
奢ってくれたお礼くらいは言っても良いと思うけど」
「そうじゃないさ。
この地を生業にしてるなら何かしらの情報源にでもなるんじゃないかってね」
そこまで言われてレディの言いたいことが伝わると、納得して早速声をかけに近づいてみた。
「なんだ?
礼になら及ばない」
「あら、そう?
でもそれじゃあ気持ち悪いから。
ありがと、このお店を堪能させてもらうわ。
でね、あの賞金はどうしたの?」
「別にお前らには関係ないだろ?」
網の目が荒い薄い服を数枚羽織り、頭には白い布を被せている青年はこっちをまるで見ようともせず、空いてる一席に視線を向けたまま無感情のままに言葉を放っている。
「その服装からするに、砂漠の民みたいだけど?」
「だからどうした?
ここは砂漠の地、オレらがいて当然だろう」
「それはそうね。
ただ、それを聞きたかったのよ。
ちょっと教えて欲しいことがあってね」
「この店にいる大半は砂漠の民だ。
他を当たりな」
あたしの中で沸々と赤黒い何かが滾ってくる。
「それも悪くはないんだけど。
何の賞金かは知らないけど、それを手にする程の実力があるなら色んなことを知ってるんじゃないかってね」
「……。
だからと言って教える義理もないな」
赤黒い何かが一つ、また一つと割れていく感覚。
「あー、だったらあたし達に出来ることをしてあげるから少し話を聞いてくれないかしら?」
「ふん。
だったら全部脱いで踊ることでもしたらどうだ」
我慢が限界に到達した。
「はぁ!?
話を聞くくらいどうってことないでしょ!?
それを最初から邪険に扱うってどういうつもりよ!
こっちくらい見て口でも開きなさいよっ!!」
言い終えると同時に椅子の脚を蹴ると、彼は立ち上がり体を反転させたと見えた瞬間、あたしの首元で甲高い音を響かせた。
「えっ!?」
彼の腕はあたしの首を目掛け伸び、その手には曲がった剣が握られている。
その先を目だけで追いかけるとレディの鞘が彼の剣を止めていた。
「危ないことするんじゃないよ、あんた」
「オレの捌きを止めたのか」
「剣を抜いてる暇はなかったがね」
鋭い眼光の青年は驚いている様子だったが、あまり感情が伝わってこなかった。
そして、その音のせいで酒場には静寂が訪れ……たはずだった。
「あーーーー!
何を騒ぎ起こしてんのよ!!
って誰も騒いでないけど、これを騒ぎと言わず何を騒ぎというのか」
声の方を振り返ると静かになった酒場で一人女性が駆け寄ってくる。
どうやら空いていた席の主のようなのだが、これまた一癖もありそうな物言いだった。
「だいぶ賑わってるみたいね」
「飲み物、食べ物が揃っているなんて中々ないみたいだからな。
港街って利点を生かしてるんだろ。
とりあえず何か口に入れとくかい?」
「そうね、せっかくだし」
外まで聞こえる喧騒の中、ゆっくりと両開きの扉を開き店主のところまで足を向けた。
「ねぇ、宿は空いてる?
それと何か食べるものが欲しいんだけど」
「おぅ?
旅の者か。
空いてるよ、何部屋使いたいんだい?」
浅黒い肌に蓄えた口髭になんとも近寄りがたい印象を受けるが、話し方は至って気さくに思えた。
「一部屋で良いわよ、一部屋で。
そんな何部屋も借りたって仕方ないわよ」
「今日は特別サービスなんだい。
一人一部屋でもお代は戴かないよ」
「どういうこと?」
意味が分からず怪訝な顔をしていると、店主は店の端を指差した。
「あそこにいる兄ちゃんがよ、賞金を得たとかで今日は全て奢りだって、こいつを寄越してきたもんだからな」
店主のすぐ後ろの棚の下に大きな袋があり、床には数枚貨幣が散らばっている。
「随分と太っ腹なのね。
だったら遠慮なく大きめの部屋を一つ借りるわ。
それと、飲み物と食べ物も一通り戴くわね」
「あいよ。
たんまりと食べてゆっくりしていきな」
店主から部屋を教えてもらい、料理をテーブルまでお願いするとレディがあたしの肩に手を乗せた。
「どう思う?」
「どうって?
賞金の話?」
「そうさ。
いくらなんでもあの量じゃ全て渡しているってもんだ。
それに店主の口振りからだと知り合いってわけでもなさそうだし、渡す理由が分からないね。
ただ、あの身なりは冒険者って感じじゃあない。
寧ろ砂漠の民そのものさ」
「ふぅん。
言われると怪しいけど、あたし達には関係ないんじゃない?
奢ってくれたお礼くらいは言っても良いと思うけど」
「そうじゃないさ。
この地を生業にしてるなら何かしらの情報源にでもなるんじゃないかってね」
そこまで言われてレディの言いたいことが伝わると、納得して早速声をかけに近づいてみた。
「なんだ?
礼になら及ばない」
「あら、そう?
でもそれじゃあ気持ち悪いから。
ありがと、このお店を堪能させてもらうわ。
でね、あの賞金はどうしたの?」
「別にお前らには関係ないだろ?」
網の目が荒い薄い服を数枚羽織り、頭には白い布を被せている青年はこっちをまるで見ようともせず、空いてる一席に視線を向けたまま無感情のままに言葉を放っている。
「その服装からするに、砂漠の民みたいだけど?」
「だからどうした?
ここは砂漠の地、オレらがいて当然だろう」
「それはそうね。
ただ、それを聞きたかったのよ。
ちょっと教えて欲しいことがあってね」
「この店にいる大半は砂漠の民だ。
他を当たりな」
あたしの中で沸々と赤黒い何かが滾ってくる。
「それも悪くはないんだけど。
何の賞金かは知らないけど、それを手にする程の実力があるなら色んなことを知ってるんじゃないかってね」
「……。
だからと言って教える義理もないな」
赤黒い何かが一つ、また一つと割れていく感覚。
「あー、だったらあたし達に出来ることをしてあげるから少し話を聞いてくれないかしら?」
「ふん。
だったら全部脱いで踊ることでもしたらどうだ」
我慢が限界に到達した。
「はぁ!?
話を聞くくらいどうってことないでしょ!?
それを最初から邪険に扱うってどういうつもりよ!
こっちくらい見て口でも開きなさいよっ!!」
言い終えると同時に椅子の脚を蹴ると、彼は立ち上がり体を反転させたと見えた瞬間、あたしの首元で甲高い音を響かせた。
「えっ!?」
彼の腕はあたしの首を目掛け伸び、その手には曲がった剣が握られている。
その先を目だけで追いかけるとレディの鞘が彼の剣を止めていた。
「危ないことするんじゃないよ、あんた」
「オレの捌きを止めたのか」
「剣を抜いてる暇はなかったがね」
鋭い眼光の青年は驚いている様子だったが、あまり感情が伝わってこなかった。
そして、その音のせいで酒場には静寂が訪れ……たはずだった。
「あーーーー!
何を騒ぎ起こしてんのよ!!
って誰も騒いでないけど、これを騒ぎと言わず何を騒ぎというのか」
声の方を振り返ると静かになった酒場で一人女性が駆け寄ってくる。
どうやら空いていた席の主のようなのだが、これまた一癖もありそうな物言いだった。
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