61 / 70
第四章 新たなる魔人王
episode 53 死地への覚悟
しおりを挟む
次の日、昼には港街に着きタグとも別れ、あたし達は船へと戻ることが出来た。
「海風があると随分と違うもんね」
「そうさね、体も洗い流して余計に涼しく感じるよ」
「気持ち良いですね、お嬢様。
ところでいつ出航するんですか?」
あたし達は手摺に掴まり行き交う人々の様子を眺めてながら話していた。
海の運ぶ囁きに去らされる髪を抑えて、ミーニャはあたしとレディに問いかけている。
「もうすぐらしいわよ?
ね、レディ」
「ああ、今積んでる荷物が運び終わったら出ることになっている。
許可も取り終わってるらしいからね、すぐにでも出れるよ」
「ここを出たらそのまま魔人のところへ行くのですか?」
今後の話はあたしとレディだけで話し合っていた。
その間、ミーニャは身支度をしたりとそれはそれで忙しかったらしい。
「ううん、一旦はグラードに戻るわよ。
この人数じゃ魔者の巣窟には行けたもんじゃないからね」
「そう、魔人王のところへ行ってもカルディアの海賊達も残っているからね。
低級な魔者と違って知性もあれば戦い慣れもしてるだろう、だから戦える海賊を連れて行くしかないのさ」
「分かりました。
では、町に着くまではまた皆さんのお手伝いでもしていますね」
ミーニャは笑顔で応え、あたし達も笑顔で頷いた。
レディとの話し合いはお互い考えていたことが一緒だったようですぐに結論が出て、このよいな運びになった。
「レディ!
終わりましたぜ!!」
「ご苦労さん。
これより町に戻る!
皆、配置についてくれ!」
号令に呼応すると桟橋とを繋ぐ板を外しにかかり、足早に持ち場に着き始めた。
レディも高い位置へと移動し、残されたあたし達は縁に寄りかかりその様子を眺めていると、ゆっくりと船が動き出した。
「ようやくってとこね。
これで終わりじゃないけどさ」
「そうですね、こんなにあっちこっち行ってたら剣が目的だったと錯覚してしまいます」
「それなのよね。
ホント紆余曲折して手にしたのが目的の為の手段なんだもの。
それもあたしが持っていたなんてね」
「私が早くにきづいていたら良かったのですが。
これからはもっとお嬢様の身の回りのことを気にしますね」
「いいのよ、いいのよ!
ミーニャは今まで通りでいいの。
ホントはあたしの身の回りなんてどうでも良いんだから」
笑顔で応えたが、ミーニャは怒ったような真剣な眼差しで訴えかけてきた。
「ダメです!!
お嬢様の身の回りをお世話するのは私だけの役目ですから!
それに……」
「それに?
なによ?」
「お世話しないとお嬢様は裸でうろうろするじゃないですか!」
いつも言われるが改まって言われると軽くショックではある。
「だって部屋にはあたし達しかいないんだからいいじゃない!
それこそミーニャだって裸でいてもいいんだから」
「いくら近い存在でも恥ずかしいことは覚えて欲しいんです。
私はいつだって恥ずかしいですし、人前で裸にはなりません!」
「……ケチ」
「お嬢様っ!!」
と怒鳴ったところでミーニャは目を開いて何か思いを抱いた顔をした。
「全くお嬢様は……。
これ以上は何も言いません。
ただ、生きてさえいてくれたら」
見抜かれた……。
これから魔人王と戦いに行くのだ、死と向き合わせになるのは百も承知。
だからミーニャとは楽しく話していたかった。
「あたしが?
死ぬワケないじゃないの。
ミーニャを置いてなんて死ねないっての。
唯一の家族みたいなもんなんだから」
「……お嬢様!!」
笑顔で言ってのけるとミーニャが急に抱きついてあたしの胸を濡らした。
小さな嗚咽が聞こえる中、そっと髪を撫で流れる雲に思いを馳せると空が滲んで見えてくる。
「だ……ぐすっ、大丈夫よ。
あたしだって簡単には死ねないんだから。
あたしが死んだらミーニャの世話は誰がするのって話でしょ。
あたしがいるからミーニャがいる。
ミーニャがいるからあたしがいるの。
約束するわ、これからもどんなことがあってもミーニャを置いては死なないと」
「ひっ、ひっ……ぐすっ、本当ですね。
絶対の約束です。
……でも……私、お嬢様にお世話されたこと……ないです」
「ふふ、ふふふふ。
ほら、いつものミーニャに戻った。
あたしのお世話はこういうことなのよ、可愛らしいミーニャ--」
顎を持ち上げお互いの目線が合うとあたしは顔を近づけた。
「お、お、お嬢様っ!!
いやですぅー!!」
「あっ!
こら!
待ちなさい、ミーニャっ!!
……ふふ」
ミーニャはあたしを突き放し一目散に船の中へ駆け込んでいく。
その様子に自然と笑みが溢れてしまうが、内心は約束を果たせるのか微妙な気持ちであった。
だが、こんな気持ちは誰にも悟られる訳にはいかない。
それは、あたし自信が許されないから。
軽い吐息と共にまだ見ぬ未来を考え、風の流れに乗った船に身を預けると覚悟を決めた。
「海風があると随分と違うもんね」
「そうさね、体も洗い流して余計に涼しく感じるよ」
「気持ち良いですね、お嬢様。
ところでいつ出航するんですか?」
あたし達は手摺に掴まり行き交う人々の様子を眺めてながら話していた。
海の運ぶ囁きに去らされる髪を抑えて、ミーニャはあたしとレディに問いかけている。
「もうすぐらしいわよ?
ね、レディ」
「ああ、今積んでる荷物が運び終わったら出ることになっている。
許可も取り終わってるらしいからね、すぐにでも出れるよ」
「ここを出たらそのまま魔人のところへ行くのですか?」
今後の話はあたしとレディだけで話し合っていた。
その間、ミーニャは身支度をしたりとそれはそれで忙しかったらしい。
「ううん、一旦はグラードに戻るわよ。
この人数じゃ魔者の巣窟には行けたもんじゃないからね」
「そう、魔人王のところへ行ってもカルディアの海賊達も残っているからね。
低級な魔者と違って知性もあれば戦い慣れもしてるだろう、だから戦える海賊を連れて行くしかないのさ」
「分かりました。
では、町に着くまではまた皆さんのお手伝いでもしていますね」
ミーニャは笑顔で応え、あたし達も笑顔で頷いた。
レディとの話し合いはお互い考えていたことが一緒だったようですぐに結論が出て、このよいな運びになった。
「レディ!
終わりましたぜ!!」
「ご苦労さん。
これより町に戻る!
皆、配置についてくれ!」
号令に呼応すると桟橋とを繋ぐ板を外しにかかり、足早に持ち場に着き始めた。
レディも高い位置へと移動し、残されたあたし達は縁に寄りかかりその様子を眺めていると、ゆっくりと船が動き出した。
「ようやくってとこね。
これで終わりじゃないけどさ」
「そうですね、こんなにあっちこっち行ってたら剣が目的だったと錯覚してしまいます」
「それなのよね。
ホント紆余曲折して手にしたのが目的の為の手段なんだもの。
それもあたしが持っていたなんてね」
「私が早くにきづいていたら良かったのですが。
これからはもっとお嬢様の身の回りのことを気にしますね」
「いいのよ、いいのよ!
ミーニャは今まで通りでいいの。
ホントはあたしの身の回りなんてどうでも良いんだから」
笑顔で応えたが、ミーニャは怒ったような真剣な眼差しで訴えかけてきた。
「ダメです!!
お嬢様の身の回りをお世話するのは私だけの役目ですから!
それに……」
「それに?
なによ?」
「お世話しないとお嬢様は裸でうろうろするじゃないですか!」
いつも言われるが改まって言われると軽くショックではある。
「だって部屋にはあたし達しかいないんだからいいじゃない!
それこそミーニャだって裸でいてもいいんだから」
「いくら近い存在でも恥ずかしいことは覚えて欲しいんです。
私はいつだって恥ずかしいですし、人前で裸にはなりません!」
「……ケチ」
「お嬢様っ!!」
と怒鳴ったところでミーニャは目を開いて何か思いを抱いた顔をした。
「全くお嬢様は……。
これ以上は何も言いません。
ただ、生きてさえいてくれたら」
見抜かれた……。
これから魔人王と戦いに行くのだ、死と向き合わせになるのは百も承知。
だからミーニャとは楽しく話していたかった。
「あたしが?
死ぬワケないじゃないの。
ミーニャを置いてなんて死ねないっての。
唯一の家族みたいなもんなんだから」
「……お嬢様!!」
笑顔で言ってのけるとミーニャが急に抱きついてあたしの胸を濡らした。
小さな嗚咽が聞こえる中、そっと髪を撫で流れる雲に思いを馳せると空が滲んで見えてくる。
「だ……ぐすっ、大丈夫よ。
あたしだって簡単には死ねないんだから。
あたしが死んだらミーニャの世話は誰がするのって話でしょ。
あたしがいるからミーニャがいる。
ミーニャがいるからあたしがいるの。
約束するわ、これからもどんなことがあってもミーニャを置いては死なないと」
「ひっ、ひっ……ぐすっ、本当ですね。
絶対の約束です。
……でも……私、お嬢様にお世話されたこと……ないです」
「ふふ、ふふふふ。
ほら、いつものミーニャに戻った。
あたしのお世話はこういうことなのよ、可愛らしいミーニャ--」
顎を持ち上げお互いの目線が合うとあたしは顔を近づけた。
「お、お、お嬢様っ!!
いやですぅー!!」
「あっ!
こら!
待ちなさい、ミーニャっ!!
……ふふ」
ミーニャはあたしを突き放し一目散に船の中へ駆け込んでいく。
その様子に自然と笑みが溢れてしまうが、内心は約束を果たせるのか微妙な気持ちであった。
だが、こんな気持ちは誰にも悟られる訳にはいかない。
それは、あたし自信が許されないから。
軽い吐息と共にまだ見ぬ未来を考え、風の流れに乗った船に身を預けると覚悟を決めた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
さようなら、お別れしましょう
椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。
妻に新しいも古いもありますか?
愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?
私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。
――つまり、別居。
夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。
――あなたにお礼を言いますわ。
【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる!
※他サイトにも掲載しております。
※表紙はお借りしたものです。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる