転生悪役令嬢は逆ハーエンドの夢を見るか?

片上尚

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ルシア12歳、今私にできる事

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「ルシア、大丈夫かい?」

控えめなノックのあと、医者と共にダリオお兄様が入って来る。
ゲームでの攻略対象である彼は、透き通るような銀髪に、お父様や私と同じく翠玉のような緑色の眼をしている。
すっきり通った鼻筋に酷薄そうな薄い唇。
きつそうにも見える吊り目だが、今は心配そうに眇められている。
…この表情から「怖い」「何を考えているかわからない」「睨まれている」と感じる人も多いようだが、本当は家族思いの優しい兄なのだ。
確かに頭は良く、合理的に考えて必要であればバッサリと損切りすることを厭わないので、「父と同じ冷血」と評されるのは仕方なくはあるが。

「はい。多少魔力管は損傷しているかもしれませんが、他に異常はありません。ご心配おかけしました。」

「…そうか。しっかりと医師に診てもらい、休養するように。」

「わかりました。」

そう言うと、片方の口の端をゆるやかに持ち上げて部屋から出ていく。
…「にやり」としか見えないのだが、あれでもほっとしているのだろう。

魔力管というのは血管のように全身を巡っている、魔力を通すための管だ。
魔法を使うための魔力は体内の魔力腑で作られ、自身のコントロールによって魔力管を通り、全身にいきわたる。
魔力を流しすぎたり、意図していない流れになってしまったりすると、比較的簡単に損傷してしまい、激痛が伴う。

「これは…ずいぶんとひどい痛みなのでは?」

最近我が家の医師団に入ったばかりの若い医師が、魔力管の内診専用の魔晶板を見ながら心配そうに言う。

「いえ、慣れていますので。」

そう返すと絶句された。

魔力管の性質として、傷ついて直ったところはより丈夫になる。
そのため、スパルタな我が家では幼少期のうちにいやというほど経験済みだ。
ちなみに、魔力のコントロールは一番基礎的な技術とされており、ミディーレ国学院に入るまでに幼稚舎や高等学校、私塾、家庭教師などから学ぶ。
伯爵家以上は、人脈作りも兼ねて貴族院幼稚舎、中等部まで通い、あとは私塾か家庭教師に個人に合った指導をさせて学院入学まで技を磨く、というのが一般的だ。
我が家もその例に漏れず、4歳から8歳まで幼稚舎、9歳から11歳までを中等部で学び、現在は私もお兄様も15歳の学院入学に備えて家庭教師の指導のもと技術を高めている。

医師は手早く処置をし、「一週間は安静になさってくださいませ」と言い残し退室していった。
…おそらく、明後日には訓練を開始するだろう。
お兄様の言う我が家なりの「休養」なんてそんなものだ。
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