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ルシア12歳、今私にできる事

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主人公のカレンが現れる祠を持つのはマテオ男爵家。
古い貴族の1つではあるのだが、先々代の家督闘争をきっかけとして紆余曲折の末に降爵された家のはずだ。
そしてお金に困っているところを、我がシルベストリー伯爵家が祠の管理権を買い取るために謀略を仕掛けることから物語が展開していく。

「祠…か。」

亡くなったおじい様は元々シルベストリー伯爵家に生まれたわけではなく遠縁の庶子だが、戦時中に大きな功績を立て、逆に跡継ぎが流行り病で病死してしまったシルベストリー伯爵家本家に養子に入ったらしい。
そのためお父様は血筋のことで相当嫌な思いをされ、次代には同じ思いをさせないようにお金や政治力でずいぶん無理をしていたようだ。
結婚もその一つ。
王家の血も流れているほど高貴な血筋であるお母様を、資金力に物を言わせて娶ったことは割と簡単に耳に入って来る。
実の子どもの耳に入れる周囲もいかがなものかとは思うのだが…
だからなのか、お母さまは今でもお父様を見下している節がある。
そんな状況で育ってきたお父様は少し…いや、大分権力や栄華に執着し、偏屈になってしまわれた。
執念といってもいいぐらいだ。
自分の代で是が非でも陞爵したいと考えているようだが、祠が手に入ればそれもリーチがかかる。
この国は爵位と領地の関係が緩やかで、割と簡単に爵位が入れ替わる場合があるのだ。
…まあ、決め手として私やお兄様の政略結婚ぐらいは必要となるかもしれないが。

ちなみに、甘プリはただ選択肢だけで話が進んでいくノベルゲームではない。
ミニゲームやRPG要素がふんだんに盛り込まれており、それらで得ることができる「功績ポイント」によって展開が大きく変わるのだ。
設定では、優しく迎えてくれた恩返しのためにマテオ男爵家の再興を目指し、家格を上げて攻略対象と釣り合うようにする、ということになっていた。
なので、マテオ男爵家としては家格の最後の要である祠を手放すわけにはいかない。

さらに、物語は在学中を描いたものなので、ミディーレ国学院在学中に一定の条件をクリアしなければならない。
功績が足りない場合は庶民落ちしてごく普通のおっさんと結婚というなんとも言えない展開や、冒険者でその日暮らしをしながら功績を上げてあこがれのあの人と…というToBeContinue的なノーマルエンドのほかに、魔王に世界を滅ぼされるバッドエンドもあったはずだ。

とはいえ、物語が始まるまでにはまだ時間がある。
私はこの間に何を成せば良いのだろうか。
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