転生悪役令嬢は逆ハーエンドの夢を見るか?

片上尚

文字の大きさ
33 / 47
ルシア12歳、今私にできる事

32

しおりを挟む
「ようこそ、ルシア嬢、一日千秋の思いで待っていたよ。今日も海のようなエメラルド色の瞳が魅力的だね。魚も恥じらって逃げていってしまうのではないだろうか。あ、シルベストリー伯、どうも。君は忙しいだろうから来なくてもよかったのに。」

「…ご無沙汰しております、リッチオーニ公。相変わらずお元気なようで。」

いきなりハイテンションに迎えられて面食らっていると、お父様がブリザードを纏って挨拶している。
序盤からこの調子で、いったいどうなってしまうのだろうか。

リッチオーニ公爵は客間につくまで常時饒舌に私をほめたたえていた。
私は曖昧に相槌を打ちながら後をついて歩く。
お父様はそのままブリザードを纏ってさらにその後ろを。
せっかくの機会なのでリッチオーニ公爵をまじまじと見ると、紫の美しい瞳にサラサラとなびき後ろでひとくくりにされた黄金の髪の毛が均整の取れた体にかかる。
髪質だけはジョルジオと違うが、ジョルジオを美しくして成長させた感じの人懐っこい笑みが可愛らしい、美しい顔だ。
ぶつかった時はあまりに豪奢な服装と威圧感から壮年かと思ったが、意外に若いかもしれない。
ただ、さすがに現在の自分の年齢を考えると恋愛相手としてはちょっと…という感じだ。
お父様が40代手前ぐらいなのに対し、リッチオーニ公爵は30代になったかどうか、というところだろうか。
ジョルジオが11歳で、母とのうわさが出る前から女遊びの噂が絶えなかったことを考えると、どれだけ若いころから遊んでいたか考えるだけで恐ろしい。
彼の血を引く子どもは実はあちこちにいるのではないだろうか。
…ジョルジオのように噂になる子はいないので、それほど似ていないのかもしれない。

「というわけで、僕のお嫁さんにならないかい?」

「…は?」

客間についていきなりプロポーズされましたよ。
思わず間抜けな声しか出てこなかった。
お父様の周りは物理的に温度が下がり始めている。
魔法だろうか。
寒い。

「一目見た時からもう君のことが頭から離れず食事も喉を通らないし夜も眠れない。」

「それにしては大変お元気そうですが」

お父様が言葉を挟む。

「今はルシア嬢にあえて元気100倍さ!な、どうだい『オトウサマ』、公爵家に娘を嫁に出すのは悪くないと思うんだけど。」

「それほど我がシルベストリー伯爵家に利益をもたらせると?」

「もちろんさ。なんてったって公爵家だよ?」

「…具体的にお願いします。」

「オトウサマは成り上がり物の息子と揶揄されて困っているだろう?アウローラの実家だって侯爵家とはいえ割と新顔だ。」

「あなたに我妻のことはあまり言われたくありませんが…」

「おっと失礼。親しくさせていただいているものでね。」

「そのあたりも詳しくお聞きしたいところではあるのですが、とりあえずは置いておきましょう。」

「そのほうが賢明だろうね。」

リッチオーニ公爵が勝ち誇ったようににやりと笑う。
お父様からは変わらずブリザードが噴出している。
ちろりと舌を出し唇を舐める様子は女性から見るとセクシーに見えるのかもしれないが、冷静に見ると獲物を狙う蛇のようだ。
…やはりジョルジオには似ていないと思う。

「ところで、祠って欲しくないかい?」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

処理中です...