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ルシア12歳、今私にできる事

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「公爵領には祠は無かったかと思いますが?」

1口紅茶を啜ったお父様が冷静に返す。
祠が欲しいのは事実だが、国王陛下とマテオ男爵家の話がまとまっているのであれば、そこまで心に響く話でも無いはずだ。
今こちらからアレクス殿下との婚約を保護にしてまで縁を結びたい相手ではない。
予定ではジョルジオが養子に入るのだから。
ただ、こうなってしまっては養子話をすすめるのもちょっと面倒になってしまったのかもしれない。

「まあ、親しくしてる子爵家でちょっとね。」

「なるほど。それは素敵な話ですね。」

「足りないかな?」

リッチオーニ公爵はにっこりと笑う。

「そこまでして娘と結婚したいと?」

「そうだね、複数手段を検討する程度には。」

「…ありがたい話ですが、今内々で進めている婚約話がありまして。」

「へえ。そうやって言い出すということは、僕と同程度かそれ以上の家ということだね。ふうん…」

「一度持ち帰らせていただいても?」

「もちろん。オトウサマには僕と縁を結ぶメリットをじっくり考えてほしいしね。」

再び出た「オトウサマ」呼びに一段と温度が下がる。
というか、持ち帰ると言っているのにまだ「オトウサマ」呼びするなんて、リッチオーニ公爵は勝利を確信でもしているのだろうか?

「それに、娘の意思も尊重したいのですが。」

「えっ!」

「当たり前だろう?」

お父様がこちらに話を振る。
政治的な話が中心かと思って聞いていたので、急に私に話が飛んできて慌ててしまう。

「それじゃ、少しぐらい二人きりになる時間をいただいても?」

「15分でいかがでしょう」

「2時間はほしいね。」

「20分」

「1時間半ぐらいは良いじゃないか。」

「25分」

「1時間。普通どんなお見合いでもこのぐらいは貰えると思うんだけど。」

「仕方がありません、それでは30分で妥協しましょう。」

「…しょうがないな、それじゃ30分、僕の庭園を案内させていただこうか。さ、ルシア嬢」

そう言って優雅に立ち上がったリッチオーニ公爵は私の手をふわりと取って歩き出す。
お父様に目線を送ると、渋々といった様子で頷かれた。

「はい。拝見いたします」

「ははっ、なんだか庭が査定される気分だね。まあいいや。ああ、君、伯爵はここでゆっくりしていただいて」

リッチオーニ公爵はそう言ってメイドに小声でいくつか申しつけをし、私に合わせたゆったりとした歩調で部屋を出た。
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