落ちこぼれ子女の奮闘記

木島廉

文字の大きさ
14 / 369

魔物のスキル

しおりを挟む

魔物のスキルのコピー。

思ってもみなかった事態に戸惑いつつ、リリスは作業を続けた。

コピースキルの発動で得た情報では、火魔法とファイヤーボール、その他にスキルとして魔力吸引スキルと見識スキルが確認できた。

この二つのスキルに妙に魅力を感じる。リリスは即座に魔力吸引スキルと見識スキルをコピーし始めた。その途端に頭を鈍器で殴られたような衝撃が走って、思わず顔をしかめてしまったリリスだが、それでも諦めず耐えながらコピーを終了した。
それと共にオーガメイジの身体も崩れるように消えていった。なんとか間に合ったようだ。

コピーしたスキルを確かめるために、リリスは自分に鑑定を掛けてみた。


**************

リリス・ベル・クレメンス

種族:人族 レベル15

年齢:13

体力:600
魔力:1500

属性:土・火


(コピースキルの機能拡張中の為、レベルアップ不可)

(現状で蓄積された経験値は全てコピースキルに充当中)


魔法:ファイヤーボール  レベル1

   ファイヤーボルト  レベル4

   アースウォール   レベル4



(秘匿領域)

属性:水・聖

魔法:ウォータースプラッシュ レベル1 

   ウォーターカッター レベル1

   ヒール       レベル1+ (親和性による補正有り)
 
スキル:探知 レベル2

    鑑定 レベル2

    投擲 レベル3

    獣性スキル魔力吸引(発動不可 調整中)

    獣性スキル見識  (発動不可 調整中)


**************


コピースキルに不具合が生じちゃったの?

私って変な物をコピーしちゃったのかしら。

オーガファイターやオーガメイジを倒して稼いだ経験値を、レベルアップに回せないようだ。だがスキルに関しては調整中と記されているので、いずれは使えるようになるのだろう。

コピーするたびに強烈な頭痛に襲われるのは止むを得ないのかしら?

気を取り直してまだ痛む頭を摩りながら、リリスはオーガメイジのドロップアイテムである魔石と杖を回収した。

「リリス! 大丈夫か!」

ロイドが背後から声を掛けてきた。頭を摩っていたので怪我をしたと思われたのかも知れない。大丈夫ですと答えながら、リリスは立ち上がり、回収したドロップアイテムをロイドに手渡した。

「ロイド先生。初心者用のダンジョンってこんなにハードなの?」

「いや、今回はどこまでも想定外の連続だよ。オーガファイターやオーガメイジなんて、ケフラのダンジョンでも12階層で出てくる魔物だからね。」

ロイドはふっと息を吐いた。

「リリス君の仕打ちに腹が立って送り込んだんじゃないのか?」

「あんなの冗談じゃないですか。」

「まあ、別な見方をすれば君の魔力に過剰に反応したのかも知れない。ダンジョンと相性の良い人っているんだよね」

そう言われれば経験値の貯まる量がデニス達よりはるかに多いような気がする。

「でも、このダンジョンには嫌われちゃったかも知れませんね。」

「いや、そうとも限らないよ。前例のない強い魔物を送ってくるなんて、ダンジョンの立場から考えると大歓迎の証しじゃないのか?」

そう言う好かれ方は嫌だわ。

そう思って地面にさっと魔力を放つと、それだけで地面がグラグラッと揺れ出し、数十秒間揺れが止まらなかった。

「君はこのダンジョンを餌付けするつもりかい?」

ケタケタと笑いながらロイドは手を振ってデニス達を呼び寄せた。彼等からもドロップアイテムの回収を終え、ロイドの引率で元の第1階層のポータルに戻る間、魔物は一切出現しなかった。駆除された魔物が再度出現するまでには1時間以上掛かるそうだ。
そこから考えても、ここではダンジョンコアが回収出来る魔力量が制限されていると類推できる。ロイドの分析にうんうんとうなづきながら、リリス達はポータルで訓練場の片隅に戻り、この日のダンジョンチャレンジを終えた。



その日の深夜、学生寮で眠っていたリリスの夢の中に、あの白髪で白衣の老人がニコニコしながら現れた。

「リリス。君は私の発想の斜め上を進んでくれるね。」

えっ?
何の事?

「魔物のスキルをコピーするなんて、思いもよらなかったよ。そのお陰でコピースキルが自律的に機能を拡張し始めたのも驚きだがね。」

そうなの?

「前にも言ったようにコピースキルにはまだまだ不明な点が多くあるんだ。元々は完結したスキルだと思われていたので、自律的に進化するなんて思いもよらなかったよ。」

「コピースキルの機能拡張が完了したようだ。自分のステータスを見てごらん。」

老人に言われるままにリリスは鑑定スキルを発動させた。


**************

リリス・ベル・クレメンス

種族:人族 レベル15

年齢:13

体力:600
魔力:1500

属性:土・火

魔法:ファイヤーボール  レベル1

   ファイヤーボルト  レベル4

   アースウォール   レベル4

   加圧        レベル1



(秘匿領域)

属性:水・聖

魔法:ウォータースプラッシュ レベル1 

   ウォーターカッター レベル1

   ヒール       レベル1+ (親和性による補正有り)
 
スキル:探知 レベル2

    鑑定 レベル2

    投擲 レベル3

    魔力吸引(P・A) レベル1

    解析 

    最適化


**************

あれっ?
加圧って何だろう?
それに見識が解析になっているわ。

不思議に思っていると老人が説明を始めた。

「加圧は土魔法で付随的に派生したものだよ。土に圧力を加える魔法だ。アースウォールのレベルと使用頻度が引き金になって派生するんだ。」

この加圧って使い道が良く分からないわね。その他は?

「解析と最適化はコピースキルの拡張機能だ。最適化は普段は使わないスキルで、獣性スキルを人族用に転換する等の必要性に応じて発動される。解析は獣性スキルの見識が人族用に最適化されたものだ。パッシブスキルなので常に発動させておくと良い。」

老人の説明に応じてリリスは解析をパッシブスキルとして発動させた。

それで解析ってどんな事が出来るの?

「試しに魔力吸引スキルを解析してごらん。対象を意識して解析を念じれば発動されるはずだ。」

そうそう。この魔力吸引の(P・A)と言う表記が気に成っていたのよ。

リリスは老人に言われるままに解析を念じた。すると途端に脳内に言葉が浮かび上がってきた。
老人の説明によると解析は疑似人格を造り上げて、リリスの思念に答えようとするそうだ。

『(P・A)はパッシブスキルとしてもアクティブスキルとしても使えると言う意味です。』

『パッシブスキルとしての魔力吸引は魔力の自動補給、アクティブスキルとしての魔力吸引は強制的な魔力の強奪として機能します。』

そう言う事なのね。それならパッシブスキルとして使う事にするわ。魔力の強奪なんて、サキュバスじゃないんだから。

でも、魔物の死骸からこんな風にスキルをコピー出来るなんて、思いもよらなかったわ。他の魔物からも出来るのかしら?

「それは今回がラッキーだったとしか思えないね。普通に野山に居る魔物なら無理だろう。ダンジョンの魔物だった事が、スキルをコピー出来た大きな要因だと思うよ。」

えっ?
それってどう言う事なの?

「ダンジョンでは魔物の身体が生成される時に、ダンジョンコアから属性魔法やスキルが付与されると考えられるからね。」

そうか。
付与されたものだからコピーし易いって事なのね。

「しかもダンジョンでは死んでしまった魔物が、腐敗を待たずにダンジョンに吸収されていく。君はダンジョンコアが回収しようとしていた魔物のスキルをコピーした訳だ。」

うんうん。
でも付与されたもののコピーって、劣化コピーみたいなものね。

「いや、そうとも限らないよ。その証拠に獣性スキルを人族用に最適化する際に、魔力吸引スキルが劣化したとは思えない。むしろおまけが付いて来たんじゃないのか?」

おまけ?

「そう。パッシブにもアクティブにも使えるスキルなんて相当にレアなスキルだよ。本来はパッシブスキルだからね。コピースキルが人族用に最適化する際に派生した特性だとしか思えない。くじで特賞に当たったようなものだよ。」

そう言われると嬉しいけど、使い分ける局面に遭遇しないと価値が分からないわね。

「リリス。今後もコピースキルを君の個性に合わせて更に進化させてくれる事を期待しているよ。それじゃあね。」

そう言って老人は消えていった。だが言い残した事があったのだろう。その声だけが遠くからリリスに聞こえてきた。

「加圧はアースウォールと連動させると面白い使い道があるよ。良く考えてみるんだね。」

そうなのかなあ?
疑問を抱きつつも、リリスは睡魔に襲われて、再び深い眠りに落ちていった。





しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~

けろ
ファンタジー
【完結済み】 仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!? 過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。 救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。 しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。 記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。 偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。 彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。 「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」 強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。 「菌?感染症?何の話だ?」 滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級! しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。 規格外の弟子と、人外の師匠。 二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。 これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明
ファンタジー
不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?! はたしてカイは運命をぶち壊して幸せを掴むことができるのか?! 火・金・日、投稿予定 投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

処理中です...