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リリスの帰省2
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手強い賊に襲われた街道。
リリスの目が3人の敵を捕らえた。
フードを被った召喚術師らしき人物の前に、その人物をガードする様に二人の男が剣を持って立っている。
リリスは試しに威力を弱めたファイヤーボルトを4発放った。弧を描いて4本のファイヤーボルトがフードの人物に着弾した。
だがボンッと言う鈍い着弾音を立て、ファイヤーボルトは敵の1m程前で破裂してしまった。
やはりシールドを張っているわね。
召喚術師は自分が狙われるのを予測してシールドを張るのが常だ。リリスのファイヤーボルトを警戒して、2人の男は召喚術師の直前に立ってこちらを睨みつけた。3人が密着している。
今だ!
リリスは即座に魔力を集中させて3人の足元に直径3mほどの泥沼を出現させた。瞬時に足元が泥沼になる。この思いもよらない状況に敵は何の対処も出来ない。
例えシールドを張っていても、足元がなくなってしまうのは避けようがないからだ。
深さ1mほどの泥沼にはまり驚く敵の足元に、リリスは間髪入れずに細く短いアースランスを出現させた。ギャッと悲鳴をあげて敵が泥沼から逃れようとするのだが、動けば動くほどアースランスが足に突き刺さってしまう。
その状態で更にリリスはその泥沼をそのまま硬化させた。
敵はこれでもう逃げられない。
だが念のため、リリスは毒生成スキルを発動させ、麻痺毒を生成すると、身に着けていた皮袋の中の飲料水に付与させた。それを苦痛で呻く敵に遠くから振り撒くと、即座に意識を失い、3人は身体を折り曲げるようにして前方に倒れてしまった。
ほっとするリリス。
彼女がここまで捕縛に拘ったのは、敵の意図を聞き出したかったからだ。普通なら貴族の子女を狙った誘拐犯だろう。身代金を巻き上げようとしていたのかも知れない。
だがもしも敵がリリス自身を狙っていたとしたら・・・・・。
王族と懇意になったリリスを邪魔だと考える貴族がいたとしたら・・・・・。
考え過ぎだとリリスは思ったのだが、それでも事実を知って安心したい。そんな思いでリリスは生け捕りに拘ったのだ。
ところでダンとケインは大丈夫かしら?
そう思ってリリスが馬車に戻ると、馬車の後方で2人は傷だらけになって座り込んでいた。
「お嬢様。・・・大丈夫ですか?」
「それはこっちのセリフよ! 二人共大丈夫なの?」
そう言いながらよく見ると、二人共甲冑がボロボロで、あちらこちらから血が流れている。相当苦戦したようだ。
「パワーで押されてやばいと思った矢先に、ミノタウルスが突然消えてしまって・・・」
「それは私が召喚術師を倒したからよ。」
リリスの言葉にダンはヘエッと驚きの声を上げた。
「そう言えばお嬢様の放ったファイヤーボルトって反則的な威力でしたね。あれだけ身体強化されたミノタウルスを一撃で仕留めるなんて・・・」
二人の顔が苦痛で歪んでいる。
リリスはダンとケインにヒールを掛け始めたのだが、二人の傷はそれなりに深そうだ。
「ヒーリングポーションは飲んだの?」
「飲みましたが効きがあまり良くなくて。」
そう言いながらダンはう~んと唸って目を閉じ、
「お嬢様のヒールの方が効きますね。」
それってダメじゃん。それでは困るのよね。
リリスは馬車に戻ると、自分の荷物から自家製のヒーリングポーションを数本取り出した。
「これは学院の実習室で造った自家製のヒーリングポーションなの。2本づつ飲んでね。」
そう言って手渡したポーションをダンは怪訝そうに見つめた。
「お嬢様の自家製ですかあ。」
少々馬鹿にしたような言い草である。
何よ、その言い草。舐めるんじゃないわよ。
実はこのポーションはリリスの特製で、身体強化の付加効果まで備わっていた物だ。
疑いながらも飲んだポーションはたちまち効果を発揮し、二人共その場ですっと立ち上がった。
「このポーションは凄い効き目ですねえ。しかも身体強化まで備わっている。戦闘の前にこれを飲めば良かったのになあ。」
ダンの言葉にリリスはふっと笑った。
何を言っているのよ。
力仕事はこれからなんだからね。
「それだけ元気が出たらもう大丈夫ね。さあ、あれを運びましょうね。」
リリスはそう言って馬車の前方を指差した。
二人が目を凝らすと遠目に人の上半身のようなものが見える。
「大人の男性を3人も縛って運ぶのは重労働でしょうからね。」
そう言いながらリリスは二人をそこまで誘導した。リリスに従って近くに行くと、上半身から前屈した男が3人、土の中から生えているように見える。
3人の敵の状態を見てケインは不思議そうに覗き込んだ。
「どうしたらこんなふうになるんですかね?」
ケインが不思議がるのも無理はない。土魔法を持つ術者は少なく、彼等の周りにもほとんど見当たらない。しかも土魔法を持っていても、土を耕す程度にしか使っていないからだ。
「それは土魔法を駆使した結果よ。」
「引き抜き易いように土の質を変えるわね。」
そう言いながらリリスは土魔法を発動させ、硬化された泥沼を砂地に変えた。瞬時に3人の敵の身体が砂地に埋まりそうになる。
「土魔法ってこんな事も出来るんですねえ。」
感心している場合じゃないわよ。
「ほらっ! 早く引き上げないと砂に埋まって窒息しちゃう。」
リリスに急き立てられ、ダンとケインは急いで3人の敵を引き上げ、ロープできつく縛りあげた。その間にリリスは敵の傷だらけの足にヒールを掛けて止血することで、アースランスの痕跡を消してしまった。
「こいつらの意識を奪ったのもお嬢様ですか?」
「うん。解毒しない限り起きないわよ。」
リリスの言葉に二人は身体を震わせた。
「うわあ。ぞっとしますね。」
「俺達も働きが悪いとお仕置きされるかも。」
人聞きが悪いわね。
「ごちゃごちゃ言ってないで、縛って運びましょうよ。」
そう言って促していると、焦げ臭い匂いが漂ってきた。パチパチと言う音も聞こえてくる。
音のする方向を見ると、森の木立から火の手が上がっている。
拙い!
忘れていたわ。
もう一人、樹上に居た敵を仕留めたのだった。
慌ててその場に駆け寄ると、樹上から落ちた男が瀕死の状態で呻き声を上げている。打ち所が悪かったようで、顔面は血だらけだ。しかも手足が異常な方向に折れ曲がっている。
威力の弱いファイヤーボルトで足を射抜いたようで、傷はそれほどに深くないが、火が手放した弓に燃え移りそれが木立に延焼したようだ。
リリスは水魔法も持っているが秘匿状態なので出来れば使いたくない。ダンとケインに確認すると二人共水魔法は持っていないと分かった。
そうすると後はフィナの出番だ。
馬車に戻るとフィナは顔面蒼白でガタガタと震えていた。
「フィナ! 出番よ。」
「私は・・・・・戦えません。」
「何を寝ぼけているのよ。もう終わったわ。木立に火が燃え移ったから、水魔法で消して欲しいだけよ。」
そう言ってリリスはフィナの手を握り、強引に馬車の外に引っ張り出した。たどたどしく歩くフィナを促し、火の手の上がった木立に連れて行くと、きゃあっと叫んでその場に立ち止まってしまった。
「血だらけになって・・・・・人が死んでいる・・・」
「そいつはまだ死んでいないわよ。大袈裟ねえ。」
リリスがそう言うと、フィナは目を背けて弓手の男の傍を通り過ぎた。
「フィナ。燃え広がらないうちに水魔法で火を消して!」
リリスの言葉に従って、フィナはウオータースプラッシュで水をまき始めた。火は何とか消えそうだ。
リリスは血だらけの弓手の男をロープで縛る様にダン達に指示し、止血の為にその男に軽くヒールを掛けた。
大怪我で呻いていて動けないようなので、意識を奪う必要は無いだろう。
4人の男を馬車の屋根の部分やケインの馬の鞍に分散して括り付け、リリス達は再び目的地クレメンス領に向かった。
1時間ほど進むと関所に辿り着いた。
ここで捕縛した賊を関所に詰めている兵士に渡し、簡単な事情聴取を受け調書を書いて終わるはずだった。だがダンとケインが事情聴取を受けている間に、リリスも兵士から呼び出されてしまった。
何事かと思って関所の事務所に行くと、ダンと詰め所の兵士が言い合いになっていた。
「どうしたんですか?」
リリスがダンの背後から詰め所の兵士の隊長らしき人物に話し掛けた。40代半ばの色黒でがっしりとした体躯の大柄なおじさんである。
リリスが来たのを知ってダンは振り返り、
「申し訳ありません、お嬢様。でもこの詰め所の隊長がお嬢様の活躍を信じてくれないので・・・」
しまった!
リリスは唖然としてしまった。自分達で捕まえたとでも言ってくれれば良かったのに、事も有ろうに正直に話してしまったらしい。
そりゃあ、信じないわよね。
14歳の子供が4人の賊を捕縛したなんて。
素直で正直なのは良いんだけど、ダンもケインも田舎者だから、上手く話を取り繕う事なんて出来なかったのね。
がっくりと肩を落としたリリスの様子を見て、ダン達も申し訳なさそうに視線を返してきた。
「わざわざお呼び立てをして申し訳ありませんね、お嬢ちゃん。」
如何にも子供だと思って見下したものの言い方だ。貴族が相手なので一応は笑顔と丁寧な言葉で話しかけてきているのだが。
慇懃無礼ってやつよね。
「リリス・ベル・クレメンスです。リリスと呼んでくださって結構です。」
リリスの口調に詰め所の隊長は苦笑いを浮かべた。
その表情を見ながら、厄介な事になってしまったとリリスは思ったのだった。
リリスの目が3人の敵を捕らえた。
フードを被った召喚術師らしき人物の前に、その人物をガードする様に二人の男が剣を持って立っている。
リリスは試しに威力を弱めたファイヤーボルトを4発放った。弧を描いて4本のファイヤーボルトがフードの人物に着弾した。
だがボンッと言う鈍い着弾音を立て、ファイヤーボルトは敵の1m程前で破裂してしまった。
やはりシールドを張っているわね。
召喚術師は自分が狙われるのを予測してシールドを張るのが常だ。リリスのファイヤーボルトを警戒して、2人の男は召喚術師の直前に立ってこちらを睨みつけた。3人が密着している。
今だ!
リリスは即座に魔力を集中させて3人の足元に直径3mほどの泥沼を出現させた。瞬時に足元が泥沼になる。この思いもよらない状況に敵は何の対処も出来ない。
例えシールドを張っていても、足元がなくなってしまうのは避けようがないからだ。
深さ1mほどの泥沼にはまり驚く敵の足元に、リリスは間髪入れずに細く短いアースランスを出現させた。ギャッと悲鳴をあげて敵が泥沼から逃れようとするのだが、動けば動くほどアースランスが足に突き刺さってしまう。
その状態で更にリリスはその泥沼をそのまま硬化させた。
敵はこれでもう逃げられない。
だが念のため、リリスは毒生成スキルを発動させ、麻痺毒を生成すると、身に着けていた皮袋の中の飲料水に付与させた。それを苦痛で呻く敵に遠くから振り撒くと、即座に意識を失い、3人は身体を折り曲げるようにして前方に倒れてしまった。
ほっとするリリス。
彼女がここまで捕縛に拘ったのは、敵の意図を聞き出したかったからだ。普通なら貴族の子女を狙った誘拐犯だろう。身代金を巻き上げようとしていたのかも知れない。
だがもしも敵がリリス自身を狙っていたとしたら・・・・・。
王族と懇意になったリリスを邪魔だと考える貴族がいたとしたら・・・・・。
考え過ぎだとリリスは思ったのだが、それでも事実を知って安心したい。そんな思いでリリスは生け捕りに拘ったのだ。
ところでダンとケインは大丈夫かしら?
そう思ってリリスが馬車に戻ると、馬車の後方で2人は傷だらけになって座り込んでいた。
「お嬢様。・・・大丈夫ですか?」
「それはこっちのセリフよ! 二人共大丈夫なの?」
そう言いながらよく見ると、二人共甲冑がボロボロで、あちらこちらから血が流れている。相当苦戦したようだ。
「パワーで押されてやばいと思った矢先に、ミノタウルスが突然消えてしまって・・・」
「それは私が召喚術師を倒したからよ。」
リリスの言葉にダンはヘエッと驚きの声を上げた。
「そう言えばお嬢様の放ったファイヤーボルトって反則的な威力でしたね。あれだけ身体強化されたミノタウルスを一撃で仕留めるなんて・・・」
二人の顔が苦痛で歪んでいる。
リリスはダンとケインにヒールを掛け始めたのだが、二人の傷はそれなりに深そうだ。
「ヒーリングポーションは飲んだの?」
「飲みましたが効きがあまり良くなくて。」
そう言いながらダンはう~んと唸って目を閉じ、
「お嬢様のヒールの方が効きますね。」
それってダメじゃん。それでは困るのよね。
リリスは馬車に戻ると、自分の荷物から自家製のヒーリングポーションを数本取り出した。
「これは学院の実習室で造った自家製のヒーリングポーションなの。2本づつ飲んでね。」
そう言って手渡したポーションをダンは怪訝そうに見つめた。
「お嬢様の自家製ですかあ。」
少々馬鹿にしたような言い草である。
何よ、その言い草。舐めるんじゃないわよ。
実はこのポーションはリリスの特製で、身体強化の付加効果まで備わっていた物だ。
疑いながらも飲んだポーションはたちまち効果を発揮し、二人共その場ですっと立ち上がった。
「このポーションは凄い効き目ですねえ。しかも身体強化まで備わっている。戦闘の前にこれを飲めば良かったのになあ。」
ダンの言葉にリリスはふっと笑った。
何を言っているのよ。
力仕事はこれからなんだからね。
「それだけ元気が出たらもう大丈夫ね。さあ、あれを運びましょうね。」
リリスはそう言って馬車の前方を指差した。
二人が目を凝らすと遠目に人の上半身のようなものが見える。
「大人の男性を3人も縛って運ぶのは重労働でしょうからね。」
そう言いながらリリスは二人をそこまで誘導した。リリスに従って近くに行くと、上半身から前屈した男が3人、土の中から生えているように見える。
3人の敵の状態を見てケインは不思議そうに覗き込んだ。
「どうしたらこんなふうになるんですかね?」
ケインが不思議がるのも無理はない。土魔法を持つ術者は少なく、彼等の周りにもほとんど見当たらない。しかも土魔法を持っていても、土を耕す程度にしか使っていないからだ。
「それは土魔法を駆使した結果よ。」
「引き抜き易いように土の質を変えるわね。」
そう言いながらリリスは土魔法を発動させ、硬化された泥沼を砂地に変えた。瞬時に3人の敵の身体が砂地に埋まりそうになる。
「土魔法ってこんな事も出来るんですねえ。」
感心している場合じゃないわよ。
「ほらっ! 早く引き上げないと砂に埋まって窒息しちゃう。」
リリスに急き立てられ、ダンとケインは急いで3人の敵を引き上げ、ロープできつく縛りあげた。その間にリリスは敵の傷だらけの足にヒールを掛けて止血することで、アースランスの痕跡を消してしまった。
「こいつらの意識を奪ったのもお嬢様ですか?」
「うん。解毒しない限り起きないわよ。」
リリスの言葉に二人は身体を震わせた。
「うわあ。ぞっとしますね。」
「俺達も働きが悪いとお仕置きされるかも。」
人聞きが悪いわね。
「ごちゃごちゃ言ってないで、縛って運びましょうよ。」
そう言って促していると、焦げ臭い匂いが漂ってきた。パチパチと言う音も聞こえてくる。
音のする方向を見ると、森の木立から火の手が上がっている。
拙い!
忘れていたわ。
もう一人、樹上に居た敵を仕留めたのだった。
慌ててその場に駆け寄ると、樹上から落ちた男が瀕死の状態で呻き声を上げている。打ち所が悪かったようで、顔面は血だらけだ。しかも手足が異常な方向に折れ曲がっている。
威力の弱いファイヤーボルトで足を射抜いたようで、傷はそれほどに深くないが、火が手放した弓に燃え移りそれが木立に延焼したようだ。
リリスは水魔法も持っているが秘匿状態なので出来れば使いたくない。ダンとケインに確認すると二人共水魔法は持っていないと分かった。
そうすると後はフィナの出番だ。
馬車に戻るとフィナは顔面蒼白でガタガタと震えていた。
「フィナ! 出番よ。」
「私は・・・・・戦えません。」
「何を寝ぼけているのよ。もう終わったわ。木立に火が燃え移ったから、水魔法で消して欲しいだけよ。」
そう言ってリリスはフィナの手を握り、強引に馬車の外に引っ張り出した。たどたどしく歩くフィナを促し、火の手の上がった木立に連れて行くと、きゃあっと叫んでその場に立ち止まってしまった。
「血だらけになって・・・・・人が死んでいる・・・」
「そいつはまだ死んでいないわよ。大袈裟ねえ。」
リリスがそう言うと、フィナは目を背けて弓手の男の傍を通り過ぎた。
「フィナ。燃え広がらないうちに水魔法で火を消して!」
リリスの言葉に従って、フィナはウオータースプラッシュで水をまき始めた。火は何とか消えそうだ。
リリスは血だらけの弓手の男をロープで縛る様にダン達に指示し、止血の為にその男に軽くヒールを掛けた。
大怪我で呻いていて動けないようなので、意識を奪う必要は無いだろう。
4人の男を馬車の屋根の部分やケインの馬の鞍に分散して括り付け、リリス達は再び目的地クレメンス領に向かった。
1時間ほど進むと関所に辿り着いた。
ここで捕縛した賊を関所に詰めている兵士に渡し、簡単な事情聴取を受け調書を書いて終わるはずだった。だがダンとケインが事情聴取を受けている間に、リリスも兵士から呼び出されてしまった。
何事かと思って関所の事務所に行くと、ダンと詰め所の兵士が言い合いになっていた。
「どうしたんですか?」
リリスがダンの背後から詰め所の兵士の隊長らしき人物に話し掛けた。40代半ばの色黒でがっしりとした体躯の大柄なおじさんである。
リリスが来たのを知ってダンは振り返り、
「申し訳ありません、お嬢様。でもこの詰め所の隊長がお嬢様の活躍を信じてくれないので・・・」
しまった!
リリスは唖然としてしまった。自分達で捕まえたとでも言ってくれれば良かったのに、事も有ろうに正直に話してしまったらしい。
そりゃあ、信じないわよね。
14歳の子供が4人の賊を捕縛したなんて。
素直で正直なのは良いんだけど、ダンもケインも田舎者だから、上手く話を取り繕う事なんて出来なかったのね。
がっくりと肩を落としたリリスの様子を見て、ダン達も申し訳なさそうに視線を返してきた。
「わざわざお呼び立てをして申し訳ありませんね、お嬢ちゃん。」
如何にも子供だと思って見下したものの言い方だ。貴族が相手なので一応は笑顔と丁寧な言葉で話しかけてきているのだが。
慇懃無礼ってやつよね。
「リリス・ベル・クレメンスです。リリスと呼んでくださって結構です。」
リリスの口調に詰め所の隊長は苦笑いを浮かべた。
その表情を見ながら、厄介な事になってしまったとリリスは思ったのだった。
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