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リゾルタでの休暇6
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リゾルタに来て3日目。
リリス達は王宮に呼ばれ、アイリス王妃に謁見した。キメラ騒動の収拾でライオネスは不在だったが、帰国の際には見送りに来ると言う。
多分使い魔で来るんだろうと、フィリップは苦笑いをしていた。
妊婦と言っても、まだ懐妊から1ヶ月も立っていないのに、アイリス王妃はマタニティのような、ゆったりとしたドレスを着ていた。
元の世界ならまだ気が付かない時期よね。
そう思いつつも、リリスは王妃の腹部に微弱な魔力の流れを感じた。アイリス王妃の魔力とは異なる波動なので、確かに新しい生命が宿っているようだ。
それが分かる事に、我ながら驚くリリスである。
勿論、失礼なので魔力探知などは行っていないのだが。
アイリス王妃との歓談は短い時間に設定されていた。王都での騒動を考えればそれも止むを得ない事だろう。
暫くの歓談の後、リリス達は王宮の外に向かった。
だが王宮のエントランスの付近で、何故か多数の人だかりが見える。
何事だろうと思っていると、その中にはライオネスの姿もあった。
その傍には兵士達と共に数人の獣人らしき商人の姿もある。だがよく見ると普通の獣人ではない。頭部の小さな角、顔の半分を覆う細かい鱗。背丈は2m近く有り精悍な顔つき。
ドラゴニュートだ。
ふわっとしたカラフルな衣装に隠れているが、背中にはワイバーンのような翼が折りたたまれている筈だ。
ミラ王国ではまず見る事のない特殊な竜人族である。その商人達が一様にリリスを見て怪訝そうな表情を見せた。小声でひそひそと話しながらもリリスから目を離さない。
私が何か悪い事でもしたの?
思わずそう言いたくなるような雰囲気だ。
フィリップ王子がライオネスから聞いた話では、昨夜王都で聞き慣れない竜の咆哮が聞こえたと言う。
それってキングドレイクさんの事?
でもとても方向とは言えないような小さな声だったわよ。
そんなものは聞かなかったと言うフィリップ王子に、一人の商人が真剣な表情で説明し始めた。
「あれは間違いなく巨大な古代竜の咆哮だった。人族には認識出来ない波長で広範囲に広がっていたのだよ。」
「高位の竜は人族にとっても脅威だろうが、我々の種族にとっても脅威なのだ。同じ竜の系譜に属するが故に、時として隷属を求められる事も有る。」
そう言ってドラゴニュートの商人は表情を一層曇らせた。
「突然高位の竜が出現すれば、現在の我々の生存範囲が脅かされてしまう。今まで苦心して保ってきたバランスが大きく崩れてしまうのだよ。」
「ところで・・・・・」
そう言いながらその商人はリリスの顔を見つめた。
「昨夜の竜の気配がこの少女から仄かに感じられるのは何故なんだ?」
他の商人達もリリスを見つめた。
拙いわね。
私の魔力にキングドレイクさんの気配が移ったのかしら?
リリスは自分のステータスを確認していなかったことを悔いた。
どのみち獣性スキルの最適化のために時間がかかるだろうと思っていたからだ。
咄嗟にリリスは解析スキルを発動させた。
昨夜の竜からコピーしたスキルは人族用にすでに最適化されているの?
『いいえ。まだしばらく時間が掛かります。かなり特殊なものですので。』
そうでしょうね。
それで竜の気配が私の魔力に移っているって事はあるの?
『ドラゴニュートの感性は良く分かりません。でも何かしら感じるとすれば竜の加護でしょうね。』
えっ?
キングドレイクさんは私に加護を残したの?
『そうですね。消えて行く際に残したようで、当初は実体化しておらず判別不能でしたが、今朝加護としてステータスに実体化してきました。』
ステータスに上がっているのね。
どう言う表現になっているの?
『ステータスでは<覇竜の遺志を継ぐ者>となっています。』
ちょっと待ってよ!
それって他の竜に知られたら喧嘩を吹っ掛けられるわよ。
キングドレイクさんったら、勝手にスキルをコピーしたから、嫌がらせにそれを残したのかしら?
『それは無いと思いますよ。それにこの加護は単体でも機能しますが、どうやら竜からコピーした他のスキルと連携・連動出来るようです。』
う~ん。
スキルが全て最適化されないと全容が分からないわね。
戸惑うリリスにライオネスがにじり寄ってきた。
「リリス君。君は何かを知っているようだね。怒らないから白状しなさい。」
何となく幼児扱いされているリリスだ。ライオネスの笑顔が如何にもわざとらしい。
この状況だと多少の事は話さざるを得ないわね。
リリスは宝玉の中に寿命間近い竜が封じ込められていて、宝玉から出してくれと哀願されたと言う筋書きで話し始めた。
すでに生命反応も消えかかっていたので、宝玉から出しても問題ないと判断した事。
実際宝玉から出てきたのは竜の形態すら保てない小さな光の球だった事。
それらを付け加え、最後に竜がリリスの魔力の中に消えて行った事を話した。
「昨日の夜に、そんな事があったのね。」
不思議そうにメリンダ王女もうなづいた。
だがリリスの最後の話にドラゴニュート達がざわめいた。
「魔力の中に消えて行っただと・・・・・」
「それは竜が後継者を選んだ際の行為なのだが、まさか・・・・」
うっ!
拙いわね。
変な疑問を持たせちゃったかしら。
リリスはえへへと軽く笑いながら、
「種族が違いますよ。人族が竜の後継者になる筈がないですよ。それにこんなに小さな魔力の球だったのですから。」
そう言って指でサイズを示すリリスに、ドラゴニュート達も苦笑いを浮かべた。
「そうだよな。人族が、しかもこんな小娘が高位の竜の後継者になる筈は無いよな。」
小娘で悪かったわねと思いつつ、リリスは照れ笑いで誤魔化した。
多少の疑問は感じつつも、ドラゴニュート達はひとまず安心した様子でその場を離れて行った。何処までリリスの話を信じてくれたかは分からないのだが。
ライオネスも安心した様子でリリス達に別れを告げてその場を離れた。
「まあ、色々とあったが、とりあえず帰ろうかね。」
フィリップ王子はそう言いながらリリスとメリンダ王女を促し、3人はホテルへと戻って行った。
身支度を整え、転移の魔石で帰路に就いたのはその1時間後だった。
リリスとメリンダ王女が学生寮に戻ったのはその日の夕方だった。
明日からまた授業があるので学生達も寮に戻ってきている。
リリスが自室に戻ると、「お帰り。」というサラの声が聞こえてきた。
これが普通なのよね。
ここでまた色々な使い魔にお帰りと言われても、疲れるだけだわ。
そう思ったリリスは安堵の笑みを浮かべ、「ただいま。」と答えてサラにお土産を手渡した。
それはリゾルタの王都で買ったスカーフで、異国情緒が感じられるデザインのものだ。
礼を言いながらサラはスカーフを首に巻いてみた。
「リゾルタって私はまだ行ったことが無いのよね。今度案内してよ。」
「そうね。女子旅なら楽しいかもね。」
そう言ったリリスの言葉の裏には、王族の付き添いは疲れると言う思いがあった。それはリリスの最近の動向を目にしているサラも理解出来るところだ。
ソファに座ってリゾルタでの出来事を話すと、サラはじっと聞き入っていた。
「リリスって本当によくやっているわよね。私なんて真似できないわ。」
感心しているサラに向けて、リリスは首を横に振った。
「そうじゃないのよ。只巻き込まれているだけなのよ。流されるままになっているのかも知れないわ。」
それはリリスの本心でもある。何故か色々な雑事に巻き込まれてしまう。そう言う星の元に生まれてきたのかも知れない。
だが気に成る事も有る。
「でも、私って上級貴族の人達から目をつけられていないかしら? 最近王族の動向に付き合わされている事が多いから・・・」
リリスの言葉にサラは笑いながら、ゆっくりと首を横に振った。
「それはリリスの考え過ぎよ。実際、上級貴族だって王族を連れてダンジョンに潜りたいなんて思わないし、キメラ退治に行きたいなんて思わないわ。あの人達は基本的に身体を張るのを嫌がるのよ。一応上級貴族と言う立場があるから王族には忠誠を示すけどね。」
「リリスみたいにガチで命を掛けないわよ。」
「そう言われると微妙だわ。私ってバカみたいな事をしているのかしら?」
「そんな自虐的な事を言わないでよ、リリス。誰もがあんたには一目置いているんだからね。」
そうなのかなあ。
リリスはサラの言葉に感謝しつつ、明日の授業の準備を始めた。
その夜。
サラが寝入ったころに解析スキルが発動した。
『竜からコピーしたスキルの最適化が完了しました。』
ようやく終わったのね。
リリスはベッドの中で、自分のステータスを確かめた。
**************
リリス・ベル・クレメンス
種族:人族 レベル21
年齢:14
体力:1100
魔力:3500
属性:土・火
魔法:ファイヤーボール レベル5+++
ファイヤーボルト レベル7+++
アースウォール レベル7
加圧 レベル5+
アースランス レベル3
硬化 レベル3
(秘匿領域)
属性:水・聖・闇(制限付き)
魔法:ウォータースプラッシュ レベル1
ウォーターカッター レベル1
ヒール レベル1+ (親和性による補正有り)
液状化 レベル15 (制限付き)
黒炎 レベル2 (制限付き)
黒炎錬成 レベル2 (制限付き)
スキル:鑑定 レベル3
投擲 レベル3
魔力吸引(P・A) レベル3
魔力誘導 レベル3 (獣性要素による高度補正有り)
探知 レベル4++ (獣性要素による高度補正有り)
毒生成 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)
解毒 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)
毒耐性 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)
火力増幅(加護と連携可能)
火力凝縮(加護と連携可能)
亜空間シールド(P・A)(加護と連携可能)
減圧(重力操作)レベル5+
調合 レベル2
魔装(P・A) (妖精化)
魔金属錬成 レベル1++(高度補正有り)
属性付与 レベル1++(高度補正有り)
スキル特性付与 レベル1++(高度補正有り)
呪詛構築 (データ制限有り)
勇者の加護(下位互換)
覇竜の遺志を継ぐ者
解析
最適化
**************
魔力量が上がっているわね。
それに火魔法のレベルが上がっている。火力増幅と火力凝縮のスキルも頂いたのね。でもこの亜空間シールドと減圧は何?
『それも竜由来のスキルですよ。亜空間シールドは耐熱用のスキルですね。』
敵や同族の攻撃からの防御よね。
『それもありますが、むしろ自分の放つ炎熱からの防御を兼ねているようです。』
そんなの必要なの?
『普通のファイヤーボールなら必要ないかも知れませんが、その火球に火力増幅と火力凝縮のスキルを重ね掛けする際には必要かと思われます。』
要するにブレスを放つ際に発動するのね。でも私は火を噴かないわよ。
それでこの減圧は何?
『減圧は重力操作のスキルですね。竜が飛ぶときに発動するスキルでしょう。』
うんうん、それは理解出来るわ。あの巨大な竜が空を飛ぶ為には、重力の法則を捻じ曲げる必要があるものね。
後、問題はこの加護ね。覇竜の遺志を継ぐ者なんて仰々しいネーミングだけど、どう言う効果があるの?
『平常時は魔力増幅と若干の体力増強ですね。でもこの加護は生命の危機に瀕した時に本来の機能を発揮するようです。』
『その詳細は平常時には不明ですが、火力増幅や火力凝縮や亜空間シールドと連携するように組み込まれている事は分かっています。』
本当の危機に瀕した時でないと分からないって事ね。そうならないように祈るだけだわ。
それで、あのドラゴニュート達が言っていたように、私って竜の気配がするの?
『それは分かりません。彼等の特殊な感覚では感じるのかも知れませんね。でも強そうで良いじゃないですか。』
私はそんな事を願っていないわよ。
毒を吐き、魔装で尻尾と羽が生え、魔力吸引で強引に魔力を奪う。その上に竜の気配がするのってどうなのよ?
これで増々人間離れしてしまったように感じるんだけどねえ。
『魔物からも一目置かれる事になりますよ。』
あんたは私を魔王にでもしたいのかしらね。もう良いわ、寝るから。とりあえずありがとう。
リリスは解析スキルにコピーした獣性スキルの最適化への礼を告げ、大きな欠伸をすると深い眠りに落ちて行った。
眠りに落ちる寸前に、魔王を目指すのも良いかもねと言う解析スキルの呟きを聞きながら・・・・・。
リリス達は王宮に呼ばれ、アイリス王妃に謁見した。キメラ騒動の収拾でライオネスは不在だったが、帰国の際には見送りに来ると言う。
多分使い魔で来るんだろうと、フィリップは苦笑いをしていた。
妊婦と言っても、まだ懐妊から1ヶ月も立っていないのに、アイリス王妃はマタニティのような、ゆったりとしたドレスを着ていた。
元の世界ならまだ気が付かない時期よね。
そう思いつつも、リリスは王妃の腹部に微弱な魔力の流れを感じた。アイリス王妃の魔力とは異なる波動なので、確かに新しい生命が宿っているようだ。
それが分かる事に、我ながら驚くリリスである。
勿論、失礼なので魔力探知などは行っていないのだが。
アイリス王妃との歓談は短い時間に設定されていた。王都での騒動を考えればそれも止むを得ない事だろう。
暫くの歓談の後、リリス達は王宮の外に向かった。
だが王宮のエントランスの付近で、何故か多数の人だかりが見える。
何事だろうと思っていると、その中にはライオネスの姿もあった。
その傍には兵士達と共に数人の獣人らしき商人の姿もある。だがよく見ると普通の獣人ではない。頭部の小さな角、顔の半分を覆う細かい鱗。背丈は2m近く有り精悍な顔つき。
ドラゴニュートだ。
ふわっとしたカラフルな衣装に隠れているが、背中にはワイバーンのような翼が折りたたまれている筈だ。
ミラ王国ではまず見る事のない特殊な竜人族である。その商人達が一様にリリスを見て怪訝そうな表情を見せた。小声でひそひそと話しながらもリリスから目を離さない。
私が何か悪い事でもしたの?
思わずそう言いたくなるような雰囲気だ。
フィリップ王子がライオネスから聞いた話では、昨夜王都で聞き慣れない竜の咆哮が聞こえたと言う。
それってキングドレイクさんの事?
でもとても方向とは言えないような小さな声だったわよ。
そんなものは聞かなかったと言うフィリップ王子に、一人の商人が真剣な表情で説明し始めた。
「あれは間違いなく巨大な古代竜の咆哮だった。人族には認識出来ない波長で広範囲に広がっていたのだよ。」
「高位の竜は人族にとっても脅威だろうが、我々の種族にとっても脅威なのだ。同じ竜の系譜に属するが故に、時として隷属を求められる事も有る。」
そう言ってドラゴニュートの商人は表情を一層曇らせた。
「突然高位の竜が出現すれば、現在の我々の生存範囲が脅かされてしまう。今まで苦心して保ってきたバランスが大きく崩れてしまうのだよ。」
「ところで・・・・・」
そう言いながらその商人はリリスの顔を見つめた。
「昨夜の竜の気配がこの少女から仄かに感じられるのは何故なんだ?」
他の商人達もリリスを見つめた。
拙いわね。
私の魔力にキングドレイクさんの気配が移ったのかしら?
リリスは自分のステータスを確認していなかったことを悔いた。
どのみち獣性スキルの最適化のために時間がかかるだろうと思っていたからだ。
咄嗟にリリスは解析スキルを発動させた。
昨夜の竜からコピーしたスキルは人族用にすでに最適化されているの?
『いいえ。まだしばらく時間が掛かります。かなり特殊なものですので。』
そうでしょうね。
それで竜の気配が私の魔力に移っているって事はあるの?
『ドラゴニュートの感性は良く分かりません。でも何かしら感じるとすれば竜の加護でしょうね。』
えっ?
キングドレイクさんは私に加護を残したの?
『そうですね。消えて行く際に残したようで、当初は実体化しておらず判別不能でしたが、今朝加護としてステータスに実体化してきました。』
ステータスに上がっているのね。
どう言う表現になっているの?
『ステータスでは<覇竜の遺志を継ぐ者>となっています。』
ちょっと待ってよ!
それって他の竜に知られたら喧嘩を吹っ掛けられるわよ。
キングドレイクさんったら、勝手にスキルをコピーしたから、嫌がらせにそれを残したのかしら?
『それは無いと思いますよ。それにこの加護は単体でも機能しますが、どうやら竜からコピーした他のスキルと連携・連動出来るようです。』
う~ん。
スキルが全て最適化されないと全容が分からないわね。
戸惑うリリスにライオネスがにじり寄ってきた。
「リリス君。君は何かを知っているようだね。怒らないから白状しなさい。」
何となく幼児扱いされているリリスだ。ライオネスの笑顔が如何にもわざとらしい。
この状況だと多少の事は話さざるを得ないわね。
リリスは宝玉の中に寿命間近い竜が封じ込められていて、宝玉から出してくれと哀願されたと言う筋書きで話し始めた。
すでに生命反応も消えかかっていたので、宝玉から出しても問題ないと判断した事。
実際宝玉から出てきたのは竜の形態すら保てない小さな光の球だった事。
それらを付け加え、最後に竜がリリスの魔力の中に消えて行った事を話した。
「昨日の夜に、そんな事があったのね。」
不思議そうにメリンダ王女もうなづいた。
だがリリスの最後の話にドラゴニュート達がざわめいた。
「魔力の中に消えて行っただと・・・・・」
「それは竜が後継者を選んだ際の行為なのだが、まさか・・・・」
うっ!
拙いわね。
変な疑問を持たせちゃったかしら。
リリスはえへへと軽く笑いながら、
「種族が違いますよ。人族が竜の後継者になる筈がないですよ。それにこんなに小さな魔力の球だったのですから。」
そう言って指でサイズを示すリリスに、ドラゴニュート達も苦笑いを浮かべた。
「そうだよな。人族が、しかもこんな小娘が高位の竜の後継者になる筈は無いよな。」
小娘で悪かったわねと思いつつ、リリスは照れ笑いで誤魔化した。
多少の疑問は感じつつも、ドラゴニュート達はひとまず安心した様子でその場を離れて行った。何処までリリスの話を信じてくれたかは分からないのだが。
ライオネスも安心した様子でリリス達に別れを告げてその場を離れた。
「まあ、色々とあったが、とりあえず帰ろうかね。」
フィリップ王子はそう言いながらリリスとメリンダ王女を促し、3人はホテルへと戻って行った。
身支度を整え、転移の魔石で帰路に就いたのはその1時間後だった。
リリスとメリンダ王女が学生寮に戻ったのはその日の夕方だった。
明日からまた授業があるので学生達も寮に戻ってきている。
リリスが自室に戻ると、「お帰り。」というサラの声が聞こえてきた。
これが普通なのよね。
ここでまた色々な使い魔にお帰りと言われても、疲れるだけだわ。
そう思ったリリスは安堵の笑みを浮かべ、「ただいま。」と答えてサラにお土産を手渡した。
それはリゾルタの王都で買ったスカーフで、異国情緒が感じられるデザインのものだ。
礼を言いながらサラはスカーフを首に巻いてみた。
「リゾルタって私はまだ行ったことが無いのよね。今度案内してよ。」
「そうね。女子旅なら楽しいかもね。」
そう言ったリリスの言葉の裏には、王族の付き添いは疲れると言う思いがあった。それはリリスの最近の動向を目にしているサラも理解出来るところだ。
ソファに座ってリゾルタでの出来事を話すと、サラはじっと聞き入っていた。
「リリスって本当によくやっているわよね。私なんて真似できないわ。」
感心しているサラに向けて、リリスは首を横に振った。
「そうじゃないのよ。只巻き込まれているだけなのよ。流されるままになっているのかも知れないわ。」
それはリリスの本心でもある。何故か色々な雑事に巻き込まれてしまう。そう言う星の元に生まれてきたのかも知れない。
だが気に成る事も有る。
「でも、私って上級貴族の人達から目をつけられていないかしら? 最近王族の動向に付き合わされている事が多いから・・・」
リリスの言葉にサラは笑いながら、ゆっくりと首を横に振った。
「それはリリスの考え過ぎよ。実際、上級貴族だって王族を連れてダンジョンに潜りたいなんて思わないし、キメラ退治に行きたいなんて思わないわ。あの人達は基本的に身体を張るのを嫌がるのよ。一応上級貴族と言う立場があるから王族には忠誠を示すけどね。」
「リリスみたいにガチで命を掛けないわよ。」
「そう言われると微妙だわ。私ってバカみたいな事をしているのかしら?」
「そんな自虐的な事を言わないでよ、リリス。誰もがあんたには一目置いているんだからね。」
そうなのかなあ。
リリスはサラの言葉に感謝しつつ、明日の授業の準備を始めた。
その夜。
サラが寝入ったころに解析スキルが発動した。
『竜からコピーしたスキルの最適化が完了しました。』
ようやく終わったのね。
リリスはベッドの中で、自分のステータスを確かめた。
**************
リリス・ベル・クレメンス
種族:人族 レベル21
年齢:14
体力:1100
魔力:3500
属性:土・火
魔法:ファイヤーボール レベル5+++
ファイヤーボルト レベル7+++
アースウォール レベル7
加圧 レベル5+
アースランス レベル3
硬化 レベル3
(秘匿領域)
属性:水・聖・闇(制限付き)
魔法:ウォータースプラッシュ レベル1
ウォーターカッター レベル1
ヒール レベル1+ (親和性による補正有り)
液状化 レベル15 (制限付き)
黒炎 レベル2 (制限付き)
黒炎錬成 レベル2 (制限付き)
スキル:鑑定 レベル3
投擲 レベル3
魔力吸引(P・A) レベル3
魔力誘導 レベル3 (獣性要素による高度補正有り)
探知 レベル4++ (獣性要素による高度補正有り)
毒生成 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)
解毒 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)
毒耐性 レベル4+ (獣性要素による高度補正有り)
火力増幅(加護と連携可能)
火力凝縮(加護と連携可能)
亜空間シールド(P・A)(加護と連携可能)
減圧(重力操作)レベル5+
調合 レベル2
魔装(P・A) (妖精化)
魔金属錬成 レベル1++(高度補正有り)
属性付与 レベル1++(高度補正有り)
スキル特性付与 レベル1++(高度補正有り)
呪詛構築 (データ制限有り)
勇者の加護(下位互換)
覇竜の遺志を継ぐ者
解析
最適化
**************
魔力量が上がっているわね。
それに火魔法のレベルが上がっている。火力増幅と火力凝縮のスキルも頂いたのね。でもこの亜空間シールドと減圧は何?
『それも竜由来のスキルですよ。亜空間シールドは耐熱用のスキルですね。』
敵や同族の攻撃からの防御よね。
『それもありますが、むしろ自分の放つ炎熱からの防御を兼ねているようです。』
そんなの必要なの?
『普通のファイヤーボールなら必要ないかも知れませんが、その火球に火力増幅と火力凝縮のスキルを重ね掛けする際には必要かと思われます。』
要するにブレスを放つ際に発動するのね。でも私は火を噴かないわよ。
それでこの減圧は何?
『減圧は重力操作のスキルですね。竜が飛ぶときに発動するスキルでしょう。』
うんうん、それは理解出来るわ。あの巨大な竜が空を飛ぶ為には、重力の法則を捻じ曲げる必要があるものね。
後、問題はこの加護ね。覇竜の遺志を継ぐ者なんて仰々しいネーミングだけど、どう言う効果があるの?
『平常時は魔力増幅と若干の体力増強ですね。でもこの加護は生命の危機に瀕した時に本来の機能を発揮するようです。』
『その詳細は平常時には不明ですが、火力増幅や火力凝縮や亜空間シールドと連携するように組み込まれている事は分かっています。』
本当の危機に瀕した時でないと分からないって事ね。そうならないように祈るだけだわ。
それで、あのドラゴニュート達が言っていたように、私って竜の気配がするの?
『それは分かりません。彼等の特殊な感覚では感じるのかも知れませんね。でも強そうで良いじゃないですか。』
私はそんな事を願っていないわよ。
毒を吐き、魔装で尻尾と羽が生え、魔力吸引で強引に魔力を奪う。その上に竜の気配がするのってどうなのよ?
これで増々人間離れしてしまったように感じるんだけどねえ。
『魔物からも一目置かれる事になりますよ。』
あんたは私を魔王にでもしたいのかしらね。もう良いわ、寝るから。とりあえずありがとう。
リリスは解析スキルにコピーした獣性スキルの最適化への礼を告げ、大きな欠伸をすると深い眠りに落ちて行った。
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それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。
兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。
何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
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