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思い掛けない頂き物
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リゾルタから帰ってきた翌日。
授業前の教室では生徒達の賑やかな話し声が聞こえてきた。休暇を利用して帰省した者も居れば、友人と数人で旅行に行った者も居る。
旅行と言っても短期間の休暇だったので、近場に一泊する程度のものだったようだが、おそらく父兄を交えてのものだったのだろう。
休暇明けの座学は眠気を催す。それでなくてもリゾルタで肉体と魔力を酷使したリリスにはまだ若干の疲れが残っている。
つい生欠伸をしてしまう自分を諫めながら、リリスは授業に臨んだ。
午前の授業を終えた時、リリスは担任のケイト先生から、学舎5階のゲストルームに行くように伝言を受けた。
このゲストルームは主に父兄が学院を訪れた際に使う部屋で、リリスは生徒会の用事で一度使った事がある。
豪華とまでは言えないが、それなりに上品な内装が施されていて、父兄からの評判も良い。
リリスはゲストルームの白い扉をノックして、部屋の中に入った。
大きなソファに座って寛いでいたのは、2人のスーツ姿の若い男性とその2人の間に座る小熊。
見覚えのある使い魔を見てリリスはあっと驚きの声を上げた。
「ライオネス様! どうしてここに?」
リリスを迎えるように2人の男性が立ち上がった。その顔をよく見ると、リゾルタで会ったライオネスの親衛部隊の兵士だ。
スーツ姿で座っていたので良く分からなかったが、立ち上がると大柄でマッチョな体つきが目に入る。
「リリス君。待っていたよ。」
そう言うと小熊はリリスを対面のソファに座るように誘った。
恐縮して座るリリスに笑顔を振り向け、2人の男性が小熊の両側に座る。小熊を守る2人の兵士と言う構図も妙なものだ。
リリスが座ると、ライオネスは早速話を切り出した。
「リリス君、リゾルタでの君の活躍には感謝しているよ。」
「それで今日ここに来た要件だが・・・・・」
また、何か厄介事を持ち込まれるんじゃないでしょうね。
そう思ったリリスは反射的に、訝し気な表情を見せてしまった。
それを見透かしたように小熊は笑いながら、
「今日ここに来たのは、これを君に手渡す為なのだよ。」
そう言って傍に座る兵士に取り出させたのは、手のひらに入るほどの大きさの黒い皮袋だった。
巾着上になっていて何かが入っているようだ。
手渡された皮袋を開けると、中に入っていたのは直径10cmほどで、厚み1cmほどの円盤状の物体だった。外側は黒く中は半透明で硬めのゴムのような感触だ。
何かを輪切りにしたような形状だが、これは何だろうか?
何となく魔力に反応しそうな気配も漂っている。
「それはリゾルタの王宮の宝物庫から持ち出してきたものだ。君はそれを見るのは初めてのようだね。」
「話には聞いた事があるの思うのだが・・・・・それは竜の髭だよ。高位の竜の髭を輪切りにしたものだ。」
竜の髭!
そう聞いてリリスは1年生の時の授業を思い出した。
これは魔力の受容体だ。
魔法使いに活用されている魔力の受容体は多数あるが、その中でも竜の髭は最高級のものとして認識されている。比較的多くの魔力を貯めておけるのだ。
魔力切れを起こすような非常事態に際して、ポーションの代わりに魔力を補填するのが目的で、過去においては高位の魔法使いや武将が戦場に携帯する事が
主な用途だった。
マナポーションの普及もあって最近ではあまり見られないが、瞬時に魔力を補填出来る利便性はポーションに勝るので大切にされている。
「これを私にくださるのですか?」
「そうだよ。先日の王宮での出来事をアイリスに話したところ、これを君に持たせれば良いと言う事になったんだ。」
そう言われても今一つピンとこないリリスである。
その様子に小熊は説明を続けた。
「その竜の髭に君の魔力を注いで携帯すれば良い。そうすれば君から竜の気配がしたとしても、その竜の髭が原因だと説明できるはずだ。」
ああ、そう言う事なのね。
あのドラゴニュート達に察知されて、不審に思われたのを心配してくださったのね。
そう理解してリリスは感謝の思いを小熊に伝えた。
「正直言って僕達には君の魔力に竜の気配があるなんて分からない。君が竜の加護を持っているとしても、それがそんなに重要な事だとも思わない。加護はあくまでも加護だ。お守りのようなものだろうからね。」
「でもドラゴニュート達には若干意味が違ってくるようだ。だから保険だと思って持っていれば良い。今度リゾルタに来る時にはそれを携帯する事を忘れないようにね。」
ふうんとうなづくリリスに小熊は畳みかけるように話を続けた。
「王宮の神殿はあと2週間ほどで修復出来る見込みだ。その際には君にも来てもらうからね。」
「ええっ! 私も行くんですか?」
リリスの驚きを小熊は意にも介せず、
「そうだよ。君も連れて来る様にとユリアから指示されているんだ。」
ユリアがそう言っていたの?
どう言う意図があるのかしら?
「だって授業が・・・・・」
「そんなものは王族同士の話し合いで何とでもなるさ。」
そう言いながら小熊と2人の兵士はソファから立ち上がった。
「僕はこれから義父、つまりミラ王国の国王様にお会いする事になっている。アイリスの様子も聞きたいそうだからね。これで失礼するよ。」
小熊はそう言うと兵士の肩に留まり、手を振ってゲストルームから出て行った。
後に残されたのはリリスである。
話が一方的よねえ。
でも竜の髭を貰ったのだから、感謝しないとね。
そう思ってリリスは早速自分の魔力を竜の髭に注いでみた。だが意外にも竜の髭には魔力がかなり多く蓄積出来るようだ。
魔力を注いだ竜の髭は半透明の本体が仄かに赤みを帯びてきた。
これってマナポーション数本分はあるわよ。
かなりの大容量である。しかも所持者への魔力補充にはほとんど時間が掛からない。聞いていた以上の優れ物なのだ。
気を良くしたリリスは竜の髭を皮袋に戻し、制服のポケットに入れてゲストルームを出た。
ゲストルームのある5階から階段を降りて行く途中で、リリスは何気なく生徒会の部屋に立ち寄った。
放課後に整理する資料を確認する為だったのだが、ドアを開けるとニーナと下級生のエリスが椅子に座って談笑していた。
「あらっ? 珍しいわね、ニーナ。生徒会の部屋に来るなんて、どうしたの?」
リリスの言葉にニーナはえへへと笑いながら、
「エリスとダンジョンチャレンジの打ち合わせをしていたのよ。」
「ダンジョンチャレンジって・・・二人で?」
リリスの疑問も当然だ。ニーナもエリスもすでに何度もダンジョンチャレンジをしている筈なのだが・・・。
不思議がるリリスにエリスが説明を始めた。
「今回はロイド先生の提案なんですよ。ダンジョンチャレンジの特別補講に1回分の枠が残っているそうです。それで、私とニーナ先輩の魔法やスキルの相性が良さそうなので、一度試しにペアで取り組んでみないかって。」
う~ん。
そう言われると確かに魔法やスキルでお互いに補い合えそうねえ。
「それにエリスと話していると、気が合うのよね。」
そう言って愛くるしい笑顔を見せるニーナの表情はいつも以上に明るい。本当に気が合って居そうだ。
「うん。ニーナとエリスが組んだら何処のダンジョンでも大丈夫よ。」
そう言って自分のデスクに回り込むためにリリスはニーナの目の前を通り過ぎた。その時、ニーナがうん?と怪訝そうに唸った。
「リリスから強い魔物の気配がするんだけど・・・」
ニーナがボソッと呟いた。リリスはうっと唸って思わず立ち止まった。
探知能力に長けた人物が此処に居たのだ。
ニーナったら探知スキルのレベルを更に上げたのかしら?
やけに敏感じゃないの。
リリスは制服のポケットから皮袋を取り出し、おかしいなあと呟くニーナの前に置いた。
「魔物の気配がするとしたら、多分それが原因よ。」
リリスの言葉にニーナは首を傾げ、皮袋を手に取りその中を調べた。
「これってもしかして・・・・・」
ニーナが手にした皮袋の中身をエリスはまじまじと見つめ、えっと小さく驚きの声を上げた。
「これって・・・・・竜の髭ですか?」
エリスの目を見つめてリリスはうんとうなづいた。
エリスは興味津々の表情で竜の髭をツンツンと突き、
「私、竜の髭の現物を見るのは初めてです。でも中が血のように赤くてまるで生きているみたい。」
そう言われて改めて竜の髭を見ると、先程よりも赤みが増しているように思える。
生きている筈は無いのに。
「これはリゾルタの王家から貰ったのよ。」
「ああ、それってキメラ退治と神殿修理の褒賞ですね。」
平然と話すエリスにリリスは違和感を覚えた。
「どうしてそれを知っているの?」
「だってメリンダ様がクラスのみんなに話していましたよ。」
メルだ。あの子ったら、相手かまわずべらべらと喋っているのかしら?
あまり吹聴しないで欲しいわね。
私を敵対視する者だって居るかも知れないのに。
チッと心の中で舌打ちしながらもリリスはそれを顔に出さないように心掛けた。
「あまり話題にしないでね。大したことじゃないから・・・」
そう言いながらも引きつりそうになる表情を堪えて、リリスはわざとらしい照れ笑いを見せた。
ニーナを見るとまだ若干納得出来なさそうな表情で、
「う~ん。竜の髭だけじゃなくてリリスからも感じるような気がする・・・・」
小声で呟くニーナの手から龍の髭を奪い取るよう取り上げ、気のせいよと言いながらリリスはそれを皮袋に戻した。
ニーナったら本当に敏感な子ねえ。優秀なスキルを持っているだけに厄介なんだから・・・。
そう思いつつ、リリスは自分のデスクに戻り、資料の整理を始めた。
5分ほど資料を整理して、リリスは生徒会の部屋を後にした。
ニーナとエリスに見送られて、リリスが次に向かったのは、ケイト先生が管理している薬草園だ。
竜からコピーしたスキルを試さなくっちゃね。
リリスは昼食も後回しにして、学舎から薬草園に急ぎ足で向かって行った。
授業前の教室では生徒達の賑やかな話し声が聞こえてきた。休暇を利用して帰省した者も居れば、友人と数人で旅行に行った者も居る。
旅行と言っても短期間の休暇だったので、近場に一泊する程度のものだったようだが、おそらく父兄を交えてのものだったのだろう。
休暇明けの座学は眠気を催す。それでなくてもリゾルタで肉体と魔力を酷使したリリスにはまだ若干の疲れが残っている。
つい生欠伸をしてしまう自分を諫めながら、リリスは授業に臨んだ。
午前の授業を終えた時、リリスは担任のケイト先生から、学舎5階のゲストルームに行くように伝言を受けた。
このゲストルームは主に父兄が学院を訪れた際に使う部屋で、リリスは生徒会の用事で一度使った事がある。
豪華とまでは言えないが、それなりに上品な内装が施されていて、父兄からの評判も良い。
リリスはゲストルームの白い扉をノックして、部屋の中に入った。
大きなソファに座って寛いでいたのは、2人のスーツ姿の若い男性とその2人の間に座る小熊。
見覚えのある使い魔を見てリリスはあっと驚きの声を上げた。
「ライオネス様! どうしてここに?」
リリスを迎えるように2人の男性が立ち上がった。その顔をよく見ると、リゾルタで会ったライオネスの親衛部隊の兵士だ。
スーツ姿で座っていたので良く分からなかったが、立ち上がると大柄でマッチョな体つきが目に入る。
「リリス君。待っていたよ。」
そう言うと小熊はリリスを対面のソファに座るように誘った。
恐縮して座るリリスに笑顔を振り向け、2人の男性が小熊の両側に座る。小熊を守る2人の兵士と言う構図も妙なものだ。
リリスが座ると、ライオネスは早速話を切り出した。
「リリス君、リゾルタでの君の活躍には感謝しているよ。」
「それで今日ここに来た要件だが・・・・・」
また、何か厄介事を持ち込まれるんじゃないでしょうね。
そう思ったリリスは反射的に、訝し気な表情を見せてしまった。
それを見透かしたように小熊は笑いながら、
「今日ここに来たのは、これを君に手渡す為なのだよ。」
そう言って傍に座る兵士に取り出させたのは、手のひらに入るほどの大きさの黒い皮袋だった。
巾着上になっていて何かが入っているようだ。
手渡された皮袋を開けると、中に入っていたのは直径10cmほどで、厚み1cmほどの円盤状の物体だった。外側は黒く中は半透明で硬めのゴムのような感触だ。
何かを輪切りにしたような形状だが、これは何だろうか?
何となく魔力に反応しそうな気配も漂っている。
「それはリゾルタの王宮の宝物庫から持ち出してきたものだ。君はそれを見るのは初めてのようだね。」
「話には聞いた事があるの思うのだが・・・・・それは竜の髭だよ。高位の竜の髭を輪切りにしたものだ。」
竜の髭!
そう聞いてリリスは1年生の時の授業を思い出した。
これは魔力の受容体だ。
魔法使いに活用されている魔力の受容体は多数あるが、その中でも竜の髭は最高級のものとして認識されている。比較的多くの魔力を貯めておけるのだ。
魔力切れを起こすような非常事態に際して、ポーションの代わりに魔力を補填するのが目的で、過去においては高位の魔法使いや武将が戦場に携帯する事が
主な用途だった。
マナポーションの普及もあって最近ではあまり見られないが、瞬時に魔力を補填出来る利便性はポーションに勝るので大切にされている。
「これを私にくださるのですか?」
「そうだよ。先日の王宮での出来事をアイリスに話したところ、これを君に持たせれば良いと言う事になったんだ。」
そう言われても今一つピンとこないリリスである。
その様子に小熊は説明を続けた。
「その竜の髭に君の魔力を注いで携帯すれば良い。そうすれば君から竜の気配がしたとしても、その竜の髭が原因だと説明できるはずだ。」
ああ、そう言う事なのね。
あのドラゴニュート達に察知されて、不審に思われたのを心配してくださったのね。
そう理解してリリスは感謝の思いを小熊に伝えた。
「正直言って僕達には君の魔力に竜の気配があるなんて分からない。君が竜の加護を持っているとしても、それがそんなに重要な事だとも思わない。加護はあくまでも加護だ。お守りのようなものだろうからね。」
「でもドラゴニュート達には若干意味が違ってくるようだ。だから保険だと思って持っていれば良い。今度リゾルタに来る時にはそれを携帯する事を忘れないようにね。」
ふうんとうなづくリリスに小熊は畳みかけるように話を続けた。
「王宮の神殿はあと2週間ほどで修復出来る見込みだ。その際には君にも来てもらうからね。」
「ええっ! 私も行くんですか?」
リリスの驚きを小熊は意にも介せず、
「そうだよ。君も連れて来る様にとユリアから指示されているんだ。」
ユリアがそう言っていたの?
どう言う意図があるのかしら?
「だって授業が・・・・・」
「そんなものは王族同士の話し合いで何とでもなるさ。」
そう言いながら小熊と2人の兵士はソファから立ち上がった。
「僕はこれから義父、つまりミラ王国の国王様にお会いする事になっている。アイリスの様子も聞きたいそうだからね。これで失礼するよ。」
小熊はそう言うと兵士の肩に留まり、手を振ってゲストルームから出て行った。
後に残されたのはリリスである。
話が一方的よねえ。
でも竜の髭を貰ったのだから、感謝しないとね。
そう思ってリリスは早速自分の魔力を竜の髭に注いでみた。だが意外にも竜の髭には魔力がかなり多く蓄積出来るようだ。
魔力を注いだ竜の髭は半透明の本体が仄かに赤みを帯びてきた。
これってマナポーション数本分はあるわよ。
かなりの大容量である。しかも所持者への魔力補充にはほとんど時間が掛からない。聞いていた以上の優れ物なのだ。
気を良くしたリリスは竜の髭を皮袋に戻し、制服のポケットに入れてゲストルームを出た。
ゲストルームのある5階から階段を降りて行く途中で、リリスは何気なく生徒会の部屋に立ち寄った。
放課後に整理する資料を確認する為だったのだが、ドアを開けるとニーナと下級生のエリスが椅子に座って談笑していた。
「あらっ? 珍しいわね、ニーナ。生徒会の部屋に来るなんて、どうしたの?」
リリスの言葉にニーナはえへへと笑いながら、
「エリスとダンジョンチャレンジの打ち合わせをしていたのよ。」
「ダンジョンチャレンジって・・・二人で?」
リリスの疑問も当然だ。ニーナもエリスもすでに何度もダンジョンチャレンジをしている筈なのだが・・・。
不思議がるリリスにエリスが説明を始めた。
「今回はロイド先生の提案なんですよ。ダンジョンチャレンジの特別補講に1回分の枠が残っているそうです。それで、私とニーナ先輩の魔法やスキルの相性が良さそうなので、一度試しにペアで取り組んでみないかって。」
う~ん。
そう言われると確かに魔法やスキルでお互いに補い合えそうねえ。
「それにエリスと話していると、気が合うのよね。」
そう言って愛くるしい笑顔を見せるニーナの表情はいつも以上に明るい。本当に気が合って居そうだ。
「うん。ニーナとエリスが組んだら何処のダンジョンでも大丈夫よ。」
そう言って自分のデスクに回り込むためにリリスはニーナの目の前を通り過ぎた。その時、ニーナがうん?と怪訝そうに唸った。
「リリスから強い魔物の気配がするんだけど・・・」
ニーナがボソッと呟いた。リリスはうっと唸って思わず立ち止まった。
探知能力に長けた人物が此処に居たのだ。
ニーナったら探知スキルのレベルを更に上げたのかしら?
やけに敏感じゃないの。
リリスは制服のポケットから皮袋を取り出し、おかしいなあと呟くニーナの前に置いた。
「魔物の気配がするとしたら、多分それが原因よ。」
リリスの言葉にニーナは首を傾げ、皮袋を手に取りその中を調べた。
「これってもしかして・・・・・」
ニーナが手にした皮袋の中身をエリスはまじまじと見つめ、えっと小さく驚きの声を上げた。
「これって・・・・・竜の髭ですか?」
エリスの目を見つめてリリスはうんとうなづいた。
エリスは興味津々の表情で竜の髭をツンツンと突き、
「私、竜の髭の現物を見るのは初めてです。でも中が血のように赤くてまるで生きているみたい。」
そう言われて改めて竜の髭を見ると、先程よりも赤みが増しているように思える。
生きている筈は無いのに。
「これはリゾルタの王家から貰ったのよ。」
「ああ、それってキメラ退治と神殿修理の褒賞ですね。」
平然と話すエリスにリリスは違和感を覚えた。
「どうしてそれを知っているの?」
「だってメリンダ様がクラスのみんなに話していましたよ。」
メルだ。あの子ったら、相手かまわずべらべらと喋っているのかしら?
あまり吹聴しないで欲しいわね。
私を敵対視する者だって居るかも知れないのに。
チッと心の中で舌打ちしながらもリリスはそれを顔に出さないように心掛けた。
「あまり話題にしないでね。大したことじゃないから・・・」
そう言いながらも引きつりそうになる表情を堪えて、リリスはわざとらしい照れ笑いを見せた。
ニーナを見るとまだ若干納得出来なさそうな表情で、
「う~ん。竜の髭だけじゃなくてリリスからも感じるような気がする・・・・」
小声で呟くニーナの手から龍の髭を奪い取るよう取り上げ、気のせいよと言いながらリリスはそれを皮袋に戻した。
ニーナったら本当に敏感な子ねえ。優秀なスキルを持っているだけに厄介なんだから・・・。
そう思いつつ、リリスは自分のデスクに戻り、資料の整理を始めた。
5分ほど資料を整理して、リリスは生徒会の部屋を後にした。
ニーナとエリスに見送られて、リリスが次に向かったのは、ケイト先生が管理している薬草園だ。
竜からコピーしたスキルを試さなくっちゃね。
リリスは昼食も後回しにして、学舎から薬草園に急ぎ足で向かって行った。
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