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魔族からのギフト1
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魔大陸で広域多重シールドの修復を行なってから数日後。
リリスは夕食後に学生寮の最上階に呼び出された。
呼び出したのはメリンダ王女である。
緊急の用件ではないと言うので、リリスも気軽に最上階への階段を昇った。
いつも通りにメイド長のセラのチェックを受け、王女の部屋に入ると、そこにはメリンダ王女とフィリップ王子が座っていた。
二人の対面に座り、挨拶を交わすと、メリンダ王女の指図で紅茶が運ばれて来る。
その馥郁とした香りを堪能しながら、注がれた紅茶を飲み、リリスはふうっと安堵のため息をついた。
ここ数日、授業での提出レポートが溜まっていたのと生徒会での作業が重なり、ハードな日々を送っていたリリスである。
その様子を見ながらメリンダ王女は頬を緩めた。
「お疲れのようね、リリス。たまには息抜きした方が良いわよ。」
メリンダ王女の言葉にリリスはうんと頷き、ソファの背に軽くもたれ掛かった。
メリンダ王女はリリスの仕草を見てうふふと小さく笑いながら、懐から小さな小箱を取り出しテーブルの上にそっと置いた。
それは陶器で出来た小さな箱で、花々の絵が染め付けられている。
所々が傷み、傷がついているので、かなり古い物なのだろう。
その小箱から僅かだが、禍々しい妖気が流れ出している様にリリスは感じた。
気になるほどではない。
妖気と言っても大概の人は感じないほどのレベルだ。
少し首を傾げたリリスの仕草を見て、メリンダ王女はうんうんと頷いた。
「流石にリリスは感じ取っているようね。」
「妖気が漂ってくる事?」
「そう。そうなのよ。私には感じられないレベルなんだけど、ロイヤルガードのリノが教えてくれたのよ。」
メリンダ王女はそう言うと、何気に背後の斜め上に視線を向けた。
うんうんと頷いている様子を見ると、誰かと念話でやり取りをしているようだ。
「リリス。リノがあんたに話があるって言ってるわよ。少し相手をしてあげて。」
「ええ、勿論良いわよ。」
リリスの返事の直後に、リノからの念話がリリスの脳裏に届いた。
(リノです。お寛ぎ中に申し訳ありません。)
(どうしたのよ?)
リリスの返答にリノは少し間を置いた。
(リリス様の魔力の波動が以前とかなり違っていたので、私の部下達が少し戸惑っていまして・・・)
(違っているって、別人だと認識しちゃったって事なの?)
(いえ、そう言う事ではありません。リリス様の魔力の波動はそのまま変わっていないのですが、色々な要素が塗り重ねられて、かなり重厚なものになってしまっていますね。その上に闇魔法の魔力の波動がかなり特異なものになっていて、まるで・・・魔族やアンデッドの強大な魔物のようだと言う者までおります。)
うっ!
妙に敏感な人達ね。
(でもそのアンデッドの強大な魔物って何よ?)
(怒らないで下さいね。例えば闇魔法を極めたデュラハンだとか、100体以上束ねたレイスの集合体だとか・・・)
(う~ん。人を何だと思っているのよ。私は私だからね。でも闇魔法に関しては、体内埋め込み型の特殊な魔道具を貰った事はあるわね。それで闇魔法が強化されたのも事実よ。)
リリスの返答にリノはしばらく沈黙していた。
その間、リリスの身体を精査されているのが分かる。
まあ、調べたければ調べれば良いわよ。
そう思ってリリスは放置していた。
(リリス様。埋め込み型の魔道具の痕跡は有りますが、既に魔力に取り込まれてしまっていますね。それにその一部は変質しつつあるようなのですが、まさかこれって別な形に再構築している過程なのですか?)
う~ん。
拙いわね。
あまり詮索されると困るのよねえ。
(リノ。そこのところは詮索しないで。私だってリノに話せる事と話せない事があるんだから。)
リリスの念話にリノは慌てた様子でハイと答えた。
(分かりました。王族の警護には関係の無い用件でしたね。失礼しました。)
(それにしても闇魔法には過敏に反応するわね。)
(それは私達の出自がダークエルフなので、闇魔法に関してはどうしても気になっちゃうんですよね。)
まあ、それは分からないでも無いわ。
ダークエルフと闇魔法って切っても切れない関係だものね。
(それにしても流石はリリス様ですね。あの遺物から漂う僅かな妖気を探知出来るなんて。)
(まあ、何となく感じただけよ。それであれって何なの?)
(あの小箱の中には魔金属で造られたチョーカーが入っています。おそらくミラ王国の開祖の時代の物かと思われます。)
随分古い物ね。
花の絵柄から考えても女性用のチョーカーよねえ。
もしかして開祖の王妃の持ち物だったりして・・・。
(でもそんなものが妖気を纏うの?)
(極めて稀な現象ですが、チョーカーを構成する魔金属の種類や合金の組成に依るのでしょうね。いずれにしても害を及ぼすほどの物では無さそうですので、ご安心下さい。)
(分かったわ。ありがとう。)
リノとの念話を終え、リリスは改めてテーブルの上の小箱を見つめた。
リリスとリノとの話が終わったと判断し、メリンダ王女は小箱の蓋を開いた。
小箱の中に収められていたのは、幅が2cmほどの金属製のチョーカーだ。
全体に精緻な透かし彫りが施されていて、正面の位置には小さな透明の宝玉が飾られている。
「リノから聞いたと思うけど、これって恐らく開祖の時代の王族の持ち物だと思うわ。王城の宝物庫を整理していたら、古いチェストの底が二重になっていて、そこに隠されていたのを見つけたのよ。」
う~ん。
何となく怪しいわね。
でも呪いが掛けられている気配は無いし、単なるチョーカーなのかも。
メリンダ王女はそのチョーカーを取り出し、自分の首に装着した。
その途端にチョーカーの正面に飾られている宝玉が、仄かに赤く光を放ち始めた。
「メル、それを付けちゃって大丈夫なの?」
リリスの心配を気にもせず、メリンダ王女はチョーカーを上下に動かした。
「大丈夫よ。それにこのチョーカーを装着すると、闇魔法が少し強化されるのを感じるのよ。」
そうなの?
そうすると王族の女性の護身用も兼ねているのかしら?
「メルは随分気に入ったようだね。」
フィリップ王子の言葉にメリンダ王女はうんうんと頷き、リリスの顔をじっと見つめた。
「闇魔法の強化の話が出たついでだけど、使い魔をあんたの肩に憑依させて貰って良いかな?」
「えっ! 今、ここで?」
「そう。今、ここでよ。」
そう言うと、メリンダ王女は自分の使い魔である一つ目の芋虫を召喚した。それをリリスに向けてひょいと投げると、芋虫は器用にリリスの肩に留まり、そのまま魔力の触手を伸ばして肩の部分に固着していく。
それに応じてメリンダ王女は闇魔法の憑依を発動させた。
リリスとの五感の共有から更に進み、リリスの魔力を活用して闇魔法のレベルを上げていく。
その過程でメリンダ王女は自分のステータスを開いてみた。
「うんうん。レベルが予想以上に上がっているわ。ゲルが言っていたように、リリスの闇魔法のレベルが上がっているから、憑依状態を高めると、相乗効果で私の闇魔法のレベルがここまで上がるのね。こうなると実戦で試してみたくなるわねえ。」
「リリス。魔物退治に出掛けるわよ!」
そう言いながらメリンダ王女は意気揚々と立ち上がった。
「メルったら、何を言ってるのよ。」
「だって、試してみたくなったのよ。」
小さな子供のように駄々をこねるメリンダ王女を見かねて、フィリップ王子がスッと立ち上がり、メリンダ王女の両肩を手で押さえて窘めた。
「メル、落ち着けよ。今から何処に行くって言うんだよ。」
フィリップ王子の言葉で我に返ったメリンダ王女は、神妙な表情でそのままソファに座り込んだ。
「そうよねえ。少し興奮し過ぎちゃったわ。」
そう言いながらも、メリンダ王女は何かに気が付いた様子で、ニヤッと笑いながらリリスの目を見つめた。
嫌な予感がするわね。
メリンダ王女の気配に若干引き気味なリリスだが、残念ながらその予感は的中していた。
「そう言えば、アブリル王国の魔物駆除があったわね。来週、軍のマーティンが妹を連れてアブリル王国に行くって聞いたわ。」
「そうよ! それに同行すれば良いのよ!」
メリンダ王女は自分の言葉に興奮し、高笑いをし始めた。
こうなるとリリスとしても逃れられない。
またアブリル王国に行くの?
それにしてもマーティンさんったら、またリリアを連れて行くのかしら?
高笑いをするメリンダ王女を呆れた目で見つめるフィリップ王子の傍で、リリスは若干うんざりしながら来週のスケジュールを想起していた。
その日の夜。
メリンダ王女としばらく談笑していたので、自室に戻ったのはかなり遅い時間になっていた。
既に同室のサラはベッドに入っている。
寝入ったばかりのサラを起こさないように配慮しながら、明日の授業の準備を終えたリリスは、寝支度を済ませてベッドに入った。
だがその途端に解析スキルが発動してしまった。
『お待たせしました。取り込んだブレスレットを魔力として変換し、更にスキル化する作業が全て終了しました。』
このタイミングなの?
これから寝るんだけど。
『随分愛想の無い反応ですね。』
まあ、気にしないで。
今日は色々とあったからね。
それで?
『とりあえずステータスを開いてください。』
解析スキルの指示を受け、リリスはステータスを開いた。
**************
リリス・ベル・クレメンス
種族:人族 レベル26(+2)
年齢:14(+2.5)
体力:1800(+500)
魔力:4800(+500)
属性:土・火・風
魔法:ファイヤーボール レベル7+++
ファイヤーボルト レベル8+++
アースウォール レベル8
加圧 レベル5+
アースランス レベル3
硬化 レベル5
エアカッター レベル4
エアバースト レベル4
(秘匿領域)
属性:水・聖・闇(制限付き)
魔法:ウォータースプラッシュ レベル3
ウォーターカッター レベル3
ヒール レベル2+ (親和性による補正有り)
液状化 レベル18 (制限付き)
黒炎 レベル4 (制限付き)
黒炎錬成 レベル3 (制限付き)
闇操作 レベル5 (魔力誘導との連携により制限無し)
闇の転移 レベル3 (制限付き)
スキル:鑑定 レベル5
投擲 レベル5
魔力吸引(P・A) レベル5++
魔力誘導 レベル5 (獣性要素による高度補正有り)
探知 レベル5++ (獣性要素による高度補正有り)
毒生成 レベル7+ (獣性要素による高度補正有り)
解毒 レベル7+ (獣性要素による高度補正有り)
毒耐性 レベル7+ (獣性要素による高度補正有り)
火力増幅(加護と連携可能)
火力凝縮(加護と連携可能)
亜空間シールド(P・A)(加護と連携可能)
減圧(重力操作)レベル5+
調合 レベル4
魔装(P・A) (妖精化)
魔金属錬成 レベル1++(高度補正有り)
属性付与 レベル1++(高度補正有り)
スキル特性付与 レベル1++(高度補正有り)
呪詛構築 (データ制限有り)
瞬間移動(発動に制限有り)
細胞励起(発動に制限有り)
→ 闇魔法スキル統合管理者(闇魔法の制限突破:発動制限有り)
覇竜の遺志を継ぐ者
風神集結
異世界通行手形(調整中につき発動不可)
世界樹の加護
解析
最適化
**************
この闇魔法スキル統合管理者ってスキルなの?
『スキルの集合体ですね。もはや加護と言った方が良いのかも知れません。』
『発動制限があって30分間有効です。』
『その間、このスキルが闇魔法の制限を突破させ、火魔法や風魔法との連携も強化されます。』
う~ん。
聞く限りでは地味なスキルね。
『そうですね。ですが発動させてみれば分かりますよ。』
そうなのかなあ。
まあ良いわ。
お疲れ様。
もう寝るわね。
リリスはそう念じて眠りに就いた。
だが、この新しいスキルを使う機会が意外にも早く訪れるのだった。
リリスは夕食後に学生寮の最上階に呼び出された。
呼び出したのはメリンダ王女である。
緊急の用件ではないと言うので、リリスも気軽に最上階への階段を昇った。
いつも通りにメイド長のセラのチェックを受け、王女の部屋に入ると、そこにはメリンダ王女とフィリップ王子が座っていた。
二人の対面に座り、挨拶を交わすと、メリンダ王女の指図で紅茶が運ばれて来る。
その馥郁とした香りを堪能しながら、注がれた紅茶を飲み、リリスはふうっと安堵のため息をついた。
ここ数日、授業での提出レポートが溜まっていたのと生徒会での作業が重なり、ハードな日々を送っていたリリスである。
その様子を見ながらメリンダ王女は頬を緩めた。
「お疲れのようね、リリス。たまには息抜きした方が良いわよ。」
メリンダ王女の言葉にリリスはうんと頷き、ソファの背に軽くもたれ掛かった。
メリンダ王女はリリスの仕草を見てうふふと小さく笑いながら、懐から小さな小箱を取り出しテーブルの上にそっと置いた。
それは陶器で出来た小さな箱で、花々の絵が染め付けられている。
所々が傷み、傷がついているので、かなり古い物なのだろう。
その小箱から僅かだが、禍々しい妖気が流れ出している様にリリスは感じた。
気になるほどではない。
妖気と言っても大概の人は感じないほどのレベルだ。
少し首を傾げたリリスの仕草を見て、メリンダ王女はうんうんと頷いた。
「流石にリリスは感じ取っているようね。」
「妖気が漂ってくる事?」
「そう。そうなのよ。私には感じられないレベルなんだけど、ロイヤルガードのリノが教えてくれたのよ。」
メリンダ王女はそう言うと、何気に背後の斜め上に視線を向けた。
うんうんと頷いている様子を見ると、誰かと念話でやり取りをしているようだ。
「リリス。リノがあんたに話があるって言ってるわよ。少し相手をしてあげて。」
「ええ、勿論良いわよ。」
リリスの返事の直後に、リノからの念話がリリスの脳裏に届いた。
(リノです。お寛ぎ中に申し訳ありません。)
(どうしたのよ?)
リリスの返答にリノは少し間を置いた。
(リリス様の魔力の波動が以前とかなり違っていたので、私の部下達が少し戸惑っていまして・・・)
(違っているって、別人だと認識しちゃったって事なの?)
(いえ、そう言う事ではありません。リリス様の魔力の波動はそのまま変わっていないのですが、色々な要素が塗り重ねられて、かなり重厚なものになってしまっていますね。その上に闇魔法の魔力の波動がかなり特異なものになっていて、まるで・・・魔族やアンデッドの強大な魔物のようだと言う者までおります。)
うっ!
妙に敏感な人達ね。
(でもそのアンデッドの強大な魔物って何よ?)
(怒らないで下さいね。例えば闇魔法を極めたデュラハンだとか、100体以上束ねたレイスの集合体だとか・・・)
(う~ん。人を何だと思っているのよ。私は私だからね。でも闇魔法に関しては、体内埋め込み型の特殊な魔道具を貰った事はあるわね。それで闇魔法が強化されたのも事実よ。)
リリスの返答にリノはしばらく沈黙していた。
その間、リリスの身体を精査されているのが分かる。
まあ、調べたければ調べれば良いわよ。
そう思ってリリスは放置していた。
(リリス様。埋め込み型の魔道具の痕跡は有りますが、既に魔力に取り込まれてしまっていますね。それにその一部は変質しつつあるようなのですが、まさかこれって別な形に再構築している過程なのですか?)
う~ん。
拙いわね。
あまり詮索されると困るのよねえ。
(リノ。そこのところは詮索しないで。私だってリノに話せる事と話せない事があるんだから。)
リリスの念話にリノは慌てた様子でハイと答えた。
(分かりました。王族の警護には関係の無い用件でしたね。失礼しました。)
(それにしても闇魔法には過敏に反応するわね。)
(それは私達の出自がダークエルフなので、闇魔法に関してはどうしても気になっちゃうんですよね。)
まあ、それは分からないでも無いわ。
ダークエルフと闇魔法って切っても切れない関係だものね。
(それにしても流石はリリス様ですね。あの遺物から漂う僅かな妖気を探知出来るなんて。)
(まあ、何となく感じただけよ。それであれって何なの?)
(あの小箱の中には魔金属で造られたチョーカーが入っています。おそらくミラ王国の開祖の時代の物かと思われます。)
随分古い物ね。
花の絵柄から考えても女性用のチョーカーよねえ。
もしかして開祖の王妃の持ち物だったりして・・・。
(でもそんなものが妖気を纏うの?)
(極めて稀な現象ですが、チョーカーを構成する魔金属の種類や合金の組成に依るのでしょうね。いずれにしても害を及ぼすほどの物では無さそうですので、ご安心下さい。)
(分かったわ。ありがとう。)
リノとの念話を終え、リリスは改めてテーブルの上の小箱を見つめた。
リリスとリノとの話が終わったと判断し、メリンダ王女は小箱の蓋を開いた。
小箱の中に収められていたのは、幅が2cmほどの金属製のチョーカーだ。
全体に精緻な透かし彫りが施されていて、正面の位置には小さな透明の宝玉が飾られている。
「リノから聞いたと思うけど、これって恐らく開祖の時代の王族の持ち物だと思うわ。王城の宝物庫を整理していたら、古いチェストの底が二重になっていて、そこに隠されていたのを見つけたのよ。」
う~ん。
何となく怪しいわね。
でも呪いが掛けられている気配は無いし、単なるチョーカーなのかも。
メリンダ王女はそのチョーカーを取り出し、自分の首に装着した。
その途端にチョーカーの正面に飾られている宝玉が、仄かに赤く光を放ち始めた。
「メル、それを付けちゃって大丈夫なの?」
リリスの心配を気にもせず、メリンダ王女はチョーカーを上下に動かした。
「大丈夫よ。それにこのチョーカーを装着すると、闇魔法が少し強化されるのを感じるのよ。」
そうなの?
そうすると王族の女性の護身用も兼ねているのかしら?
「メルは随分気に入ったようだね。」
フィリップ王子の言葉にメリンダ王女はうんうんと頷き、リリスの顔をじっと見つめた。
「闇魔法の強化の話が出たついでだけど、使い魔をあんたの肩に憑依させて貰って良いかな?」
「えっ! 今、ここで?」
「そう。今、ここでよ。」
そう言うと、メリンダ王女は自分の使い魔である一つ目の芋虫を召喚した。それをリリスに向けてひょいと投げると、芋虫は器用にリリスの肩に留まり、そのまま魔力の触手を伸ばして肩の部分に固着していく。
それに応じてメリンダ王女は闇魔法の憑依を発動させた。
リリスとの五感の共有から更に進み、リリスの魔力を活用して闇魔法のレベルを上げていく。
その過程でメリンダ王女は自分のステータスを開いてみた。
「うんうん。レベルが予想以上に上がっているわ。ゲルが言っていたように、リリスの闇魔法のレベルが上がっているから、憑依状態を高めると、相乗効果で私の闇魔法のレベルがここまで上がるのね。こうなると実戦で試してみたくなるわねえ。」
「リリス。魔物退治に出掛けるわよ!」
そう言いながらメリンダ王女は意気揚々と立ち上がった。
「メルったら、何を言ってるのよ。」
「だって、試してみたくなったのよ。」
小さな子供のように駄々をこねるメリンダ王女を見かねて、フィリップ王子がスッと立ち上がり、メリンダ王女の両肩を手で押さえて窘めた。
「メル、落ち着けよ。今から何処に行くって言うんだよ。」
フィリップ王子の言葉で我に返ったメリンダ王女は、神妙な表情でそのままソファに座り込んだ。
「そうよねえ。少し興奮し過ぎちゃったわ。」
そう言いながらも、メリンダ王女は何かに気が付いた様子で、ニヤッと笑いながらリリスの目を見つめた。
嫌な予感がするわね。
メリンダ王女の気配に若干引き気味なリリスだが、残念ながらその予感は的中していた。
「そう言えば、アブリル王国の魔物駆除があったわね。来週、軍のマーティンが妹を連れてアブリル王国に行くって聞いたわ。」
「そうよ! それに同行すれば良いのよ!」
メリンダ王女は自分の言葉に興奮し、高笑いをし始めた。
こうなるとリリスとしても逃れられない。
またアブリル王国に行くの?
それにしてもマーティンさんったら、またリリアを連れて行くのかしら?
高笑いをするメリンダ王女を呆れた目で見つめるフィリップ王子の傍で、リリスは若干うんざりしながら来週のスケジュールを想起していた。
その日の夜。
メリンダ王女としばらく談笑していたので、自室に戻ったのはかなり遅い時間になっていた。
既に同室のサラはベッドに入っている。
寝入ったばかりのサラを起こさないように配慮しながら、明日の授業の準備を終えたリリスは、寝支度を済ませてベッドに入った。
だがその途端に解析スキルが発動してしまった。
『お待たせしました。取り込んだブレスレットを魔力として変換し、更にスキル化する作業が全て終了しました。』
このタイミングなの?
これから寝るんだけど。
『随分愛想の無い反応ですね。』
まあ、気にしないで。
今日は色々とあったからね。
それで?
『とりあえずステータスを開いてください。』
解析スキルの指示を受け、リリスはステータスを開いた。
**************
リリス・ベル・クレメンス
種族:人族 レベル26(+2)
年齢:14(+2.5)
体力:1800(+500)
魔力:4800(+500)
属性:土・火・風
魔法:ファイヤーボール レベル7+++
ファイヤーボルト レベル8+++
アースウォール レベル8
加圧 レベル5+
アースランス レベル3
硬化 レベル5
エアカッター レベル4
エアバースト レベル4
(秘匿領域)
属性:水・聖・闇(制限付き)
魔法:ウォータースプラッシュ レベル3
ウォーターカッター レベル3
ヒール レベル2+ (親和性による補正有り)
液状化 レベル18 (制限付き)
黒炎 レベル4 (制限付き)
黒炎錬成 レベル3 (制限付き)
闇操作 レベル5 (魔力誘導との連携により制限無し)
闇の転移 レベル3 (制限付き)
スキル:鑑定 レベル5
投擲 レベル5
魔力吸引(P・A) レベル5++
魔力誘導 レベル5 (獣性要素による高度補正有り)
探知 レベル5++ (獣性要素による高度補正有り)
毒生成 レベル7+ (獣性要素による高度補正有り)
解毒 レベル7+ (獣性要素による高度補正有り)
毒耐性 レベル7+ (獣性要素による高度補正有り)
火力増幅(加護と連携可能)
火力凝縮(加護と連携可能)
亜空間シールド(P・A)(加護と連携可能)
減圧(重力操作)レベル5+
調合 レベル4
魔装(P・A) (妖精化)
魔金属錬成 レベル1++(高度補正有り)
属性付与 レベル1++(高度補正有り)
スキル特性付与 レベル1++(高度補正有り)
呪詛構築 (データ制限有り)
瞬間移動(発動に制限有り)
細胞励起(発動に制限有り)
→ 闇魔法スキル統合管理者(闇魔法の制限突破:発動制限有り)
覇竜の遺志を継ぐ者
風神集結
異世界通行手形(調整中につき発動不可)
世界樹の加護
解析
最適化
**************
この闇魔法スキル統合管理者ってスキルなの?
『スキルの集合体ですね。もはや加護と言った方が良いのかも知れません。』
『発動制限があって30分間有効です。』
『その間、このスキルが闇魔法の制限を突破させ、火魔法や風魔法との連携も強化されます。』
う~ん。
聞く限りでは地味なスキルね。
『そうですね。ですが発動させてみれば分かりますよ。』
そうなのかなあ。
まあ良いわ。
お疲れ様。
もう寝るわね。
リリスはそう念じて眠りに就いた。
だが、この新しいスキルを使う機会が意外にも早く訪れるのだった。
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