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ミクとダンジョン1
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仮装ダンスパーティーの会場。
ミクと亜神達との話を終えたリリスは現場に戻り、在学中最後の仮装ダンスパーティーを楽しんだ。
その翌日、リリスは職員室でケイト先生から特別な依頼を受けた。
昨年サリナの面倒を見て貰ったように、今年も来年度入学予定の生徒の学内案内をして欲しいそうだ。
「警備のチャーリーさんの姪に当たる子だそうよ。名前はミクとしか聞いていないんだけどね。」
やはりミクだわ。
それにしてもまたミラ王国の公式記録を改ざんしたのね。
チャーリーったら、何処までもいい加減なんだから。
心の中ではチャーリーを非難しつつ、リリスは笑顔でケイトの申し出をとりあえず了承した。
「それでね。チャーリーさんからの依頼でミクさんをシトのダンジョンに連れて行って欲しいのよ。リリスさんが同行してくれれば安心出来るからね。それに万一の事態に備えてチャーリーさんも、リアルタイムで監視すると言って下さったの。」
「リリスさん、お願い出来る?」
うっ!
ミクをシトのダンジョンに連れていく為に、随分手の込んだ事をするわね。
レイチェルに頼んで勝手に潜入すれば良いだけなのに。
「ええ、良いですよ。」
リリスはチャーリーの意図をあれこれと勘繰りながら返答をした。
「ありがとう、リリスさん。助かるわ。それでね、明日の午前中に、学舎の地下の訓練場で集合と言う事になっているのよ。
午前中の授業が潰れちゃうけど、よろしくね。」
ケイトはそう言うと軽く頭を下げた。
ケイト先生、頭を下げるような案件じゃないですよ。
そう思いながら、リリスも会釈して職員室を後にした。
翌日。
午前中の授業が始まる時間に、リリスは許可を取って教室を抜け出し、学舎地下の訓練場に足を運んだ。
その場に居たのはチャーリーとミクだ。
ちなみにリリスもミクもダンジョン探索用にレザーアーマーとショートブーツを着用している。
チャーリーはお気に入りの警備員の服装だ。
「チャーリー。どうしてこんなに手の込んだ事をするのよ。」
リリスの問い掛けにチャーリーはへらへらと笑った。
「まあ、学院内での手続きは必要やからね。」
「またそんな事を言ってるのね。人族の手続きなんて気にもしないくせに。それにそんな事でまたミラ王国の公式記録を改ざんしないでよね。」
「改ざんって・・・ああ、ミクが僕の姪に当たる人物やと言う事やね。そうした方が都合良いかなと思って設定したんや。」
チャーリーの言葉にミクがえっ!と驚きの声を上げた。
「私ってチャーリーさんの姪だったんですか?」
何をボケてるのよ、この子。
「ミク。それはチャーリーが勝手に決めた事で、別に気にしなくて良いからね。」
そう言うとチャーリーはリリスに真顔で話し掛けた。
「リリス。君の今回のミッションは、シトのダンジョンに潜入して、ミクの可能性や危険性を確かめる事や。」
「危険性や可能性?」
リリスの疑念にチャーリーはうんうんと頷いた。
「君によって個別進化を遂げたミクは、この世界に放置した場合に、どんな変化を遂げていくのかを推測したいんや。そのためにはゴブリンやオークだけやなくて、他の魔物を捕獲した場合にどうなるのか、試してみてくれよ。」
うんうん。
なるほどね。
「確かに他の魔物を捕獲させた場合にどうなるのか、興味はあるわね。」
そう言いながらリリスはミクを見つめた。
そのリリスの脳裏に蘇ってきたのは、小学生の時の夏休みの自由研究で扱った食虫植物の観察日記である。
色々な虫をわざと食虫植物に捕獲させて、熱心にその様子を観察していた記憶が蘇ってきたのだ。
そうよ。
ミクって食虫植物みたいなものじゃないの。
リリスのまんざらでもない表情を見て、チャーリーはリリスの心を煽るような言葉を口にした。
「リリス。君がシトのダンジョンに潜入するからには、多種多様な魔物が出てくるはずや。何せ稀代のダンジョンメイトやからな。ミクに喰わせる餌に絶対に困らんよ。」
「まあ、そうなんだけどねえ。サイクロプスやケルベロスやサラマンダーが出てきたらどうするの?」
リリスの言葉にミクはえっ?と呟き、首を傾げた。
「そんなものがこのダンジョンで出てくるんですか?」
ミクの問い掛けにチャーリーはハハハと笑った。
「普通なら出て来んよ。でもリリスが居ると、有り得ないと言い切れんからね。楽しみにしてれば良いよ。」
「そうですかあ。」
そう言いながらミクは思いを巡らせた。
「ケルベロスなんてどんな味がするんだろう? 捕食鞘を5mほどにまで大きく出来れば良いんですよね?」
「ええっ! そんなことが出来るの?」
リリスの驚きの声にミクは笑顔で手を横に振った。
「いえいえ。出来ませんよ。例えばの話です。」
そうよね。
ケルベロスを捕獲するほどに鞘を大きくするなんて無理よね。
でも、そう言う意識をミクが持ち続けたら、どうなるんだろう?
ミクの可能性と危険性・・・・・。
妙な想像をしても仕方が無いので、リリスは一旦その考えを遮断した。
「まあとにかく、楽しんでくれば良いよ。ちなみに僕はダンジョンには行かんからね。警備員室でモニタリングしながら、リリスとは念話で連絡を取り合うつもりや。」
ああ、そうなのね。
まあいいわよ。
「さあ、出発の準備は良いかな?」
そう言うとチャーリーは警備員の服装のポケットから、大きな魔石を取り出した。
「ちょっと、それって学院所蔵の転移の魔石じゃないの! どうしてそれを持っているのよ。」
「ああ、これな。ロイドから預かってきたんや。」
「チャーリー。あんた、そんな事までしているの?」
リリスは呆れてふうっとため息をついた。
「魔法学院には魔法学院のやり方があるからね。」
そう言いながら、チャーリーは転移の魔石を発動させた。
その途端にリリスとミクは転移され、気が付くとシトのダンジョンの第1階層の入り口に立っていた。
シトのダンジョンの第1階層。
相変わらずそこは広々とした草原である。
見上げる空は青く、吹く風は心地良い。
ところどころに見える低木の藪は魔物が隠れるには格好の場所だ。
「ここって何が出てくるんですか?」
ミクの言葉にリリスは探知を掛けながら口を開いた。
「普通ならゴブリンなんだけどね。今回は火を吐くゴブリンかも。」
「あっ、火属性なら持っていますから、必要無いですよ。」
いやいや。
そう言う事じゃないから。
そう言えばミクってどんなステータスの持ち主なんだろうか?
リリスはおもむろに鑑定スキルを発動させた。
**************
ミク(仮称)
種族:不明(近似種族:トレント)
年齢:不明
体力:1000(推定)
魔力:2000(推定)
属性:土・水・火
魔法:土質改変 レベル2
ファイヤーボール レベル1
ウオータースプラッシュ レベル1
スキル:ウッドバインド レベル2
蔦鞭生成 レベル2
探知 レベル2
気配感知 レベル2
毒耐性 レベル2
投擲 レベル2
魔力吸引 レベル2
魔力操作 レベル2
スキル収奪 (収奪されたスキルはレベルアップ不可)
疑似人格生成 レベル2(魔力操作と連携)
亜空間収納 (容量制限有り)
捕食鞘連携
植物育成促進
テイム (トレント・ドライアド限定)
収奪スキル
身体強化
精神攻撃耐性
呪詛構築
解呪
剣技
称号
リリスの眷属
**************
何なのよ、このステータス。
スキルの宝庫じゃないの。
収奪したスキルも既に色々とあるけど、使いこなせるの?
剣技ってゴブリンから収奪したのね。
それにしてもこの『リリスの眷属』って言う称号は何なのよ?
突っ込みどころ満載のステータスだ。
リリスの様子を見て、ミクは怪訝そうな視線を向けた。
「リリス先輩、私のステータスを覗き見しましたね?」
「あらっ? バレちゃった?」
白々しく答えたリリスに向けて、ミクは非難めいた目で見つめ、うんと頷いた。
「だって、気になるじゃないの。」
そう言いながらリリスはミクに問い掛けた。
「疑似人格生成スキルと魔力操作スキルが連携しているってどう言う事?」
「ああ、それはこのミクとしての疑似人格を、魔力操作で実体化させているからですよ。」
なるほどね。
以前に私の魔力操作でキングドレイクさんを、疑似的に覇竜の姿に実体化させたのと同じ要領なのね。
「この疑似人格は便利なんですよ。エルフ達とのやり取りにも使えますし、捕食鞘を設置する場所を探すのにも使えますからね。」
「疑似人格が捕食鞘を持ち歩くの?」
リリスの言葉にミクはアハハと笑った。
「そんな非効率的な事はしませんよ。疑似人格と本体で共有する亜空間収納がありますからね。」
ああ、そうか!
その為の亜空間収納なのね。
「それって色々なものを収納出来るの?」
「そんなに容量は在りません。捕食鞘5個以外に多少の物を収納するだけです。」
ミクはそう言うと、亜空間収納から捕食鞘を一つ取り出した。
それを近くの低木の藪に縦にして設置した。
その鞘から何となく獣臭に近い匂いが漂ってきた。
これって何だろう?
クンクンと匂いを嗅ぐリリスに、ミクはウフフと笑いながら口を開いた。
「それはゴブリンのメスの放つフェロモンに似せた匂いですよ。それでゴブリンのオスを引き寄せるんです。」
ふうん。
そう言う仕組みになっているのね。
縦に設置された鞘をツンツンと突きながら、リリスは前から疑問に思っていた事をミクに尋ねた。
「ねえ、ミク。あなたって本当にこの捕食鞘が機能していないと、生命を維持出来ないの?」
「ああ、それは言葉の綾ですね。」
ミクはそう答えて軽く頭を下げた。
「別に嘘をついたわけじゃないんですけど、話の流れでそう言った方が良さそうだったので・・・」
「私の本体は元々トレントなので、大地から吸収する養分や魔力で生命は維持出来ます。でもそれって最低限の生命維持なんですよ。他のトレントやドライアドを効率的にテイムする為には、より多くの魔力や有用なスキルも必要になります。精力的に活動する為には捕食鞘が不可欠ですね。」
ああ、そうだったのね。
腑に落ちたわ。
そう思っていると、藪の奥から何かが近付いてきた。
この気配はゴブリンだ。
ミクと目配せをして、二人はその藪から静かに離れた。
少し離れた木陰に隠れて見ていると、藪の中からふらふらとゴブリンが現われ、躊躇いも無く鞘の中に自分から入っていった。
「随分簡単に捕獲出来るわね。」
小声で話し掛けるリリスに、ミクはうんうんと頷いた。
「オスってあんなものですよ。」
う~ん。
デニスにも聞かせてあげたいわ。
まあ、デニスの場合は着ぐるみの形状に騙されたんだけどね。
ゴブリンが入り込んだ鞘はその開口部をゆっくりと閉じ、ゴブリンの脱出を阻止している。
このまま干物にされてしまうのかと思うと、若干可哀そうになるのだが、それを凌駕する好奇心がリリスの心に湧き上がってきた。
色々な魔物を試してみたいわね。
そう思いながら、つい悪戯心でリリスは自分の魔力を周辺に拡散させた。
それがダンジョンコアを刺激する事になると思ったのだ。
その思惑は見事に当たったようで、遠くから多数の魔物がこちらに向かってくる事が分かった。
「リリス先輩! 魔物の群れが接近してきますよ!」
ミクも探知したようだ。
強く探知を掛けると、10体の魔物が急接近している事が分かった。
この気配はブラックウルフだ。
まあ、それほどの脅威ではないが、全滅させては意味がない。
1体は抵抗出来ないほどに弱らせて、ミクの食餌にしなければならないからだ。
うんうん。
ミクに捕食させる良い機会だわ。
何となく期待感でうずうずしちゃうわね。
リリスは鼻歌交じりで土魔法の魔力を放ち、自分達の前方に土壁を幾つも出現させ、更にその手前に横幅の広い泥沼を出現させたのだった。
ミクと亜神達との話を終えたリリスは現場に戻り、在学中最後の仮装ダンスパーティーを楽しんだ。
その翌日、リリスは職員室でケイト先生から特別な依頼を受けた。
昨年サリナの面倒を見て貰ったように、今年も来年度入学予定の生徒の学内案内をして欲しいそうだ。
「警備のチャーリーさんの姪に当たる子だそうよ。名前はミクとしか聞いていないんだけどね。」
やはりミクだわ。
それにしてもまたミラ王国の公式記録を改ざんしたのね。
チャーリーったら、何処までもいい加減なんだから。
心の中ではチャーリーを非難しつつ、リリスは笑顔でケイトの申し出をとりあえず了承した。
「それでね。チャーリーさんからの依頼でミクさんをシトのダンジョンに連れて行って欲しいのよ。リリスさんが同行してくれれば安心出来るからね。それに万一の事態に備えてチャーリーさんも、リアルタイムで監視すると言って下さったの。」
「リリスさん、お願い出来る?」
うっ!
ミクをシトのダンジョンに連れていく為に、随分手の込んだ事をするわね。
レイチェルに頼んで勝手に潜入すれば良いだけなのに。
「ええ、良いですよ。」
リリスはチャーリーの意図をあれこれと勘繰りながら返答をした。
「ありがとう、リリスさん。助かるわ。それでね、明日の午前中に、学舎の地下の訓練場で集合と言う事になっているのよ。
午前中の授業が潰れちゃうけど、よろしくね。」
ケイトはそう言うと軽く頭を下げた。
ケイト先生、頭を下げるような案件じゃないですよ。
そう思いながら、リリスも会釈して職員室を後にした。
翌日。
午前中の授業が始まる時間に、リリスは許可を取って教室を抜け出し、学舎地下の訓練場に足を運んだ。
その場に居たのはチャーリーとミクだ。
ちなみにリリスもミクもダンジョン探索用にレザーアーマーとショートブーツを着用している。
チャーリーはお気に入りの警備員の服装だ。
「チャーリー。どうしてこんなに手の込んだ事をするのよ。」
リリスの問い掛けにチャーリーはへらへらと笑った。
「まあ、学院内での手続きは必要やからね。」
「またそんな事を言ってるのね。人族の手続きなんて気にもしないくせに。それにそんな事でまたミラ王国の公式記録を改ざんしないでよね。」
「改ざんって・・・ああ、ミクが僕の姪に当たる人物やと言う事やね。そうした方が都合良いかなと思って設定したんや。」
チャーリーの言葉にミクがえっ!と驚きの声を上げた。
「私ってチャーリーさんの姪だったんですか?」
何をボケてるのよ、この子。
「ミク。それはチャーリーが勝手に決めた事で、別に気にしなくて良いからね。」
そう言うとチャーリーはリリスに真顔で話し掛けた。
「リリス。君の今回のミッションは、シトのダンジョンに潜入して、ミクの可能性や危険性を確かめる事や。」
「危険性や可能性?」
リリスの疑念にチャーリーはうんうんと頷いた。
「君によって個別進化を遂げたミクは、この世界に放置した場合に、どんな変化を遂げていくのかを推測したいんや。そのためにはゴブリンやオークだけやなくて、他の魔物を捕獲した場合にどうなるのか、試してみてくれよ。」
うんうん。
なるほどね。
「確かに他の魔物を捕獲させた場合にどうなるのか、興味はあるわね。」
そう言いながらリリスはミクを見つめた。
そのリリスの脳裏に蘇ってきたのは、小学生の時の夏休みの自由研究で扱った食虫植物の観察日記である。
色々な虫をわざと食虫植物に捕獲させて、熱心にその様子を観察していた記憶が蘇ってきたのだ。
そうよ。
ミクって食虫植物みたいなものじゃないの。
リリスのまんざらでもない表情を見て、チャーリーはリリスの心を煽るような言葉を口にした。
「リリス。君がシトのダンジョンに潜入するからには、多種多様な魔物が出てくるはずや。何せ稀代のダンジョンメイトやからな。ミクに喰わせる餌に絶対に困らんよ。」
「まあ、そうなんだけどねえ。サイクロプスやケルベロスやサラマンダーが出てきたらどうするの?」
リリスの言葉にミクはえっ?と呟き、首を傾げた。
「そんなものがこのダンジョンで出てくるんですか?」
ミクの問い掛けにチャーリーはハハハと笑った。
「普通なら出て来んよ。でもリリスが居ると、有り得ないと言い切れんからね。楽しみにしてれば良いよ。」
「そうですかあ。」
そう言いながらミクは思いを巡らせた。
「ケルベロスなんてどんな味がするんだろう? 捕食鞘を5mほどにまで大きく出来れば良いんですよね?」
「ええっ! そんなことが出来るの?」
リリスの驚きの声にミクは笑顔で手を横に振った。
「いえいえ。出来ませんよ。例えばの話です。」
そうよね。
ケルベロスを捕獲するほどに鞘を大きくするなんて無理よね。
でも、そう言う意識をミクが持ち続けたら、どうなるんだろう?
ミクの可能性と危険性・・・・・。
妙な想像をしても仕方が無いので、リリスは一旦その考えを遮断した。
「まあとにかく、楽しんでくれば良いよ。ちなみに僕はダンジョンには行かんからね。警備員室でモニタリングしながら、リリスとは念話で連絡を取り合うつもりや。」
ああ、そうなのね。
まあいいわよ。
「さあ、出発の準備は良いかな?」
そう言うとチャーリーは警備員の服装のポケットから、大きな魔石を取り出した。
「ちょっと、それって学院所蔵の転移の魔石じゃないの! どうしてそれを持っているのよ。」
「ああ、これな。ロイドから預かってきたんや。」
「チャーリー。あんた、そんな事までしているの?」
リリスは呆れてふうっとため息をついた。
「魔法学院には魔法学院のやり方があるからね。」
そう言いながら、チャーリーは転移の魔石を発動させた。
その途端にリリスとミクは転移され、気が付くとシトのダンジョンの第1階層の入り口に立っていた。
シトのダンジョンの第1階層。
相変わらずそこは広々とした草原である。
見上げる空は青く、吹く風は心地良い。
ところどころに見える低木の藪は魔物が隠れるには格好の場所だ。
「ここって何が出てくるんですか?」
ミクの言葉にリリスは探知を掛けながら口を開いた。
「普通ならゴブリンなんだけどね。今回は火を吐くゴブリンかも。」
「あっ、火属性なら持っていますから、必要無いですよ。」
いやいや。
そう言う事じゃないから。
そう言えばミクってどんなステータスの持ち主なんだろうか?
リリスはおもむろに鑑定スキルを発動させた。
**************
ミク(仮称)
種族:不明(近似種族:トレント)
年齢:不明
体力:1000(推定)
魔力:2000(推定)
属性:土・水・火
魔法:土質改変 レベル2
ファイヤーボール レベル1
ウオータースプラッシュ レベル1
スキル:ウッドバインド レベル2
蔦鞭生成 レベル2
探知 レベル2
気配感知 レベル2
毒耐性 レベル2
投擲 レベル2
魔力吸引 レベル2
魔力操作 レベル2
スキル収奪 (収奪されたスキルはレベルアップ不可)
疑似人格生成 レベル2(魔力操作と連携)
亜空間収納 (容量制限有り)
捕食鞘連携
植物育成促進
テイム (トレント・ドライアド限定)
収奪スキル
身体強化
精神攻撃耐性
呪詛構築
解呪
剣技
称号
リリスの眷属
**************
何なのよ、このステータス。
スキルの宝庫じゃないの。
収奪したスキルも既に色々とあるけど、使いこなせるの?
剣技ってゴブリンから収奪したのね。
それにしてもこの『リリスの眷属』って言う称号は何なのよ?
突っ込みどころ満載のステータスだ。
リリスの様子を見て、ミクは怪訝そうな視線を向けた。
「リリス先輩、私のステータスを覗き見しましたね?」
「あらっ? バレちゃった?」
白々しく答えたリリスに向けて、ミクは非難めいた目で見つめ、うんと頷いた。
「だって、気になるじゃないの。」
そう言いながらリリスはミクに問い掛けた。
「疑似人格生成スキルと魔力操作スキルが連携しているってどう言う事?」
「ああ、それはこのミクとしての疑似人格を、魔力操作で実体化させているからですよ。」
なるほどね。
以前に私の魔力操作でキングドレイクさんを、疑似的に覇竜の姿に実体化させたのと同じ要領なのね。
「この疑似人格は便利なんですよ。エルフ達とのやり取りにも使えますし、捕食鞘を設置する場所を探すのにも使えますからね。」
「疑似人格が捕食鞘を持ち歩くの?」
リリスの言葉にミクはアハハと笑った。
「そんな非効率的な事はしませんよ。疑似人格と本体で共有する亜空間収納がありますからね。」
ああ、そうか!
その為の亜空間収納なのね。
「それって色々なものを収納出来るの?」
「そんなに容量は在りません。捕食鞘5個以外に多少の物を収納するだけです。」
ミクはそう言うと、亜空間収納から捕食鞘を一つ取り出した。
それを近くの低木の藪に縦にして設置した。
その鞘から何となく獣臭に近い匂いが漂ってきた。
これって何だろう?
クンクンと匂いを嗅ぐリリスに、ミクはウフフと笑いながら口を開いた。
「それはゴブリンのメスの放つフェロモンに似せた匂いですよ。それでゴブリンのオスを引き寄せるんです。」
ふうん。
そう言う仕組みになっているのね。
縦に設置された鞘をツンツンと突きながら、リリスは前から疑問に思っていた事をミクに尋ねた。
「ねえ、ミク。あなたって本当にこの捕食鞘が機能していないと、生命を維持出来ないの?」
「ああ、それは言葉の綾ですね。」
ミクはそう答えて軽く頭を下げた。
「別に嘘をついたわけじゃないんですけど、話の流れでそう言った方が良さそうだったので・・・」
「私の本体は元々トレントなので、大地から吸収する養分や魔力で生命は維持出来ます。でもそれって最低限の生命維持なんですよ。他のトレントやドライアドを効率的にテイムする為には、より多くの魔力や有用なスキルも必要になります。精力的に活動する為には捕食鞘が不可欠ですね。」
ああ、そうだったのね。
腑に落ちたわ。
そう思っていると、藪の奥から何かが近付いてきた。
この気配はゴブリンだ。
ミクと目配せをして、二人はその藪から静かに離れた。
少し離れた木陰に隠れて見ていると、藪の中からふらふらとゴブリンが現われ、躊躇いも無く鞘の中に自分から入っていった。
「随分簡単に捕獲出来るわね。」
小声で話し掛けるリリスに、ミクはうんうんと頷いた。
「オスってあんなものですよ。」
う~ん。
デニスにも聞かせてあげたいわ。
まあ、デニスの場合は着ぐるみの形状に騙されたんだけどね。
ゴブリンが入り込んだ鞘はその開口部をゆっくりと閉じ、ゴブリンの脱出を阻止している。
このまま干物にされてしまうのかと思うと、若干可哀そうになるのだが、それを凌駕する好奇心がリリスの心に湧き上がってきた。
色々な魔物を試してみたいわね。
そう思いながら、つい悪戯心でリリスは自分の魔力を周辺に拡散させた。
それがダンジョンコアを刺激する事になると思ったのだ。
その思惑は見事に当たったようで、遠くから多数の魔物がこちらに向かってくる事が分かった。
「リリス先輩! 魔物の群れが接近してきますよ!」
ミクも探知したようだ。
強く探知を掛けると、10体の魔物が急接近している事が分かった。
この気配はブラックウルフだ。
まあ、それほどの脅威ではないが、全滅させては意味がない。
1体は抵抗出来ないほどに弱らせて、ミクの食餌にしなければならないからだ。
うんうん。
ミクに捕食させる良い機会だわ。
何となく期待感でうずうずしちゃうわね。
リリスは鼻歌交じりで土魔法の魔力を放ち、自分達の前方に土壁を幾つも出現させ、更にその手前に横幅の広い泥沼を出現させたのだった。
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