ひだまりを求めて

空野セピ

文字の大きさ
21 / 108
第二章 旅立ちの決意

川の異変

しおりを挟む
 明らかに機嫌を悪くしたマッドに恐る恐る近づくと、ティミーはマッドの顔を覗き込んだ。 
 眉間に皺を寄せている。
 それなりに怒っている証だった。

「ごめん。少し……言い過ぎちゃった」

「……俺の台詞だろ、そりゃ。ちょいとキツくなっちまったな。悪い」

 先に謝られてしまい、申し訳無さそうにティミーを見ると、ティミーは小さく苦笑しニアの実が入った籠を持ち直した。

「ううん、私の方が悪いんだし大丈夫。それより……」

「ん?」

「今日の朝ご飯、キノコライスのバター炒めなんだよねー」

「うう……」

「茸の仕分けもしてもらいたいんだけどなー」

「……分かったよ。その籠持ってやるからよこせ」

 キノコライスに反応し、マッドのお腹は大胆な音を鳴らした。 
 その音の大きさにティミーは思いきり笑うと、マッドは顔を赤くし、拳でコツリとティミーの頭を軽く叩いく。

「笑うんじゃねーよ!」

「ごめ……だって、お腹の音……ぷっ」

「お前……笑いすぎだろうが!」

「だってついさっきまでお腹空いてないって言ってたのにキノコライスって聞いた瞬間に……」

「うっせーな! キノコ好きの何処が悪いんだよ!」

 尚も顔を赤くし怒鳴るが、ティミーはそれを軽く流すとニアの実を一つかじり、可笑しそうに苦笑した。

「ごめんってば。取り敢えず、村に戻らない? 今日も晴れるだろうから、布団とか干したいし。スーおばあちゃんの洗剤、特注してあるんだ」

「そうだな。今朝スーばあさんが作ってた洗剤、お前の特注品だったのか」

「マッド、スーおばあちゃんに会ったんだ?」

「朝早く、すれ違いにな」 

 何度か欠伸を交えながら雑談をしつつ、マッドとティミーは村に向かって歩き出した。
 いつの間にか太陽は東の空から全て姿を出し、沢山の木漏れ日が森の中を一層幻想的な雰囲気にする。 
 キラキラと差し込む木漏れ日に目を細めながら歩いて行くと、近くで水の流れる音が聞こえ、ふと足を止めた。
 不思議そうにするマッドの顔を、隣を歩いていたティミーは覗き込む。

「マッド? どうしたの?」

「いや、川ってもう少し先にあったよな?」

「確か南側にあったけど……」

「……おかしいな、川から少し距離は有るのに、水の音が聞こえる」

 マッドの言葉に、ティミーは自分の呼吸を小さくすると、川のある方角へ耳をすませた。 
 ──確かに、聴こえる。 
 しかし、川はここからだと村より距離がある場所に流れている。 
 それなのに、水の流れる音が聴こえるのは不自然だ。

「本当だ……おかしいね。水の音、聞こえるよ」

「山で雪解けが始まるにはまだ早いよな。少し川の様子見に行かね?」

「そうだね。見に行こ」

 マッドの言葉にティミーは頷き、南側の森の奥深くへと歩いて行った。


 暫く歩いて行くに連れ、水の音は段々と大きくなっていく。
 途中何度か魔物が襲いかかって来たが、マッドは剣で、ティミーは弓で退け、難なく奥へと進んで行った。
 村の近くと言えど、森の奥まで足を踏み入れれば魔物は生息している。 
 ここ数年は、より魔物が凶暴化していると以前村長が話してくれたのをマッドは思い出しながら、剣に付着したものを軽く振り落とした。 

「ふう。やっぱ奥地には魔物もそれなりにいるよな」

「うん。もう少しで着くから頑張ろ?」

「頑張ろって、お前な……いちいち荷物置いてから前線に出る俺の気持ちを考えろよ」

「だって、私弓しか扱えないし。やっぱり荷物私が持つよ」

「いや……もう良い。さっさと行くぞ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

処理中です...