ひだまりを求めて

空野セピ

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第六章 国家軍組織ベルトア

二人の軍医

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 ウォックが睨む様に白衣の男を睨みつけると、白衣の男はチッと舌打ちし、銃を肩に背負いこちらを見てくる。
 その表情はかなり不機嫌で、苛ついている事が伺える。

「あ、あの、ごめんなさい。その、勝手に入ってしまって......外が暑くてつい」
「暑いからって勝手に入って来るとは良い妥協してんじゃねぇかよ。ここはベルトア軍の中心本部だぜ。一般人が入り込んだらどうなるか分かってんだろうな?」

 ティミーが申し訳なさそうに謝るも、白衣の男はティミーを睨みつけながら再び大型銃を構える。
 その様子を見ていたマッドが、瞬時にティミーの前に立ち剣を抜き、二人の間に割って入った。

「おい、こっちは謝ってるだろ」
「ガキは引っ込んでろ。お前もこのまま射殺してやろうか?」
「おいベルス、良い加減に」

 このままだと本当に銃を撃ちそうな白衣の男をウォックが止めようとした瞬間、虹色の光の矢が白衣の男を目掛けて飛んで来た。
 白衣の男はそれを大型銃で薙ぎ払うと、虹色の矢が飛んで来た方向を睨み付けるように見詰める。

「ったく、面倒くせぇ奴が来たぜ」

 白衣の男が見詰める先を見ると、そこには紺色の長髪を靡かせながら翡翠の瞳を細めて此方を睨みつけている長身の男性がいた。
 此方を、と言うよりは、白衣の男を睨みつけている様にも見えるが──。

「これは何の騒ぎだ、ベルス」
「侵入者を排除しようとしたまでだぜヴェイト」

 ヴェイトと呼ばれた男は、溜息を吐きながら此方に向かって歩いて来る。
 この男も白衣を着ていて、ベルスと呼ばれた男も合わせ、この二人は医者なのだろうかとティミーは不安そうに見ていた。

「ヴェイト大佐、すみません。俺達が勝手に入り込んでしまって」
「ウォックか。待っていたぞ。随分時間がかかったな」

 ヴェイト、という名前にマッドとティミーが反応し、マッドは剣を握る力を緩めつつも警戒しながら口を開いた。

「あんたが、ヴェイトって奴か?」

 マッドが尋ねると、ヴェイトと呼ばれた人物は小さく微笑みながら首を縦に振った。

「そう。俺はベルトア軍本部所属医療班隊長のヴェイト・アリュウだ。こっちは同じ軍医で副隊長のベルス。ウォックから連絡を受けていたが、俺に用件があるみたいだな?」

 ヴェイトはウォックを見ると、ウォックは小さく息を吐きつつ辺りを見回した。

「大掛かりな用なのは確かなのですが、その前にコイツを見てもらえないですか」

 ウォックは背中に背負っているヴェノルのフードを外すと、顔を真っ赤にして息苦しそうなヴェノルがふと目を開いた。
 フードを外したヴェノルを見た瞬間、ベルスが物凄い勢いでウォックの胸倉を掴み、銃をウォックに突きつける。

「ウォック!!」

 突然の出来事にマッドは剣を握りベルスと呼ばれた男に突き付けた。
 しかし、ベルスはマッドには見向きもせずにそのままウォックの服を強く握り、睨み付ける。

「てめぇ......コイツを何処で」
「なっ、何だよベルス。何でそんなに怒って」

 いきなり掴みかかってきたベルスに戸惑いながらも、ヴェイトが二人の間に割って入り、ベルスとウォックの距離を無理矢理開けた。

「はいはい、話は俺の部屋で聞く。ベルスはその男の子を診てくれるか」

 ヴェイトの言葉に、マッドは凄い勢いでヴェイトを睨みつけた。

「はぁ!? おいちょっと待てよ! こんなヤバい奴にヴェノルを診せられるか!」

 マッドの言葉に、ヴェイトは何とも言えない表情をしながら微笑んだ。

「確かにヤバい奴かもしれないが、大丈夫だ腕は俺とほぼ同じ位だから任せられる」
「いやいや! ふざけんな! つーかアイツ医者なのかよ!? そんな物騒な武器持ってる癖して医者なのか!?」

 マッドは信じられないという表情でベルスを睨み付ける。
 ベルスも負けじと睨み付け、見下ろすように口を開いた。

「うるせぇ。テメェらみたいな人間を殺す為に持ってるまでだ。軍医なんてオマケでやってるようなもんだっつーの」
「何だとてめぇ!」

 ベルスの言葉にマッドは頭に血が上るのを感じ、剣を抜き即座にベルスに斬りかかった。
 しかしベルスは大型銃で容易く受け止め、そのまま押し返すと倒れ込んだマッドの顔面に銃口突き付け、冷ややかに見下しながら睨みつけた。

「良いか。俺はテメェみたいな人間が大嫌いだ。人間なんて、自分勝手で傲慢な奴だらけなんだからよ」

 そう吐き捨てると、ベルスは大型銃を戻し、ウォックの元に行きヴェノルを奪い取るようにして抱き上げた。

「コイツの治療は俺がする。俺にしか出来ねぇ。絶対に俺が良いって言うまで医務室に入って来るなよ」

 そう言うと、ベルスは建物の奥に入り、足早に医務室の方へと向かい姿を消した。
 呆気に取られているマッド達に、ヴェイトは小さく苦笑した。

「すまない。ベルスは大人の人間が嫌いでね。あぁ見えて小さい子には好かれやすいんだが」
「小さい子って、ヴェノルだって一応大人......いや、アイツ、大人なのか......?」
「自分で二十歳、とは言っていたけど......」

 マッドとティミーは不思議そうにベルスが去っていった方向を見つめていたが、同時に不安も抱えていた。

「大丈夫なのかよ。アイツ本当に医者なのか? 治療とか荒そうだぞ」
「あの、失礼ですけど不良軍医って......あの方の事ですよね?」

 ティミーが不安げにヴェイトを見上げて尋ねると、ヴェイトは一瞬表情驚いた表情をした。

「君は......」
「えっ? 私ですか?」

 ティミーは不思議そうにヴェイトを見ると、ヴェイトは慌てて首を横に振り、咳払いをした。

「すまない、何でもない。では、俺の私室で話を聞こう。ウォックもそれで良いだろう?」

 ヴェイトに問いかけられるも、ウォックは何とも言えない表情でその場で固まる様に動かず、ベルスが消えた方向を呆然と見ていた。

「ウォック? 大丈夫?」
「あ、あぁ。すまない。どうした?」

 ティミーが不安そうにウォックの表情を伺うも、何も聞いていなかったようで聞き返してきた。
 ティミーは少しビックリしつつも、再びヴェイトが話していた事を伝える。

「お話聞いていないの珍しいね? ヴェイトさんがお部屋でお話聞くって」
「あぁ。分かった。すぐ行こう」
「よし、なら付いて来てくれ」

 マッドとティミーはヴェイトの後を歩き、ウォックもその後に続いた。
 ただ、どうも引っかかる事があり、周りの事に集中出来ない。

(ベルスは確かに話していた。俺にしか診る事が出来ないと。アレは、どう言う意味だ? まさか──)

「ウォック、早くしろよー!」
「あ、あぁ。すまない」

 思い過ごしなら良いが、と思いつつも、ウォックはマッド達を追うように足を早めた。
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