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第六章 国家軍組織ベルトア
交渉
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ヴェイトに案内され、先程までいた敷地内から少し離れた場所に、大きな建物がそびえ立つ。
ベルトア軍の敷地内にある軍病院で、軍人以外にも一般人の外来も受け付けているようで、それなりに人がいるようだ。
入口に入り暫く奥へ進み、ある部屋の前に止まり扉を開けると、ヴェイトはマッド達を招き入れる。
どうやらヴェイトの私室の様で、立派な机とソファー、そして大量の本が収納された本棚が視界に入った。
「どうぞ。ここが俺の私室だ」
「はぁ~、すげぇ、本がいっぱいだな」
その本の多さにマッドは思わずポツリと呟き、その横でティミーがマッドの脇腹に軽く肘で突いた。
「マッド、失礼でしょ」
「わ、わりぃ」
「はは、構わないよ。殆どが医学書や調合書だ」
ヴェイトは苦笑いしながら話すと、マッド達にソファーに座る様に促した。
マッド達が座ったのを確認すると、ヴェイトも椅子に座り、軽く息を吐く。
「改めて自己紹介だな。俺の名前はヴェイト・アリュウ。ベルトア軍本部所属医療班の隊長だ。地位は大佐。それなりに権力も持っている。ウォックとは昔からの知り合いなんだ」
「あっ、と。俺はマッド・クラーデン。ルグート村から来たぜ」
「私はティミー・マルデスと申します。マッドと同じく、ルグート村から来ました」
マッドとティミーが自己紹介をすると、ヴェイトは二人の顔をマジマジと見ながら沈黙した。
その様子に、マッドは少し不信感を覚える。
「おい、何だよ人の事ジロジロ見て」
「あぁ、すまない。ルグート村出身、か。確かルグート村は、少し前に水害にあったと聞いていたが」
ヴェイトの言葉に、マッドとティミーは何とも言えない表情になり、軽く拳を握った。
「その通りだよ。俺達の村は水害に襲われた。レンって奴の仕業でな」
「レン?」
「待てマッド。ここから先は俺が話す」
村で起こった出来事を話そうとしたが、ウォックに止められ、マッドは大人しく言うことを聞き、背中に体重をかけソファーに身を沈めた。
「先程マッドも話していましたが、ルグート村で水害が発生したようです。その数日後に、ルネスでも水害が発生しています。ルネスに関しては、町がほぼ壊滅的な状態です」
「ほう、立て続けに水害が起こっていると。それで、それとベルトアに来た理由は関係あるのか?」
ヴェイトが問いかけると、ウォックは真面目な表情でヴェイトを見据えた。
「ここ数年で、異常現象や異常気象が少なからず発生しているのはご存知ですよね? 万が一の事を考え、ガーネの様子を見に行きたいのですが」
ガーネ、と言う言葉に、ヴェイトはピクリと眉を動かした。
一瞬空気が凍りついた様な、そんな雰囲気にマッドとティミーは無意識に表情を強張らせる。
「ガーネ、か。またどうしていきなりそんな」
「村を壊滅、半壊させる程の水害が発生するのは、どう考えても可笑しい。昔、ガーネが暴走を起こした時にも似たような事が起きていたと父さん達から聞いた事が有ります。直感でしか無いですが、もしかしたらガーネに再び何か異常が発生したのでは無いかと予想して」
ウォックが話すと、ヴェイトは何とも言えない表情をした。
ウォックは表情を変えずに、ただジッとヴェイトを見詰める。
「現在、ガーネが封印されている海底都市を管理しているのばベルトア軍。その場所に行くにもベルトア軍の許可が降りないと入る事すら許されません。どうか、許可を頂けないでしょうか」
ウォックの言葉に、ヴェイトは瞳を閉じ小さく息を吐く。
「直感で不安だからと、そんな理由だけで海底都市に行かせるわけにはいかないな。あの周辺は魔物の巣窟にもなっている。それに、万が一封印が解けたらどうするつもりだ? ガーネはこの星の核とも言われているんだぞ」
「核? なんだそれ」
マッドが話を割って問いかけると、ヴェイトは難しい表情をしながら口を開いた。
「ガーネについては、そこまで詳しい事が解明されていないんだ。だが、フォルンが誕生した時に出来たと言われている。我々は、星の核と呼んでいるが、詳しい事は本当に分からないんだ。しかし、最近海底都市周辺で何かしらの異常が発生しているとの報告も受けている。少なからず、無関係、と言う訳では無さそうだが」
「だったら! その海底都市って所に行かせてくれよ! 俺達の村だって水害の被害にあってんだぞ! また水害が発生したらどうすんだよ!」
思わずマッドは立ち上がり食いかかってしまうも、ウォックに止められ、再びソファーに座った。
しかし、不安そうな表情はティミーもしていて、胸に手を当てながらヴェイトを見詰め、口を開いた。
「ヴェイトさん、お願いします。私も原因を突き止めたいんです。私も、これ以上村や、他の町があんな状態になるのを見たくないです」
ティミーが泣きそうになりながら言葉を発する姿を見ると、ヴェイトは俯き、小さく唇を噛んだ。
「......。俺だけの判断で海底都市に行かせる許可は出せない。この案件は、大総統に話を通して許可が降りないと駄目だ」
「大総統?」
「ベルトア軍の最高司令官にあたる人だ。大総統に話を持ちかけてみるから、暫く待っていてくれないか」
「って事は、行かせてくれるって事か?」
マッドが食い入る様な表情で問いかけると、ヴェイトは少し困った様な表情をしてマッドを落ち着かせる様に促しながら口を開いた。
「まだ何とも言えないな。海底都市はベルトア軍の管轄する場所だ。そのような所に、一般人が入れるかどうかまでは何とも言えない。交渉はしてみるが、少し時間を貰えるか」
「分かりました。宜しくお願いします」
ヴェイトの言葉にウォックは素直に御礼を言うと、奥の部屋に向かい、ドアノブに手を掛けた。
「早速準備してくるから、暫くの間、ここで待っていてくれるか? もしかしたらベルスから何か連絡が来るかもしれないから、その時はウォック、上手くやってくれ」
「はい。其方も、宜しくお願いします」
ヴェイトは奥の部屋へ入ると、マッドとティミーは力を抜き、ソファーに身を沈めた。
少し張り詰めた空気から解放され、深く深呼吸を繰り返す。
「はぁ~。何か空気が重苦しかったぜ」
「何だったんだろうね? 海底都市、っていう所がそんなに危ない所なのかな?」
原因は良く分からないが、重苦しい空気が無くなり、マッドとティミーの表情も明るくなる。
ウォックは小さく息を吐き窓の外を見ようと立ち上がった瞬間、物凄い勢いでドアが開かれた。
いや、蹴破られ、と言った方が良い。
「おい、ウォックはいるか?」
ドアが開かれたと同時にズカズカと部屋に入り込んで来た人物に、マッドとティミーは再び表情を強張らせた。
ベルトア軍の敷地内にある軍病院で、軍人以外にも一般人の外来も受け付けているようで、それなりに人がいるようだ。
入口に入り暫く奥へ進み、ある部屋の前に止まり扉を開けると、ヴェイトはマッド達を招き入れる。
どうやらヴェイトの私室の様で、立派な机とソファー、そして大量の本が収納された本棚が視界に入った。
「どうぞ。ここが俺の私室だ」
「はぁ~、すげぇ、本がいっぱいだな」
その本の多さにマッドは思わずポツリと呟き、その横でティミーがマッドの脇腹に軽く肘で突いた。
「マッド、失礼でしょ」
「わ、わりぃ」
「はは、構わないよ。殆どが医学書や調合書だ」
ヴェイトは苦笑いしながら話すと、マッド達にソファーに座る様に促した。
マッド達が座ったのを確認すると、ヴェイトも椅子に座り、軽く息を吐く。
「改めて自己紹介だな。俺の名前はヴェイト・アリュウ。ベルトア軍本部所属医療班の隊長だ。地位は大佐。それなりに権力も持っている。ウォックとは昔からの知り合いなんだ」
「あっ、と。俺はマッド・クラーデン。ルグート村から来たぜ」
「私はティミー・マルデスと申します。マッドと同じく、ルグート村から来ました」
マッドとティミーが自己紹介をすると、ヴェイトは二人の顔をマジマジと見ながら沈黙した。
その様子に、マッドは少し不信感を覚える。
「おい、何だよ人の事ジロジロ見て」
「あぁ、すまない。ルグート村出身、か。確かルグート村は、少し前に水害にあったと聞いていたが」
ヴェイトの言葉に、マッドとティミーは何とも言えない表情になり、軽く拳を握った。
「その通りだよ。俺達の村は水害に襲われた。レンって奴の仕業でな」
「レン?」
「待てマッド。ここから先は俺が話す」
村で起こった出来事を話そうとしたが、ウォックに止められ、マッドは大人しく言うことを聞き、背中に体重をかけソファーに身を沈めた。
「先程マッドも話していましたが、ルグート村で水害が発生したようです。その数日後に、ルネスでも水害が発生しています。ルネスに関しては、町がほぼ壊滅的な状態です」
「ほう、立て続けに水害が起こっていると。それで、それとベルトアに来た理由は関係あるのか?」
ヴェイトが問いかけると、ウォックは真面目な表情でヴェイトを見据えた。
「ここ数年で、異常現象や異常気象が少なからず発生しているのはご存知ですよね? 万が一の事を考え、ガーネの様子を見に行きたいのですが」
ガーネ、と言う言葉に、ヴェイトはピクリと眉を動かした。
一瞬空気が凍りついた様な、そんな雰囲気にマッドとティミーは無意識に表情を強張らせる。
「ガーネ、か。またどうしていきなりそんな」
「村を壊滅、半壊させる程の水害が発生するのは、どう考えても可笑しい。昔、ガーネが暴走を起こした時にも似たような事が起きていたと父さん達から聞いた事が有ります。直感でしか無いですが、もしかしたらガーネに再び何か異常が発生したのでは無いかと予想して」
ウォックが話すと、ヴェイトは何とも言えない表情をした。
ウォックは表情を変えずに、ただジッとヴェイトを見詰める。
「現在、ガーネが封印されている海底都市を管理しているのばベルトア軍。その場所に行くにもベルトア軍の許可が降りないと入る事すら許されません。どうか、許可を頂けないでしょうか」
ウォックの言葉に、ヴェイトは瞳を閉じ小さく息を吐く。
「直感で不安だからと、そんな理由だけで海底都市に行かせるわけにはいかないな。あの周辺は魔物の巣窟にもなっている。それに、万が一封印が解けたらどうするつもりだ? ガーネはこの星の核とも言われているんだぞ」
「核? なんだそれ」
マッドが話を割って問いかけると、ヴェイトは難しい表情をしながら口を開いた。
「ガーネについては、そこまで詳しい事が解明されていないんだ。だが、フォルンが誕生した時に出来たと言われている。我々は、星の核と呼んでいるが、詳しい事は本当に分からないんだ。しかし、最近海底都市周辺で何かしらの異常が発生しているとの報告も受けている。少なからず、無関係、と言う訳では無さそうだが」
「だったら! その海底都市って所に行かせてくれよ! 俺達の村だって水害の被害にあってんだぞ! また水害が発生したらどうすんだよ!」
思わずマッドは立ち上がり食いかかってしまうも、ウォックに止められ、再びソファーに座った。
しかし、不安そうな表情はティミーもしていて、胸に手を当てながらヴェイトを見詰め、口を開いた。
「ヴェイトさん、お願いします。私も原因を突き止めたいんです。私も、これ以上村や、他の町があんな状態になるのを見たくないです」
ティミーが泣きそうになりながら言葉を発する姿を見ると、ヴェイトは俯き、小さく唇を噛んだ。
「......。俺だけの判断で海底都市に行かせる許可は出せない。この案件は、大総統に話を通して許可が降りないと駄目だ」
「大総統?」
「ベルトア軍の最高司令官にあたる人だ。大総統に話を持ちかけてみるから、暫く待っていてくれないか」
「って事は、行かせてくれるって事か?」
マッドが食い入る様な表情で問いかけると、ヴェイトは少し困った様な表情をしてマッドを落ち着かせる様に促しながら口を開いた。
「まだ何とも言えないな。海底都市はベルトア軍の管轄する場所だ。そのような所に、一般人が入れるかどうかまでは何とも言えない。交渉はしてみるが、少し時間を貰えるか」
「分かりました。宜しくお願いします」
ヴェイトの言葉にウォックは素直に御礼を言うと、奥の部屋に向かい、ドアノブに手を掛けた。
「早速準備してくるから、暫くの間、ここで待っていてくれるか? もしかしたらベルスから何か連絡が来るかもしれないから、その時はウォック、上手くやってくれ」
「はい。其方も、宜しくお願いします」
ヴェイトは奥の部屋へ入ると、マッドとティミーは力を抜き、ソファーに身を沈めた。
少し張り詰めた空気から解放され、深く深呼吸を繰り返す。
「はぁ~。何か空気が重苦しかったぜ」
「何だったんだろうね? 海底都市、っていう所がそんなに危ない所なのかな?」
原因は良く分からないが、重苦しい空気が無くなり、マッドとティミーの表情も明るくなる。
ウォックは小さく息を吐き窓の外を見ようと立ち上がった瞬間、物凄い勢いでドアが開かれた。
いや、蹴破られ、と言った方が良い。
「おい、ウォックはいるか?」
ドアが開かれたと同時にズカズカと部屋に入り込んで来た人物に、マッドとティミーは再び表情を強張らせた。
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