ひだまりを求めて

空野セピ

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第六章 国家軍組織ベルトア

衝突する言葉

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 ヴェイトにソファーに座る様に促されて、マッドとティミーはソファーに座り、ヴェイトは内線で部下に珈琲を持ってくるように連絡した。
 これまでの経緯とは、此処に来るまでの過程の事だろう。
 何処から話せば良いか。
 マッドとティミーは考えていると、一人の若い軍人が人数分の珈琲を持ってきて机の上に置き、直ぐに部屋を出て行った。
 マッドは少し悩みながらも、そのままヴェイトに視線を向けて口を開いた。

「本当に、普通の日常を過ごしていたんだ。俺とティミーが住む村はルグート村って言ってな。田舎だけど農作物が豊富な村なんだ。そこに、ある日突然、レンって奴が村を襲って来たんだ」
「レン?」
「長髪の黒髪に、赤い瞳を持つ長身の男性でした。でも、戦っている最中に洪水が起こって」
「洪水......あぁ、一月前に起こったルグート村の原因不明の水害の事か」
「どうして知ってるんだ?」

 ヴェイトの言葉に、マッドは少し驚いた。
 大陸が違うと、他の大陸の情報は余程大きな争いや災害が起こらないと流れてこないからだ。
 ルグート村が水害の被害に遭ったのは事実だが、それでも村は壊滅的な状況では無かった筈だ。
 状況が前と変わったのかと心配になったが、それだったらユーラス大陸にいる時に既に情報が出ているはずだ。
 ヴェイトはある記事を取り出し、マッド達の前に広げる。

「ベルトア軍はヴァルナの世界で一番規模の大きい軍隊だ。他の大陸の情報も概ね掴んでいるんだよ」
「まさか、村にベルトア軍の方が?」
「残念ながら、それ以上は機密情報だから話す事は出来ない」

 ヴェノルは目を閉じ、静かに珈琲を口にする。
 これ以上は聞いてはいけないと察し、マッドとティミーも珈琲を口にした。

「それで、そのレンって奴はどうしたんだ」

 ヴェイトが話の流れを変えよえと話題を切り替える。
 マッドはティーカップを静かに置くと、難しい表情をしながら拳を握り締めた。

「何処かの森でレンを見つけたが、逃げられちまった。その時も戦いになったが、ヴェノルの攻撃と相殺し合って消えたんだよな」
「うん。その時にヴェノルと初めて出会ったんです。彼、私達と出会う前の記憶が無いみたいですけど」
「ウォックが背負っていた少年か」

 ヴェイトはヴェノルの姿を思い出し、成る程と頷く。
 船酔いと砂漠の暑さにやられたのだろう。
 随分と顔色が悪かったが、今はベルスが診ているし問題無いだろうと思いたい所だが──。

「て言うか、本当に大丈夫なんだろうなあの不良軍医」

 マッドが乱暴に机を叩きながらヴェイトを睨み付けるも、ヴェイトは小さく苦笑いを返した。

「まぁ、口は悪いが腕は俺とほぼ同じ位だからな。それに、あぁ見えて子供には優しいんだぞアイツ」
「絶対嘘だろソレ!! そうだとしてもヴェノルは二十歳らしいから子供じゃねぇけどな」
「えっ......」

 マッドの言葉に、ヴェイトは信じられない、と言った表情をした。
 大体皆んな、ヴェノルの年齢を聞くと同じ表情をするからマッドとティミーはもう見慣れていたが、未だに二人も信じたく無いようだ。

「ま、まぁ、とにかく大丈夫だと思う。ウォックも一緒に行ったんだろう?」
「まーな。はぁ、本当に大丈夫なんだか」

 マッドは溜息を吐きながら珈琲を口にする。
 ウォックが呼ばれたから下手な事をすれば多分ウォックがキレてくれるだろうと願いたいところだが、状況が分からないから何とも言えない。
 ヴェイトは珈琲のカップを静かに置き、小さく息を吐く。

「それで、その後にウォックを尋ねたのか」
「はい。森を抜けて、ルネスの町という場所が水害の被害で壊滅してしまっている所に遭遇して......。その町で、ウォックの知り合いの人に会って、ウォックの住む町まで案内されたんです」
「そこで色々話を聞かされたんだけどよ。えーと、何だったっけ?」
「えっと......何だっけ。色々言っていたけれど」
「......あ、あぁ、もう良いよ、ありがとう」

 この二人はあまり難しい話は覚えていられないのだろうとヴェイトは直感し、それ以上聞くのを止めた。
 しかし、その後の話は概ねウォックから聞いたからこの二人が話している事に間違いは無いのだろうとヴェイトは考えた。

 しかし、どうも引っかかる事がある。

「水害の件は、詳しく調べてみないと分からないが......お前達はどうしてレンを追っているんだ?」

 ヴェイトに尋ねられ、ティミーは肩をビクッと震わせる。
 その表情と顔色の変化に、ヴェイトは微かに眉を潜めた。
 
「俺の知る限りでは、村人の誰かが死亡したという報告は上がってきていない。それなら敵討ちとは違う筈だ。今の話からすると、レンという奴は一人で村を襲撃したんだろう? 盗賊なら、普通だったら最低でも十人以上の集団で襲ってくる。盗賊とは考え難い」
「何が言いたい」

 マッドはヴェイトを睨みつつ、鞘を握り剣をいつでも抜けるように体制を整える。
 しかしヴェイトは動じず、言葉を続けた。

「一般の村人が、どうして村を一人で襲撃した奴を追っているのかと聞いているんだ。そのまま村に残っていればまた迎え撃つ事も出来るだろうし、税金さえ納めていれば王都騎士団に頼る事も出来るだろう。それなのに、どうしてわざわざソイツを追っている? 見たところ、お前達二人は陽術も使う事が出来ないだろう」

 ヴェイトに指摘され、ティミーは俯き、マッドは思わず剣を抜きヴェイトの前に突きつけた。
 その眼光は鋭く光り、そのままヴェイトを睨みつけ、剣を握る手に力を込める。

「てめぇ、陽術が使えねぇ非力な村人は旅に出ちゃいけねぇって言うのかよ!」
「村や町以外の場所には魔物が湧いている。ある程度の陽術が使えないと旅をするのは困難だ。まして、旅の知識が無い者なら尚更な」

 ヴェイトの言葉に、マッドの頭の中で何かがキレるような音がした。

「陽術陽術って......あぁそうかよ。そうだよな、陽術さえ使えりゃ何だって出来るもんな! でもな、あの時はそんな事言っていられる状況じゃ無かったんだよ! アイツは......! レンはティミーを!」
「マッド! やめて!」

 怒り任せに怒鳴るマッドの肩をティミーは押さえ、激しく首を横に振る。
 その瞳には、薄らと涙が浮かんでいて、マッドは息を止め、ゆっくりと剣を下に下ろした。

「ヴェイトさん。マッドは何も悪く無いんです。旅に出る原因を作ったのは、私ですから......」

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