ひだまりを求めて

空野セピ

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第六章 国家軍組織ベルトア

喧嘩する程...

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「どう言う事だ?」

 ヴェイトは眉を潜める。
 ティミーは不安そうにヴェイトを見上げ、何処か泣きそうな表情をしながら口を開いた。

「レンは、私を狙って村を襲ったんです」
「君を、狙って......?」

 ティミーの言葉に、ヴェイトは目を見開いた。
 
「一体、どうして狙われているんだ? 身に覚えは無いのか」

「分からないんです。でもレンは、私を狙っていました。〈あるもの〉を狙っていると」
「あるもの?」
「はい。でも、それが一体何なのか、私には分からないんです。取られるような高価な物を持っていないんです」

 ヴェイトはティミーを見るが、確かに何も持っていなさそうに見えた。
 例え宝石一つでも、村を襲撃してまで奪うような物が──。

(......まさか、な)

 ヴェイトは顎に手を当て、何かを深く考え始める。
 その様子にマッドとティミーは不安を覚え、思わずヴェイトに向けて身体をのめり出した。

「おい、何だよレンって奴、知ってるのか?」
「あぁ、いや。レンという奴は知らないが......」

 ヴェイトはティミーを見つめ、顔をしかめる。
 その表情は何とも言えない表情で、翡翠の瞳が不安定に揺れているようにも見えた。

「ヴェイトさん? どうかしましたか?」
「何でもない。すまないな、不安にさせて」

 気を取り直そうとヴェイトはカップに残っていた珈琲を飲み干し、小さく息を吐く。

「大体の経緯は分かった。ウォックからは水害の原因がガーネにあるのではないかという知らせを受けている。そのガーネを調査するには、海底都市ユリスに行かなくてはいけない」
「そういや、都市って事は海底に町があるのか!?」
「そうだ。まぁ、都市と言えるかどうかは難しいが」

 ヴェイトの言葉に、マッドは驚いた。
 海底に町が有るなんて、聞いた事が無かったからだ。
 ヴェイトは部屋に飾ってある世界地図を指差し、説明する。

「地図には載っていないが、この世界の中心に存在するんだ。まぁ、遺跡みたいな物があるだけで人は誰も住んでいない。だが、この場所はベルトア軍の管轄下に当たる場所だから、大総統の許可が下りないと無理だ。それを見極める為に、大総統はお前達を呼んでいるんだ」
「大総統って、ここで一番偉い奴か?」
「そうだ。ちょっと癖のある人だがな」

 癖のある人物と聞いて、マッドは顔を引きつらせる。

「まさか、あの不良軍医みたいな奴じゃ無いだろうな」
「そんな訳無いだろ。ただ、何というか......考え方が独特なお方でね。会えば分かるさ」

 何処か視線を逸らしながら話すヴェイトに、マッドとティミーは更に不安感を募らせる。
 ベルスみたいな奴は御免だと、内心二人共思っているようだ。

 心の準備をしようとマッドが深く息を吐き天井を見上げると同時に、部屋のドアが少し乱暴な感じで開かれた。

「よう、待たせたなヴェイト」
「戻ったかベルス」

 ドアを開けたのはベルスだったようで、先程までの白衣とは違いヴェイトと同じ軍服を着ていた。
 
「げっ、噂をすれば戻って来やがったよ」
「あぁ? 何だとクソガキ。礼ってモンを知らねぇのか」
「何だよ礼って」

 マッドはベルスに掴みかかろうとするが、物凄い衝撃がマッドを襲い、マッドは思わずソファーに倒れ込んでしまった。
 起き上がろうとするも起き上がれなく、マッドは自分の上に覆いかぶさる人物を見上げ、声を上げる。

「マッド~! 元気になったよ~!」
「いってぇぇえ~! おいっ、降りろよヴェノル!」
「や~だ~! 感動の再会なのに~!」

 ドアが開いて少し経った後に飛びかかってきた人物の正体はヴェノルだったようで、マッドとティミーはパッと笑顔と安堵の表情を浮かべた。

「ヴェノル、もう身体大丈夫なの?」
「あ! ティミーだ~! 平気だよ! ほらこの通り!」
「う、うん。分かったから取り敢えずマッドの上から降りてあげよう?」

 マッドに馬乗りになりながらいつもの明るい笑顔を見せるヴェノルにホッとするも、打ち所が悪かったのか痛がっているマッドをティミーは心配していた。
 そのままはしゃぐヴェノルだったが、後から入ってきた人物に猫の首を掴むみたいにヒョイっと摘み上げられると、ポケっとした表情を浮かべた。

「全く、元気になったらなったで相変わらず煩い奴だなお前は」
「ぶーぶー。何するんだよウォックー!」

 ヴェノルは頬を膨らませ、声を上げる。
 ヴェノルをつまみ上げていたのはウォックで、本人は呆れた表情をしつつ溜息を吐いた。

「ウォック、お帰り」
「ただいま。もうヴェノルは平気らしい。船酔いと暑さにやられていたみたいだ」
「いってて......そうだよな、こんだけ元気になりゃ問題ねぇよな!」

 ヴェノルが退いた瞬間にマッドは思い切りヴェノルの頭に拳骨をかました。
 ゴチンという鈍い音が響き、ヴェノルは涙目でマッドを睨みつける。

「いったいなぁ! 何するんだよー!」
「そりゃこっちの台詞だ! いきなり飛び付いてくるな!」
「マッドのケチ~! 折角の感動の再会なのに~!」
「はぁ。あの不良軍医に脳みそ弄られて更に馬鹿になったかお前」

 嫌味っぽく吐き捨てると、マッドの言葉が気に障ったのか、ベルスはテーブルの上に思い切り左足を乗せてマッドの胸倉を掴んだ。

「誰が不良軍医だ。テメェの頭割って脳みそ弄り回しても良いんだぜ?」
「へっ、やるのかテメェ」

 マッドとベルスは睨み合いつつ、互いに牙を向け合う。
 その横をヴェイトが気配を消して近付き、二人の頭を掴むとお互いの頭を思い切りぶつけ合った。
 ヴェノルを殴った時よりも鈍い音が鳴り響き、マッドとベルスは互いに頭を押さえて涙目になりつつも痛みに耐えていた。

「いってぇな! 何しやがるんだテメェ!」
「おいヴェイト! ふざけた事してんじゃねぇぞ!」
 
 マッドとベルスが互いに文句を言うも、ヴェイトはニッコリ微笑みながら大型の銃を二人の間に突きつけ、そのまま静かに口を開いた。

「テーブルの上に足を乗せるな。それと喧嘩は大総統の話が終わってから好きなだけやれ。俺の私室で下らない喧嘩は止めてもらおうか」

 静かに言葉を吐くヴェイトを見上げると、穏やかな表情をしているように見えるが、誰が見ても分かる。
 目が、笑っていない。
 このまま喧嘩を続ければ確実に銃で撃たれると、ヴェノル以外は感じていた。

「と、取り敢えずヴェノルが元気になって良かったね! そしたら大総統さんの所にお話を聞きに行く感じで良いんですよね?」
 
 ティミーは慌てて話題を変えてヴェイトに精一杯の笑顔を向けて話しかけると、ヴェイトは小さく頷いた。

「そうだな。これから大総統に会いに行く。大総統の前で無礼な事したら承知しないからな」

 ヴェイトは銃を仕舞うと、軍服を整えて扉に向かって歩いて行った。

「ついてこい。大総統がいる場所は中央司令部だ」
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