ひだまりを求めて

空野セピ

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第七章 届かない声

魔物襲来!!

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 魔法陣に足を踏み入れ、光と共に気が遠くなり、少し酔った感覚を感じると同時に、一気に湿気を帯びた暑さが身体を包み込む。
 同時に、眩い光に一瞬眼を細め、ゆっくりと開いていくと、そこは沢山の出店が並び、少しばかり王都の城下町を思わせるような街並みが広がっていた。
 ベルトアの王都に近い【日陰の町サーヴァ】。
 数々の品物が揃い、商人の町とも呼ばれている場所だ。
 しかし、出店は並んでいるが、人の気配は一切感じられない。
 全員が到着すると、プリムは東方面の時計台を指差し、大きく叫んだ。

「この地区の人達は避難させました! 魔物は現在、東部に一匹、もう一匹は北に向かっているそうです!」
「なっ、二匹共バラバラで動いているのか?」
 
 プリムの言葉に、ヴェイトは言葉を詰まらせる。
 
「魔物は二匹共、巨大なサソリ型の魔物です! 甲羅が堅く、陽術も特定のものは弾かれてしまいます。武器も、刃が通りにくいかと......」

 プリムが状況を説明していると、時計台の方で大きな爆発音と同時に、噴煙が巻き起こった。
 他のベルトア軍が応戦しているのか、どの道二匹も魔物が侵入しているとなると、急いで手を打たなければ被害が拡大するとヴェイトは考えていた。

「魔物は、サソリ型で間違い無いんだな?」
「は、はい!」
「分かった。時間が無い。これより、二手に分かれて行動するぞ」

 ヴェイトの言葉に、マッドとティミーは唖然とした。

「二手にって、一気に片付けてもう一匹の所に行った方が良く無いか?」
「そうも言っていられない。二手に分かれて、同時に叩き潰した方が被害も少なくなる。みんな、旅をして来たと言う事は戦闘経験は有るだろう?」
「そりゃ、有るけど」
「でも、私とマッドは陽術が使えません。マッドは強いかもしれませんが、私は弓で遠距離の攻撃しか出来ません。足手纏いになってしまうかも......」

 不安そうに話すティミーに、ヴェイトはティミーの肩を優しく叩いた。

「大丈夫だ。サソリ型の魔物なら、甲羅は硬いが、腹節の間に僅かな隙間が有る。そこを狙えば攻撃が通る筈だ」
「なら問題ねぇ! 二手に分かれようが、俺が剣でぶった斬ってやるぜ!」

 マッドは剣を抜き、時計台に向けて剣先を向ける。
 意気込みは誰よりも有るようで、その様子にヴェイトは小さく微笑んだ。

「二手に分かれよう。俺に着いてきてもらうのが、マッド、ティミー、ウォック。俺達は東側に行く。プリムは北側で、ヴェノルが着いていってくれ。途中、ベルスと合流出来る筈だ」
「えぇ~!? 何で俺だけ一人なのー!? 反対反対ー!! ウォックと一緒がいいー!」
「俺はごめんだね」

 ヴェイトが決めたチーム編成に、ヴェノルは頬を膨らませて異議を申し立てる。
 しかしヴェイトは小さく息を吐き、顔をしかめながらヴェノルに視線を向けた。

「戦闘能力のバランスを考えるとこうなるのが妥当だろ。それにそっちにはベルスがいる。アイツは恐らく西部に行ってから、北側に行く筈だ。どの道倒したら合図を送って残りの方に向かう。なるべく一気に倒せるように努力はしたい所だな」

 ヴェイトは東側の時計台を見詰めると、更に噴煙が上がった。
 東側の方が、事態が深刻な可能性もある。

「とにかく急ぐぞ。プリム、あの道をずっと真っ直ぐ行くんだぞ? 途中で曲がったりするなよ?」
「わかってますって! サーヴァの町は何度も来てますし、迷子になんてなりませんよ!」
「ベルスに合流するんだよね? 大丈夫! あっちからベルスの匂いがするから俺分かるよ!」
「匂いって、犬かよお前は」

 ヴェノルの発言にマッドは呆れつつも、噴煙が上がった方向を見詰める。

「急いだ方が良さそうだろ? さっきアンタが言ったように二手に分かれてさっさと魔物をぶっ倒そうぜ。怪我人も多く出てるんだろ?」
「あぁ。医療部隊にも救援要請命令を出した。怪我人は部下達に任せて、俺達は魔物を叩き潰すぞ」

 マッド達は噴煙を見上げ、小さく息を飲む。
 ヴェイトがスッと手を掲げ、大きく口を開いた。

「これより二手に分かれて同時に魔物を叩き潰す。倒したら合図を出しもう片方の魔物の所に向かう。全員、全力で戦え!」

「了解!!」
「はい!」

 各自返事はバラバラではあったが、目的は全員把握している。
 まとまりは有るとヴェイトは苦笑すると、その横を勢い良くプリムとヴェノルが走って行った。

「やった~! プリム、こっちこっち~! ベルスの匂いがするよ~!!」
「わーっ!? ちょっ、引っ張らないで下さい!!」

 ヴェノルはプリムの腕を掴み、凄い速さで北の方角へ向かって行った。
 ヴェノル達の姿はあっという間に見えなくなり、その勢いに、マッド達は唖然としている。

「す、すげぇ足速いな、アイツ」
「そ、そうだね......プリムさん、大丈夫かな」

 相変わらずのテンションの高さに呆れつつも、マッドは直ぐに目付きが変わり、東側の時計台を睨み付ける。

「魔物はあっちだよな? 俺達も直ぐに向かおうぜ」
「あぁ。行こう、こっちだ」

 ヴェイトが走り出すと、マッド達はヴェイトの後を追い、噴煙が上がる東側へ向かった。



 時計台を目指し走っていくうちに、怪我を負った町の住民がベルトアの軍人達に運ばれて行く光景を目にし、ヴェイトは住民をチラッと横目で見ると、脚を止めて近くの軍人を呼び止めた。

「失礼。ベルトア軍医療班隊長のヴェイトだ。状況はどうなっている」

 住民を背負っていた軍人は片手で敬礼すると、何処か怯える表情でヴェイトを見上げた。

「医療部隊隊長のヴェイト大佐ですね!? 直々に隊長が来て下さるとは......! 大型のサソリ型の魔物が、町の中心部を目掛けて進んでいます。かなり凶暴化していて、陽術も銃や剣も弾かれてしまいます。何より、尻尾の攻撃を受けると毒を食らってしまいます!」
「毒、だと?」
「はいっ! 解毒陽術を使える陽術士がいないと危険です。聖属性の陽術を使える軍人が少なく、怪我をした住民の半数が、毒に犯されています」

 軍人は焦っている様子で、後ろを気にしながらもヴェイトに必死で訴えた。
 毒、という言葉に、ヴェイトは小さく舌打ちをする。

「毒か......厄介な魔物だな。今、医療部隊が向かっている。そちらに向かわせるように空に救難信号の合図を送れ。俺達は魔物を討伐する」
「分かりました! 気を付けて下さい、魔物はもう直ぐそこに......」

 軍人が空に向けて救難信号の合図を出そうとした瞬間、大きな爆発音と共に黒い影が現れた。

「何だ!?」

 マッド達は巻き上がった噴煙に眼を閉じると、その瞬間に大きな地響きが響き渡る。

「で、出た......!! アイツです!! あのサソリ型の魔物です!」

 軍人が腰を抜かしながら前方を刺し、その方向を見ると、全長十メートルはある巨大なサソリ型の魔物が、巨大な鋏を掲げながらマッド達を見据えていた。


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