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序章
カウントダウン中編
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今まで魔法は使ってこなかったがそろそろ使うのも面白いかもしれないな。
ふと芸術家にそんな考えが浮かんだ。
考えてみれば何故使わなかったのだろう。せっかくもらったものだ、使わなければ勿体ない。
「うん、魔法で殺してみよう。」
彼女はメスをポケットに入れるとティーカップに残った紅茶を飲み干した。
「もう行くんですか?」
執事服の男が彼女に声を掛ける。その男は顔が無かった。いや顔自体はあるのだが明らかに人の顔ではないのだ。言うなればオペラ座の怪人マスクが話しているような感じだ。目は色味なく無限の闇のようであった。
肌が白色なのが一層人外感を引き立てている。
「その通り。実行は早い方がいいだろう?」
そして彼女は歌うように唱えた。
「霧よ」
彼女の足元から霧が出てくる。それは少しずつしかし確実に王都を覆い尽くしていく。
「折角魔法使ったんだし少し大物狙ってみるかな。」
彼女は古新聞の1枚を無造作に取り出すと目をつぶってパラパラとページをめくる。
「ここにしよう」
見出しには「巨大魔獣を討伐!
麗しき高位狩人カルマ姉妹!」とある。
赤髪の姉妹が倒した魔獣の前でピースしている写真だ。
少し彼女は考え込むと指を鳴らして紙に書き始める。
「2人の作品は初めてだね。支え合う感じにしようかな。」
最後に羽ペンの先を舐め油を取ってからインク壺に漬けると署名する。
「じゃっ、行ってくるよ。」
彼女はシルクハットとマスクを取るとそれらを着けた。
「いってらっしゃいませ」
霧が一瞬彼女を覆い隠したかと思うと、次の瞬間彼女は忽然と姿を消していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「何か霧が出てきたわね。」
エマはそう呟く。
「いかにもジャックザリッパーが出てくるって感じだね。」
僕はそう返す。
「?どう言う事?」
「このジャックザリッパーが暗躍した街は霧の都と呼ばれていたんだよ。」
「なるほどね~。」
「でもこんな霧の中じゃ私の魔導砲が使いにくいわ。」
「使わないでしょ~?大丈夫だよぉ~。」
「てか市街地で使うの危なくないか?」
「大丈夫よ、磁力調節して射程10メートルにしてあるから。」
「でもこの霧は不味いね。巡回する意味が殆ど無くなった。」
霧によって見えるのはせいぜい5、6メートルほどである。
「あれえ~。何この紙~?」
「何?誰かがポイ捨てしたチラシとかじゃない?」
アンはそれを拾う。僕とエマはそれを覗き込んだ。首の無い2人の人物画だ。そして下には
「エマ、アン両名様へ親愛なる芸術家より」
僕らは素早く互いの背を向け合った。
「芸術家の狙いは私達!?」
「その可能性がある!でもどうして!?」
「落ち着いて~、まずは本部に連絡しなきっ」
「、、、、アン?」
2人が振り返るとアンは跡形もなく静かに消えていた。
「アン!何処に行ったの!?アン!」
「取り敢えず本隊と合流しよう!ヤバイぞ!」
「でもアンが!」
「命令を忘れたのか!?深追い厳禁だろ!?」
パァンと乾いた音と共に僕は右頬に衝撃を受ける。
「アンは私の家族なの!簡単に見捨てられる訳ないでしょう!?」
「じゃあ妹さんと一緒に行こうか。」
第3者。その声は聞いたことの無い声であり、その声が芸術家であると2人は瞬時に理解した。同時にすでに逃げることも出来ないと。
「アンを返して。」
「君が来ればいいじゃないか。」
「なら!」
エマは背中の魔導砲を抜き、声のする方に向けて引き金を引く。発射音は一切無く、ただボッと発射された方向の霧がソニックブームによって霧散する。
そこに立っていたのは仮面をつけた紳士であった。
右手には銀のステッキを持ち、そのステッキには小さな時計がついているが、動いてはいないようだ。シルクハットを浅く被り白い外套で身を包む。
「貴方がジャックザリッパーね。」
「いかにもお嬢さん。」
「妹を返して。」
「それは無理な相談だ。」
僕はエマがハンドサインを送っていることに気づいた。
「(5....4....)」
「神よ、私に風よりも早い足を与えたまえ」
僕は胸元の十字架を握りしめる。僕の魔法は願い。つまり魔力と一定の対価を支払い神様に願いを叶えてもらうと言うもの。願いが複雑化するほど、また継続時間が長ければ長いほど対価は大きくなる。何故僕に神様がこんなに介入してくれるのか分からない。でも今はそんな疑問は関係ない。ふわりと足が軽くなる。地面を踏む感覚は無くなり、平衡感覚がなくなりかける。
左足のブーツのかかとで強く地面を叩くと、薄い刃が靴先に飛び出す。魔法による毒が表面に塗られた刃。本来は動きが早い魔獣に対して使われるものだが人間相手にも十分に通用する。
左足を少し後ろに下げいつでも飛び込めるよう構える。
「(3....2....1....)」
「今よっ!飛びなさい亮介!」
その言葉が終わる前に亮介は紳士の前に詰め、素早い身のこなしで前回し蹴りを叩き込んでいた。
ジャックザリッパーは喉にまともに蹴りをくらった、筈であったが彼の足は虚しく空を切るのみであった。
ふと芸術家にそんな考えが浮かんだ。
考えてみれば何故使わなかったのだろう。せっかくもらったものだ、使わなければ勿体ない。
「うん、魔法で殺してみよう。」
彼女はメスをポケットに入れるとティーカップに残った紅茶を飲み干した。
「もう行くんですか?」
執事服の男が彼女に声を掛ける。その男は顔が無かった。いや顔自体はあるのだが明らかに人の顔ではないのだ。言うなればオペラ座の怪人マスクが話しているような感じだ。目は色味なく無限の闇のようであった。
肌が白色なのが一層人外感を引き立てている。
「その通り。実行は早い方がいいだろう?」
そして彼女は歌うように唱えた。
「霧よ」
彼女の足元から霧が出てくる。それは少しずつしかし確実に王都を覆い尽くしていく。
「折角魔法使ったんだし少し大物狙ってみるかな。」
彼女は古新聞の1枚を無造作に取り出すと目をつぶってパラパラとページをめくる。
「ここにしよう」
見出しには「巨大魔獣を討伐!
麗しき高位狩人カルマ姉妹!」とある。
赤髪の姉妹が倒した魔獣の前でピースしている写真だ。
少し彼女は考え込むと指を鳴らして紙に書き始める。
「2人の作品は初めてだね。支え合う感じにしようかな。」
最後に羽ペンの先を舐め油を取ってからインク壺に漬けると署名する。
「じゃっ、行ってくるよ。」
彼女はシルクハットとマスクを取るとそれらを着けた。
「いってらっしゃいませ」
霧が一瞬彼女を覆い隠したかと思うと、次の瞬間彼女は忽然と姿を消していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「何か霧が出てきたわね。」
エマはそう呟く。
「いかにもジャックザリッパーが出てくるって感じだね。」
僕はそう返す。
「?どう言う事?」
「このジャックザリッパーが暗躍した街は霧の都と呼ばれていたんだよ。」
「なるほどね~。」
「でもこんな霧の中じゃ私の魔導砲が使いにくいわ。」
「使わないでしょ~?大丈夫だよぉ~。」
「てか市街地で使うの危なくないか?」
「大丈夫よ、磁力調節して射程10メートルにしてあるから。」
「でもこの霧は不味いね。巡回する意味が殆ど無くなった。」
霧によって見えるのはせいぜい5、6メートルほどである。
「あれえ~。何この紙~?」
「何?誰かがポイ捨てしたチラシとかじゃない?」
アンはそれを拾う。僕とエマはそれを覗き込んだ。首の無い2人の人物画だ。そして下には
「エマ、アン両名様へ親愛なる芸術家より」
僕らは素早く互いの背を向け合った。
「芸術家の狙いは私達!?」
「その可能性がある!でもどうして!?」
「落ち着いて~、まずは本部に連絡しなきっ」
「、、、、アン?」
2人が振り返るとアンは跡形もなく静かに消えていた。
「アン!何処に行ったの!?アン!」
「取り敢えず本隊と合流しよう!ヤバイぞ!」
「でもアンが!」
「命令を忘れたのか!?深追い厳禁だろ!?」
パァンと乾いた音と共に僕は右頬に衝撃を受ける。
「アンは私の家族なの!簡単に見捨てられる訳ないでしょう!?」
「じゃあ妹さんと一緒に行こうか。」
第3者。その声は聞いたことの無い声であり、その声が芸術家であると2人は瞬時に理解した。同時にすでに逃げることも出来ないと。
「アンを返して。」
「君が来ればいいじゃないか。」
「なら!」
エマは背中の魔導砲を抜き、声のする方に向けて引き金を引く。発射音は一切無く、ただボッと発射された方向の霧がソニックブームによって霧散する。
そこに立っていたのは仮面をつけた紳士であった。
右手には銀のステッキを持ち、そのステッキには小さな時計がついているが、動いてはいないようだ。シルクハットを浅く被り白い外套で身を包む。
「貴方がジャックザリッパーね。」
「いかにもお嬢さん。」
「妹を返して。」
「それは無理な相談だ。」
僕はエマがハンドサインを送っていることに気づいた。
「(5....4....)」
「神よ、私に風よりも早い足を与えたまえ」
僕は胸元の十字架を握りしめる。僕の魔法は願い。つまり魔力と一定の対価を支払い神様に願いを叶えてもらうと言うもの。願いが複雑化するほど、また継続時間が長ければ長いほど対価は大きくなる。何故僕に神様がこんなに介入してくれるのか分からない。でも今はそんな疑問は関係ない。ふわりと足が軽くなる。地面を踏む感覚は無くなり、平衡感覚がなくなりかける。
左足のブーツのかかとで強く地面を叩くと、薄い刃が靴先に飛び出す。魔法による毒が表面に塗られた刃。本来は動きが早い魔獣に対して使われるものだが人間相手にも十分に通用する。
左足を少し後ろに下げいつでも飛び込めるよう構える。
「(3....2....1....)」
「今よっ!飛びなさい亮介!」
その言葉が終わる前に亮介は紳士の前に詰め、素早い身のこなしで前回し蹴りを叩き込んでいた。
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