けいちゃんと私、ときどきうみちゃん

里見しおん

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「くぁ」


 布団の中で大きく伸びをして起き上がる。
 枕元に置いたスマートフォンを手に取り画面を見ると、5時50分。
 アラームが鳴る10分前であった。


 並べて敷いた布団にはきっちりと布団を乱さず眠る慶がいる。
 穏やかな寝顔を確認し、七海は起こさないようにそっと部屋を出た。



 居間を通り抜け、廊下に出る。トイレへの道のりは素足に冷たい。

 用を足し、キッチンでやかんに火をかける。
 冷えているが天気予報によると、今日は昨日よりかなり暖かくなるようだ。

 このくらいならストーブはつけなくてもいいかな?
 けいちゃんは寒いだろうか。寒いって言ったらつけよう。

 棚からインスタントコーヒーを取り、揃いの二つのマグカップに振り入れる。
 子どもの頃おみやげにもらったもので、晃のには赤でA、七海のにはオレンジ色でNと書いてある。

 やかんがしゅんしゅんと鳴ったところで火を止め、お湯を注ぎ入れた。


 襖が静かに開き、仕事用の紺のジャージの上下を着た晃が部屋からのそりと現れた。


「くぁ、おはようななみ」

「おはよう。今、起こしに行こうと思ったのに。コーヒーに牛乳入れる?」

「ん、頼むわ。なんか目ぇ覚めちゃってよ。やっぱ他人がいる気配っつーか、いつもと違って緊張したかも」


 冷蔵庫から牛乳を取り、晃のカップに注ぐ。
 七海のカップにもなみなみと注いだ。 

「おにいちゃんでも、緊張するんだね。ハイたまごサンド」

 冷蔵庫に牛乳をしまい、晃の分のたまごサンドの皿を出す。
 夕飯が早く済んだので、余ったゆでたまごを昨夜のうちにたまごサンドにしておいたのだ。
 慶の味付けしたたまごサラダは七海が作るよりもマヨネーズが少なめで、ブラックペッパーが効いていた。
 ひとつ味見したらとてもおいしかった。


「ななみは?」

「私はけいちゃんと食べる」



 晃は牛乳たっぷりでぬるくなったコーヒーをぐびぐびと飲み、小さな三角に切ったたまごサンドを口に放り込んだ。


「おっ、うまっ」



 ひょいぱく、と次々口に入れていく。
 七海は立ったままコーヒーを飲んで、ぼんやりと晃を眺めた。
 いつもはいっしょに食事をするので、手持ち無沙汰なのだ。



 ごちそうさん、と立ち上がり、洗面所に向かう。さっと歯磨き洗面をして、くしゃりと七海の頭を撫でて兄は軽トラックで出かけていった。


 壁掛け時計を見ると6時15分。
 あの時計は少し遅れているので、今は20分くらいだろうか。



 昨夜は早めに布団に入って、眠るまで慶とおしゃべりをした。
 慶は朝は苦手と言っていた。起こしてちょうだいとも言っていたが、そっとしておこう。
 飛行機に乗ってはるばる北海道まできてくれたのだ、疲れているだろう。


 起きたら約束したとおり、いっしょにうみちゃんに会いに行こう。
 昼ごはんは昨日のカレーの残りでいいかな。

 ぬるいコーヒーを飲み干し、晃の使った食器といっしょにカップを素早く洗った。
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