けいちゃんと私、ときどきうみちゃん

里見しおん

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 食卓にはカレーライスと山盛りのサラダボウル、まるごとのゆでたまごをこんもりと盛った皿が並べられていた。
 客を意識してか、カレーライスの皿の下には普段使わないランチョンマットが敷いてある。

 慶と七海は席について待っていた。
 七海の向かいの晃の席には新しい缶ビールと普段使わないグラスが置いてあった。

「お、ありがとな」

「ほらほら、わたしに注がせてちょうだい! 泊めてくれてありがとう、お世話になりまぁーす!」

 晃が腰を下ろしビールに手を伸ばすと、慶がさっと身を乗り出しビールを取った。
 素早くプルタブを開け、グラスに注いでいく。


「こりゃどーも、おまえさんも……お茶でいいのか?」

「わたしはいいのよー!」

「いただきます」


 七海が手を合わせてカレーを口に運ぶ。
 冷たいビールを一気に喉に流し込み、晃もカレーに手をつける。
 いつもより辛口だ。なんかうまい。

「ななみちゃん、カレーおいしいわぁ」

「ジャ○カレーだよ」

 慶に答える七海の言葉に納得する。
 いつもよりちょっと高いカレールーだ。
 以前たまにはと買って、うまいと2人で喜んだ覚えがある。
 客のために奮発したんだろう。


「やっぱうまいなジャ○カレー。なぁななみ、ゆでたまご作りすぎじゃないか? こんなに食えないぞ」

 深皿にごろごろ盛られたゆでたまごは10個じゃきかないだろう。
 2パックくらい茹でたんだろうか。


「残ったら明日、たまごサンドにする」

「たまごサンド大好き。いっしょに作りましょうね」

「うん」


 スプーンでたまごを割る七海の口の端が嬉しそうに上がっていた。



「ななみ、サラダもうまいな」

「カット野菜だよ」


 いつもは千切りキャベツだが、コーンや水菜が混ざっている。
 カット野菜のランクも上げているようだ。


「あんた……白石サン」

「お兄さんもけいちゃんって呼んでったらぁ」

「け、けい……さんは、なんの仕事してるんだ?」


 金髪で、上着を脱いだ腕にはタトゥーも見える。
 金髪もタトゥーも、漁師仲間にもいるので偏見はないが、勤め人の風貌でないのはわかる。


「わたしは美容師よぉ」

 パチンとウィンクをされる。
 なるほど、金髪オシャレイケメン美容師か。納得である。

「あ、の、もしかして、アイコンのネイルって、けいちゃんがしたの?」

「そうよぉ、ネイルの資格も持ってるの。あれは練習に付き合ってくれたモデルさんの手なのよぉ」


 七海がなるほどと頷いている。
 七海は女の手がアイコンだったから女だと思っていたのか。短絡的だ。
 やはりまだまだ妹は心配だ。



 カレーを口に運びながら、晃は目の前のふたりを観察する。
 七海は慶と会話をしながら楽しげに食事をしている。朝のハイテンションは落ち着いたようだが、ずいぶんと慶に懐いたようだ。
 
 

 「ごちそうさま」

 七海が手を合わせ言う。カレーライスは必ずおかわりするのに珍しい。

「七海、慶、さんの布団は?」

 倉本家に客間はない。
 居間と、晃の部屋、七海の部屋、物置にしている部屋があるだけだ。物置部屋を片付けてもいいのだが玄関脇で寒いので、この時期はとても眠れない。
 居間に布団を敷くのかと思ったが、出ていないのだ。



「けいちゃんのお布団は私のお部屋」

「あらいいのぉ? 寝るまでおしゃべりしましょうね」

「うん。私お茶いれるね、けいちゃんほうじ茶飲める?」

「好きよぉーありがとうななみちゃん」

 七海は立ち上がり、流しに食器を下げ、やかんに水を入れ火にかけた。
 慶は皿によそったサラダを上品に少しずつ口に運んでいる。

 美しい所作を眺めながら先ほどの会話を反芻し、ゆっくりと立ち上がった。




「いいわけあるか、ゴラァァァァ!」

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