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燦々と太陽が輝き、鈍い色の海を眩しいほど白く光らせている。
夏の色だ。
人の姿はない。
昼時だ、皆食事にでもに行ったのだろう。
藍色の浴衣のうみちゃんだけが係留柱に腰掛けて、こちらを向いて微笑んでいた。
軽自動車の運転席から、七海はうみちゃんを見て、驚いた。
海の方を見ていないのは、うみちゃんに出会ってから初めてだった。
「けいちゃん、見えてる?」
慶はうみちゃんを食い入るように見つめながら頷き、助手席から降りた。
七海も運転席から降り、慶に並んだ。
「けいちゃ」
『ヤマの神の神子が、ウミに何用であるか』
突然、水の中に響くような、ぼわわんとした声がした。
「うみちゃんがしゃべった?」
うみちゃんの唇は微笑みのまま動いていない。が、うみちゃんの他には誰もいない。
七海の驚きの声に、うみちゃんも微笑みを崩し、きゅるんと丸い黒い瞳をさらに丸くする。
『ヤマの神の神子の力か。ナナミにまで声を伝えるとは、ずいぶんと強い神子だ』
慶はうみちゃんを見つめかたまっている。
七海だって驚きだ。
神子、とはけいちゃん?
うみちゃん、私の名前わかってたんだ!
この声、うみちゃんって男の人だった?!
ぼわわん、と反響したように聞こえるその声は少年少女の高いものではなく、低く艶のある、男性の声だった。
『ナナミには伝えたきことがあった。褒めてつかわすぞヤマの神子』
慶はハッと止めてしまっていた息を吐き、片膝をついて頭を下げた。
『よいよい、オマエの神はヤマのであろう。ナナミ、オマエの母はとうにこの世におらぬ』
前置きもなく飛び出した発言に、七海はぽかんと口を開けた。
言葉の意味を飲み込み理解すると、心臓が激しく鳴り、開いた唇は戦慄いた。
「ど、して」
『ずっと伝えたかったが、オマエには声が届かずにいた』
七海の母が消えたのは、七海が中学一年生になってすぐだ。
ある日突然失踪した母は、町の人々の、そして兄の記憶からも消えてしまった。
覚えている七海だけが泣いて騒ぎ、探し回り、町中から『想像上の母親を思い騒ぐ頭のおかしい子』だと思われていた。
「どうして」
どうしてお母さんはいないって知ってるの?
どうしてお母さんは死んでしまったの?
どうしてあの時教えてくれなかったの?
どうしてわたしだけが覚えているの? どうして、どうして。
どうして、のあとに続く言葉がありすぎて、七海はうみちゃんを見つめ、立ち尽くした。
夏の色だ。
人の姿はない。
昼時だ、皆食事にでもに行ったのだろう。
藍色の浴衣のうみちゃんだけが係留柱に腰掛けて、こちらを向いて微笑んでいた。
軽自動車の運転席から、七海はうみちゃんを見て、驚いた。
海の方を見ていないのは、うみちゃんに出会ってから初めてだった。
「けいちゃん、見えてる?」
慶はうみちゃんを食い入るように見つめながら頷き、助手席から降りた。
七海も運転席から降り、慶に並んだ。
「けいちゃ」
『ヤマの神の神子が、ウミに何用であるか』
突然、水の中に響くような、ぼわわんとした声がした。
「うみちゃんがしゃべった?」
うみちゃんの唇は微笑みのまま動いていない。が、うみちゃんの他には誰もいない。
七海の驚きの声に、うみちゃんも微笑みを崩し、きゅるんと丸い黒い瞳をさらに丸くする。
『ヤマの神の神子の力か。ナナミにまで声を伝えるとは、ずいぶんと強い神子だ』
慶はうみちゃんを見つめかたまっている。
七海だって驚きだ。
神子、とはけいちゃん?
うみちゃん、私の名前わかってたんだ!
この声、うみちゃんって男の人だった?!
ぼわわん、と反響したように聞こえるその声は少年少女の高いものではなく、低く艶のある、男性の声だった。
『ナナミには伝えたきことがあった。褒めてつかわすぞヤマの神子』
慶はハッと止めてしまっていた息を吐き、片膝をついて頭を下げた。
『よいよい、オマエの神はヤマのであろう。ナナミ、オマエの母はとうにこの世におらぬ』
前置きもなく飛び出した発言に、七海はぽかんと口を開けた。
言葉の意味を飲み込み理解すると、心臓が激しく鳴り、開いた唇は戦慄いた。
「ど、して」
『ずっと伝えたかったが、オマエには声が届かずにいた』
七海の母が消えたのは、七海が中学一年生になってすぐだ。
ある日突然失踪した母は、町の人々の、そして兄の記憶からも消えてしまった。
覚えている七海だけが泣いて騒ぎ、探し回り、町中から『想像上の母親を思い騒ぐ頭のおかしい子』だと思われていた。
「どうして」
どうしてお母さんはいないって知ってるの?
どうしてお母さんは死んでしまったの?
どうしてあの時教えてくれなかったの?
どうしてわたしだけが覚えているの? どうして、どうして。
どうして、のあとに続く言葉がありすぎて、七海はうみちゃんを見つめ、立ち尽くした。
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