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8.トンボ帰り、本部へ
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寧奈が東から頭を上げた時、温泉からマルヨンが出てきた。
「チッ。アイツらのうのうと」
「マルヨンぐらい本部長に愚痴ってもいいんじゃないですか?」
「そーするわ。行こう」
皆で車を乗り、東除く三人はリアシートで顔を押さえて横になる画海を見た。
「いい弱点見っけたねぇ」
道の駅まで走って、そこで夜飯を食べた。
「飯うま……!」
「画海さんはこの前までどこに?」
「インド」
「え話通じた」
「インドってご飯美味しくないんですか?」
「甘いか辛いかの二択。あと普通に体調崩す」
「あ、衛生面……?」
「んー、拒否反応?」
あの病的に話が通じないと評判の画海と普通に話をする寧奈に三人揃って愕然とし、歩み寄ってみた寧奈は心底胸を撫で下ろす。
よかった、頭おかしい人じゃなさそう。
「……左利きですか? 昨日は、右で食べてませんでしたっけ……」
「そうなの?」
首を傾げた画海に首を傾げる。
やっぱり、ちょっとは変な人かも。
今日はここで車中泊をして、寧奈はまた助手席で眠った。
眩しくて目を覚ました。
何時だろうと思った途端、目を丸くした。
「わッ!」
「どうしたの」
起きていたのかというほど目覚めの良いトーキが助手席を覗き込んで、途端車のドアを開けて逃げ出したおっさんを蹴り倒した。
「どうした寧奈」
「撮られてました……」
頭を抱えた東は溜め息をつく。
後ろはスモークガラスなのだが、助手席は普通のクリアガラスだ。
「後ろ来い。トーキの隣に」
「はい。びっくりした……」
しばらくして、トーキが帰ってきた。
「写真消してスマホ壊してきた」
「こわ!?」
「警察はやだって言うんだもの。バックアップとかよく分からないし」
「SDカード割った?」
「おはよう瞬。壊したスマホはここにあるよ」
「明日貸して」
「はぁい。後ろで寝るの? おいで」
「おい手出すなよ」
「はぁい」
瞬とトーキに挟まれた寧奈は、起こしてごめんなさいと謝ってからまた目を閉じた。
驚いた拍子のアドレナリンでしばらく眠れなかったのだけど、トーキが体を叩いてくれて、温かさも相まって気分が落ち着いたらまた眠れた。
いつも起きるのは寧奈か東が一番で、その物音でトーキが起きて、最後に瞬が頑張って起きる。
寧奈は五時半にアラームをかけているが、東はたぶん睡眠時間が足りるまで。運転もするし、無理やり起きるよりそっちの方がいいと思う。
アラームの音で目を覚ますと、ガッツリトーキに抱き締められていた。
温かくて、まぁいいかとスマホに手を伸ばした時、トーキの腕が背中側のジャージの中に入っていることに気が付く。それは駄目。
ゴソゴソと動いてトーキを剥がし、小さな音で鳴り続けるアラームを止めた。
大欠伸をしながら起き上がると、既に画海が起きていた。
角に座って、何もせず、茫然と空を見つめている。
「……おはようございます……?」
「…………おはよう」
「早起きですね」
「うん」
体を伸ばしてストレッチをしていると、東も目を覚ました。ぶるっと震えて小さく縮こまるので、瞬を乗越えて頬に手を当てた。
「……あったか……」
「毛細血管まで血たっぷり詰まってます」
「ぅん……」
少しして、起き上がった東はぐーっと体を伸ばした。また震えて、車にエンジンをかけ暖房を入れる。
「そういえば寧奈、スクーリングの日程は?」
「あ、年末なんです。十二月二十二日から二十六日まで」
「りょーかい。また諸々詳細教えてくれ」
「はい」
いつもより遅くにトーキが目を覚まし、それから瞬も起きた。
「今日さっむいな……!」
「真冬並みの冷え込みらしいです」
「マジかよ……」
ご飯を食べていないので体温が上がらない東は腕をさすり、寧奈は傍に寄ると東にくっ付いた。
「うわあったか!」
「体温三十七度越えです」
「あったけー……!」
嬉々として寧奈にくっ付いた東は、寧奈の伸ばした足の上に座る。凍死せずに済んだ。
そこでほっこりしていると、トーキも寄ってきた。
「寧奈、足どう?」
「あ、昨日温泉で見たらほとんど塞がってたよ。治るのも時間の問題だと思う」
「よかった……! 綺麗に治ってた? 肉芽とかなかった?」
「大丈夫だよ」
「よかったぁ」
酷く心配しているトーキは大袈裟に胸を撫で下ろし、寧奈は大袈裟なと苦笑いをする。
足が切断されたわけでもなし、そこまで心配する必要は無い。
「あとはビタミンだな。新陳代謝で痕薄くなるから。また完全に塞がったら言ってくれ。薬買おう」
「ありがとうございます」
「早く良くなるといいね」
「うん」
瞬の言葉に少し笑っていると、トーキがよじよじと寄ってきた。
寧奈の後ろに座って、三人で団子になる。
瞬が撮った光景があったか面白くて、寧奈はけらけらと笑い声を上げた。
道の駅で朝ご飯を買って、皆でそれをつつく。
ポテトとかつくね串とか、おでんとか唐揚げとか。
「ご馳走様でした」
「はやー!」
「朝はお腹空きません」
「なんか残しとこうか?」
「まぁ腹減ったら買いに寄ればいいだろ」
美味しかったポテトとかぼちゃコロッケを自分の方に引き寄せた東と瞬に呆れて、寧奈はくすくすと笑った。
朝ご飯を食べ終わってから、ゴミを捨てに行く。
「次どこ行くかー」
「どこに行くとかは、自由なんですか?」
「一応な。まぁ仕事多いから結局すぐに呼び出されたりするけど」
車に戻って皆に次の場所を聞くと、画海が本部に行きたいと言い出した。
「刀取られたままなの」
「かたな?」
「いらないでしょ。銃刀法で面倒になるだけだよ」
「俺の付喪神は刀なの。本部の人達に取り上げられてる」
「どうしてですか?」
「俺は上層部の言うことを聞かないから。刀を折ろうとしてる」
「折るの!? そんなこと、有り得るんですか……!? 付喪神が憑いてるのに……」
「上層部の奴ら皆頭おかしいから。有り得ない話ではないと思う」
寧奈が唖然としていると、画海が寧奈にお願いしますと頼んだ。
そんなの頼まれても困る寧奈は戸惑いながら、東を見下ろした。
「行くしかねぇかぁ……!」
「ついでに赤と緑の様子も見ましょ。どんな面で死にかけてるか気になります」
「酷いこと言うね……」
「私マルヒト嫌いなの」
岡山から、たぶん過去最速のトンボ帰り。
寧奈は少し席を倒してブランケットに包まり眠り、車内は沈黙。
寧奈が昼寝するのも珍しいなと思いながら普通に走っていると、突然画海がシートベルトを外した。
「出なくていい!」
「聞いてないよ」
仕方無し高速の途中に停車すると、画海は瞬の扉から飛び出して行った。
この距離ならトーキが届くというのに、先に付喪神を出されたらトーキも割り込めない。
画海の付喪神は刀。
付喪神は基本物の所有者にも憑くので刀本体が無くても付喪神は使えるが、付喪神が出した刀は人が握って振るわなければならない。
付喪神だけで完結出来るトーキって本当に優秀なのだ。
「拾いに行かなきゃなんねぇじゃねぇかよ。トーキ連絡入れろ」
「はぁい」
面倒そうに返事をしたトーキは画海に連絡をして、その場で待機するよう伝えた。分かったなら分かったと返事しろとイラつきながら。
高速から降りてよく知らない街でナビ係が寝ながらに、ようやく合流した。
「お前飛び出すなボケッ! トーキのカバー範囲だッ!」
東の怒鳴り声も聞かず、車に乗り込んだ画海はリアシートに戻っていく。
「話聞けクソ。指示無視すんなら二度と俺の車に乗るんじゃねぇ」
画海は目を丸くして、少し頷いた。
「出ろって言われた時だけ出てりゃいいんだよ。うちにはお前より優秀なトーキがいる」
「うん……」
「はいすみませんでしただろ」
画海はトーキの言葉を無視してシートベルトを締め初めて、二人で額に青筋を浮かべる。
こいつマジで腹立つ。
夕方になって、下道におりてスーパーに寄った。
「ねな~」
ずっと寝ていた寧奈はうっすらと目を開けた。
「大丈夫か? スーパー着いたけど晩飯何がいい?」
「……チョコ……」
「晩飯じゃねぇだろそれは……」
「寧奈、お粥とかでもいい?」
小さく頷いたので、トーキは東と共に車を降りた。
「大丈夫か?」
「女の子は大変ですからね~」
起き上がった寧奈はうつらうつらしながらそれを食べて、トイレに出かけて行った。
「ピザうま」
「一切れちょーだい」
「おう」
しばらくして、スーパーが爆発した。
屋根から心現が突き出して、スーパー内に襲いかかる。
「トーキは寧奈、画海は心現。瞬避難行くぞ」
「はい」
散開し、各自自分の持ち場に向かった。
──付喪神 初冬風──
恐怖からか、混乱か。新しい心現が二箇所から現れる。
付喪神の胸から刀を引きずり出して、付喪神と共にとりあえず一体目の心現の頭を刻んだ。
大混乱のスーパー内部に降りて、寧奈を回収する。
「すみません……」
「何?」
「……いえ……」
トーキが一体と画海が二体、心現を殺す頃に警察が到着した。
駐車場出棒立ちになっていた寧奈が話し掛けられる。
「大丈夫ですか! お怪我は!?」
「あ、無いです。んと……精衙の者なんですが」
警察官が目を丸くして、少しお待ちくださいと言って去っていった。
寧奈はその間に鍵が開けっ放しの車から財布を取った。
「すみません、精衙の方と言うのは貴方で?」
「はい」
それを見せると、責任者っぽい人は頷いた。
「対処ありがとうございました。班をお伺いしても?」
「マルフタです。あと四人いて、中で避難誘導してくれてます」
部下に指示を出して部下は走っていき、寧奈はその人に事の詳細を話す。
「発生源は子供でした。親に叱られてて大泣きして、爆発の恐怖とか混乱とかパニックで、もう二体発生したみたいです。三体とも処理は終わってます。今たぶん、発生源の方の処置もしてるんじゃないかなと思います」
「ありがとうございます。関係者証の写真を撮らせて頂いても? 個人情報は保護致しますので」
「はい」
警察官に紙を見せられて色々記入して、班数字も書いて。
「はい、ありがとうございました」
「あ、リーダーに確認だけお願いします」
「分かりました。ご協力ありがとうございました!」
しばらく車の外で待っていると、東が走ってきた。
「ねなーッ処理助かったー!」
「わッ」
「ストップちょっとハルさん」
飛び付いた東がズンっと重たくて、よろけるとトーキがすぐに回収してくれた。
「俺あの処理めっちゃ嫌いなんだ! 助かったよ!」
「なんにもできなかったので……」
「したした!」
「寧奈は東のいいサポートだね」
「すごいねぇ。東さんの右には誰も立てないよ」
「役に、立てたならよかったです」
「助かった!」
頭を撫で回された寧奈は小さく笑って、皆で車に乗った。
「今日どこ泊まるか」
「近くに海浜公園があるみたいです。コンビニ無いんですけど公共トイレはあります」
「んじゃそこにするか。朝飯だけどっかで買うかな」
車が走り出して、寝転がっていた寧奈は顔を上げた。
「トーキ、連絡先ちょうだい」
「交換してなかったっけ」
「うん。瞬君と東さんも、画海さんも」
「何?」
寧奈が呼べば反応する画海とも連絡先を交換して、一覧のピンで留めておく。
「グループとかない?」
「無いねぇ。作ります?」
「まぁ無くて困ってねぇからな。人数……言うて五人か。んじゃ作っといてくれ」
「分かりました」
「五人かー。一気に増えたな」
「賑やかになったね」
「トーキの精神が安定するわ」
「チッ。アイツらのうのうと」
「マルヨンぐらい本部長に愚痴ってもいいんじゃないですか?」
「そーするわ。行こう」
皆で車を乗り、東除く三人はリアシートで顔を押さえて横になる画海を見た。
「いい弱点見っけたねぇ」
道の駅まで走って、そこで夜飯を食べた。
「飯うま……!」
「画海さんはこの前までどこに?」
「インド」
「え話通じた」
「インドってご飯美味しくないんですか?」
「甘いか辛いかの二択。あと普通に体調崩す」
「あ、衛生面……?」
「んー、拒否反応?」
あの病的に話が通じないと評判の画海と普通に話をする寧奈に三人揃って愕然とし、歩み寄ってみた寧奈は心底胸を撫で下ろす。
よかった、頭おかしい人じゃなさそう。
「……左利きですか? 昨日は、右で食べてませんでしたっけ……」
「そうなの?」
首を傾げた画海に首を傾げる。
やっぱり、ちょっとは変な人かも。
今日はここで車中泊をして、寧奈はまた助手席で眠った。
眩しくて目を覚ました。
何時だろうと思った途端、目を丸くした。
「わッ!」
「どうしたの」
起きていたのかというほど目覚めの良いトーキが助手席を覗き込んで、途端車のドアを開けて逃げ出したおっさんを蹴り倒した。
「どうした寧奈」
「撮られてました……」
頭を抱えた東は溜め息をつく。
後ろはスモークガラスなのだが、助手席は普通のクリアガラスだ。
「後ろ来い。トーキの隣に」
「はい。びっくりした……」
しばらくして、トーキが帰ってきた。
「写真消してスマホ壊してきた」
「こわ!?」
「警察はやだって言うんだもの。バックアップとかよく分からないし」
「SDカード割った?」
「おはよう瞬。壊したスマホはここにあるよ」
「明日貸して」
「はぁい。後ろで寝るの? おいで」
「おい手出すなよ」
「はぁい」
瞬とトーキに挟まれた寧奈は、起こしてごめんなさいと謝ってからまた目を閉じた。
驚いた拍子のアドレナリンでしばらく眠れなかったのだけど、トーキが体を叩いてくれて、温かさも相まって気分が落ち着いたらまた眠れた。
いつも起きるのは寧奈か東が一番で、その物音でトーキが起きて、最後に瞬が頑張って起きる。
寧奈は五時半にアラームをかけているが、東はたぶん睡眠時間が足りるまで。運転もするし、無理やり起きるよりそっちの方がいいと思う。
アラームの音で目を覚ますと、ガッツリトーキに抱き締められていた。
温かくて、まぁいいかとスマホに手を伸ばした時、トーキの腕が背中側のジャージの中に入っていることに気が付く。それは駄目。
ゴソゴソと動いてトーキを剥がし、小さな音で鳴り続けるアラームを止めた。
大欠伸をしながら起き上がると、既に画海が起きていた。
角に座って、何もせず、茫然と空を見つめている。
「……おはようございます……?」
「…………おはよう」
「早起きですね」
「うん」
体を伸ばしてストレッチをしていると、東も目を覚ました。ぶるっと震えて小さく縮こまるので、瞬を乗越えて頬に手を当てた。
「……あったか……」
「毛細血管まで血たっぷり詰まってます」
「ぅん……」
少しして、起き上がった東はぐーっと体を伸ばした。また震えて、車にエンジンをかけ暖房を入れる。
「そういえば寧奈、スクーリングの日程は?」
「あ、年末なんです。十二月二十二日から二十六日まで」
「りょーかい。また諸々詳細教えてくれ」
「はい」
いつもより遅くにトーキが目を覚まし、それから瞬も起きた。
「今日さっむいな……!」
「真冬並みの冷え込みらしいです」
「マジかよ……」
ご飯を食べていないので体温が上がらない東は腕をさすり、寧奈は傍に寄ると東にくっ付いた。
「うわあったか!」
「体温三十七度越えです」
「あったけー……!」
嬉々として寧奈にくっ付いた東は、寧奈の伸ばした足の上に座る。凍死せずに済んだ。
そこでほっこりしていると、トーキも寄ってきた。
「寧奈、足どう?」
「あ、昨日温泉で見たらほとんど塞がってたよ。治るのも時間の問題だと思う」
「よかった……! 綺麗に治ってた? 肉芽とかなかった?」
「大丈夫だよ」
「よかったぁ」
酷く心配しているトーキは大袈裟に胸を撫で下ろし、寧奈は大袈裟なと苦笑いをする。
足が切断されたわけでもなし、そこまで心配する必要は無い。
「あとはビタミンだな。新陳代謝で痕薄くなるから。また完全に塞がったら言ってくれ。薬買おう」
「ありがとうございます」
「早く良くなるといいね」
「うん」
瞬の言葉に少し笑っていると、トーキがよじよじと寄ってきた。
寧奈の後ろに座って、三人で団子になる。
瞬が撮った光景があったか面白くて、寧奈はけらけらと笑い声を上げた。
道の駅で朝ご飯を買って、皆でそれをつつく。
ポテトとかつくね串とか、おでんとか唐揚げとか。
「ご馳走様でした」
「はやー!」
「朝はお腹空きません」
「なんか残しとこうか?」
「まぁ腹減ったら買いに寄ればいいだろ」
美味しかったポテトとかぼちゃコロッケを自分の方に引き寄せた東と瞬に呆れて、寧奈はくすくすと笑った。
朝ご飯を食べ終わってから、ゴミを捨てに行く。
「次どこ行くかー」
「どこに行くとかは、自由なんですか?」
「一応な。まぁ仕事多いから結局すぐに呼び出されたりするけど」
車に戻って皆に次の場所を聞くと、画海が本部に行きたいと言い出した。
「刀取られたままなの」
「かたな?」
「いらないでしょ。銃刀法で面倒になるだけだよ」
「俺の付喪神は刀なの。本部の人達に取り上げられてる」
「どうしてですか?」
「俺は上層部の言うことを聞かないから。刀を折ろうとしてる」
「折るの!? そんなこと、有り得るんですか……!? 付喪神が憑いてるのに……」
「上層部の奴ら皆頭おかしいから。有り得ない話ではないと思う」
寧奈が唖然としていると、画海が寧奈にお願いしますと頼んだ。
そんなの頼まれても困る寧奈は戸惑いながら、東を見下ろした。
「行くしかねぇかぁ……!」
「ついでに赤と緑の様子も見ましょ。どんな面で死にかけてるか気になります」
「酷いこと言うね……」
「私マルヒト嫌いなの」
岡山から、たぶん過去最速のトンボ帰り。
寧奈は少し席を倒してブランケットに包まり眠り、車内は沈黙。
寧奈が昼寝するのも珍しいなと思いながら普通に走っていると、突然画海がシートベルトを外した。
「出なくていい!」
「聞いてないよ」
仕方無し高速の途中に停車すると、画海は瞬の扉から飛び出して行った。
この距離ならトーキが届くというのに、先に付喪神を出されたらトーキも割り込めない。
画海の付喪神は刀。
付喪神は基本物の所有者にも憑くので刀本体が無くても付喪神は使えるが、付喪神が出した刀は人が握って振るわなければならない。
付喪神だけで完結出来るトーキって本当に優秀なのだ。
「拾いに行かなきゃなんねぇじゃねぇかよ。トーキ連絡入れろ」
「はぁい」
面倒そうに返事をしたトーキは画海に連絡をして、その場で待機するよう伝えた。分かったなら分かったと返事しろとイラつきながら。
高速から降りてよく知らない街でナビ係が寝ながらに、ようやく合流した。
「お前飛び出すなボケッ! トーキのカバー範囲だッ!」
東の怒鳴り声も聞かず、車に乗り込んだ画海はリアシートに戻っていく。
「話聞けクソ。指示無視すんなら二度と俺の車に乗るんじゃねぇ」
画海は目を丸くして、少し頷いた。
「出ろって言われた時だけ出てりゃいいんだよ。うちにはお前より優秀なトーキがいる」
「うん……」
「はいすみませんでしただろ」
画海はトーキの言葉を無視してシートベルトを締め初めて、二人で額に青筋を浮かべる。
こいつマジで腹立つ。
夕方になって、下道におりてスーパーに寄った。
「ねな~」
ずっと寝ていた寧奈はうっすらと目を開けた。
「大丈夫か? スーパー着いたけど晩飯何がいい?」
「……チョコ……」
「晩飯じゃねぇだろそれは……」
「寧奈、お粥とかでもいい?」
小さく頷いたので、トーキは東と共に車を降りた。
「大丈夫か?」
「女の子は大変ですからね~」
起き上がった寧奈はうつらうつらしながらそれを食べて、トイレに出かけて行った。
「ピザうま」
「一切れちょーだい」
「おう」
しばらくして、スーパーが爆発した。
屋根から心現が突き出して、スーパー内に襲いかかる。
「トーキは寧奈、画海は心現。瞬避難行くぞ」
「はい」
散開し、各自自分の持ち場に向かった。
──付喪神 初冬風──
恐怖からか、混乱か。新しい心現が二箇所から現れる。
付喪神の胸から刀を引きずり出して、付喪神と共にとりあえず一体目の心現の頭を刻んだ。
大混乱のスーパー内部に降りて、寧奈を回収する。
「すみません……」
「何?」
「……いえ……」
トーキが一体と画海が二体、心現を殺す頃に警察が到着した。
駐車場出棒立ちになっていた寧奈が話し掛けられる。
「大丈夫ですか! お怪我は!?」
「あ、無いです。んと……精衙の者なんですが」
警察官が目を丸くして、少しお待ちくださいと言って去っていった。
寧奈はその間に鍵が開けっ放しの車から財布を取った。
「すみません、精衙の方と言うのは貴方で?」
「はい」
それを見せると、責任者っぽい人は頷いた。
「対処ありがとうございました。班をお伺いしても?」
「マルフタです。あと四人いて、中で避難誘導してくれてます」
部下に指示を出して部下は走っていき、寧奈はその人に事の詳細を話す。
「発生源は子供でした。親に叱られてて大泣きして、爆発の恐怖とか混乱とかパニックで、もう二体発生したみたいです。三体とも処理は終わってます。今たぶん、発生源の方の処置もしてるんじゃないかなと思います」
「ありがとうございます。関係者証の写真を撮らせて頂いても? 個人情報は保護致しますので」
「はい」
警察官に紙を見せられて色々記入して、班数字も書いて。
「はい、ありがとうございました」
「あ、リーダーに確認だけお願いします」
「分かりました。ご協力ありがとうございました!」
しばらく車の外で待っていると、東が走ってきた。
「ねなーッ処理助かったー!」
「わッ」
「ストップちょっとハルさん」
飛び付いた東がズンっと重たくて、よろけるとトーキがすぐに回収してくれた。
「俺あの処理めっちゃ嫌いなんだ! 助かったよ!」
「なんにもできなかったので……」
「したした!」
「寧奈は東のいいサポートだね」
「すごいねぇ。東さんの右には誰も立てないよ」
「役に、立てたならよかったです」
「助かった!」
頭を撫で回された寧奈は小さく笑って、皆で車に乗った。
「今日どこ泊まるか」
「近くに海浜公園があるみたいです。コンビニ無いんですけど公共トイレはあります」
「んじゃそこにするか。朝飯だけどっかで買うかな」
車が走り出して、寝転がっていた寧奈は顔を上げた。
「トーキ、連絡先ちょうだい」
「交換してなかったっけ」
「うん。瞬君と東さんも、画海さんも」
「何?」
寧奈が呼べば反応する画海とも連絡先を交換して、一覧のピンで留めておく。
「グループとかない?」
「無いねぇ。作ります?」
「まぁ無くて困ってねぇからな。人数……言うて五人か。んじゃ作っといてくれ」
「分かりました」
「五人かー。一気に増えたな」
「賑やかになったね」
「トーキの精神が安定するわ」
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