【R18】蜜を求める人魚姫

ロマネスコ葵

文字の大きさ
7 / 8

7 交渉成立?

しおりを挟む

 予想外の事にあたしとリリアは互いに見合わせた。
 リリアだけはゴクリと喉を鳴らす。

「ルーツ! お前、余計な事をするな」
「僕は人助けをしているだけだよ兄さん?? ねえ、兄さんが好きなのはどっち? 茶髪のポニーテールのほう? そしたら僕は真ん丸の赤髪ちゃんを頂こうかなぁ」

 おいで? と両手を広げるルーツリア。すると、リリアがそーっとルーツの胸の中へと向かっていく。

「ちょっ……?? リリア? 本気なの?」
「い、いえ、リリアは……あれ? なんで? なんでリリアは勝手にこの人に近づこうと……??」

 まさか無自覚なの?
 そんな馬鹿な。あたしがリリアの手を取っても、リリアはするすると抜け出すようにあたしの傍から離れていく。

「なんで? なんで?? リベラ様!? リリアは、リリアは……」
「――痛っ!」

 ベルがルーツの手首を掴み、引き上げる。それに反応するルーツに、リリアがビクッと肩を弾ませた。

「ほわっ……戻りました! リリア戻りましたよ!!」

 リリアは我にかえったのか、自由に身動きがとれることに喜びを感じているようでクルクルと回って小躍りする。
 今、ベルがルーツを止めたおかげかしら……?

「ねえ、なんなの? その、まじないみたいなやつ……」

 思った事を口にすると、ベルは快く答えてくれた。

大山猫リンクスの血を引いた俺達は、人でも何でも一時的に操る事ができるんだ。コイツはそれを悪用して女を誑かしてる」
「誑かしてるなんて、失礼な……」

 ベルの説明に対し、ルーツは納得がいかなそうな表情で小さく反発している。

「――それと今、無理矢理呪いを止めたから、呪いが抜け切らない状態になることもある。あんな風にな」

 ベルが顎で指差すようにリリアに向けているのが分かる。
 そんな事もあるの? そしたら、どうなっちゃうの?
 恐る恐る、横にいるリリアにあたしも顔を向けると……、

「ルーツ様ルーツ様ルーツ様……」

 リリアが何度も「ルーツ様」と頭を抱えながら唱えていた……。
 
「……ホントに治るのよね?」
「一時的なもんだから暫くすれば治る」
「ならいいんだけど……」

 淡々していたベルもついに本気を出したかのように、「ほら帰るぞ!」とルーツの腕を強く引っ張り上げた。

「痛い痛い……もう、乱暴はよしてほしいよ」
「お前が悪い」

 ベルがルーツに釘をさした後、二人はあたし達の前を立ち去ろうとする。

「お、お待ちくださいませルーツ様っ!!」
「こら、リリアの馬鹿っ!!」

 リリアは未だに変な呪いが残ったまま。あたしはリリアを後ろから抱きしめるように、彼女の脇の下に両手を滑り込ませて引き止める。

「というか! ちょ、ちょっと!? 誰が帰っていいって言ったのよ! 取引はまだ終わってな――」
「そんなくだらない取引に誰が乗るか! 出直してくるんだな、お嬢さん」
「待って! お願い」

 リリアをこのまま手離すわけにもいかず、片腕だけでもベルの左足をぎゅっと両手で囲んでみせた。女に掴まれた以上、ベルだって流石に抵抗はできないはず……!!

「っおい……?! 離せ」

 案の定、ベルは口で抵抗するだけで身動きはとらない。
 
「本気なんだから! ね、何でもするから!!」
「ぐ……懲りない奴だ!」
「――そんなに駄目なら、アンタの弟から貰うわよ……!!」
「なっ」

 勿論いいわよね? と圧をかけるようにルーツに睨みつける。ルーツは未だベルに手を取られたままで、あたしを見てきょとんとしているけれど……。
 
「僕は構わないけど?」

 ほら来た……! ルーツは本当に話が早くていい!

「呪いなりなんなり好きに使ってくれていーわよ? 使う必要もないと思うけど」

「ふ~ん……」思い悩む瞳から、人を見下すような悪しき瞳に切り替わり黒い笑みを浮かべる。「言うねぇ」

「交渉成立ね?」
「勿論だよ」

 ルーツは快く受け入れてくれて、目を細めてニコッと微笑みかけられる。これで交渉成――――



「っ……!! 待て」



「……?? 何か問題でもあるのかしら?」

 ベルがあたしを引き止めてから暫く間が空いたけれど……。



「正直……気に入らないが、だからといってルーツに差し出すのはもっと気に入らない」

 ベルは目を閉じたままそう言い終えると、真剣な眼差しで見開いた。

「それってどういう……」

 あたしが言いかけたその時、ベルが近づいてきて、彼の生暖かい息が耳元に吹きかかる。

「陽が落ちる頃にまたここに来れるか?」

 耳打ち。何も考える間もなく、あたしはコクリと頷いてしまった。
 ついにこの時が……!! 心の中でガッツポーズを決める。


「おいルーツ行くぞ。こんな奴らに構ってる暇なんてないんだからな」
「……あれ、兄さん結局断ったの?」
「当たり前だろ! 今日中に納品しなきゃいけない依頼が溜まってんだ」
「ふ~ん。つまんないな。また会おうね、赤髪ちゃん」

 
 ルーツはベルに手を引っ張られながら、リリアに対する爽やかな笑顔とウィンクを最後に、あたし達はお開きになった。

 ベルったら、そんな嘘までついて。
 という事は夜は二人きりって事になるのかしら……。でも、リリアも折角ここまで来てくれたんだしリリアも呼ぶべきよね。
 と、見送りながら考えていると、リリアは急に魚のように口をパクパクさせていた。

「……おーい、リリア?」
「ルーツ様ルーツ様ルーツ様……」
「はぁ。これ何時になったら治んのよ……」
 
 呪われてしまったリリアを、あたしもベルと同じように手を掴みながら一旦故郷へと戻ることにした。
 にしても、上手くいってよかった。ほんとはそんなつもりなかったんだけど、弟を使って煽ったら意図も簡単に話を呑んでくれたわ……!!

 これで、初めて好きな人から性を受けて、人間になれる……!!
 



 ――そう、最初は思っていた。 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

転生先は男女比50:1の世界!?

4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。 「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」 デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・ どうなる!?学園生活!!

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...