平凡地味子ですが『魔性の女』と呼ばれています。

ねがえり太郎

文字の大きさ
141 / 363
後日談 黛先生の婚約者

(33)大晦日2(★)

しおりを挟む
(32)話の後、その日の夜のお話です。

※なろう版とは一部表現に変更があります。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 お風呂をゆっくり楽しんでご飯を食べた後、まゆずみは直ぐに睡魔の虜になってしまったらしい。目が覚めると既にとっぷりと日は暮れていて、ダブルベッドの隣で七海がスヤスヤと寝息を立てていた。

 七海は特に寝る予定は無かったのだが、黛が抱き枕よろしく彼女をベッドに引き込んだのだ。その時点では黛にも少々よこしまな下心があった……。が、仕事の疲れと睡眠不足でクタクタになった体をゆっくりと適温の浴槽で温められ、仕上げにビールと美味しい食事で満腹感を得てしまった後では……フカフカの布団にくるまれ、七海の温かい体を抱き寄せて堪能している内に、自然と意識が途切れてしまったのも無理からぬ事であった。

 いつの間にか手離してしまっていた『抱き枕』ににじり寄り、手を伸ばす。引き寄せギュっと抱き込むと、柔らかさに胸が高揚した。
 暫くの内、抱き寄せたまま目を覚まさない七海の顔をマジマジと観察していた黛だが、次第にムクムクと悪戯心が湧きあがって来る。
 単に反応の無い相手を見ていて寂しくなった所為かもしれない。七海に起きて欲しくなったが……ただ普通に起こすのはつまらない気がした。



 先ずは額に掛かる前髪を指で除け、そこにチュッと吸い付いてみる。

 まだ起きない。

「んー、さて。どうすっかなぁ」

 次は頬。今度は少し音を立ててキスをする。

 まだ起きない。

 両手で頬を挟み、それ自体はごく薄いものなのに鉄壁の守りを見せる瞼に唇を寄せる。

 すると今度は反応があった。

「ん……」

 と身じろぎしたかと思うと、顔をグイッと掌で押し退けられる。不意の攻撃に思わず仰け反った黛の腕のいましめから、七海は器用にクルリと抜け出して背を向けてしまう。

 しかし黛も不屈の精神でもって―――七海の背後からにじり寄った。
 体をピッタリと彼女の背後に沿わせ、ギュッと細い腰を抱き込むと黒髪の隙間から露わになった白いうなじに唇を寄せた。同時に掌をカットソーの裾から忍び込ませ、タンクトップの外側から手を這わせる。すると後は眠るだけと想定していた為か―――ガッチリとした下着の守りを怠っている柔らかい双丘に到達した。何だかワクワクして来た。

 やわやわとした感触を味わうように、緩やかな力で簡単に形を変える脂肪の塊を弄ぶ。うなじに寄せた唇でやや強く吸い付き、チュッチュッと唇を徐々に下げて行くと、腕の中の存在が身じろぎし始めた。続けて掌の動きを止めないまま、ペロリと白い肌を舐め上げると、ビクリと跳ねてとうとう彼女の瞼がパチリと開くときが来た。

「んっ……え?」

 目を覚ました七海が一番最初に感じたのは、首の後ろがやけにスース―すると言う感覚。続いて胸を包む温かい感触だった。大きな掌が楽し気に動き回っている事に気が付いて、強制的に意識が浮上させられる。

「おはよう」

 笑いを含んだ声。背後から耳元に息が掛かり、七海の背筋をゾワリと何かが駆け上がった。

「おはよっ……じゃ、なくてちょっと、んんっ! 黛く……んっ」

 これまで一人遊びしていた黛は、相手が出来たと嬉しくなってしまう。
 悪戯を仕掛けても反応の無い間は、無視されているようで少し寂しかったのだ。途端に手の動きと唇が大胆になる。

「ま、まゆずみく……ちょっ待っ……ん!」

 翻弄されかかっていた七海だが、時計を見て「あっ!」と叫び唐突に体を起こした。

「もう九時! 半分終わっちゃったっ!」

 慌てた様子の七海は黛を押しのけて、布団を跳ねのけた。
 興が乗って来た所で逃げられて。黛はポカンとその背中を見守ってしまう。七海が何について慌てているのか全く分からなかったのだ。

「こうしちゃいられない、先に行ってるねっ!」
「おい、なな……」

 パタンっ!

 七海はベッドから勢い良く飛び出すと、黛を置き去りにして寝室から飛び出してしまった。



 テレビをあまり見ない黛は知らない。
 大晦日恒例の赤白歌合戦が大晦日の夜七時十五分から始まり、十一時四十五分で終わる事を。

 江島家では毎年『赤白』を最初ハナからチェックし、どちらが勝つのか予想するのが習慣なのだ。そして歌合戦が終わり次第―――速攻で茹でた年越し蕎麦を賞味する事になっている。七海にはそれが常識だったので、黛が赤白歌合戦の存在を知ってはいるものの、実際見た事もなければ、聞いた事も無く―――大晦日に年越し蕎麦を食べるなどと言う習慣を律儀に守っている人間が現実に存在するかなどに全く興味を持っていなかったと言う事は想像の範囲外だったのだ。

 ノロノロと体をベッドの上で起こし、黛は仕方なく七海の後を追った。
 しかしリビングで待っていた七海に如何にも楽し気に手招きされると、言おうとしていた文句も萎んでしまい大人しく隣に収まった。
 そこで初めて七海は黛が大晦日の歌合戦の内容をよく知らなかったと言う事を知ったのだが―――それならば、と使命感を持ってウキウキと歌手や『赤白』の伝統について解説し始めた。楽しそうに話す様子を目にしていると―――黛も肩透かしをくらった事に対する不満を忘れてしまい、結局その日二人は楽しく大晦日の夜を過ごす事になったのだった。



 勿論その後、年越し蕎麦も美味しくいただきました、とさ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お読みいただき、有難うございました。

しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。

BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。 父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した! メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

大切にしていた母の形見のネックレスを妹に奪われましたが、それ以降私と妹の運は逆転しました!

四季
恋愛
大切にしていた母の形見のネックレスを妹に奪われましたが、それ以降私と妹の運は逆転しました!

舌を切られて追放された令嬢が本物の聖女でした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

処理中です...