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後日談 黛家の新婚さん2
(87)新居訪問
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新居に遊びに行きました。オチなしの小話です。
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本田と唯の新居は黛家の下の階にあった。
「いらっしゃ~い」
唯に迎えられて足を踏み入れると、かなりサッパリとした内装に驚く。
「あら、ウチと全然内装が違う」
「うん。中古だからリフォームしてるの」
「随分スッキリしているねぇ」
「家具は全部『目印良品』で統一したの。システマチックで使い易いかなって」
「へえ~」
フローリングに白い壁とファブリックは生成り。ところどころ落ち着いたグリーンのクッションやラグが引き締め役になっていて、一つ置かれた大きめのオリーブの鉢がポイントになっている。
「スッキリしているけど、なんか落ち着く部屋だねえ」
「そう?嬉しいな、そう言って貰えると」
「あ!これ、お土産。一緒に食べようと思って、パンにしたんだ」
七海が紙袋を差し出すと、唯は優し気な眉を緩めて受け取った。
「わあ、ありがとう。このお店ってバゲットで有名なお店だよね」
「うん、でも今日は食べやすいクロワッサンとか、調理パンと菓子パンを色々選んだんだ。唯、確かデニッシュ系好きだったよね」
「大好きだよー。ありがとう!あ、お茶入れるから座って。コーヒーと紅茶……じゃないね。カフェインレスだったら番茶か麦茶が良いかな?」
「じゃあ番茶お願いしようかな?……あ、ちょっとお手洗い借りて良い?」
立ち上がると、唯が廊下を指さした。
「廊下出て右の所だよ」
「ありがとー」
「ふ~、リフォームって良いなぁ。まるで新築だね」
廊下や水回りも、フローリングと白っぽい内装で統一されていてとても気持ちが良い。
七海は用事を終えた後、ご機嫌で鼻歌を歌いながら廊下を歩いていた。
すると唐突にガチャリ!と扉が開いて、ぬっと大きな人影が目の前に現れたのだ。
「おわっ!」
思わず見っとも無い叫び声をを上げ、七海は仰け反ってしまう。
バクバクする心臓を抑えて、良く良く目を凝らすと……パジャマ姿で無精髭、あちこち寝ぐせの付いた不思議な髪型をしたその人物は―――大きくて体格の良い―――本田だった。
どうやら寝惚けているらしく、コシコシと手の甲で瞼を擦っている。
「ん……?」
「あ……びっくりしたぁ。本田君?えっと、おはよう?」
正午はとっくに過ぎていた。
声を掛けられた本田は、パチパチと目を瞬かせて腰を屈めつつ七海の顔を覗き込んだ。少しだけ廊下が暗かった所為かもしれない。
「おはよ……ああ、江島かぁ。いらっしゃい……」
「おじゃましてまーす」
へへへ、と笑うと。
本田もニヘラ……と笑った。
いつも身だしなみに気を付けている本田の、こんな無防備な状態を初めて見た七海は、一瞬別人かと思ってしまった。この家にパジャマ姿でいる男性は本田くらいに決まっているのに。
「久しぶりだね、もしかしてお疲れ?」
「んー、昨日までちょっと仕事が忙しくて。ゴメンね、お客さんほったらかしで寝てて。できれば俺の事気にしないで、ゆっくりして行って」
「新婚家庭にあんまりお邪魔するのもなぁ」
七海が揶揄うように言うと、本田も笑って返した。
「その言葉、そっくりそのまま返すよ。黛は仕事?」
「ううん。今日は休みだけど、やっぱり疲れて寝てる。朝方帰って来たの」
そうして二人で居間に戻ると、唯が沸かしたお湯を白いぽってりとした急須に注いでいる所だった。
本田に気が付いた唯がニコリと笑う。
「あれ?起きたの?」
「うん。喉乾いた」
「今番茶入れたけど、一緒に飲む?」
「ううん、水飲んでもうちょっと寝る」
唯と一言二言交わした本田は、水を飲んだ後軽く手を振って寝室に戻って行った。
七海はその様子をニヤニヤしながら眺めていた。
湯呑に注いだ番茶と、お茶菓子をお盆に乗せて居間に戻った唯が、七海の様子に気が付いて眉を顰めた。
「……何ニヤニヤしているの?」
「えー、何か新婚さんだなぁって」
「ええ?いつも通りだけど」
「本田君って、唯の傍で油断していると結構甘えたなんだなーって思って」
「もー、揶揄わないで!それは、こっちの台詞だよ?黛君とか最近見てられないモン、目に余るし」
恥ずかしいのか、唯はプウッと頬を膨らました。
そんなこんなで、黛と本田が寝こけている間二人は思う存分おしゃべりし―――夕方男達が復活した後、近くの駅前まで歩いて四人で焼き鳥を食べに行ったのだった。
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お読みいただき、有難うございました。
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本田と唯の新居は黛家の下の階にあった。
「いらっしゃ~い」
唯に迎えられて足を踏み入れると、かなりサッパリとした内装に驚く。
「あら、ウチと全然内装が違う」
「うん。中古だからリフォームしてるの」
「随分スッキリしているねぇ」
「家具は全部『目印良品』で統一したの。システマチックで使い易いかなって」
「へえ~」
フローリングに白い壁とファブリックは生成り。ところどころ落ち着いたグリーンのクッションやラグが引き締め役になっていて、一つ置かれた大きめのオリーブの鉢がポイントになっている。
「スッキリしているけど、なんか落ち着く部屋だねえ」
「そう?嬉しいな、そう言って貰えると」
「あ!これ、お土産。一緒に食べようと思って、パンにしたんだ」
七海が紙袋を差し出すと、唯は優し気な眉を緩めて受け取った。
「わあ、ありがとう。このお店ってバゲットで有名なお店だよね」
「うん、でも今日は食べやすいクロワッサンとか、調理パンと菓子パンを色々選んだんだ。唯、確かデニッシュ系好きだったよね」
「大好きだよー。ありがとう!あ、お茶入れるから座って。コーヒーと紅茶……じゃないね。カフェインレスだったら番茶か麦茶が良いかな?」
「じゃあ番茶お願いしようかな?……あ、ちょっとお手洗い借りて良い?」
立ち上がると、唯が廊下を指さした。
「廊下出て右の所だよ」
「ありがとー」
「ふ~、リフォームって良いなぁ。まるで新築だね」
廊下や水回りも、フローリングと白っぽい内装で統一されていてとても気持ちが良い。
七海は用事を終えた後、ご機嫌で鼻歌を歌いながら廊下を歩いていた。
すると唐突にガチャリ!と扉が開いて、ぬっと大きな人影が目の前に現れたのだ。
「おわっ!」
思わず見っとも無い叫び声をを上げ、七海は仰け反ってしまう。
バクバクする心臓を抑えて、良く良く目を凝らすと……パジャマ姿で無精髭、あちこち寝ぐせの付いた不思議な髪型をしたその人物は―――大きくて体格の良い―――本田だった。
どうやら寝惚けているらしく、コシコシと手の甲で瞼を擦っている。
「ん……?」
「あ……びっくりしたぁ。本田君?えっと、おはよう?」
正午はとっくに過ぎていた。
声を掛けられた本田は、パチパチと目を瞬かせて腰を屈めつつ七海の顔を覗き込んだ。少しだけ廊下が暗かった所為かもしれない。
「おはよ……ああ、江島かぁ。いらっしゃい……」
「おじゃましてまーす」
へへへ、と笑うと。
本田もニヘラ……と笑った。
いつも身だしなみに気を付けている本田の、こんな無防備な状態を初めて見た七海は、一瞬別人かと思ってしまった。この家にパジャマ姿でいる男性は本田くらいに決まっているのに。
「久しぶりだね、もしかしてお疲れ?」
「んー、昨日までちょっと仕事が忙しくて。ゴメンね、お客さんほったらかしで寝てて。できれば俺の事気にしないで、ゆっくりして行って」
「新婚家庭にあんまりお邪魔するのもなぁ」
七海が揶揄うように言うと、本田も笑って返した。
「その言葉、そっくりそのまま返すよ。黛は仕事?」
「ううん。今日は休みだけど、やっぱり疲れて寝てる。朝方帰って来たの」
そうして二人で居間に戻ると、唯が沸かしたお湯を白いぽってりとした急須に注いでいる所だった。
本田に気が付いた唯がニコリと笑う。
「あれ?起きたの?」
「うん。喉乾いた」
「今番茶入れたけど、一緒に飲む?」
「ううん、水飲んでもうちょっと寝る」
唯と一言二言交わした本田は、水を飲んだ後軽く手を振って寝室に戻って行った。
七海はその様子をニヤニヤしながら眺めていた。
湯呑に注いだ番茶と、お茶菓子をお盆に乗せて居間に戻った唯が、七海の様子に気が付いて眉を顰めた。
「……何ニヤニヤしているの?」
「えー、何か新婚さんだなぁって」
「ええ?いつも通りだけど」
「本田君って、唯の傍で油断していると結構甘えたなんだなーって思って」
「もー、揶揄わないで!それは、こっちの台詞だよ?黛君とか最近見てられないモン、目に余るし」
恥ずかしいのか、唯はプウッと頬を膨らました。
そんなこんなで、黛と本田が寝こけている間二人は思う存分おしゃべりし―――夕方男達が復活した後、近くの駅前まで歩いて四人で焼き鳥を食べに行ったのだった。
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