俺のねーちゃんは人見知りがはげしい

ねがえり太郎

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・後日談・ 俺とねーちゃんのその後の話

26.ご飯の用意ができました <清美>

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とーちゃんの軍資金で購入した惣菜を携えて家路を辿る。
ねーちゃんには、既にメール済みだ。

買ってきた惣菜をお皿に並べて、ご飯が無い事に気が付いた。
あ、そだ。冷凍庫に……あ、あった。
ねーちゃんがきちんとジップロックで冷凍保存していたご飯を発見。レンジでチンして、お茶碗に盛り付けた。

2階に上がり、ねーちゃんの部屋の前で立ち止まる。
俺は深呼吸をして、気持ちを整えた。

コンコン。

「ねーちゃん、ご飯の用意できたよ」

ガチャリ。

すぐに扉が開いて、見上げるねーちゃんと目が合った。
俺はドキリとする。
ああ、相変わらず可愛いなあ、なんて見惚れてしまう。

ダイニングテーブルを見たねーちゃんは、既に食卓の準備が終わっている事に驚いているようだった。

「清美が全部用意してくれたの?」
「うん」
「……ありがとう」

ねーちゃんに頼まれて惣菜を買うくらいは俺も今まで経験がある。でも、食卓の準備は大抵ねーちゃんが仕切って、その手伝いをするくらい。それで俺は十分彼女の助けになっている、といい気になっていた……今までは。
でもそれじゃねーちゃんの負担は今までと変わらない。
何を食べるか決めたり食卓に必要なものを準備するとこまで考えて初めて、ねーちゃんの負担を減らせるんだ。

「「いただいます」」

手を合わせて食べる。
ねーちゃんが申し訳なさそうに俺をねぎらった。

「清美ごめんね。部活で疲れているのに、手間だったでしょう?」
「そんなこと無いよ。あのさ……」

俺は気持ちを固めて、顔を上げた。

「明日から俺が料理、担当するよ。だからねーちゃんは勉強に専念して」

ねーちゃんは口に運ぼうとしていたトンカツをポロリと落とした。

「え?」
「朝ご飯もお弁当も夕飯も、俺が作る」
「……清美が料理?でも、部活あるのに……?」
「うん。大丈夫、とーちゃんと相談したんだ」
「でも、あんまり料理やったことないでしょ……?」
「だから……このあと炊飯器の使い方、教えてくれる?それから、調味料とか場所教えて欲しいんだ」
「だけど……」
「俺、ちょっとやってみたいんだ!いつか独り立ちするんだから、今から徐々にやっていこうと思ってさ」

アハハと笑って頭を掻くと、ねーちゃんは戸惑うような表情を浮かべた。
俺の技量が心配なんだね。そうだよね。
いきなり、何言いだすのかって、思っているよね。
受験、反対していたしね。

「でも、冷凍食品とか惣菜ばっかりになっちゃうかもしれないし、わからないところねーちゃんに聞いたりして、最初迷惑かけちゃうかもしれないけど……」
「それは、全然大丈夫だけど……無理してない?」

ねーちゃんの心配しているのは、俺の負担が増えないかって事のようだ。
不覚にも彼女の気遣いが嬉しくて、口が綻んでしまう。

「大丈夫。それに無理そうだったらすぐねーちゃんに相談するから、とりあえずやらせてくれない?」
「それは、良いけど……」

食後、炊飯器にお米を入れてタイマーを付ける作業を教えて貰い、食事を用意した俺の代わりに食器を洗おうとするねーちゃんを、無理矢理部屋に送還し、俺は後片付けに取り掛かった。ジャージを放り込み、洗濯機を回す。それからお風呂にお湯を張り、ねーちゃんを先に入らせて、洗い終わった洗濯ものを干してから、自分もお風呂に入った。

「ふーっ」

浴槽に使って深く息を吐く。

「結構、しんどいな」

簡単な作業しかしていないのに、いつの間にかもう寝る時間になっていた。
そっか。
これまで、ねーちゃんがこういう事を仕切ってくれていたんだ。今日は何とかなったけど、毎日ってのは大変そうだなぁ……。

しかし、頑張らねば。
せめて、高校受験の恩返しくらいしたいなあ。






**  **  **






翌日。朝ご飯に、食卓に用意したのは。

3人分のバターロールと、ヨーグルト。それから携帯補助食品。
これなら、栄養……足りるよね……。
なんとか冷凍食品とレトルトを詰めたお弁当箱を2つ作成し、ひとつをねーちゃん用にテーブルに残して家を出た。

昼休み。

ねーちゃんは自分の教室でご飯を食べながら勉強をしている。俺も自分の机でパカッとお弁当を開いた。

「あれ?なんかいつもより……お弁当、茶色く無い?」

覗き込んだ地崎が指摘した通り、何故か彩りのかんばしく無いお弁当を眺める。
おかしいなー。ミートボールにナゲット、チーズにコロッケ。好きなモノばっかり詰めたのに、何故だか見た目の美味しさが半減しているような……。

「いっつも、森先輩の作るお弁当ってカラフルで美味しそうなのに」

そうだ。何か、ねーちゃんの作るお弁当より美味しくなさそうなんだよな。

「……何でだろ?これ、俺作ったんだけど」
「え……そうなの?なるほど、そっか。だから清美が好きなモノばっかりなのか……うん、良く見ると……オイシソーだね」

地崎がなるほどと頷く。なんか棒読みじゃない?褒められている気しないんだけど……。

部活で俺の作った茶色いお弁当の話題になり、皆にからかわれた。
そしてそれを小耳にはさんだ鴻池と城田の1年女子マネコンビに―――何故かお弁当作りのコツをレクチャーを受ける事になった。

赤、青、黄、黒の色の食材を使う事。
お弁当に入れるモノは汁をきって、しっかり冷ましてから蓋を閉める事。
解凍しなくても良いお弁当用の冷凍食材の情報など……目からウロコのご指摘がてんこ盛りで、俺は思わずメモを取ってしまった。

しまいにノリノリの城田に部活帰りにコンビニに連れていかれ、おススメ惣菜などを紹介された。なるほど……『黒』って『ひじき』ね。こんなのもコンビニに売っているんだな。
序でに「朝ご飯に栄養補助食品って、ナイわー」と言われ、おすすめの生みそタイプの味噌汁のレトルト食品と、納豆と卵とネギ、海苔を購入させられた。

「これで完全栄養食になるから!」と、ぐっと親指を立てる城田。

何故か城田におおいに激励されて、コンビニで手を振って別れる。
どうやら城田は大家族スペシャルとか、子供がお使いをするバラエティなんかが好きらしい。部活ではいつも淡泊なイメージだったが、元来は大層人情家のようだ。あまり話をしたことの無い女子マネの、意外な一面を見た。

鴻池もいろいろ親切にアドバイスしてくれたが、こっそり「振った相手に、彼女のお弁当作りの手伝いさせるなんて、サイテー!私なんでこんなデリカシー無い奴、好きだったんだろ……」と愚痴だが嫌味だかわからない耳打ちをされた。

そう言われれば、その通りなので。
仕方なく俺は笑って誤魔化した。

言われて初めて気が付いた自分に呆れてしまう。
しかし鴻池がそれほどショックを受けていない様子なので、そっと胸を撫で下ろしたのだった。

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