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新妻・卯月の仙台暮らし
俺の妻が可愛くて仕方が無い5 <亀田>
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少し戻って『子供ですか?』の亀田視点です。
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「丈さん!」
ソファにちょこんと腰掛けている卯月が、俺を手招きした。
「ね、ちょっとコレ見て。可愛いでしょ?」
「ロップイヤーか」
スマホの画面に耳の垂れたうさぎの写っている。
「可愛いよね」
「そうだな」
確かに心が潤うような写真だ。だが、こんな風に無邪気に体を寄せて来る卯月の方が可愛いと思う。そんな頭が煮えたような浮かれたことを考えていると、卯月は次に最近見つけたと言うライオンラビットのブラッシング動画を見せてくれた。
正直これまでライオンラビットにはそれほど興味を持っていなかった。俺はいかにも『うさぎ』と言った形状のうさぎが好きだ。と言っても野生の後足が立派な耳の長いうさぎでは無く、顔が丸くてこじんまりと纏まっている耳の短い短毛種がどちらかと言うと好みだ。―――つまりは初めて俺が飼った、ミミのようなうさぎだ。これはもう刷り込みみたいなものだろう。今一緒に暮らしているうータンもうさぎらしいうさぎ、と言えるだろう。更に言うと彼女の極上の手触りに俺は夢中になってしまっている。だから長毛で見た目が少し変わっているライオンラビットには、特に関心が無かったのだ。だけどこの動画の中のライオンラビットにはついつい釘付けになってしまった。
「随分大人しいな」
ミミもうータンも比較的抱っこが苦手だから、すんなり抱き取られているうさぎの大人しさに関心してしまった。これはこれで愛らしいかもしれない。気軽に抱っこできる子を目にして羨ましくなった。しかしライオンラビットだから、と言うわけじゃ無くただ単にこの子自身の性格なのかもしれないがな。
この頃ずっとうータンに真面に触れる事も出来ていない。こちらに単身越して来て以降、東京に何度か戻る機会はあった。だがその僅かな機会での接触じゃ全然足りていない。なのにやっとやって来たうータンは、ケージにずっと籠ってしまっていた。卯月も『深刻なうさぎ不足!』と悶えていたが、俺も無意識に毛を毟ってしまうくらいに飢えていたのだ。忙し過ぎて自分がうさぎ不足だと言う事にも気付けなかったらしい―――末期だな。好みでは無いと思っていたうさぎの動画でさえ愛くるしく見えてしまうのは、だからなのだろうか。などと考えていると、卯月が次のページを開いて見せた。
「『うさぎひろば』?」
今日買い物をしたばかりの、うさぎ専門店のページだ。ふと体格の良いライオンのような髪型の男を思い出す。むっ……やはりライオンラビットは、あまり俺の好みではないな。動画のうさぎに罪は無いのだが、あの店長に重ねてしまい子供じみた反発心が浮かんでしまう。
「これ、伊都さんが全部作ったんだって。スゴイよね!」
「そうなのか」
あの挙動不審な店員はなかなか器用な人間らしい。つまり、あのデカくてゴツイ店長が接客や仕入れなどの対外的な部分を担い、伊都とか言う小柄な眼鏡の店員が実務的な作業を担当していると言うことなのだろう。
「ええと……あ、コレコレ」
卯月は、黒い子うさぎを画面に映し出した。
「店頭に出す子うさぎは、まずブログで紹介するんだって。だからお店デビューする前から売約済みになる子も多いらしいよ」
「確かにほとんど札が着いてたよな。けっこう良い値だったと思うが」
値下げされていた雑種のミミとは、桁が一つ違った。以前卯月に連れて行って貰った八王子の店もそうだったよな。あの値段で直ぐに買い手が付くんだから、俺がミミとペットショップで出会った頃よりうさぎをペットとして飼う人間が多くなった、と言うことだろうか。
「そう言えば焦げ茶のネザー君はまだ飼い主、決まってなかったよね」
「そうだな」
「はい、どうぞ」と卯月にスマホを手渡されたので、画面をジッと検分する。
確かにこの画面ではかなりミミに似ているように見えるな。特にこのつぶらな瞳がなかなかに可愛らしい……。
写真を見ていると切ないような甘いような奇妙な感情が胸に拡がる。感傷に浸りそうな自分を振り払うように、画像をスクロールした。ブログには売約済となっているうさぎや、もう既に飼い主の手に渡ったうさぎ達の写真もズラリと並んでいる。そのほとんどはネザーランドドワーフとロップイヤーだった。
うむ、やはりネザーは良いな。間違いない。
自分自身の嗜好を再確認して内心頷き、またブログ冒頭に戻ってミミに似た子を眺めた。―――そしてカーテンを引いた窓の向こう、月に想いを馳せる。
ミミは果たして俺と暮らして幸せだったのだろうか。そして今、月に戻って幸せに暮らしているのだろうか。何度となく繰り返し胸の内で問いかけている。求めている、聞きたい答えは永遠に返って来ないのだと……ちゃんと頭では分かっているのに。
「ねぇ、丈さん?」
「ん?」
「この子、飼いたい?」
ミミと暮らして、俺はたくさんのものを貰った。
こうして今、幸せに暮らしているのは彼女のおかげだ。
なのに―――俺は生活の大部分を、ミミを忘れて過ごしている。
夢から醒めるように、俺はゆっくりと頭を振った。
「いや……どうしてだ?」
「うん、その……丈さん、ミミが懐かしいんじゃないかなって思って。あ!お世話はね、もちろん私がするよ。だって丈さん、お仕事忙しいしね。でもお時間ある時にはドンドン触れ合って貰えればって思うんだけど……」
俺は自嘲気味に溜息を吐いた。
「うータンだけで十分だ」
そう、ミミはもういない。彼女の代わりはいらないんだ。今はうータンと、卯月との暮らしを大事にしたい。
すると何故か卯月が焦ったように、俺のシャツを掴んで謝って来たのだ。
「丈さん!ゴメンね」
「何がだ?」
驚いて聞き返すと、神妙な顔つきで肩を落とす。
「この子は似てるけど、ミミじゃないもんね。代わりにって発想自体が……お節介だったかなって」
必死に言い募る声に漸く理解した。そうか俺はまた―――彼女に心配されてしまったのだな。全く、どっちが年上なのか分からなくなる。ふと愛しさが込み上げて来て、思わず宥めるように頭に手を置いた。そして彼女が気にしないような上手い言い訳を、何とか絞り出す。とは言えこれも本心の一つだ。
「そう言うわけじゃない。ただ多頭飼いは難しそうだと思っただけだ。うータンの性格上、他のうさぎが縄張りにいるのを喜ばないような気がしてな。やっとこの部屋に慣れた所だし」
すると卯月は安堵したように力を抜いた。
「そっか、そうだよね……」
「心配してくれて、有難うな」
集めたうさぎの写真を楽し気に差し出す卯月、俺を心配して必死に慌てる卯月も。そして明らかにホッとした顔をする卯月―――彼女の、くるくると変わる表情どれ一つとっても、俺のツボだ。『恋をすると胸が苦しくなる』なんて物語や映画の中の出来事でしかないと思ったけれど。愛し過ぎて本当に心臓がギュッと掴まれるような感覚に陥る事があるんだと、彼女に出会ってから初めて知ったのだ。
あー、俺の嫁可愛い。
なんでこんなに可愛いんだろう?
溢れる気持ちがもどかしくて思うままに彼女の頭を撫でていると、小さな指がギュッとしがみ付くように俺の手を掴んだ。そして卯月は潤んだ瞳で俺を見上げると―――こう言ったのだ。
「もう!子ども扱いしないで!」
拗ねたように強い口調でそう言い切った後、見る間にその柔らかい頬が朱に染まって行く。
何だか可笑しくて堪らなくなる。いつだって俺の方が負けっぱなしだと言うのに。勿論彼女を子ども扱いするつもりなんかサラサラ無い。―――子供だと思っていたらこんな真似、出来ないものな。
笑い出しそうになるのを堪えて、呆気に取られている彼女の唇に噛みついた。
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お読みいただき、有難うございました<(_ _)>
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「丈さん!」
ソファにちょこんと腰掛けている卯月が、俺を手招きした。
「ね、ちょっとコレ見て。可愛いでしょ?」
「ロップイヤーか」
スマホの画面に耳の垂れたうさぎの写っている。
「可愛いよね」
「そうだな」
確かに心が潤うような写真だ。だが、こんな風に無邪気に体を寄せて来る卯月の方が可愛いと思う。そんな頭が煮えたような浮かれたことを考えていると、卯月は次に最近見つけたと言うライオンラビットのブラッシング動画を見せてくれた。
正直これまでライオンラビットにはそれほど興味を持っていなかった。俺はいかにも『うさぎ』と言った形状のうさぎが好きだ。と言っても野生の後足が立派な耳の長いうさぎでは無く、顔が丸くてこじんまりと纏まっている耳の短い短毛種がどちらかと言うと好みだ。―――つまりは初めて俺が飼った、ミミのようなうさぎだ。これはもう刷り込みみたいなものだろう。今一緒に暮らしているうータンもうさぎらしいうさぎ、と言えるだろう。更に言うと彼女の極上の手触りに俺は夢中になってしまっている。だから長毛で見た目が少し変わっているライオンラビットには、特に関心が無かったのだ。だけどこの動画の中のライオンラビットにはついつい釘付けになってしまった。
「随分大人しいな」
ミミもうータンも比較的抱っこが苦手だから、すんなり抱き取られているうさぎの大人しさに関心してしまった。これはこれで愛らしいかもしれない。気軽に抱っこできる子を目にして羨ましくなった。しかしライオンラビットだから、と言うわけじゃ無くただ単にこの子自身の性格なのかもしれないがな。
この頃ずっとうータンに真面に触れる事も出来ていない。こちらに単身越して来て以降、東京に何度か戻る機会はあった。だがその僅かな機会での接触じゃ全然足りていない。なのにやっとやって来たうータンは、ケージにずっと籠ってしまっていた。卯月も『深刻なうさぎ不足!』と悶えていたが、俺も無意識に毛を毟ってしまうくらいに飢えていたのだ。忙し過ぎて自分がうさぎ不足だと言う事にも気付けなかったらしい―――末期だな。好みでは無いと思っていたうさぎの動画でさえ愛くるしく見えてしまうのは、だからなのだろうか。などと考えていると、卯月が次のページを開いて見せた。
「『うさぎひろば』?」
今日買い物をしたばかりの、うさぎ専門店のページだ。ふと体格の良いライオンのような髪型の男を思い出す。むっ……やはりライオンラビットは、あまり俺の好みではないな。動画のうさぎに罪は無いのだが、あの店長に重ねてしまい子供じみた反発心が浮かんでしまう。
「これ、伊都さんが全部作ったんだって。スゴイよね!」
「そうなのか」
あの挙動不審な店員はなかなか器用な人間らしい。つまり、あのデカくてゴツイ店長が接客や仕入れなどの対外的な部分を担い、伊都とか言う小柄な眼鏡の店員が実務的な作業を担当していると言うことなのだろう。
「ええと……あ、コレコレ」
卯月は、黒い子うさぎを画面に映し出した。
「店頭に出す子うさぎは、まずブログで紹介するんだって。だからお店デビューする前から売約済みになる子も多いらしいよ」
「確かにほとんど札が着いてたよな。けっこう良い値だったと思うが」
値下げされていた雑種のミミとは、桁が一つ違った。以前卯月に連れて行って貰った八王子の店もそうだったよな。あの値段で直ぐに買い手が付くんだから、俺がミミとペットショップで出会った頃よりうさぎをペットとして飼う人間が多くなった、と言うことだろうか。
「そう言えば焦げ茶のネザー君はまだ飼い主、決まってなかったよね」
「そうだな」
「はい、どうぞ」と卯月にスマホを手渡されたので、画面をジッと検分する。
確かにこの画面ではかなりミミに似ているように見えるな。特にこのつぶらな瞳がなかなかに可愛らしい……。
写真を見ていると切ないような甘いような奇妙な感情が胸に拡がる。感傷に浸りそうな自分を振り払うように、画像をスクロールした。ブログには売約済となっているうさぎや、もう既に飼い主の手に渡ったうさぎ達の写真もズラリと並んでいる。そのほとんどはネザーランドドワーフとロップイヤーだった。
うむ、やはりネザーは良いな。間違いない。
自分自身の嗜好を再確認して内心頷き、またブログ冒頭に戻ってミミに似た子を眺めた。―――そしてカーテンを引いた窓の向こう、月に想いを馳せる。
ミミは果たして俺と暮らして幸せだったのだろうか。そして今、月に戻って幸せに暮らしているのだろうか。何度となく繰り返し胸の内で問いかけている。求めている、聞きたい答えは永遠に返って来ないのだと……ちゃんと頭では分かっているのに。
「ねぇ、丈さん?」
「ん?」
「この子、飼いたい?」
ミミと暮らして、俺はたくさんのものを貰った。
こうして今、幸せに暮らしているのは彼女のおかげだ。
なのに―――俺は生活の大部分を、ミミを忘れて過ごしている。
夢から醒めるように、俺はゆっくりと頭を振った。
「いや……どうしてだ?」
「うん、その……丈さん、ミミが懐かしいんじゃないかなって思って。あ!お世話はね、もちろん私がするよ。だって丈さん、お仕事忙しいしね。でもお時間ある時にはドンドン触れ合って貰えればって思うんだけど……」
俺は自嘲気味に溜息を吐いた。
「うータンだけで十分だ」
そう、ミミはもういない。彼女の代わりはいらないんだ。今はうータンと、卯月との暮らしを大事にしたい。
すると何故か卯月が焦ったように、俺のシャツを掴んで謝って来たのだ。
「丈さん!ゴメンね」
「何がだ?」
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必死に言い募る声に漸く理解した。そうか俺はまた―――彼女に心配されてしまったのだな。全く、どっちが年上なのか分からなくなる。ふと愛しさが込み上げて来て、思わず宥めるように頭に手を置いた。そして彼女が気にしないような上手い言い訳を、何とか絞り出す。とは言えこれも本心の一つだ。
「そう言うわけじゃない。ただ多頭飼いは難しそうだと思っただけだ。うータンの性格上、他のうさぎが縄張りにいるのを喜ばないような気がしてな。やっとこの部屋に慣れた所だし」
すると卯月は安堵したように力を抜いた。
「そっか、そうだよね……」
「心配してくれて、有難うな」
集めたうさぎの写真を楽し気に差し出す卯月、俺を心配して必死に慌てる卯月も。そして明らかにホッとした顔をする卯月―――彼女の、くるくると変わる表情どれ一つとっても、俺のツボだ。『恋をすると胸が苦しくなる』なんて物語や映画の中の出来事でしかないと思ったけれど。愛し過ぎて本当に心臓がギュッと掴まれるような感覚に陥る事があるんだと、彼女に出会ってから初めて知ったのだ。
あー、俺の嫁可愛い。
なんでこんなに可愛いんだろう?
溢れる気持ちがもどかしくて思うままに彼女の頭を撫でていると、小さな指がギュッとしがみ付くように俺の手を掴んだ。そして卯月は潤んだ瞳で俺を見上げると―――こう言ったのだ。
「もう!子ども扱いしないで!」
拗ねたように強い口調でそう言い切った後、見る間にその柔らかい頬が朱に染まって行く。
何だか可笑しくて堪らなくなる。いつだって俺の方が負けっぱなしだと言うのに。勿論彼女を子ども扱いするつもりなんかサラサラ無い。―――子供だと思っていたらこんな真似、出来ないものな。
笑い出しそうになるのを堪えて、呆気に取られている彼女の唇に噛みついた。
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