捕獲されました。

ねがえり太郎

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新妻・卯月の仙台暮らし

20.眼鏡屋さんにいます。

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 その眼鏡店では、眼鏡の歪みなんかをチェックしてくれるようだ。何をするかと言うとレンズの焦点に合うように眼鏡のツルの形を整えたり、眼鏡を支える鼻パッドを交換して全体を清掃してくれたり、と言ったことをやってくれるらしい。この眼鏡店で購入した眼鏡は、何処の支店でも保障期間無しでずっと無料でそう言う点検をやってくれるんだって。

 二つの調整ブースは埋まっていたけど直ぐに入れそうだったので、順番待ちの間二人でズラリと並んでいる商品を眺めていた。たけしさんは特に眼鏡の新調は考えていなかったようだけど、私が張り切って「これ!これ掛けてみて」「こっちも!」「あ、色違いもね!」と次から次へと試し掛けを勧めるものだから、いつの間にかスススと距離を詰めていた店員のお姉さんが、絶妙なタイミングで声を掛けて来た。

「そろそろ視力も確認された方が良いですよ?暫く新調されていないですし、ご検討されてはいかがですか?」

 あくまで押しは柔らか。グイグイとした接客ではなくて呼吸の隙間にトン、と置かれるような感じ。彼女のお勧めに乗っかる形で期待を込めて見つめる私の目を見返し―――丈さんは根負けしたように頷いた。

 眼鏡美人のお姉さんは丈さんと同じくらいの年代に見える。丈さんの了承を得ると、水を得た魚のようにフレームをピックアップし始めた。既にイメージがしっかり頭の中に描かれているみたいだった。

「こちらのスクエアタイプなどいかがでしょう?少し丸みもあるので、今のタイプより若干優しい見た目になると思います。フレームも太過ぎないですから、落ち着きもありますし……」

 と洋服で有名なイギリスのブランドのフレームを差し出す。丈さんがお盆のような物の上に乗った状態で差し出されたそれを手に取った。丈さんは眉を顰めて店員のお姉さんが示した鏡に顔を近づける。掛けてみたものの、レンズが入っていないのであまりよく見えないらしい。

「……分からん」

 今までの銀縁眼鏡よりハッキリしたフレームだ。はっきり見えないからか、それとも印象が違うからピンと来ないのか、丈さんは首を捻る。諦めたように姿勢を伸ばし、こちらに顔を向けて尋ねて来た。

「似合うか?」
「え……と」

 思わず息を飲んだ。言葉にならない。



……い、イイ……!すっごく……!



 ズッキューン!って胸を撃ち抜かれて、クラリとよろけそうになった。さ、さすがプロの見立ては違う……!私がアレコレ着せ替えさせたフレームより、断然似合ってる……!

「やっぱり、こういうお洒落なのは似合わないよな……」

 動揺して目を白黒させる私の様子を勘違いした丈さんが、溜息を吐いて眼鏡を外そうとした。私は慌てて、その手を押さえる。勢い込んで彼の思い込みを否定した。

「似合ってるから!すっごく!!」
「そうです!とっても良いです!!」

 すると台詞を被せるくらいの勢いで、店員のお姉さんも両拳を握りしめて私に加勢する。思わず振り返り目と目を見交わし、互いに大きく頷いた。今の一瞬で私達は分かり合えたのだ。

 女性陣の剣幕にパチパチと瞬きを繰り返し、丈さんが「そうか……」と怯んだように呟いた。

 そして「こちらも是非!試してみてください!」とお姉さんが厳選したフレームを差し出し、その後更に幾つか丈さんに掛けて貰うことになったのだった。



「あ!!これも、これも良い!」
「ですよねー!いらっしゃった時から、思ってたんですよ!カッチリしていて、だけど柔らかい隙も何処かあるようなのが、お似合いになられるんじゃないかと……!」
「スゴイです!さすがプロですねー!」
「いえいえ、やはりお客様のお顔立ちの良さが……!元が良いと、眼鏡が一層映えますね。次、これもちょっと掛けてみてください!」
「ああ!こっちも良い……!!」



 ちなみにハシャギまくる女性陣に対して、眼鏡を購入する当の丈さんは着せ替え人形に徹し、フレームを試し掛けする間終始無言だった。

―――と言うか盛り上がり過ぎる私達が、言葉を挟む隙を与えなかったと言うのが正しい。
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