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新妻・卯月の仙台暮らし
本題だそうです。 <亀田>
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「春に辞令を出す。翔子の後はお前に任せることにした」
「は……?」
唐突な提案に、思わず耳を疑う。
いや、確か桂沢部長の部下は年上の男性で、創業者一族の婿養子だった筈だ。篠岡からそう聞いたことがある。で、あれば……『後を任せる』と言うのは、厳密には一旦彼を繰り上がらせてそのサポートに配属される、と言う意味だろう。
「あの、後と言うのは……つまり遠藤課長を昇進させて、俺にサポートさせると言うことですか」
それなら、よくある尻拭いパターンだ。遠藤課長自身と直接会ったことはないので、彼がどのような人物なのかは分からないが、有能な桂沢部長の後を任せるには力不足なのだろう。そう言う時の『テコ入れ』として便利に使われるのは、よくある事だった。
「遠藤なんかに任せるかよ。お前が部長だ。遠藤はお前の部下だ」
「流石にそれは……」
創業者一族に睨まれてまで栄転したくはない、と言うのが正直な所だ。それなら縁の下の力持ちの方がマシだ。
すると東常務が、ニヤリと口元を歪めた。
「デッカイ重しを乗っけてやるんだ。あの男はチョロチョロ鼠みたいに小賢しい動きをしているらしい。お陰で心労が祟って、ただでさえ身重の状態で辛いのに、追い討ちで翔子は倒れちまった。お前は、アイツが好き勝手出来ないよう重しにする、漬物石だ」
いや、完全に恨まれるパターンだろ、それ。
「昨今はモラルに厳しいからな」
突然話題を変えた東常務を、俺は訝しんだ。
いつもそうだ。こう言う時、必ず爆弾発言が待っている。
「あの不良債権を処分するんだよ。仙台支店でどうにも怪しい動きがある。それに別口でアイツの細君から内々に相談があってな。どうも女がいるようなんだ。しかし以前遊びがバレてから、奴の金まわりに関しては細君が厳しく監視の目を光らせていた。奴が個人的に自由に使える金は、ない筈なんだ。しかし単身赴任だから、全てを見張るには限界がある」
「つまり―――横領ですか?」
自由になる金がないのに遊んでいる、つまり会社の金を融通していると考えるのが普通だ。ただ浮気相手が負担している、と言う可能性が無い訳では無い。ホストみたいに相手から貢がれるような男であれば、な。どうやったらそんなことが出来るかなんて、女性扱いが致命的に下手な俺には想像も付かないが。
「詳しいことは分からん。それを洗い出すのが、お前の仕事の一つだ」
「……なら、何も上司として赴任する必要はないんじゃないですか?」
「『一つ』と言っただろう。―――メインの仕事は支店のテコ入れだ。どうも売上の伸びが今一つだ。競合他社から頭一つぶん押さえられている状態には、もう我慢ならん。徹底的に支店の膿を洗い出し、一から営業のやり方を社員一人一人に叩き込め」
こうして東常務―――いや、鬼東の無茶振りが始まった。
遠藤課長は支社に赴任して、かなり長い。能力のない人間を虫けらとでも思っている節のある鬼東は、ずっとその存在を無視して来たに違いない。けれども桂沢部長が体調を崩す原因となったと知り、その存在の排除を決意したのだろう。
更に経営に関する限りで言えば、鬼東は天才的に勘が鋭い。それを俺は目の前でまざまざと見せつけられてきた。おそらく今、それをやることに、意味がある。
時世や社内の情勢を勘案して、今が遠藤課長に対処するタイミングだと、その彼が判断したのだ。
俺は溜息を吐きつつ、肩を落とす。
しかし頭の中では、さて何処から手を付けるべきか……などと忙しなくスケジュールを整理し始めたのだった。
「は……?」
唐突な提案に、思わず耳を疑う。
いや、確か桂沢部長の部下は年上の男性で、創業者一族の婿養子だった筈だ。篠岡からそう聞いたことがある。で、あれば……『後を任せる』と言うのは、厳密には一旦彼を繰り上がらせてそのサポートに配属される、と言う意味だろう。
「あの、後と言うのは……つまり遠藤課長を昇進させて、俺にサポートさせると言うことですか」
それなら、よくある尻拭いパターンだ。遠藤課長自身と直接会ったことはないので、彼がどのような人物なのかは分からないが、有能な桂沢部長の後を任せるには力不足なのだろう。そう言う時の『テコ入れ』として便利に使われるのは、よくある事だった。
「遠藤なんかに任せるかよ。お前が部長だ。遠藤はお前の部下だ」
「流石にそれは……」
創業者一族に睨まれてまで栄転したくはない、と言うのが正直な所だ。それなら縁の下の力持ちの方がマシだ。
すると東常務が、ニヤリと口元を歪めた。
「デッカイ重しを乗っけてやるんだ。あの男はチョロチョロ鼠みたいに小賢しい動きをしているらしい。お陰で心労が祟って、ただでさえ身重の状態で辛いのに、追い討ちで翔子は倒れちまった。お前は、アイツが好き勝手出来ないよう重しにする、漬物石だ」
いや、完全に恨まれるパターンだろ、それ。
「昨今はモラルに厳しいからな」
突然話題を変えた東常務を、俺は訝しんだ。
いつもそうだ。こう言う時、必ず爆弾発言が待っている。
「あの不良債権を処分するんだよ。仙台支店でどうにも怪しい動きがある。それに別口でアイツの細君から内々に相談があってな。どうも女がいるようなんだ。しかし以前遊びがバレてから、奴の金まわりに関しては細君が厳しく監視の目を光らせていた。奴が個人的に自由に使える金は、ない筈なんだ。しかし単身赴任だから、全てを見張るには限界がある」
「つまり―――横領ですか?」
自由になる金がないのに遊んでいる、つまり会社の金を融通していると考えるのが普通だ。ただ浮気相手が負担している、と言う可能性が無い訳では無い。ホストみたいに相手から貢がれるような男であれば、な。どうやったらそんなことが出来るかなんて、女性扱いが致命的に下手な俺には想像も付かないが。
「詳しいことは分からん。それを洗い出すのが、お前の仕事の一つだ」
「……なら、何も上司として赴任する必要はないんじゃないですか?」
「『一つ』と言っただろう。―――メインの仕事は支店のテコ入れだ。どうも売上の伸びが今一つだ。競合他社から頭一つぶん押さえられている状態には、もう我慢ならん。徹底的に支店の膿を洗い出し、一から営業のやり方を社員一人一人に叩き込め」
こうして東常務―――いや、鬼東の無茶振りが始まった。
遠藤課長は支社に赴任して、かなり長い。能力のない人間を虫けらとでも思っている節のある鬼東は、ずっとその存在を無視して来たに違いない。けれども桂沢部長が体調を崩す原因となったと知り、その存在の排除を決意したのだろう。
更に経営に関する限りで言えば、鬼東は天才的に勘が鋭い。それを俺は目の前でまざまざと見せつけられてきた。おそらく今、それをやることに、意味がある。
時世や社内の情勢を勘案して、今が遠藤課長に対処するタイミングだと、その彼が判断したのだ。
俺は溜息を吐きつつ、肩を落とす。
しかし頭の中では、さて何処から手を付けるべきか……などと忙しなくスケジュールを整理し始めたのだった。
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