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番外編・うさぎのきもち
56.電話
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二話続けて投稿します。
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「連絡は……その」
ヴーッ・ヴーッ・ヴーッ……
そこでマナー音が響いた。その音はソファの上に置かれた卯月さんの鞄から響いているようだった。
卯月さんは立ち上がり、鞄の中からスマホを取り出す。驚いたように少し目を見開いて画面を見ると、それから申し訳なさそうに俺に目線で許可を取って通話を始めた。
「もしもし? どうしたの? うん……え! 今?!」
ギョッとした様子で何やら今度は小声で話しだす。
伊都さんと俺は顔を見合わせた。卯月さんは何か不測の事態に見舞われたようだ。
「うん、うん……分かった、すぐ行くから!」
卯月さんが通話を終えて「はぁーー」と大きく溜息を吐き、肩を落とした。
「どうしたんですか?」
まさか出張中の亀田部長に何かあったのだろうか。
卯月さんは申し訳なさそうに眉を落とした。
「実は母親が突然ウチを訪ねて来たそうで」
「ああ、仙台に住んでいらっしゃったっていう」
亀田部長の年上の同棲相手と誤解されていたという、あの……。
「そう! よくご存じですね」
「あっ……その、亀田部長にうかがって……」
しかしあの噂話自体はあまり奥さんが聞いて楽しい話じゃないよな。話の詳細には触れないでおこう。
「で、その……母が鍵を忘れて立ち往生しているらしいんです。何でも出張でこちらに来て宿にしようと思っていたらしく何とかしてくれと……」
「そうなんですか、じゃあ車で送るので帰りましょう!」
伊都さんが立ち上がってソファの上の自分の荷物に手を伸ばした。
「いえ! そんな、まだ来たばっかりなのに。私一人で大丈夫です!」
「え、でも」
「伊都さんせっかくのお休みですし、私の都合で振り回したら申し訳ないです。もともと誘ったのも私ですし……母とは駅で待ち合わせする事にしたので車じゃなくても大丈夫です。もう少しヨツバと過ごしてあげて下さい!ほら、ヨツバの健康チェックがしたいって言ってましたよね?」
健康チェック? 俺が尋ねるように視線を振ると、伊都さんは手をモジモジと付き合わせて照れたように視線を下げた。
「獣医さんでもありませんし、本格的なものじゃないんでけど……その、詳しい健康状態を点検させていただきたいな、と思ってまして。ウチのうさぎさん達の世話をするとき習慣になっているものですから……」
「ね? 私の事は構わず、もう少しヨツバの為にいてやって下さい。伊都さんヨツバとまだ触れ合って無いじゃないですか。あの! そんなワケで慌ただしくて申し訳ありませんけど―――私は失礼させていただきますが伊都さんのこと、お願いします。戸次さん!」
「え? あ、はい」
卯月さんの『お願い』に思わず、頷いてしまう。
伊都さんが戸惑ったように俺を見上げたので、俺は咄嗟に営業スマイルで頷いた。
「ヨツバの状態、あまり理解していないので……詳しく見ていただけると有難いです」
「と言っても抱っこして近くから状態を確認するくらいですけど」
伊都さんが恐縮したように、視線を下げた。
「抱っこ……できるんですか」
「あ、はい。できますよ。抱っこ苦手な子もいますけど、ヨツバは大人しいですから」
『大人しい』……か?伊都さんにはそう見えるのか。それともうさぎ全般から比べるとヨツバは大人しい部類に入るのだろうか?分からん、そもそもヨツバ以外のうさぎに生で接した経験が無いのだから。
しかし事も無げに彼女は頷いたのだから、そう言う事なのだろう。何だか一度でもヨツバを抱っこした経験があるような言い方だが、きっとこれまで彼女がうさぎを世話して来た経験でそう見当を付けたのかもしれない。
こうして結局卯月さんの強い主張もあって、伊都さんを残して彼女は引き上げることになったのだった。
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「連絡は……その」
ヴーッ・ヴーッ・ヴーッ……
そこでマナー音が響いた。その音はソファの上に置かれた卯月さんの鞄から響いているようだった。
卯月さんは立ち上がり、鞄の中からスマホを取り出す。驚いたように少し目を見開いて画面を見ると、それから申し訳なさそうに俺に目線で許可を取って通話を始めた。
「もしもし? どうしたの? うん……え! 今?!」
ギョッとした様子で何やら今度は小声で話しだす。
伊都さんと俺は顔を見合わせた。卯月さんは何か不測の事態に見舞われたようだ。
「うん、うん……分かった、すぐ行くから!」
卯月さんが通話を終えて「はぁーー」と大きく溜息を吐き、肩を落とした。
「どうしたんですか?」
まさか出張中の亀田部長に何かあったのだろうか。
卯月さんは申し訳なさそうに眉を落とした。
「実は母親が突然ウチを訪ねて来たそうで」
「ああ、仙台に住んでいらっしゃったっていう」
亀田部長の年上の同棲相手と誤解されていたという、あの……。
「そう! よくご存じですね」
「あっ……その、亀田部長にうかがって……」
しかしあの噂話自体はあまり奥さんが聞いて楽しい話じゃないよな。話の詳細には触れないでおこう。
「で、その……母が鍵を忘れて立ち往生しているらしいんです。何でも出張でこちらに来て宿にしようと思っていたらしく何とかしてくれと……」
「そうなんですか、じゃあ車で送るので帰りましょう!」
伊都さんが立ち上がってソファの上の自分の荷物に手を伸ばした。
「いえ! そんな、まだ来たばっかりなのに。私一人で大丈夫です!」
「え、でも」
「伊都さんせっかくのお休みですし、私の都合で振り回したら申し訳ないです。もともと誘ったのも私ですし……母とは駅で待ち合わせする事にしたので車じゃなくても大丈夫です。もう少しヨツバと過ごしてあげて下さい!ほら、ヨツバの健康チェックがしたいって言ってましたよね?」
健康チェック? 俺が尋ねるように視線を振ると、伊都さんは手をモジモジと付き合わせて照れたように視線を下げた。
「獣医さんでもありませんし、本格的なものじゃないんでけど……その、詳しい健康状態を点検させていただきたいな、と思ってまして。ウチのうさぎさん達の世話をするとき習慣になっているものですから……」
「ね? 私の事は構わず、もう少しヨツバの為にいてやって下さい。伊都さんヨツバとまだ触れ合って無いじゃないですか。あの! そんなワケで慌ただしくて申し訳ありませんけど―――私は失礼させていただきますが伊都さんのこと、お願いします。戸次さん!」
「え? あ、はい」
卯月さんの『お願い』に思わず、頷いてしまう。
伊都さんが戸惑ったように俺を見上げたので、俺は咄嗟に営業スマイルで頷いた。
「ヨツバの状態、あまり理解していないので……詳しく見ていただけると有難いです」
「と言っても抱っこして近くから状態を確認するくらいですけど」
伊都さんが恐縮したように、視線を下げた。
「抱っこ……できるんですか」
「あ、はい。できますよ。抱っこ苦手な子もいますけど、ヨツバは大人しいですから」
『大人しい』……か?伊都さんにはそう見えるのか。それともうさぎ全般から比べるとヨツバは大人しい部類に入るのだろうか?分からん、そもそもヨツバ以外のうさぎに生で接した経験が無いのだから。
しかし事も無げに彼女は頷いたのだから、そう言う事なのだろう。何だか一度でもヨツバを抱っこした経験があるような言い方だが、きっとこれまで彼女がうさぎを世話して来た経験でそう見当を付けたのかもしれない。
こうして結局卯月さんの強い主張もあって、伊都さんを残して彼女は引き上げることになったのだった。
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