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新妻・卯月の仙台暮らし
51.新婚旅行一日目ですので。
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夕食を取った後、再び宿泊所の周りの広場へ降りた。
やはりここに腰を据えているうさぎ達は、森の中のシャイな子達より数段逞しいなと感じる。昼間よりずっとアグレッシブな彼等に、あっという間にみぐるみを剥がされた。残しておいたキャベツ半玉は、最後は芯まで奪われてしまう羽目になる。
「スゴい食欲だね」
「昼間より、観光客も少ないからな」
渡すチップを持たない私達は、既にうさぎさん達にはあまり魅力の無い客に成り下がってしまった。
後は他の観光客に群がるうさぎ達や、お腹いっぱいになって満足気に木の根元に丸くなっているうさぎ達をひやかして歩く。
広場の土はところどころ掘られて凹んでいて、そのくぼんだ部分にすっぽり嵌り込むように休んでいるうさぎを眺めている時、丈さんが目を細めてフッと笑った。
「うータンにも、土を掘らせてやりたいな」
「そうだね。……飼いうさぎだと、土と接するのってなかなか難しいものね」
時折うータンも本能に突き動かされるように、敷物をホリホリすることがある。そんな様子を眺めていると、ちゃんとした土を掘らせてあげたいと感じるのだ。外の世界に接する機会を上げたくて、公園のうさんぽに一度チャレンジしたものの、二度目には至っていない。
あまり長居して散歩中の犬と遭遇しても心配だしね。リードを付けた飼い犬がうさぎを襲うことは無いかもしれないけれど、箱入り娘のうータンは怖がって体調を崩すかもしれない。目を離した隙にカラスに捕まるかもしれないし。
憧れていた『うさんぽ』だったけど、実際やってみると結構気を使うことが多かった。その子の性格にもよると思うけど、少なくともうータンにとっては、お外は土を掘る所まではリラックスできない場所だったようだ。やはりお城育ちのお姫様には、外の世界より見知った家の中の方が落ち着くらしい。
それでも木陰で三匹ほど身を寄せ合って、ジッと寝転んでいるうさぎ達を見ていると、羨ましいような気持ちが湧いて来る。
「癒されるなぁ……うさぎ同士でくっついている光景って、和むよね」
卯崎島ならではの光景だろう。飼いうさぎには、多頭飼いは難しい。
「でも、うータンは『お姫様』だから……他の子と一緒の環境には馴染め無さそうだね」
うータンをうさぎひろばの運動場に連れて行ったこともある。女の子だけの場所だったけれど、うータンが他のうさぎと寄り添う所も見れて、伊都さんと並んで目を細めて眺めていたっけ。
でも、その内他の子とくっついているのに飽きたのか、うータンはそこから逃げ出した。なのに追っかけてくっ付いて来る子がいて、更にうータンが逃げ出して……と言う状況が何度か繰り返されて。結局、その後は他のうさぎとの交流は諦めて、運動場を使う時は一匹だけで使わせて貰うことになったんだ。
私の言葉に、丈さんは頷いた。
「だな。野生だと縄張り争いもあるだろうし、天敵もいる。飼いうさぎには生き辛いだろう」
「猪とか猫がいるって言うしね」
そう、うさぎしかいなかった筈のこの島に、なんと猪や猫がいるらしい。うさぎ達の生活は日々、サバイバルなのだ。猪は海を渡って泳いできたと言われている。初めてそれを知った時はまず『猪って泳げるんだ!』ってどうでも良いことで驚いちゃったけど。
でも島から島の間は遠くて、とても猫は泳いで渡れる距離じゃない。だから、猫については誰か心無い人がわざわざこの無人島に連れて来たんじゃないかって言われているのだ。それが本当なら、悲しい事に、わざわざ他人の土地に、船で渡ってまで猫を捨てる人がいるってことになる。
「それに、野性のうさぎ社会にはうちのお姫様は馴染め無さそうだしな」
「うん、そうだね」
私は大きく頷き、決意をもって拳を握りしめた。
「だから、うータンはこれまで通り、ずっと私達『執事』と『侍女』がお世話して差し上げなくてはね……!」
「しつじ……?」
丈さんの疑問符に、私はキッパリと答えた。
「うん。丈さんが執事。で、私が侍女」
彼を指差し、私を指差して見せる。
「執事……」
丈さんは少し納得の行かない表情を浮かべた。
いや、丈さん見た目もまんま『執事』だよ! 眼鏡をキラリと光らせて、冷淡に仕事をこなす厳しい執事! 少なくとも私の『侍女』よりよっぽど、似合ってると思う。
「……まぁ、なんだ」
しかし丈さんはそれには頷かず、ちょっと視線を外して話を切り上げた。
「うータンの世話はずっと俺達がするとして―――そろそろ戻らないか。明日の朝もまた早くに島を散策するのだし」
戻る……。
と言うと、部屋に戻るってことですよね。
すると、お風呂に入って、寝ますよね。ご飯も食べ終わったことですし。
このところ仕事、仕事で毎日帰りが遅く、帰って来ても短い睡眠時間を貪るようにベッドに倒れ込んだ途端意識を失ってしまう丈さん。やっとここに来て、自由な身となったのだ。だから今日は私達は、一緒のタイミングで布団に入ることが出来る。
つまり……その、久し振りに……
頬がカッと熱くなった。
その後のことに、思わず考えが及んだからだ……!
やはりここに腰を据えているうさぎ達は、森の中のシャイな子達より数段逞しいなと感じる。昼間よりずっとアグレッシブな彼等に、あっという間にみぐるみを剥がされた。残しておいたキャベツ半玉は、最後は芯まで奪われてしまう羽目になる。
「スゴい食欲だね」
「昼間より、観光客も少ないからな」
渡すチップを持たない私達は、既にうさぎさん達にはあまり魅力の無い客に成り下がってしまった。
後は他の観光客に群がるうさぎ達や、お腹いっぱいになって満足気に木の根元に丸くなっているうさぎ達をひやかして歩く。
広場の土はところどころ掘られて凹んでいて、そのくぼんだ部分にすっぽり嵌り込むように休んでいるうさぎを眺めている時、丈さんが目を細めてフッと笑った。
「うータンにも、土を掘らせてやりたいな」
「そうだね。……飼いうさぎだと、土と接するのってなかなか難しいものね」
時折うータンも本能に突き動かされるように、敷物をホリホリすることがある。そんな様子を眺めていると、ちゃんとした土を掘らせてあげたいと感じるのだ。外の世界に接する機会を上げたくて、公園のうさんぽに一度チャレンジしたものの、二度目には至っていない。
あまり長居して散歩中の犬と遭遇しても心配だしね。リードを付けた飼い犬がうさぎを襲うことは無いかもしれないけれど、箱入り娘のうータンは怖がって体調を崩すかもしれない。目を離した隙にカラスに捕まるかもしれないし。
憧れていた『うさんぽ』だったけど、実際やってみると結構気を使うことが多かった。その子の性格にもよると思うけど、少なくともうータンにとっては、お外は土を掘る所まではリラックスできない場所だったようだ。やはりお城育ちのお姫様には、外の世界より見知った家の中の方が落ち着くらしい。
それでも木陰で三匹ほど身を寄せ合って、ジッと寝転んでいるうさぎ達を見ていると、羨ましいような気持ちが湧いて来る。
「癒されるなぁ……うさぎ同士でくっついている光景って、和むよね」
卯崎島ならではの光景だろう。飼いうさぎには、多頭飼いは難しい。
「でも、うータンは『お姫様』だから……他の子と一緒の環境には馴染め無さそうだね」
うータンをうさぎひろばの運動場に連れて行ったこともある。女の子だけの場所だったけれど、うータンが他のうさぎと寄り添う所も見れて、伊都さんと並んで目を細めて眺めていたっけ。
でも、その内他の子とくっついているのに飽きたのか、うータンはそこから逃げ出した。なのに追っかけてくっ付いて来る子がいて、更にうータンが逃げ出して……と言う状況が何度か繰り返されて。結局、その後は他のうさぎとの交流は諦めて、運動場を使う時は一匹だけで使わせて貰うことになったんだ。
私の言葉に、丈さんは頷いた。
「だな。野生だと縄張り争いもあるだろうし、天敵もいる。飼いうさぎには生き辛いだろう」
「猪とか猫がいるって言うしね」
そう、うさぎしかいなかった筈のこの島に、なんと猪や猫がいるらしい。うさぎ達の生活は日々、サバイバルなのだ。猪は海を渡って泳いできたと言われている。初めてそれを知った時はまず『猪って泳げるんだ!』ってどうでも良いことで驚いちゃったけど。
でも島から島の間は遠くて、とても猫は泳いで渡れる距離じゃない。だから、猫については誰か心無い人がわざわざこの無人島に連れて来たんじゃないかって言われているのだ。それが本当なら、悲しい事に、わざわざ他人の土地に、船で渡ってまで猫を捨てる人がいるってことになる。
「それに、野性のうさぎ社会にはうちのお姫様は馴染め無さそうだしな」
「うん、そうだね」
私は大きく頷き、決意をもって拳を握りしめた。
「だから、うータンはこれまで通り、ずっと私達『執事』と『侍女』がお世話して差し上げなくてはね……!」
「しつじ……?」
丈さんの疑問符に、私はキッパリと答えた。
「うん。丈さんが執事。で、私が侍女」
彼を指差し、私を指差して見せる。
「執事……」
丈さんは少し納得の行かない表情を浮かべた。
いや、丈さん見た目もまんま『執事』だよ! 眼鏡をキラリと光らせて、冷淡に仕事をこなす厳しい執事! 少なくとも私の『侍女』よりよっぽど、似合ってると思う。
「……まぁ、なんだ」
しかし丈さんはそれには頷かず、ちょっと視線を外して話を切り上げた。
「うータンの世話はずっと俺達がするとして―――そろそろ戻らないか。明日の朝もまた早くに島を散策するのだし」
戻る……。
と言うと、部屋に戻るってことですよね。
すると、お風呂に入って、寝ますよね。ご飯も食べ終わったことですし。
このところ仕事、仕事で毎日帰りが遅く、帰って来ても短い睡眠時間を貪るようにベッドに倒れ込んだ途端意識を失ってしまう丈さん。やっとここに来て、自由な身となったのだ。だから今日は私達は、一緒のタイミングで布団に入ることが出来る。
つまり……その、久し振りに……
頬がカッと熱くなった。
その後のことに、思わず考えが及んだからだ……!
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