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捕まった後のお話
20.大丈夫ですか? <大谷>
しおりを挟むケージの掃除を終えて立ち上がり、クルリと振り返ると亀田課長が一心不乱にスマホで撮影を行っていた。
スマホが捉えているのは、毛繕いをするうータン。そしてスマホを構える亀田課長の姿勢が徐々に低くなっていく。まるでグラビアアイドルを撮影するカメラマンみたいだ。すると毛繕いを終えたうータンが亀田課長のスマホに興味を引かれたのか、そちらへ向き直りトテットテッ……と近付き始めた。
「うわっ……」
いつの間にやらスマホを構えながらも考え事でもしていたのか、かなりの至近距離に迫ったうータンにやっと気が付いた亀田課長が驚いて仰け反る。
「大丈夫ですか?」
思わず声を掛けると、亀田課長が夢から醒めたような表情でパチパチと瞬きを繰り返し、ボンヤリと私を見上げた。
「ああ、大丈夫だ」
「どうしました?」
少し心配になって声を掛けると、課長はフッと笑顔になって首を振った。
「ん?いや―――ああ!最後の写真、うータンの鼻しか映っていない」
課長の手の中のスマホの画面を覗き込むと、うさぎの鼻らしきものドアップで写っている。思わず噴き出しそうになる。
「ホントですね、でもこれはこれで……」
「大谷、うータンを抱っこしてくれ」
「へ?」
「さあ」
ああ、うータンの動きを拘束すれば、ちゃんと撮影できるって事かな?
「あ、はい……よいしょっと」
うータンに気付かれないよう、唐突にヒョイと手を伸ばして確保!案の定、うータンは驚く暇も無く私の腕の中に捕まってしまった。何だか悪徳カメラマンの片棒を担いでいるような気持ちになってしまう。
うータン、ごめんよ。私は彼氏の為に、うータンの心の安寧を売り渡す事も辞さない人間に成り下がってしまったのだ……なんちゃって。嘘だよ、すぐ終わるからちょっと我慢してね。
「撮って良いか?」
「OKでっす」
カシャ、カシャっと、スマホを構え真剣に画面を見つめる亀田課長。幾つか指示を受けてうータンの角度を変えたりする。それから何故かうータンに頬を寄せて一緒にカメラの画面に収まる事になった。
一通り満足するまでシャッターを切った後、スマホの画面を確認した亀田課長がニヤリとする。
その満足気な笑顔を目にして、私は思った。
この人って本当にうータンのこと大好きなんだな……。まあ、今更っちゃー、今更なんだけど。
それからハタ、と気付く。
まさか……亀田課長、うータンと別れたくないから……『抱いて下さい!』なんて口走る前のめりな私の提案を仕方なく受けたのでは?『付き合ってくれ』って言ったのも……もしかして、うータンのため?―――私ってひょっとしてうータンのおまけでは??
ふふふ……考え過ぎよね……いくらうさぎ狂いだからってまさか、彼女を選ぶ時にも『うさぎ優先で』なんて、そんな事無いわよね。
「……」
そっと亀田課長を伺うと、写真データをニマニマしながらチェックしている。思わず私はスッと目を細めてしまう。
「あり得る」
ボソリと呟くと、スマホから顔を上げて亀田課長が首を傾げた。
「ん?何か言ったか?」
「いっいいえぇ~~!なんっにも!」
私は手をブンブンと振った。心の声を見透かされたようなタイミングに、ついつい慌てて必死で否定してしまう。すると亀田課長から更なる提案が。
「もう一枚、撮ってイイか?」
「どーぞ、どーぞ……!一枚でも二枚でも!幾らでも撮ってください」
私は大きく頷いて、解放しかけたうータンを抱え直した。
ゴメン、うータン!もうちょっとだけ、付き合ってくれ~!
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