捕獲されました。

ねがえり太郎

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プロポーズの後のお話 <大谷視点>

17.呼び出されました。

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パパが指定したのは新宿駅から徒歩一分の場所。新しい職場から近い、一階にスタバがあるビルの二階にあるお蕎麦屋さんだった。

「うわぁ、お洒落……」

意外だった。パパのお土産センスから考えて、こんな素敵なお店を指定してくるとは思っていなかった。予約者名を入口で告げて案内されるままに籐のパーティションに囲まれた小道のような所を進む。半個室になったそこに辿り着くと、既にパパは席に着いていてビールを飲んでいた。

「パ……お父さん」
「ああ、卯月。そこに座りなさい」
「あ、うん」

普段『うっちゃん』って呼ぶくせに余所行き口調で『卯月』と言ったのは、パパの隣に知らない男の人が座っている所為だ。私と同じか少し年上くらいの年齢?スーツをパリッと着こなした短髪のその人は、シッカリした眉に少し垂れ目がちの温和そうな瞳を細めて微笑んでいた。

「桑沢、娘の卯月だ。卯月、俺の会社の桑沢君だ」
「こんにちは。今日は父子おやこ水入らずの場所にお邪魔しちゃってすいません」
「あ、はい。こちらこそ」
「桑沢、気を遣うな。俺が誘ったんだから」

パパはもう既にほろ酔いなのか、上機嫌で桑沢さんと言う人の肩を叩いている。私は混乱しつつも曖昧に微笑んだ。一体どういうつもりなんだとパパを責めたい気もしたが、恐縮している桑沢さんに気を使わせるのは申し訳ない。彼もきっとパパに無理に連れてこられたクチなのかもしれないから。

「ここの蕎麦、結構イケるんだぞ。卯月、出し巻き好きだろ。何だっけあれ、鳥の焼いたヤツあれ旨かったよな……桑沢は本当に美味しい店、詳しいよな」
「『大和地鶏の炭火焼』ですよね、お造りも頼みましょうか。せいろは少し後にして……大谷部長、飲み物追加しますか?」
「そうだな。熱燗に変えるかな」
「分かりました。ええと、卯月さん?アルコール大丈夫ですか?」
「あ……はい」
「ここ日本酒がメインなんですが、ビールやワインも色々ありますし、カクテルも……」

そう言ってテキパキとメニュー表を見せてくれる。その中から取りあえず選んだのは『シークワーサー・ロイヤルグラス』飲み易そうな気がしたからだ。私が選ぶと直ぐに桑沢さんと言う男の人は、お店の人に声を掛けて注文を済ましてくれた。



出し巻き卵はふっくらしていて美味しいし、地鶏も外側はパリッと中はジューシーに仕上がっていて良いお味。直感で選んだカクテルもサッパリしていてのど越しもとっても爽やか―――パパが何を考えているのか分からない私は戸惑いつつも、気を使って話題を振ってくれる桑沢さんの話に相槌を打つ。
何でもない世間話から、これまであまりピンと来なかったパパのお仕事である道路や橋を作る仕事を現場のエピソードや体験談を交えて面白可笑しく説明してくれたり……さり気なく気を使ってくれる様子を見ていると、この人とても良い人だなぁって思ってしまう。多分パパのお気に入り、なのだろう。

これは一体……どういう状況?と思いつつ、ご機嫌な様子で合の手を入れるパパに眉を顰めたい気持ちを押し込めて、桑沢さんの話に耳を傾けていた。
するとグイッと杯を傾けて熱燗を飲み干したパパが、あろうことか世迷言を口走ったのだ。

「桑沢、卯月をどう思う?」
「え?……ああ、素敵なお嬢さんですね」

なっ……何を急に言い出すんだ、パパは。
そんな風に聞かれたら―――おそらく部下の桑沢さんはそう言うしかないだろう。『イマイチですね』とか『地味ですね~』なんて口が裂けても言えないだろうに。すると満足したように頷いて、パパが私にニッコリと笑いかけた。久しぶりにこんな微笑みを目にしたので思わずドキッとする。

「どうだ?」

何が『どうだ』?

「コイツ有能なんだぞ、お前と年も近いし。お似合いじゃないか」
「―――」



何言ってんの、パパ?!

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