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結婚するまでのお話 <大谷視点>
4.婚約者様のお帰りです。
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「お帰りなさい!」
「……ただいま」
ただいま……だいま……いま……。
おと耳の奥にセルフでエコーが掛かってしまった。くう~良いなぁ!この部屋に来る時はいつも丈さんと一緒だったから、お迎えするのって実は初めてなんだ。
丈さんが眉を下げて「遅くなってごめんな」と謝ってくれる。ニマニマしつつも私はブンブンと首を振った。明日でも会えるのに、少しでも一緒にいる時間が欲しくて上がり込んだのは私の方だ。落ち着いて見ると何処となく目の前の背の高い人はやつれているように見える。はぁ~やっぱ大変なんだなぁ。
だから魔法の一言を呟いてみる。
「うータンもお待ちかねですよ」
キラッと銀縁眼鏡の奥の瞳に生気が宿った気がした。うん、私を見てそう言う反応してくれたら良かったのに……なんて思っていませんよ?
シャワーを浴びてパジャマ兼用のTシャツとジャージに着替えた丈さん。ふにゃりと纏う空気が変わったのは傍らにいる、白いビロードの毛並みのお姫様のお陰だろう。さっきまでスーツ姿でビシッと決めていて、会社の堅い空気を纏っていたからギャップがスゴイ。
このギャップを見られるのって、特権だよなぁ。
そう言えば吉竹さん達カップル……いや夫婦か。二人の場合ははどうなんだろ?吉竹さんの方は、何となくオフの姿を想像できる気がする。けど、ガッチリした体格でビシッとスーツを纏っている中務さんがだらけている姿って、全く想像がつかないや。
「吉竹さんと中務さんが結婚したって、知ってる?」
「ああ。昨日企画課に行った時、中務に聞いた」
「プロポーズのその日に入籍したんだって」
「そうなのか?」
僅かに驚いたように丈さんが眉を上げた。
「すっごく急だったから吃驚。吉竹さんに聞いたら、特に何か理由があった訳じゃなくて『中務さんに言われたから仕方なく』って言うんだよ?他人の恋愛話にはあり得ないくらい注目するのに、吉竹さんったら自分の恋愛話には全く頓着していないんだよね。不思議でしょうがないなぁ」
私だったら『今すぐ結婚したい』なんて言われたら、とてもあんな風に落ち着いては居られないと思う。中務さん、見掛けに寄らず情熱的なんだなぁ。『あの人、めっちゃ楽しそうなんだけど』って彼女、他人事みたいに言ってたけど、二人切りの時は中務さん、ドロドロに甘かったりするのかなぁ。まっすぐな愛情表現ってちょっぴり羨ましい。
私が丈さんにそんな風に言われたら……幸せ過ぎて沸騰して浮足立っちゃうよ……!
丈さんはうータンを撫でながら、少しの間口を噤み―――それからポソリと呟いた。
「理由ね……何となく想像は付くが」
「え?」
「何でもない。ところで実は暫く家に帰れなくなりそうなんだ」
「えっと、お仕事?」
「ああ、出張で二週間。仙台に行く事になった」
「ええ!」
今まさにパパが仙台に居る所だ。何だか最近仙台付いているなぁ。
「いつから?」
「月曜から二週間」
「え……二週間も?!どうして?」
「……あまり公にしていないんだが、仙台支社の営業企画部長が体調を崩してな。復帰するまでサポートする事になった」
に、二週間!しかも月曜日から?ええ~何だか寂しいなぁ。仕事で最近ほとんど会えないとは言え、会社で見掛ける可能性もあるし同じマンションに帰って来る状態だから、それが全く見掛ける事も出来ない状況になるのは……うーん、やっぱりかなり切ないかも。
それに営業課は大丈夫なのだろうか。二週間もいないってちょっと心配だ。
「営業課は?大丈夫なの?」
「ああ、俺がいなくても皆は大丈夫だ。それに樋口さんに課長代理として対応して貰う事になったから。でも大変は大変かな。俺がいなくても現場は回るが、今回三好も応援に行く事になったから―――その間目黒や辻に頑張って貰わないと」
えっ……。今聞き捨てならない事をおっしゃいませんでした?
湯川さんを数に入れていない?って部分もちょこっと引っ掛かるけど、そうじゃなくて……。
「ええと……三好さんも、行くの?」
「ああ」
「二週間?一緒に」
「まぁ、そうだな」
「……」
涼しい顔で頷く丈さん。
ちょっとちょっと!えええ!なっ何で三好さんと……。あ、仕事か。いや仕事なんだけど……。
『アイツ前よりちょっと綺麗になったよな』『おー、何かイイ感じに女ぽくなった!』って、この間男性社員が囁いているのを偶然耳にした。その噂の中心になっている営業課正社員の紅一点、あの三好さんと―――に、二週間もっ……一緒に仙台に行くって言うの?!
途端に私の胸の中に、モヤモヤとした霧みたいな物がじわりと湧き起こり始めたのだった。
「……ただいま」
ただいま……だいま……いま……。
おと耳の奥にセルフでエコーが掛かってしまった。くう~良いなぁ!この部屋に来る時はいつも丈さんと一緒だったから、お迎えするのって実は初めてなんだ。
丈さんが眉を下げて「遅くなってごめんな」と謝ってくれる。ニマニマしつつも私はブンブンと首を振った。明日でも会えるのに、少しでも一緒にいる時間が欲しくて上がり込んだのは私の方だ。落ち着いて見ると何処となく目の前の背の高い人はやつれているように見える。はぁ~やっぱ大変なんだなぁ。
だから魔法の一言を呟いてみる。
「うータンもお待ちかねですよ」
キラッと銀縁眼鏡の奥の瞳に生気が宿った気がした。うん、私を見てそう言う反応してくれたら良かったのに……なんて思っていませんよ?
シャワーを浴びてパジャマ兼用のTシャツとジャージに着替えた丈さん。ふにゃりと纏う空気が変わったのは傍らにいる、白いビロードの毛並みのお姫様のお陰だろう。さっきまでスーツ姿でビシッと決めていて、会社の堅い空気を纏っていたからギャップがスゴイ。
このギャップを見られるのって、特権だよなぁ。
そう言えば吉竹さん達カップル……いや夫婦か。二人の場合ははどうなんだろ?吉竹さんの方は、何となくオフの姿を想像できる気がする。けど、ガッチリした体格でビシッとスーツを纏っている中務さんがだらけている姿って、全く想像がつかないや。
「吉竹さんと中務さんが結婚したって、知ってる?」
「ああ。昨日企画課に行った時、中務に聞いた」
「プロポーズのその日に入籍したんだって」
「そうなのか?」
僅かに驚いたように丈さんが眉を上げた。
「すっごく急だったから吃驚。吉竹さんに聞いたら、特に何か理由があった訳じゃなくて『中務さんに言われたから仕方なく』って言うんだよ?他人の恋愛話にはあり得ないくらい注目するのに、吉竹さんったら自分の恋愛話には全く頓着していないんだよね。不思議でしょうがないなぁ」
私だったら『今すぐ結婚したい』なんて言われたら、とてもあんな風に落ち着いては居られないと思う。中務さん、見掛けに寄らず情熱的なんだなぁ。『あの人、めっちゃ楽しそうなんだけど』って彼女、他人事みたいに言ってたけど、二人切りの時は中務さん、ドロドロに甘かったりするのかなぁ。まっすぐな愛情表現ってちょっぴり羨ましい。
私が丈さんにそんな風に言われたら……幸せ過ぎて沸騰して浮足立っちゃうよ……!
丈さんはうータンを撫でながら、少しの間口を噤み―――それからポソリと呟いた。
「理由ね……何となく想像は付くが」
「え?」
「何でもない。ところで実は暫く家に帰れなくなりそうなんだ」
「えっと、お仕事?」
「ああ、出張で二週間。仙台に行く事になった」
「ええ!」
今まさにパパが仙台に居る所だ。何だか最近仙台付いているなぁ。
「いつから?」
「月曜から二週間」
「え……二週間も?!どうして?」
「……あまり公にしていないんだが、仙台支社の営業企画部長が体調を崩してな。復帰するまでサポートする事になった」
に、二週間!しかも月曜日から?ええ~何だか寂しいなぁ。仕事で最近ほとんど会えないとは言え、会社で見掛ける可能性もあるし同じマンションに帰って来る状態だから、それが全く見掛ける事も出来ない状況になるのは……うーん、やっぱりかなり切ないかも。
それに営業課は大丈夫なのだろうか。二週間もいないってちょっと心配だ。
「営業課は?大丈夫なの?」
「ああ、俺がいなくても皆は大丈夫だ。それに樋口さんに課長代理として対応して貰う事になったから。でも大変は大変かな。俺がいなくても現場は回るが、今回三好も応援に行く事になったから―――その間目黒や辻に頑張って貰わないと」
えっ……。今聞き捨てならない事をおっしゃいませんでした?
湯川さんを数に入れていない?って部分もちょこっと引っ掛かるけど、そうじゃなくて……。
「ええと……三好さんも、行くの?」
「ああ」
「二週間?一緒に」
「まぁ、そうだな」
「……」
涼しい顔で頷く丈さん。
ちょっとちょっと!えええ!なっ何で三好さんと……。あ、仕事か。いや仕事なんだけど……。
『アイツ前よりちょっと綺麗になったよな』『おー、何かイイ感じに女ぽくなった!』って、この間男性社員が囁いているのを偶然耳にした。その噂の中心になっている営業課正社員の紅一点、あの三好さんと―――に、二週間もっ……一緒に仙台に行くって言うの?!
途端に私の胸の中に、モヤモヤとした霧みたいな物がじわりと湧き起こり始めたのだった。
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