捕獲されました。

ねがえり太郎

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結婚するまでの裏話

三、お帰りなさい。 <亀田>

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『結婚までのお話』「4.婚約者様のお帰りです」の裏側、
ものすごく短い、亀田視点のおまけ小話です。

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「お帰りなさい!」
「……ただいま」



仕事でクタクタに疲れ切った体に染み込む、彼女の『おかえりなさい』。

こんなに幸せな瞬間があるだろうか。照明の明るさはいつもと変わらない筈なのに、何故だか玄関が十ルクスくらいは、明るくなったように錯覚してしまう。

「遅くなってごめんな」

待たせてしまった事を謝罪して直ぐに自分の下手さに気付く。先ずは待っていてくれた事に対する感謝を述べるべきでは無かったか。女心を心得ている篠岡ならそんな選択をするだろうに……なんてつい考えてしまう。それにああ……こんなに待たせて置いて土産の一つも買って来なかった。

自分の気の利かなさが腹立たしくなる。これまで女性と付き合った時には終ぞ生まれなかった感情に卯月と付き合うようになってから、何度振り回されている事だろうか。

俺は今幸せだ。

そして大層臆病になってしまった。気が利かない自分に愛想を尽かされるのが怖いなんて。しかし正直に情けない自分を晒したら、呆れられてしまうかもしれない。俺に男としての魅力があるとすれば―――多分年上の余裕や、社会経験の多さで培った包容力や落ち着きしかないだろう。卯月には色々と情けない所を晒して来たが、これから人生を共にしていくに当たっては頼りがいのある伴侶だと思って貰いたい。そしてずっと―――こんな風に優しい時間を一緒に過ごしたいんだ。

言葉選びを間違えていないか、などと内心焦る俺に対して、彼女はニコニコしながらブンブンと大きく首を振ってくれる。

うっ……おい!可愛過ぎるだろ!

その屈託のない仕草に撃沈しそうになるが、堪えて崩れそうになる自分を留めた。
すると更に追い討ちを掛けるように、彼女はクスクス笑いながら上目遣いにこう呟いた。



「うータンもお待ちかねですよ?」



―――こんな完璧な嫁がいるか?!女神か?



……いや、落ち着け俺。まだ『嫁』じゃないから……!




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浮かれた大人のノロケ話です。
本当にヒーローが残念ですいません。でも得な事にこんなにグルグル考えていても、亀田はあまり顔には出ないんですよね…。

お読みいただき、誠に有難うございました!


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