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1.転生者とは寛容で楽観的な方がちょうどいい
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人が死ぬとき最後に残る感覚は聴覚と言われている。
いざ自分で試してみると、なるほど、脳に近く直接神経に繋がっているからなのだろう。
水音が聞こえる。シズメシズメ、水の底、まるで母の中のような安心感。
ああ、私は死ぬのだ。
光差す方
産湯が必要なのですね
ぴちゃ、ぴちゃ、てけ・りっり
進化ヲ、エル、新タナ勇者
いやナニカおかしな物が聞こえる。明らかにおかしい、おかしいことは決定的に明らか!私はまだ幻聴に取り付かれるほど常識は捨てていないし、危ない薬は自家製(雑草)の物しか使ったことが無いぞ!
今、転生、ヲ
ああ、聞こえる。知らない声が、不明な音が、脳に響く。鈴の音、笛の音、イヤイヤ
光が見える、体が落ちる、形が無い…
意識が落ち…
私の話をするとしよう
あれは今から36万・・・
いや、1万4000年前
ではなく私の生まれる前、前世の話だ。
私は当時、自宅の一室、自分用のラボにこもっていた。
なに、ラボと言っても薬学や化学ではなく電子工学用の作業部屋だ。
知り合いの化学者のように劇薬を管理しているわけでもなければ、危険な生物もおらず、人の四肢を捥ぐような力のある機械もない。
ラボには便利なソフトを入れたPC、基盤とそれを組み上げる部品と工具、動作確認用のDC電源とそこまで危険な物は置いていなかった。実験に失敗して爆発したわけではない。
不運な事故としか言えないが、私は家ごと土砂に流され死んでしまったのだ。
こればっかりは運がない、当時の私は長い休みに乗じて今までやりたいことの消化をしていたのだ。思い描いたものを図面に書いたり、先人の描いた設計図を移したり、PCを組み立てたり、ゲルマニウムラジオを作ったりしていた実に充実した休日。大雨警報など眼中になく、直前まで土砂の流れる音に気が付かなかった。しかし、地面が揺れ濁流と土砂が身を覆った時、私は絶滅を噛み締め死を受け入れていた。
そして今、私は耳の長い赤子として生を受けた。
そうエルフ!ザ・ファンタジー!オウ・マジェスティック!私のイメージ通りエルフは長寿の森の民であったが、夜目が利き耳が良い!おまけに種族まとめて魔法適正も高い!私、大・興・奮!である。
だがしかし生物学上、長寿ということは幼少期も長いわけで...
カット!
生まれてから7年、人間なら小学校に通っても可笑しくない年齢だが、見た目は3歳相当であり自分で歩くことはできるが、そのほかの事はんにゃぴ・・・小さい子供にはやらせんよなぁ。種族ゆえか食事の回数が少なく、物も果物や野菜に偏ってる。米食いてー、肉食いてー
まあ米はともかく肉も魚もはたまに食べれるが、ホントに偶にだ。
カットォ!
20歳、人間では成人している年齢だが私の見た目年齢は12歳...何をやっても子供扱いよ、泣きたくなるね!
前世の常識が有る私に、この村の親の居ない生活はかなり違和感のあるものだ。いや実際の生みの親はいるが、エルフの子育ては村一丸となって行うもの。村の子供、村が親、いつぞや近所のおじいちゃんおばあちゃんに可愛がられた幼少期を思い出した。
カットォォ!
24歳、学生です。ウソ、24歳、根無し草です。村から勘当されました。
実は村周辺の下草が無く地面に日が届かない場所で間伐作業をしていたのですが、「死んでいない木を切るとは何事だ!」と怒髪衝天した長老エルフに一張羅のまま森から追い出されました。自然に倒れた木以外は切ってはいけない、なんてことは幼少期に言い聞かせられておりますが、大雨が来たらヤバそうなところを重点的に隠れて切っていたのですが、ついにバレました。
酷くない?酷くなーい
間伐は増えすぎた木々を間引くことで森が痩せることを防ぎ、土砂崩れを起こしにくい効果があるのですが、説明しても聞いてもらえず今に至ります。
私も間伐の知識が無ければ、切ることを忌むしていたでしょう。木を伐りたくない気持ちも分かります。だからと言って私は遠慮しませんが。
まずは森全体の間伐を終えてから旅立ちましょう。
いざ自分で試してみると、なるほど、脳に近く直接神経に繋がっているからなのだろう。
水音が聞こえる。シズメシズメ、水の底、まるで母の中のような安心感。
ああ、私は死ぬのだ。
光差す方
産湯が必要なのですね
ぴちゃ、ぴちゃ、てけ・りっり
進化ヲ、エル、新タナ勇者
いやナニカおかしな物が聞こえる。明らかにおかしい、おかしいことは決定的に明らか!私はまだ幻聴に取り付かれるほど常識は捨てていないし、危ない薬は自家製(雑草)の物しか使ったことが無いぞ!
今、転生、ヲ
ああ、聞こえる。知らない声が、不明な音が、脳に響く。鈴の音、笛の音、イヤイヤ
光が見える、体が落ちる、形が無い…
意識が落ち…
私の話をするとしよう
あれは今から36万・・・
いや、1万4000年前
ではなく私の生まれる前、前世の話だ。
私は当時、自宅の一室、自分用のラボにこもっていた。
なに、ラボと言っても薬学や化学ではなく電子工学用の作業部屋だ。
知り合いの化学者のように劇薬を管理しているわけでもなければ、危険な生物もおらず、人の四肢を捥ぐような力のある機械もない。
ラボには便利なソフトを入れたPC、基盤とそれを組み上げる部品と工具、動作確認用のDC電源とそこまで危険な物は置いていなかった。実験に失敗して爆発したわけではない。
不運な事故としか言えないが、私は家ごと土砂に流され死んでしまったのだ。
こればっかりは運がない、当時の私は長い休みに乗じて今までやりたいことの消化をしていたのだ。思い描いたものを図面に書いたり、先人の描いた設計図を移したり、PCを組み立てたり、ゲルマニウムラジオを作ったりしていた実に充実した休日。大雨警報など眼中になく、直前まで土砂の流れる音に気が付かなかった。しかし、地面が揺れ濁流と土砂が身を覆った時、私は絶滅を噛み締め死を受け入れていた。
そして今、私は耳の長い赤子として生を受けた。
そうエルフ!ザ・ファンタジー!オウ・マジェスティック!私のイメージ通りエルフは長寿の森の民であったが、夜目が利き耳が良い!おまけに種族まとめて魔法適正も高い!私、大・興・奮!である。
だがしかし生物学上、長寿ということは幼少期も長いわけで...
カット!
生まれてから7年、人間なら小学校に通っても可笑しくない年齢だが、見た目は3歳相当であり自分で歩くことはできるが、そのほかの事はんにゃぴ・・・小さい子供にはやらせんよなぁ。種族ゆえか食事の回数が少なく、物も果物や野菜に偏ってる。米食いてー、肉食いてー
まあ米はともかく肉も魚もはたまに食べれるが、ホントに偶にだ。
カットォ!
20歳、人間では成人している年齢だが私の見た目年齢は12歳...何をやっても子供扱いよ、泣きたくなるね!
前世の常識が有る私に、この村の親の居ない生活はかなり違和感のあるものだ。いや実際の生みの親はいるが、エルフの子育ては村一丸となって行うもの。村の子供、村が親、いつぞや近所のおじいちゃんおばあちゃんに可愛がられた幼少期を思い出した。
カットォォ!
24歳、学生です。ウソ、24歳、根無し草です。村から勘当されました。
実は村周辺の下草が無く地面に日が届かない場所で間伐作業をしていたのですが、「死んでいない木を切るとは何事だ!」と怒髪衝天した長老エルフに一張羅のまま森から追い出されました。自然に倒れた木以外は切ってはいけない、なんてことは幼少期に言い聞かせられておりますが、大雨が来たらヤバそうなところを重点的に隠れて切っていたのですが、ついにバレました。
酷くない?酷くなーい
間伐は増えすぎた木々を間引くことで森が痩せることを防ぎ、土砂崩れを起こしにくい効果があるのですが、説明しても聞いてもらえず今に至ります。
私も間伐の知識が無ければ、切ることを忌むしていたでしょう。木を伐りたくない気持ちも分かります。だからと言って私は遠慮しませんが。
まずは森全体の間伐を終えてから旅立ちましょう。
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