転生したエルフは現代人でした。

如月イチカ

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2.放浪エルフ

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 突然だが私の名前はハンス・ツェ・ノーヴェ。意味はノーヴェ村・の・ハンス、となるのだが村から追放されているので、実質ハンスのみが私の名前。どうもハンスです、よろしくお願いします。金髪碧眼の男の子エルフ(実24歳、見12~13歳)です。

 最近、私は衣食住の衣と住を探しています。どうもエルフ全体のコミュニティからBANされているようで、どこに行っても矢と魔法が飛んできます。傷は回復魔法でどうにかなるとはいえ、穴の開いた服は直せません、無一文ですが人里に下りましょう。

 とはいえ私はエルフ、最悪人間が人間至上主義の「亜人氏ね!」な場合、問答無用で頃されそう。そうじゃなくとも捕まったら奴隷行きは勘弁したい。エルフの時間間隔は人間基準だと大変のんびりしていて、外の情報が10年単位でズレてたりするから、事前知識は当てにできない。まだ友好的な人間ならばうれしい。
 ともかく安易に接触する前に一度、人間を見て置きたいのが心情です。私の対人スキルは前世のままとまっていますからね!

 干し肉を咥えながら、山道、おそらく人が作った道を歩いているのですが、遠くに街が見えるもののかなり距離があるようです。馬車、欲しいですね。
 干し肉を食べ終えて、街の全容が見えてきました。立地は山と川に挟まれ立派な城壁の上には多くの大砲が見えます、正面の門の交通量はまばら、大きな物資を街に運んでいきます。遠目から見た私の感想ですが、完全に城塞都市です。
 何に対しての装備なのですかね、とりあえず鎧着た門番に近づいてみましょう。顔は隠さないで、エルフだと分かるように・・・

「お嬢ちゃん、どうしたんだ?」

 おっと、向こうから話しかけてきました。割とフレンドリー、エルフ即殺!ではなかったようです。むしろ友好的?ですが声と表情からして驚いている様子、下心は一切感じられませんし、感情の割合からして心配しているような気がします。兵士の鏡ですね、正直権力振りかざして搾取されるとか勝手にイメージしてました。

「そんなボロボロになって何があった?」

 なるほど、私の容姿。ボロボロなエルフの民族衣装と幼い体を見て事件性を感じたようです。私が彼でしたら集落が襲われ人間に助けを求めに来たエルフの子供に見えるでしょう。

 ・・・いやなんて答える?
 馬鹿正直に追放されたと言ったら罪人だとバレ、村が襲われたと嘘をついても確認に行かれたら積む。
 今の私の立場って結構危ない、やらかしの付けが後になって来てる。


「あの、私、旅をしているエルフで、襲われて、無一文で、助けてください!」

 嘘は言ってない。子供ボディーと勢いでごまかした。涙ぐんだ上目遣いも忘れない。

「まあ分かった、ちょっと上に連絡するから詰所で待ってろ」

 優しい!おっちゃん好き!まあ私、男なんで他意は無いです。


 手を連れられ入れられたのは門番の詰所。おっちゃんやおじいちゃんの兵士ばかりですね、若い人がいません。みんな年上のような感じです。
 この都市、あんまり栄えてないのでしょうか。兵士と商人らしき人はちらほら見えますが観光客や一般人があまり見えません。

「お嬢ちゃんはどこから来たんだい、名前は?」
「えー、ノーヴェから、ハンスです。あと、男です、はい」
「「「え?」」」

 まあ分からなくはないです。子供の性別ってあんまりわかんないよね、特に美形の多いエルフで髪長くしてたら特に。まあまあ女顔ですし私。
 それから同性と分かって距離感の狭まった兵士(おっちゃん)と下トークで盛り上がりながら時間を潰していたら、隊長っぽい人が来て事情聴取された。

 この街は、ドラゴンガードというらしい。かの昔ドラゴンの襲撃が激しかった頃、ドラゴンを城壁の前まで誘導して矢で何度も仕留めたそうだ。ただ対ドラゴン用の防備は今では金食い虫となり、少ない人手で維持しているようだ。

 金無し、家無し、服無しの私、出されたお茶請けを食べながらおっちゃん達と話をする。

「それで、ハンスはどうしたいんだ?」
「そうですね、しばらく働いてお金を稼ごうかと」
「仕事か…エルフだが見た目が子供だからな」
「家事洗濯料理、できます!ので雇ってください!」

 隊長(仮名)は軽く眉を歪めた後、一番最初に私に話しかけたおっちゃんを呼んでこう言った。

「行きつけの酒屋、そこに連れて行ってやれ。あそこの亭主なら情報通だ、仕事の一つや二つ見繕ってくれるだろ」

 どうやら私が思っていたより人間は温かいようです。
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