トリート選んだら異世界で愛され魔女になってました

星野 千織

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第3話 かぼちゃ頭の紳士

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「えっと……あなた、その……すごいクオリティですね」

 私は立ち上がりながら、なんとか笑顔をつくった。
 目の前の”それ”――いや、”彼”は、どう見ても人間ではない。
 黒い燕尾服に、白い手袋。
 そして頭部は、丸ごとのカボチャ。
 口元にはランタンのような光が灯り、赤く瞬いている。
 ……熱くないのだろうか。

「ありがとうございます、魔女様。わたくしはパンプキン・バトラー。貴女様をお迎えに上がりました」

 かぼちゃの頭が、軽くお辞儀をした。
 声は低く、心地よい。
 まるで舞台俳優のような、完璧な発音。

「迎えに? え、私、どこかのアトラクションの中とかじゃないんですか?」
「アトラクション?」

 パンプキン・バトラーは、首を傾げた。
 ――ごり、と、カボチャの皮が軋む音がした。

「申し訳ございません、その言葉は存じ上げませんが……貴女様は”呼ばれた”のです。このハロウィンの宵に、真なる魔女として」
「はぁ……?呼ばれたって、誰に?」

「それは――”夜の王”に」

 にこり、と彼が微笑んだ瞬間、
 カボチャの口の炎が強く燃え上がった。
 風もないのに、私のマントがひらりと舞う。

 ――なんだろう、この人(?)。
 リアルすぎるどころか、現実みたいだ。
 マスクの境目も見えない。目の奥に、光がある。
 ……いや、光しかない。

「お部屋のご用意はできております。
 儀式までは、まだ少し時間がございますので――どうぞ、こちらへ」

 儀式、って言った?
 聞き間違いじゃない。
 でも彼は、手を差し出してきた。手袋越しの指が、妙に冷たい光を反射している。
 そこから、ほのかに香るのは……焼いたカボチャの匂い。

 ――”甘く焦げた秋の匂い”だ。
 懐かしいのに、どこか、腐敗のような。

 私は苦笑しながら、差し出された手を取った。

「……ほんと、凝ってるなあ。ハロウィンの演出チームってすごい」

 パンプキン・バトラーの炎が、一瞬だけ、ぱちりと瞬いた。
 それがまるで――笑ったように見えた。
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